日本看護技術学会誌
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10 巻, 2 号
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原著
  • ―特定部位の分布に着目して ―
    佐藤 好恵, 森 將晏
    2011 年 10 巻 2 号 p. 4-13
    発行日: 2011/08/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     適切な殿部筋肉内注射部位の特定方法を検討することを目的とし,「四分三分法の点」,「クラークの点」,「ホッホシュテッターの部位」の位置関係と特定部位の施行者間のばらつきについて検討した.
     位置関係は,「クラークの点」を基準にしたとき,「四分三分法の点」はより背側に,「ホッホシュテッターの部位」はより尾側に分布していた.「四分三分法の点」は特定部位が最も背側に分布しており,施行者によって腹側.背側のばらつきが大きいため,坐骨神経の分布域に近づく危険性がある.「ホッホシュテッターの部位」は施行者の手掌の大きさによって頭側~尾側にばらつきやすい傾向が認められた.
     「クラークの点」は施行者間のばらつきが少なく,腹側に分布するため神経 ・ 血管損傷の危険性が少ないと考えられる.しかし,特定上の困難さがあげられているため,より簡便に特定できる方法を考案していくことが検討課題である.
研究報告
  • 中田 弘子, 小林 宏光, 川島 和代
    2011 年 10 巻 2 号 p. 14-22
    発行日: 2011/08/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     全国の療養型病棟における拘縮手の清潔ケアの実態を明らかにするため,ランダムサンプリングした 987施設に対し質問紙調査を実施した.回収は 590病棟分 (回収率59.8%) であった.入浴回数は週2回が約7割であり,手浴が定期的に実施されている病棟は約6割であった.ハンドロールはほとんどの病棟で使用されていた.ハンドロールの使用目的は指間 ・ 手掌の汚染防止,湿潤防止,防臭,爪の手掌へのくい込み防止が約7割であった.ハンドロールに用いる消臭材では緑茶葉が最も多かった.ハンドロールを使い捨てにしている病棟は1割程度であり,多くは職員により再生されていた.ハンドロールを毎日交換している病棟は4割程度であった.拘縮手の清潔ケアに改善が必要な問題点では,十分な頻度で手浴ができない,洗面器では洗いにくい,拘縮手に合うハンドロールがないなどの記載が多かった.今後の課題として,ハンドロールの清潔保持の効果の検証と拘縮手の特性を考えたハンドロールの使用方法の検討が必要である.
  • : 生理機能と主観的評価に与える影響
    吉永 尚紀, 藤田 水穂, 田中 裕二
    2011 年 10 巻 2 号 p. 23-29
    発行日: 2011/08/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     対象者に良質な睡眠をもたらすことは看護師の基本的な役割とされている.しかしながら,就寝時の照明環境に対する嗜好の個人差と睡眠の関係については明らかになっていない.このことは,対象者との接触時間がもっとも長く,さまざまな日常生活場面にかかわる医療職といわれる看護師にとって,入眠時の環境調整を行うにあたり必須のエビデンスと考えられる.本研究では,入眠時照度に対する嗜好の個人差が,脳波と心拍変動を指標とした生理機能と,質問紙を用いた主観的評価に与える影響について実験室的検証を行った.その結果,好みの入眠時照度であると,より早い段階で睡眠が深くなること,副交感神経活動が増加しやすいこと,そして主観的にも眠りやすいと評価されることが明らかになり,入眠時に環境調整を行う際の基礎的知見が得られた.
  • 箕輪 千佳, 小板橋 喜久代
    2011 年 10 巻 2 号 p. 30-39
    発行日: 2011/08/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,周術期にある患者に自律訓練法を用い,不安と疼痛への影響について,生理的指標と主観的指標により検討することである.
     乳がんの手術を受ける 16名を,自律訓練法を行う群 (n=8) と対照群 (n=8) に振り分けた.評価指標として心拍変動 (heart rate variability : HRV),心拍数,血圧,状態 ・ 特性不安尺度 (State ‐Trait Anxiety Inventory : STAI),痛みの視覚的アナログ尺度 (Visual analogue scale : VAS) を用い,術後 18時間の鎮痛剤使用回数,内省報告を参考とした.介入群は,背景公式と標準練習第一公式までを3分間行い,対照群はその間閉眼安静とした.手術前日と術後3日間,介入の前後で比較した.
