内視鏡検診により効果的に胃癌診断を行うには, 胃癌発生リスクに応じた検査問隔の設定が必要と考えられる。今回,(1) 胃炎の状態別の胃癌リスクの検討による適当な検査間隔,(2) 血清ペプシノゲン (PG) 値による血液検査による適当な検診間隔の推定, の2点について検討を行った。対象は,(1) 内視鏡的に経過観察が可能であった1,526名,(2) 空腹時血清PG値を測定でき, 内視鏡的に胃粘膜の状態が観察しえた498例である。検討 (1) では, 胃癌は36例発生した。胃癌発見頻度は全体では0.40%・年, 胃体部優勢胃炎群では1.43%・年, pangastritis群0.75%・年, 前庭部優勢胃炎群0.049%・年であった。発見効率の面からいうと, 胃体部優勢胃炎群で毎年内視鏡検査を行うのと同等の効率を得るには, pangastritis群では2年に1回, 前庭部優勢胃炎群ではそれ以上の間隔となった。検討 (2) では, 胃体部優勢胃炎群, pangastritis群, 前庭部優勢胃炎群ではそれぞれ血清44.4±24.0, 49.0±22.5, 53.9±192, 血清PGII値20.3±8.4, 18.7±79, 166±69, I/II比224±1.01, 2.65±0.98, 3.51±1.14であり, 各群のPG 値に差を認めた。以上より, 胃炎の状態により胃癌発見頻度が異なり, 胃癌のリスクが低いHp陰性群および前庭部優勢胃炎群は検診間隔を5年に1回程度以上に延ばすことは可能と考えられた。また, 血清PG値で, 胃癌のリスクが高い体部優勢胃炎群およびpangastritis群と, リスクが低いHp陰性群および前庭部優勢胃炎群とを区別することは可能であった。
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