日本消化器集団検診学会雑誌
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43 巻, 4 号
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  • 緒方 一朗, 土亀 直俊, 工藤 康一, 満崎 克彦, 浦田 譲治, 西 潤子, 西東 龍一, 中村 郁夫, 加古 博史
    2005 年 43 巻 4 号 p. 407-414
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    日本消化器集団検診学会の提唱する従来法・変法では立位または腹臥位の充盈像が残されているが, 新基準案は二重造影像主体の撮影法が特色であり, 新・撮影法では二重造影像のみとなっている。充盈像はこれまでの検診でどのような役割を担っていたのであろうか。熊本県成人病予防協会における平成10-12年度発見癌172例がどのような撮影体位でチェックされ要精検に至ったかを検索すると同時に, フィルムの見直しを行い, 充盈像の役割について言及した。その結果, 立位充盈像は高頻度にチェックされている体位であることが判明し, 充盈像を単独でチェックした中から多くの癌が発見されていた。フィルムの見直しでも充盈像以外に癌の描出が見られなかった症例が多数存在した。充盈像は二重造影像に比し, 低い陽性反応的中率が問題であるが, 現時点で間接胃集検から充盈像を省くということは見逃し例を増加させる大きなリスクを伴う可能性がある。
  • 吉田 諭史, 馬場 保昌, 江頭 秀人, 長浜 隆司, 中島 寛隆, 山本 栄篤, 丸山 雅一, 佐藤 清二, 富樫 聖子, 小野 良樹
    2005 年 43 巻 4 号 p. 415-429
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    X線読影基準の構築を目的に, 胃癌のX線的悪性像をもとにした所見分類と画像精度評価の定義を試みた。対象は東京都予防医学協会において新・撮影法が発見の契機となった胃癌のうち, 過去4年以内に間接X線検査が施行されていた108病変で, 内訳は早期癌83病変 (76.9%), 進行癌25病変 (23.1%) である。基準撮影像 (8体位8画像) と追加撮影像に分けて検討した。基準撮影像の検討では, 対象とした108病変中41病変 (38.0%) が悪性所見群に分類された。これは, 検討対象に早期癌が多いことと, 基準撮影のみでは病変描出に限界があることを示していよう。これに対して, 追加撮影が行われた43病変では25病変 (58.1%) が良性所見群から悪性所見群へ推移し, 追加撮影は有効であると思われた。追加撮影像を含めた胃X線所見再分類では, 悪性所見群は41病変 (38.0%) から60病変 (55.6%) と増加した。胃X線所見分類と画像精度評価分類の胃癌病変数には順位相関が見られ, 画像が良質のものでは正相関が認められた。以上より, 新. 撮影法と本読影基準試案は胃癌検診に有用であると思われた。
  • 相田 重光, 加藤 勝章, 島田 剛延, 渋谷 大助
    2005 年 43 巻 4 号 p. 430-441
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    胃集検における間接X線検査法 (以下XP法) とペプシノゲン法 (PG法) の特性を検討し, 内視鏡治療 (EMR) 可能な癌拾い上げを考慮した検診法について考察した。対象は, 平成13年4月~平成15年 11月までの胃集検受診者572,956名から発見された胃癌1, 045例のうち, PGを測定し得た371例とした。結果は,(1) 進行癌の拾い上げ (XP法94.2%, PG法70.9%, 併用100%)(2) 早期癌の拾い上げ (56.8%, 73.3%, 88.7%)(3) EMR癌の拾い上げ (33.3%, 79.6%, 82.8%) であった。進行癌については現行の XP法単独で十分と考えられた。EMR癌を含む早期癌では各検査法単独では弱く, 併用が望ましいと考えられた。検診においてもより早期での癌発見が望まれつつある現状では, 従来のXP法単独では限界があり, PG法と補完的に検査される必要があると考えられた。
  • 井上 和彦, 谷 充理, 吉原 正治
    2005 年 43 巻 4 号 p. 442-448
