NEUROINFECTION
Online ISSN : 2435-2225
Print ISSN : 1348-2718
最新号
日本神経感染症学会
選択された号の論文の35件中1~35を表示しています
大会長の挨拶
会長講演
特別講演
  • 青木 眞
    2025 年30 巻1 号 p. 7-8
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    感染症診療においては問題臓器、原因微生物の検討に基づいた感染症治療薬の使用が大切であり、治療効果判定にあたっては問題臓器に特異的な指標を用いることが重要である。

  • 大場 洋
    2025 年30 巻1 号 p. 9-19
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、世界中で医療および公衆衛生の枠組みを大きく変えた。COVID-19に関連した脳症が多数報告されるなか、ウイルス性脳炎や神経梅毒の増加も観察されている。また、地球温暖化により亜熱帯域での感染症の増加も懸念されている。神経感染症の原因となる病原体は細菌、真菌、原虫・寄生虫、ウイルスなど多岐にわたり、画像所見は非特異的な髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、硬膜下蓄膿、感染性塞栓による脳血管障害、感染性脳動脈瘤などが一般的だが、比較的特異的な画像所見を示す感染症もある。本稿では、COVID-19を含む多様な疾患について、最新の画像所見を中心に解説する。特に新生児から高齢者までの年齢による病原体の違いや、近年急増している自己免疫性GFAPアストロサイトパチーなども取り上げる。

教育講演 「1日でわかる神経感染症の診療のコツ」
  • 菅 秀
    2025 年30 巻1 号 p. 20-25
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    インフルエンザ菌b型(Hib)および肺炎球菌は、小児における髄膜炎の代表的起因菌である。これらの細菌に対するワクチンは2011年に入り多くの自治体で公費助成による接種が可能になり、2013年より定期接種プログラムに導入された。ワクチン導入後にHibおよび肺炎球菌による侵襲性感染症の減少が明らかとなった。肺炎球菌の血清型解析では、ワクチンでカバーされない血清型の増加が示された。またB群溶連菌(GBS)による髄膜炎は減少していない。より幅広い血清型の肺炎球菌およびGBSに対応可能なワクチンの開発が待望される。細菌性髄膜炎では長期フォローアップも重要である。定期的な神経学的評価、医療的支援とリハビリテーション、家族への教育とサポートが必要とされる。

  • 岩田 育子
    2025 年30 巻1 号 p. 26-31
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー
  • 松浦 英治, 堂園 美佳, 野妻 智嗣, 高嶋 博
    2025 年30 巻1 号 p. 32-36
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    HTLV-1関連脊髄症(HAM/TSP)は、従来欧米で熱帯性痙性対麻痺と診断されていたが1986年にHTLV-1による脊髄炎であることが報告された。その臨床はいくつかの特徴を踏まえると比較的均質で神経診察で診断可能である。脊髄には炎症細胞がびまん性かつ広範囲に浸潤、長策路の脱髄所見も認めるが局所的所見に乏しい。臨床的にも筋力低下のない病初期から顕著な錐体路徴候を確認でき、遠位端優位の辺縁不明瞭な感覚障害、蓄尿・排尿機能の混在する排尿障害を認める。さらに、腸腰筋とハムストリングスの筋力低下が病初期から特徴的であり、これらの神経学的特徴を踏まえると多くのHAMが神経学的診察のみで診断可能であろう。

  • 佐藤 克也
    2025 年30 巻1 号 p. 37-41
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    プリオン病は、異常プリオンタンパク質が正常タンパク質の構造を変換し、神経系に不可逆的な変性を引き起こすきわめてまれな神経変性疾患群である。最新研究により、タンパク質の誤折りたたみによる細胞内ストレスや神経細胞のアポトーシス機序が解明されつつある。しかし根本的な治療法は確立されていないものの、分子生物学的知見に基づく新規治療アプローチが探索されている。診断においては、血清および髄液中の新規バイオマーカー、画像診断技術、遺伝子解析手法の革新的な発展により、従来よりも早期かつ正確な診断が可能となりつつある。2021年に提唱された新たな診断基準は、これらの最新技術を統合的に活用することを推奨している。

