日本消化器集団検診学会雑誌
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38 巻, 4 号
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  • 阿部 慎哉, 渋谷 大助, 野口 哲也, 島田 剛延
    2000 年 38 巻 4 号 p. 475-482
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    平成3年度における胃集検の間接X線検査による偽陰性例を, がん登録や事後調査および地元医療機関からの事後報告などの手段を用いて可能な限り収集した。同じ偽陰性例でもその発見契機により, 逐年検診で発見された胃癌と検診以外の契機で発見された胃癌では, かなり異なった特徴を有していることが明らかになった。
    5種類の偽陰性例の定義を設定し, それぞれの偽陰性率を推計した。偽陰性例および真陽性例における深達度別の相対生存率を比較検討することにより, 胃集検における偽陰性の定義は「1年以内に診断された進行胃癌+逐年発見進行胃癌」とするのが妥当であると考えられ, その偽陰性率は21.2%と推計された。
    偽陰性率は男性にやや高い傾向が見られ, 部位別ではC領域で有意に高率であった。年齢階級別では年代が高くなるほど偽陰性率が高くなる傾向が認められた。
  • 野口 哲也, 渋谷 大助, 阿部 慎哉, 島田 剛延
    2000 年 38 巻 4 号 p. 483-489
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    近年, 救命可能な早期胃癌が数多く発見され, 発見胃癌に占める進行胃癌の割合は減少してきている。一方, スキルス型胃癌 (以下, スキルス) の頻度は我々の検討では, ほぼ横ばいであった。この要因として, 通常の胃癌とは異なるスキルス特有の病態により, 胃集検での早期診断が難しいためと考えられた。逐年受診者における前年度X線フィルムの検討では, 限局性硬化, ひだの肥大, 硬化の所見が多くみられ, 前年度のX線フィルムとの対比により指摘できる症例が多く見られた。原発巣の占居部位は, 逐年受診者においてU領域に, 初回受診者ではM領域に多く見られた。予後は不良であったが, 近年の治療法の進歩や造影剤, 診断機器, 診断能の進歩により5年生存率が一部で向上していた。スキルスの診断の向上のためには, 高濃度バリウムの使用や, 必要に応じた撮影体位の工夫や追加撮影が大切であり, 疑わしい所見に対しては前年度との比較が重要であると考えられた。
  • 志賀 俊明, 野本 一夫, 西澤 護, 八巻 悟郎, 長浜 隆司
    2000 年 38 巻 4 号 p. 490-495
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    血清ペプシノゲン法 (以下PG法) の胃集検への組み入れ方を検討するにあたり, 間接X線検査法 (以下間接法) での胃癌拾い上げの問題点やPG法での胃癌拾い上げの精度などを知ることを目的とした。検討方法は無作為に選び出した50歳以上の男性の地域間接受診者4,151例全例に, 間接法, PG法に加え内視鏡までの検査を行った。この検討からPG法は間接法より早期胃癌の拾い上げ胃癌発見率で勝っていたが, 進行胃癌の拾い上げでは間接法より劣ると推定された。この結果からPG法の胃集検への組み入れ方として, 胃集検の1次スクリーニング検査はPG法で行い, 陽性者は内視鏡の管理検診とし早期胃癌を効率的に拾い上げる。PG陰性者には2次スクリーニング検査として間接法を行ないPG法で拾い上げられない一部の進行胃癌を確実に拾い上げるようにするのが, 間接法, PG法両法の長所を生かし, 胃癌発見成績を向上させるための有用な方法と考える。
  • 由良 明彦, 高橋 一江, 飯島 位夫, 関根 昌子, 赤座 協, 矢島 美智子, 安藤 幸彦
    2000 年 38 巻 4 号 p. 496-502
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    東京逓信病院健康管理センターでは, 職域集団検診 (胃集検) の一次スクリーニング検査として間接X線撮影法 (間接X線法) に血清ペプシノゲン測定法 (PG法)(cut off値: PGI≦70ng/mlかつPGI/II比≦3.0) を同時併用にて実施している。本研究では, 過去6年間における当職域胃集検の成績をまとめ, さらに複数回受診者を対象にPG陰性者 (疑陽性者を含む) に対する胃集検の受診間隔について検討した。
    胃集検による要精検者数は延べ2,014名であり, 実際に胃内視鏡の精検受診者総数は延べ1,843名であった。このうち胃癌発見の総計は17例, 血清PG値はPG I 47.8±32.3ng/ml, PG I/II比2.0±0.7 (平均値±標準偏差) であった。また, 受診間隔の年間別にて1~4年間では全体の58.7~72.7%, 5~6年間では49.3~50.0%が各々PG陰性のまま不変と判定された。
    以上のことから, PG法は胃集検の一次スクリーニング検査として間接X線法を補完することが出来る検査法であると判断された。また, PG陰性者の受診間隔は5年間が妥当であると推測された。
  • 3年間のまとめ
    吉川 守也, 乾 純和, 小林 二郎, 勝田 紀男, 原 威道, 西岡 利夫, 西村 忠雄, 松岡 正紀, 月岡 関夫, 佐藤 和徳, 牧元 ...
