日本消化器集団検診学会雑誌
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42 巻, 4 号
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  • IL-1β 遺伝子多型解析と血清pepsinogen測定を用いて
    由良 明彦, 高橋 一江, 飯島 位夫, 関根 昌子, 矢島 美智子, 安藤 幸彦
    2004 年 42 巻 4 号 p. 405-411
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    萎縮性胃炎が胃がんの先行性病変であるという仮説をもとに, 血清pepsinogen (PG) 値を用いて胃がん高危険群をスクリーニングする方法 (PG法) が開発された。本研究は, 職域の胃集団検診受検者を対象に, 胃がんの高危険群とされる萎縮性胃炎の特徴について, 胃酸分泌に影響を及ぼし胃がん発生に関与するとされているIL. 1β遺伝子 (IL-IB) 多型の解析と胃粘膜の萎縮状態を客観的に反映するとされているPG法とを用いて検討した。その結果, Helicobacter pylori (Hp) 感染の中でIL-IB-511 T/T型の血清PGI/II比は他の多型よりも低い傾向を示し, さらに血清PGI70ng/ml以下かつPGI/II 比3.0以下には砂非感染群は認められなかった。
    以上のことから, Hp感染の中でPG法陽性かつIL-IB-511T/T型を保有する萎縮性胃炎の症例は, 胃がんのリスクが高く, Hpの除菌適応となる可能性があると推察された.
  • 後藤 信雄, 西谷 武, 桜井 幸弘
    2004 年 42 巻 4 号 p. 412-417
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    NTT東日本首都圏健康管理センタにおいて98年度, 99年度, 00年度に定期健康診断を受けた47才, 53才の社員7557名 (男性6, 787名, 女性770名) に血清ペプシノゲン法を施行し, 当該年度のみでなく, 最長6年の経過で胃癌の発生状況を検討した。血清ペプシノゲン法施行後は定期健康診断としては偶数年齢の間接レントゲン検査で経過を追ったところ, 血清ペプシノゲン法陽性群から20例, 陰性群からも20例の胃癌が発生した。血清ペプシノゲン法単独では半数の胃癌を見落とすことになり, 両検査を併用することにより, 互いの利点を生かし, 欠点を補い, 効率良く胃癌を発見可能にすると考えられた。
  • 島田 剛延, 坪野 吉孝, 森元 富造, 熊谷 裕司, 山下 和良, 相田 重光, 今野 豊, 渋谷 大助, 菊地 達也, 高木 承, 木内 ...
    2004 年 42 巻 4 号 p. 418-432
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    スクリーニング発見大腸癌と外来発見大腸癌を比較し, 検診対象年齢について検討を行った。宮城県がん登録を用いて1993~99年に診断された大腸の悪性腫瘍12114名を把握し, ここから死亡票のみで登録された症例・carcinoma以外の症例・粘膜内癌症例・診断年月不明の症例・診断契機不明の症例を除いた7514名を対象とした。この7514名を男女別・5歳階級別に分け, スクリーニング群1522名と外来群5992名の手術施行状況・進行度・予後を比較した。男女とも40~70歳代では, スクリーニング群の予後は外来群より有意に良好で, 検診の有効性が示唆された。80歳以上ではそれが不確かで, 特に85 歳以上では両群の予後に差を認めず, 検診が生存期間の延長に寄与していない可能性が示唆された。しかし, 80歳以上では症例数が少なく, 更なる検討が必要と思われた。
  • 松瀬 亮一, 内田 壱夫, 齊藤 治, 平田 一郎
    2004 年 42 巻 4 号 p. 433-440