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1996年度に血清ペプシノゲン (PG) 法とヘリコバクターピロリ (Hp) 抗体価測定を行った人間ドック受診者を対象に翌年度以降に発見された胃癌および胃腺腫の検討を行い, PG法とHP抗体価測定による胃癌スクリーニングの有効性を検討した。HP抗体 (-) PG法 (-) をA群, 砂抗体 (+) PG法 (-) をB群, PG法 (+) をC群とグループ分類した。翌年度以降6年間に発見された胃癌はC群で最も頻度が高く2.24% (7/312) であり, 次いでB群の1.05% (6/571) であった。A群260例から発見された胃癌は1例もなかった。C群での胃癌発見率はA群に比し有意に (p<0.05) 高率であった。なお, 胃癌発見時期の比較ではC群は血液検査施行後12~49か月 (平均29.7か月) であり, B群の25~60か月 (平均443か月) より有意に (p<0.05) 短かった。胃腺腫は5例発見されたがすべてC群であった。以上より, C群は胃癌, 胃腺腫発生の高危険群であり, 逐年内視鏡検査が必要と考えられた。一方, A群は胃癌, 胃腺腫の低危険群と判断することができると考えられた。
  • 日山 亨, 吉原 正治, 上村 直実, 田中 信治, 伊藤 公訓, 岡本 志朗
    2005 年 43 巻 4 号 p. 449-457
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    内視鏡検診により効果的に胃癌診断を行うには, 胃癌発生リスクに応じた検査問隔の設定が必要と考えられる。今回,(1) 胃炎の状態別の胃癌リスクの検討による適当な検査間隔,(2) 血清ペプシノゲン (PG) 値による血液検査による適当な検診間隔の推定, の2点について検討を行った。対象は,(1) 内視鏡的に経過観察が可能であった1,526名,(2) 空腹時血清PG値を測定でき, 内視鏡的に胃粘膜の状態が観察しえた498例である。検討 (1) では, 胃癌は36例発生した。胃癌発見頻度は全体では0.40%・年, 胃体部優勢胃炎群では1.43%・年, pangastritis群0.75%・年, 前庭部優勢胃炎群0.049%・年であった。発見効率の面からいうと, 胃体部優勢胃炎群で毎年内視鏡検査を行うのと同等の効率を得るには, pangastritis群では2年に1回, 前庭部優勢胃炎群ではそれ以上の間隔となった。検討 (2) では, 胃体部優勢胃炎群, pangastritis群, 前庭部優勢胃炎群ではそれぞれ血清44.4±24.0, 49.0±22.5, 53.9±192, 血清PGII値20.3±8.4, 18.7±79, 166±69, I/II比224±1.01, 2.65±0.98, 3.51±1.14であり, 各群のPG 値に差を認めた。以上より, 胃炎の状態により胃癌発見頻度が異なり, 胃癌のリスクが低いHp陰性群および前庭部優勢胃炎群は検診間隔を5年に1回程度以上に延ばすことは可能と考えられた。また, 血清PG値で, 胃癌のリスクが高い体部優勢胃炎群およびpangastritis群と, リスクが低いHp陰性群および前庭部優勢胃炎群とを区別することは可能であった。
  • 神津 隆弘, 角川 康夫, 正田 浩子, 倉繁 正則, 村松 幸男, 斎藤 博, 斉藤 大三
    2005 年 43 巻 4 号 p. 458-468
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    内視鏡による消化管がん検診が普及しつつあるが, その課題のひとつに検査の需要に対するマンパワー不足がある。この問題解決のために, タッチパネルを使った即時入力式レポーティングシステムを備えたデジタルイメージファイリングシステムを開発・導入した。その結果, 既存のシステムに比べ, 所見入力作業が簡略化し, 検査問の時間が短縮し, 効率のよい検査が可能となった。また, 検査中にリアルタイムで所見を入力することで, より正確な所見の記録・データベース構築が可能となった。今後, ソフトウェアの改良により入力を簡略化することでさらに効率を向上させることが可能である。本装置は内視鏡による消化管がん検診に有用であると思われた。
  • 出口 浩之
    2005 年 43 巻 4 号 p. 469-472
    発行日: 2005/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    検診の便潜血反応が陽性であった56歳男性の精査において, 初診時の腹部CT検査により大腸脂肪腫の質的診断を得た症例を経験した。脂肪腫の場合, 体表, 腸間膜の脂肪層と同様な特有の低吸収値を示すことからその診断は比較的容易である。便潜血反応陽性患者の精査においては上部下部消化管内視鏡検査に並行するかたちで肛門診のほかに消化管外病変の有無の検索のため, 患者の理解と協力が得られれば腹部CT検査は二次検診を契機にした腹部スクリーニングとして意味のあることと思われる。
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