    2000 年 38 巻 4 号 p. 503-509
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    地域胃がん検診にペプシノゲン法 (以下PG法) を採用し検診受診率を大幅に増加することができ, 発見胃がん者数も三年間でPG法で53名, 従来のX線法では20名であった。PG法とX線法による発見胃がんの対比ではPG法の方が早期で分化型のがんが多く内視鏡的治療例も多かった。胃がん1例の発見費用はPG法がX線法の1/2以下であった。以上をふまえて不特定多数の市民を対象とする地域胃がん検診においては胃がん高危険群を簡便で安価に抽出できるPG法は良いスクリーニング法となりうると考えられた。しかしながらPG陰性がんも存在することから新しい胃がん検診として一次スクリーニングはPG法を用い受診率の向上, コストの削減をはかり, PG陽性者には内視鏡で精密検査, PG法陰性者には間接X線を用いた二次スクリーニング検査を主に進行がんの見落としを防ぐ目的で施行し要精検率を数%以下に抑える, といった二段階方式をとる方法を提案する。
  • とくに血清H. pylori抗体との関連について
    芳賀 とし, 大類 方巳, 渡辺 菜穂美, 寺野 彰
    2000 年 38 巻 4 号 p. 510-514
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1997年11月から1998年2月までに, 検査に対する十分な説明と文書による同意の得られた当科の人間ドック受診者83名 (男性75名, 女性8名), 平均年齢493歳を対象として, 13C標識尿素100mg服用による13C尿素呼気試験 (13C-UBT)を施行し, 同時に血清H.pylori抗体 (IgG抗体) を測定して検討した。血清同抗体 (+) は48例 (58%), 同抗体 (±) 5例 (6%), 同抗体 (-) 30例 (36%) であった。13GUBT値 (Δ±C値) は, 血清同抗体 (+) 例では同抗体 (-) 例と比較して, 15分値と20分値とも有意に高かった。さらに同抗体 (+) 例では, Δ13C値の15分値と20分値はほぼ同等値を有し, 呼気採取時間は15分後, 20分後のどちらでも可能と考えられた。Δ13C値陽性を2.5‰以上とすると, 同抗体 (+) 例では, 陽性者は15分値, 20分値とも45/48例 (93.8%) であった。人間ドックの無症状例でも, 同抗体 (+) 例の多くが, H.pyloriの既往感染ではなく, 現在も感染している可能性が示唆された。
  • 岡庭 信司, 比佐 岳史, 荻原 毅, 佐々木 宏子, 山田 繁, 夏川 周介
    2000 年 38 巻 4 号 p. 515-520
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    腹部超音波 (以下US) における偽陰性肝細胞癌の特徴を明らかにする事を目的に, US後1年以内に20mm以上の腫瘍が指摘された肝細胞癌30例 (33病変) につき検討した。
    その結果,(1) 前回のUSにて93.3%に慢性肝疾患像 (辺縁鈍, 粗造な実質エコー, 左葉腫大) を認め, 56.7%に描出不良部位を認めた。(2) 腫瘍の占居部位は後上区 (39.4%) が最も多く, 57.6%が右葉の横隔膜下にあり, 33.3%が肝表面に, 26.7%が脈管の背側に存在した。(3) 3ヶ月以内に発見された症例には30mmをこえる腫瘍を認めず, 適切な経過観察 (慢性肝炎≦6ヶ月, 肝硬変≦4ヶ月) による発見例の方が不適切例に比べ優位に腫瘍径が小さかった。
    以上より, US検査時には右葉の横隔膜下, 肝表面および脈管背側の腫瘍に注意すべきであり, 慢性肝疾患像 (辺縁鈍, 粗造な実質エコー, 左葉腫大) を認めた場合には3ヶ月以内の経過観察が好ましいと思われた。
  • 個別検診の精度向上を目指して
    吉田 富子, 今村 清子, 増田 英明, 玉置 芙美代
    2000 年 38 巻 4 号 p. 521-525
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    がん検診の一般財源化によりこの事業の継続は各自治体の判断で決定されることになったが, 横浜市では平成11年度のがん検診事業の継続を決定した。今後もがん検診事業を継続していくためには, 横浜市全体におけるがん検診の精度管理の充実が重要かつ必須であると考え, 今回胃がん検診を例にとって, この一般財源化を如何に有効に利用すべきかについて検討した。横浜市では, がん検診の有効性が問われ始めた平成9年度に, 市民と個別検診を担う地域医療機関を対象に意識調査を実施した結果, 市民のがん検診受診に対する希望が根強いことがわかった。一方で, 医療機関の精度管理に対する意識は低く, 精度管理の充実が今後のがん検診の存続を左右するものと思われた。従来より集団及び施設検診を担当してきた当センターのノウハウを個別検診の精度管理にも反映し, 全市的な精度の向上を目指すことが必要と考えた。
  • とくに検診方法との関係について
    矢川 裕一, 大田 由己子, 馬渕 原吾, 小幡 裕, 中山 恒明, 梶原 哲郎
    2000 年 38 巻 4 号 p. 526-532