シンポジウム1「自己免疫性脳炎の疫学と疾患の広がり」
  • 〜2025年の現状と未来への道すじ〜
    河内 泉
    2025 年30 巻1 号 p. 42-47
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    自己免疫介在性脳炎・脳症(autoimmune encephalitis:AE)は、自己免疫学的背景を基盤に発症する脳炎・脳症の総称である。急性もしくは亜急性に、意識レベルの変容、精神症状、認知機能障害、けいれん発作、運動異常、中枢性低換気など、多彩な臨床症状を呈する。近年、NMDAR抗体、LGI1抗体などの新たな神経抗体が続々と発見され、AE診療にパラダイム・シフトが起こっている。本稿では、頻度の高い二大疾患 ①NMDA受容体抗体脳炎、②LGI1抗体脳炎を中心に据えながら、研究のアップデートを紹介し、世界とわが国においてAEの標準的な診療体制の構築・確立に向けた未来への道すじを示す。

  • ~自己免疫性小脳失調症を中心に~
    工藤 彰彦, 矢口 裕章, 藤井 信太朗, 野村 太一, 矢部 一郎
    2025 年30 巻1 号 p. 48-53
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    自己免疫性小脳失調症(autoimmune cerebellar ataxia:ACA)は免疫機序により小脳性運動失調を主症状として発症する疾患群の総称である。ACAの小脳性運動失調症に占める割合は5%程度とまれではあるが、治療可能な疾患であるので、つねに小脳性運動失調症の鑑別診断のなかに含めるべき疾患である。ACAの診断には亜急性に進行する臨床経過に加え、脳MRI、髄液検査、悪性腫瘍検索、抗神経抗体測定などの検査により総合的に診断する必要がある。他疾患を適切に除外することも重要で、鑑別疾患として多系統萎縮症などの脊髄小脳変性症の他、クロイツフェルト・ヤコブ病や進行性多巣性白質脳症などの神経感染症があげられる。

シンポジウム2「急性弛緩性麻痺 (AFP) と病原体」
シンポジウム3「神経感染症としての水痘帯状疱疹ウイルスの疾病負荷」
  • 定岡 知彦
    2025 年30 巻1 号 p. 66-71
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    水痘帯状疱疹ウイルスは、ヒトにおいてのみ感染環を成立させるヒトヘルペスウイルスであり、その感染環をすべて模倣できる動物モデルは存在しない。ヒト組織移植重症複合免疫不全マウスのような感染動物モデルでは、移植したヒト皮膚組織への直接的な感染による感染増殖評価、あるいはヒト皮膚移植マウスへの感染ヒトT細胞移入による移植皮膚への血行性ウイルス感染評価がなされ、病原性発揮の感染相である溶解感染メカニズムの解明に寄与してきた。一方、潜伏感染モデルを目指したヒト脊髄後根神経節移植マウスモデルでは、そもそもヒト神経細胞における潜伏感染を定義するウイルス遺伝子発現パターンが不明であり、さらには再活性化も誘導できないことより「潜伏感染」モデルとはいいがたく、潜伏感染・再活性化のメカニズムは不明なままであった。現実社会における、初感染・再活性化ともに予防可能な弱毒生ワクチンと、より効果的に再活性化予防可能なリコンビナントワクチンの存在は、ウイルス感染による疾病負荷を下げながら、接種者間あるいは接種・非接種者間の大規模な疫学的比較を可能とする非常にユニークな機会を提供し、ウイルス再活性化と脳梗塞や認知症といった病態発症との関連性をいままさに明らかにしつつあるが、その発症メカニズムは不明である。本稿では、水痘帯状疱疹ウイルス潜伏感染研究の経過をたどり、ウイルスが潜伏感染するヒト遺体由来三叉神経節サンプルにおける水痘帯状疱疹ウイルス潜伏感染遺伝子の発見と、ヒト多能性幹細胞由来神経細胞による in vitro 潜伏感染モデル確立から明らかとなった、潜伏感染・再活性化のメカニズムを概説する。

  • 渡辺 大輔
    2025 年30 巻1 号 p. 72-76
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化で生じ、高齢者や免疫抑制状態で発症率が増加する。帯状疱疹は皮膚病変のみならず、中枢神経系や血管系に合併症を起こし、帯状疱疹関連痛(ZAP)はQOLを大きく損なう。治療は急性期には抗ヘルペスウイルス薬と鎮痛薬が基本であり、慢性期には神経障害性疼痛対策が必要である。近年、帯状疱疹が脳血管障害や心血管障害など全身合併症とも関連する可能性が指摘され、ワクチン予防意義が注目されている。予防として、生ワクチンとサブユニットワクチンの2種類があり、定期接種化でさらなる発症予防と重症化抑制が期待される。