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    我々は, 便中K-ras遺伝子変異検出 (K-ras変異) と便中ラクトフェリン測定 (Lf) の大腸がん検診スクリーニング法としての利用を検討した。K-ras変異は, 健常対照では検出されなかったが, 31例の大腸癌から13例しか検出されず感度が不十分と考えられた。また, 工程も複雑で時間も長くスクリーニングに利用しにくいと考えられた。Lfは大腸癌に対して61.1%と50.0%の便潜血検査より感度が高く, 特に早期では3倍感度が高かった。また, 職域検診でのLfの陽性率は2.5%で3.3%の便潜血検査より低かったことから, Lfの利用で要精検率を下げながら, 癌の発見を多くできる可能性が示唆された。職域検診群でLfと便潜血検査が両方陽性の率は0.4%であつた。Lfは自動分析が可能で, 大腸がん検診スクリーニングでの利用が容易であると考えられた。
  • 原田 明子, 西田 博, 辰巳 嘉英, 谷 知子, 松本 貴弘
    2004 年 42 巻 4 号 p. 441-446
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    当施設では5mm未満の腺腫例に対し, 1~3年毎に全大腸内視鏡検査を行っていたが, より効率的に経過観察を行うため, 1997年度より, 5mm未満の隆起型で異型が中等度以下の腺腫例に対し, 5年後のTCSとその間に逐年の便潜血検査を行う方法で経過観察を始めた。この新しい方法を行った329例を従来の方法を行った454例 (1996年) や238例 (1997年) と2002年まで追跡し比較したところ, 両者の経過観察目的の全大腸内視鏡検査受診率に差は無く, その検査間隔は前者が約2年半で有意に長かった。また, 新しい方法で経過観察を行った症例の癌腫または5mm以上の腺腫が出現するリスクは, 1996年の症例の40%程度であった。以上より, 内視鏡・便潜血検査を併用した方法は検査精度を維持し, 受診者の負担の軽減をはかれることが示された。癌腫の出現する確率や対象症例の選出方法などは, 今後症例を蓄積し検討するべきである。
  • 稲本 一夫
    2004 年 42 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    人間ドック検診にIT (情報・画像技術) を利用したシステムを構築した。病院電子カルテ・フィルムレスと連動し, 受診者に診療情報の迅速な提供を行い, コンピューター画面に提示された検査データの内科医による説明, 画像の放射線科医による解説が可能となった。検査終了後, 画像も含めた全ての診療情報はCD-ROMに収められ, 紙の報告書とともに受診者に送られる。本人の健康管理ばかりか, 他医受診の際にも参考資料となり好評である。これらのIT基盤をもとに, マルチスライス腹部CT像より, 胃の3D仮想内視鏡画像を作成して診断に供した。胃の直接内視鏡を同日に施行した63例, 66病変の対比成績では, 感度92.7%, 特異度90.9%の満足すべき結果が得られた。スクリーニング検査として, ピロリ菌尿素呼気試験 (UBT), 血清ペプシノーゲン測定をともに実施し, その結果をもとに, さらに検査の必要な人には直接内視鏡 (生検) を勧めている。
  • 水間 美宏, 久木田 和夫, 薗 はじめ
    2004 年 42 巻 4 号 p. 454-458
    発行日: 2004/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    消化器癌による死亡を減少させるには, 癌の早期発見と共に発生の予防が重要である。また, 消化器癌の発生要因として, 喫煙, 肉類多食, 運動不足が指摘される。セブンスデーアドベンチスト (キリスト教プロテスタント) は, 100年以上にわたり, 禁煙, 菜食, 運動の生活を実践してきた。その健康的な生活習慣は予防医学的に高く評価され, 神戸アドベンチスト病院でも, 受診者に禁煙・菜食・運動を勧めている。喫煙者には禁煙を強く勧め, 院内の禁煙外来を紹介している。一泊ドックの受診者の食事は卵乳菜食であり, 外来ドックの受診者には, 病院に隣接する菜食レストランで昼食を提供している。病院に隣接してトレーニングジムがあり, トレーナーが運動法をアドバイスしている。世界がん研究基金と米国がん研究協会の「がん予防のための食事と健康のガイドライン」に見られるように, 消化器癌の予防には, 禁煙, 菜食中心, 運動の生活習慣が求められる。
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