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    1987年から1996年の10年間に発見された大腸癌33例 (早期癌20例, 60.6%) より大腸癌検診の方法, とくに便潜血反応の有用性について検討した。検診方法は一次検診として年2回 (6ヶ月毎) の便潜血反応, 二次検診としてX線あるいは内視鏡による大腸検査を行っている。また, 2年に1回大腸検査を奨めている。大腸癌発見の契機をみると, 便潜血20例, 大腸検査10例, 肝転移および症状で発見された進行癌症例が3例あった。便潜血と大腸検査発見例をみると, 明らかに後者で早期癌が多かった。便潜血発見例では陽性後6ヶ月以内診断例はそれ以降診断例にくらべやはり早期癌が多かったが, 3ヶ月以内発見例にも4例進行癌がみられた。予後はいずれも良好であった。便潜血反応は6ヶ月毎の検診により多くが早期に発見され, 予後からみても有用と思われた。しかし, 偽陰性例の存在などを考慮すると, 直接大腸検査のフォローが必須と考えられた。
  • 安保 智典, 村島 義男, 今村 哲理, 須賀 俊博, 寺倉 邦博
    2000 年 38 巻 4 号 p. 533-537
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    [症例1] 患者: 59歳, 男性。集団検診の間接胃X線造影検査で十二指腸水平部に隆起性病変を認めた。平滑筋腫と診断し, 十二指腸部分切除を行った。大きさ3.3cm×2.8cm×1.8cmのgastrointestinal stromal tumor (GIST) であった。 [症例2] 患者: 46歳, 男性。集団検診の間接胃X線造影検査で十二指腸下降部に隆起性病変を認めた。十二指腸乳頭部腫瘍と診断し, 切除術を施行した。露出腫瘤型, 大きさが2.5cm×1.5cmの高分化型管状腺癌であった。 [間接胃X線撮影法における十二指腸造影画像の検討] 1.000例間接胃X線フィルムの検討では, 46.8%で十二指腸腫瘍のスクリーニングが可能なレリーフ像以上の画像が得られていた。 [結論] 間接胃X線フイルム上の十二指腸画像は不良なものが多いが, 同部位の異常所見にも十分な注意を払う必要がある。
  • 村上 晶彦, 三浦 達也, 池端 敦, 小野 満
    2000 年 38 巻 4 号 p. 538-541
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    10カ月前の注腸検査で病変をチェック出来ず, 進行癌として診断された症例を経験したので報告する。症例は54歳女性。平成9年4月日大腸癌検診の便潜血反応陽性にて当科受診。S状結腸ファイバーと注腸検査を施行。肛門輪より5cmにIsp型のポリープを認めたが, 注腸検査では異常を指摘できなかった。5月日内視鏡的ポリペクトミーを行った。4×4×5mmであり, 病理所見は, serrated adenomaであった。その後, 平成10年2月日, 右下腹部痛にて外来受診。同部に腫瘤を触知し, 2月日注腸検査にて盲腸部に陰影欠損を認め, 3月日入院となった。平成10年3月日の大腸内視鏡検査にて, 盲腸部にB-3型の腫瘍を認めた。生検診断はwell differenciated adenocarcinomaであり, 平成10年3月日手術を施行。回盲部切除+大網切除+両側卵巣切除を施行。手術所見は, SE, N2, P2, Ho, Stage IV (D2, CurA) 盲腸部に3.5×4.2cm大のB-3型の腫瘍を認め, No201のリンパ節の腫大, 大網に2cm大の腫瘍あり, 転移であった。病理所見はCarcinoma of the colon with metastasis in the lymphanode and peritoneum, well differenciated adenocarcinoma, se, ly1, v1, ew (-), aw (-), n2 (+) 2012/3.peritoneum: metastasis of the colonic carcinoma, bilateral ovary: no malignancyであった。初回の注腸検査にて病変を指摘できず, 診断時から遡って, X線像を観察しえたので報告する。
  • 佐々木 清寿, 引地 勲, 神谷 亮一, 工藤 俊雄, 狩野 敦
    2000 年 38 巻 4 号 p. 542-545
    発行日: 2000/07/15
    公開日: 2012/12/11
    ジャーナル フリー
    症例は68歳男性。当院健診科でのシグモイドスコピーで直腸前壁にIsp型隆起性病変を指摘され, 精査を勧められるも放置。2年4ヶ月後に再び当院健診科を受診。同部位に1型進行癌を認め, 当院外科にて直腸切除, 人工肛門造設術を施行。切除標本では25×25mm, 1型進行癌, 中分化腺癌, 深達度a1, ly1, v1であった。
    大腸腫瘍の自然史を知るうえで最も重要な情報をもたらしてくれるのが, prospective studyである。しかし, これはいうまでもなく症例選択の難しさや, 倫理的問題がある。この症例は患者の精査拒否という背景があり, 偶然の観察機会を得た。また, 内視鏡的にその発育経過を観察できた貴重な症例であった。
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