大腸集検における精密検査として注腸X線検査単独で十分かどうかを調べるために, 大腸腫瘤性病変における注腸X線検査の感度および示現能について検討した。対象は1994年4月から1999年6月までの問, 当科にて注腸X線検査 (以下BE) が精密検査として施行され, その結果大腸に腫瘤性病変を指摘され, その後2カ月以内の非同日に全大腸内視鏡検査 (以下TCF) を行った194症例, 424病変である。まずBE検査時の読影結果から, TCFをgold standardとしてBEの感度を算出した。次にTCF後のBEフィルムの再読影でBEの示現率を求め病変の大きさ別, 肉眼形態別, 部位別, 組織型別に検討した。またBEでの見逃し, 示現なしの原因に関しても検討した。結果として, 感度は90.8% (癌のみでは 92.6%), 示現率は93.2%であった。示現率に関しては, 大きさ別では5~9mmが88.9%, 肉眼形態別ではIIa型が78.6%, 部位別では盲腸が81.4%と各々低かった。また, 見逃しの原因は多発病変が7例で最も多かった。BEで示現なし29病変のうち癌は1病変のみでm癌であった。示現なしの原因は前処置不良が9病変と多かった。以上の結果から, 読影側としてはより詳細な読影, 撮影側としては適切な前処置の改良を行うことで, BEの診断能はさらに向上するものと思われた。大腸集検における精密検査としては, 全例TCFが施行されることが望ましいが, TCFを基準としてもBEの感度は90.8%あり, 今回の成績を見る限りBEも妥当な検査であるといえる。
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