     HRVの高周波成分 (high frequency components : HF) の変化率は,術後1日目(p=0.046),と3日目 (p=0.021) において,対照群より介入群が有意に増加し,LF (low frequency components ) /HFの変化率および収縮期血圧および心拍数は有意差が認められなかった.
     術後1日目の STAI状態不安に交互作用が認められ ( F ( 1,14) =5.675,p=0.032)対照群より介入群が有意に低下し,術後2日目は介入前後で介入群に主効果が認められ(F (1,14) =4.99,p=0.042),介入群では中等度の不安度になった.痛みの VASは術後3日間,介入群が介入前から継続して低かった.内省報告では,全員がリラックス反応とみられる状態になったことを報告した.術後 18時間の鎮痛剤使用回数に有意差は認められなかった (p=0.060).
     自律訓練法は,術後患者の副交感神経活動を亢進させ,不安と痛みを緩和する可能性があることが示唆された.
短報
  • 能登 裕子, 齋藤 誠二, 村木 里志
    2011 年 10 巻 2 号 p. 40-46
    発行日: 2011/08/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     本研究では,著者らが先行研究において提案した歩幅を操作指標として用いた車いす発進 ・ 停止操作方法の有効性について検討した.若年女性 10名を介助者,若年男性 10名を乗車者とし,発進 ・ 停止とも自由な加減速操作,介助者が任意の考慮により乗り心地を意識した操作,歩幅を用いた操作を行わせた.乗車者の乗り心地に関する主観評価と車いすの走行軌跡の測定を行った.歩幅を用いた操作方法は特に停止において,自由な操作よりも主観評価が高くなり,任意に乗り心地を意識した操作と同等の乗り心地を示した.さらに,歩幅を用いた操作は自由に減速した場合とほぼ同様の走行特性を示し,任意に乗り心地を意識した場合より減速に要した時間が短くなった.そのため,著者らが提案した歩幅を操作指標とした発進 ・ 停止方法は,特に乗り心地への影響が大きい停止操作において,介助者が任意にて乗り心地を考慮した場合と同程度の乗り心地が得られ,所要時間が短い効率のよい操作が行える可能性が示された.
特別寄稿
  • 第2報─看護実践報告の文献検討の結果から─
    佐竹 澄子, 大久保 暢子, 牛山 杏子, 鈴木 恵理, 小板橋 喜久代
    2011 年 10 巻 2 号 p. 47-56
    発行日: 2011/08/20
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     日本看護技術学会技術成果検討委員会の一組織であるポジショニング班では,看護職が行うポジショニング技術を既存の研究成果と臨床知から言語化し,臨床看護師に広く公表していく活動をしている.前号では,既存の看護学,理学療法学の教科書および参考書の文献検討から得られた看護におけるポジショニングの定義について報告した.今回は,看護職が行うポジショニングの重要性を探求すべく,ポジショニングに関する臨床看護師の実践報告を対象とし,ポジショニング時の「用具」について,用具考案に至った経緯,考案の内容を文献検討した.医学中央雑誌 (1999~2009年) で,ポジショニングに関連する用語について検索した 2,198件のうち,患者に対して技術を提供しており,入手可能でポジショニング技術を論じている文献を 91件抽出,これらのなかから「用具」の考案に関する文献の 36件を研究対象とした.結果,ポジショニング技術は,看護師にとって比較的身体的な負担が大きい技術であり,そのために看護師は自らの代わりとなる「用具」を考案し活用し,看護師は一人一人の「技」を磨くだけでなく「用具」を使うことによってその技術を高めようとしていること,患者の生活をよりよくしたいという看護師の思いから「用具」が考案されていることなどが明らかとなった.
     上記の結果を踏まえて,看護におけるポジショニングを明確化するとともに,看護職が誇りをもって行っている技術として広めていく必要があるといえる.
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