日本乳酸菌学会誌
Online ISSN : 2186-5833
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25 巻, 1 号
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総説
  • ―見えてきた複雑系の深部―
    小野 浩, 中山 二郎
    2014 年25 巻1 号 p. 3-12
    発行日: 2014/03/17
    公開日: 2015/07/02
    ジャーナル フリー
    発酵食品中には乳酸菌をはじめとする様々な細菌類が存在していることが知られている。近年、次世代シーケンサーを用いた菌叢解析法が発酵食品の細菌叢解析にも利用されるようになり、これまで見ることができなかったフローラの深部に焦点を当てることが可能となってきた。本稿では著者らの糠床の菌叢解析の研究を中心にピロタグ法を用いた発酵食品の細菌叢解析の有効性について述べる。
  • 太田 訓正
    2014 年25 巻1 号 p. 13-17
    発行日: 2014/03/17
    公開日: 2015/07/02
    ジャーナル フリー
    再生医療を科学的に支えている重要な分野として細胞の基礎研究が挙げられるが、その発展がなければ、今後の再生医療の展開を期待することは難しい。ヒトES 細胞やiPS 細胞などの多能性幹細胞の開発により、これらの細胞の臨床応用への道が見えてきたが、ES 細胞には倫理的問題や移植時の免疫拒絶反応が伴い、iPS 細胞においては将来の腫瘍形成への不安を完全には払拭できていない。私たちのグループは、ヒト皮膚細胞に乳酸菌を取り込ませることで、多能性細胞を創り出すことに成功した。本稿では、この発見に至った経緯と実際の研究データを紹介し、今後の研究展開について解説した。
  • 谷口 俊一郎
    2014 年25 巻1 号 p. 18-23
    発行日: 2014/03/17
    公開日: 2015/07/02
    ジャーナル フリー
    近年のがん分子標的治療薬の開発は目覚ましく注目の的となっている。しかし、がん細胞形質の不安定性のため細胞集団は不均一であり、薬剤耐性、転移形質を獲得した細胞が出現する。それ故に充分な治療は困難であり、状況は従来のがん化学療法と類似している。従って、個々の細胞の特異性を模索することに加え、がん組織の微小環境の特異性に着目し集団丸ごと攻撃する標的治療法が必要と考えられる。私達は、がん細胞の不均一性を克服するために固形がん組織の特徴である低酸素状態に着目し、これを標的として大量の薬剤を運び込むDrug Delivery and Production System (DDPS) の開発を進めている。この運び屋およびミクロ工場として非病原性で嫌気性であるビフィズス菌を用いた。シトシンデアミナーゼを組み込んだ発現ベクターを菌内に導入することによって、制がん剤5FU の前駆体で低毒性の5FC(シトシン)を活性化し、5FU(ウラシル)を産生する系を構築した。この系による制がん実験の結果、副作用が極めて軽度で抗腫瘍性を示すことができた。ビフィズス菌を血管内投与する試みは安全性の面から疑問視されてきたが、私達はその安全性を動物試験で確かめ臨床試験に至った。
  • 善藤 威史, 石橋 直樹, 園元 謙二
    2014 年25 巻1 号 p. 24-33
    発行日: 2014/03/17
    公開日: 2015/07/02
    ジャーナル フリー
    乳酸菌の中には、バクテリオシンと総称される抗菌ペプチドを生産するものが存在する。乳酸菌バクテリオシンは一般に細胞膜に瞬時に作用して抗菌活性を示し、腸管内の消化酵素で容易に分解されて残留による環境負荷が少ないことから、耐性菌を生じにくく、安全性の高い抗菌物質と考えられている。とくにLactococcus lactis の一部の菌株によって生産されるナイシンA は、日本を含む世界50 ヶ国以上で食品保存料として利用されている。我々は、乳酸菌バクテリオシンの特徴を活かした安全な微生物制御の実現を目指し、ナイシンA の様々な分野への展開を図るとともに、ナイシンA に続く、優れた特性を有する新奇バクテリオシンを探索し、それらの構造と機能について研究を行ってきた。本稿では、ナイシンA をはじめとする乳酸菌バクテリオシンについて概説するとともに、ナイシンA の口腔ケア剤などの非食品用途への利用や、新奇乳酸菌バクテリオシンの探索とラクティシンQ やラクトサイクリシンQ などの新奇バクテリオシンの特性について、我々の成果を中心に紹介し、今後の展望を述べたい。
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