  • 秋山 久尚
    2025 年30 巻1 号 p. 77-83
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)は初感染後に神経節に潜伏感染し、免疫能低下時に再活性化し VZV vasculopathy を呈する。VZV vasculopathy は40歳未満、眼部 VZV 感染に好発し、皮疹の出現初期から1年後の慢性期までに発症しやすいが、無疹例もあり注意が必要である。病因は血管壁への VZV 直接感染が示唆され、大血管、小血管の両者を障害し、皮質と皮質下との境界領域に多発性病変を形成する。診断は脳脊髄液中の抗 VZV-IgG 抗体、VZV-DNA PCR 陽性が有用で、治療はアシクロビルとステロイドの併用が推奨されるが、抗血栓薬の使用は結論が得られていない。

シンポジウム4「小児の急性脳症の診療最前線」
シンポジウム5「神経感染症の診断 Up-to-Date」
  • 好井 健太朗
    2025 年30 巻1 号 p. 96-101
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    ダニ媒介性脳炎(TBE)はマダニの吸血により罹患し重篤な症状を呈するウイルス性人獣共通感染症であり、ユーラシア大陸の広域で年間1万人以上の患者が発生している。日本では、1993年に北海道において、国内初のTBE確定診断症例が報告され、その後、2025年1月まで7名の患者が発生し、うち2名は死亡している。われわれは、原因となるTBEウイルスは全国的に分布している可能性を示してきており、また、過去にも診断にいたらなかったTBE症例があったことを疫学研究により明らかにしている。本稿では、TBEVの一般的な情報とともに、われわれが行ってきたTBEに関する最新の研究知見を紹介する。

シンポジウム6「神経疾患領域で使用されるバイオ製剤の感染症リスクと対策」
  • 雪竹 基弘
    2025 年30 巻1 号 p. 102-110
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    進行性多巣性白質脳症(PML)の現状と、薬剤関連PMLの最近の話題を論じた。PMLは以前より発生が増えており、背景疾患も多様化している。多発性硬化症(MS)における新規病態修飾療法はPMLの背景疾患ではないMSに、その薬剤が単剤でPMLを発生させることが重要である。MSではナタリズマブ、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル、シポニモドおよびOcrelizumabでPMLが発症している(ナタリズマブおよびフィンゴリモド関連PMLはわが国でも発生している)。薬剤関連PMLは病態修飾療法関連PMLという新たな要因が加わった。その他、多発性骨髄腫も複数の新規病態修飾療法関連PMLが発生しており紹介した。

  • 王子  聡
    2025 年30 巻1 号 p. 111-116
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    Satralizumab(STZ)はIL-6受容体阻害薬であり、視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder:NMOSD)の病態における過剰なIL-6の働きを阻害することにより再発予防に寄与する。一方でIL-6は生体内の免疫応答において中心的な役割を担うサイトカインであり、STZをはじめとするIL-6阻害薬を用いた治療において感染症リスク増加が懸念される。種々の疾患に対するIL-6阻害薬の感染症リスクについての報告を参照すると、NMOSD治療におけるSTZの感染症リスク、特に尿路感染症と関連するリスク因子として経口ステロイド量、Kurtzke総合障害度スケール>4があげられる。STZを用いたNMOSD治療において、これらのリスク因子を把握することが感染症リスク軽減に有用である可能性が考えられる。

  • 竹内 英之
    2025 年30 巻1 号 p. 117-123
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    免疫性神経疾患に対する治療の歴史は、感染症、血液疾患、血液系腫瘍、膠原病に対する治療の転用の歴史といえ、crudeな古典的免疫抑制治療から分子標的治療である抗体製剤へと治療の趨勢が変遷している。特に現在、液性免疫の主役を担うB細胞や形質細胞に対するバイオ製剤が席巻しており、高い治療効果を上げている。その一方で、B型肝炎、帯状疱疹などの寄生ウイルスの再活性化や、COVID-19パンデミック下で明らかとなった易感染性やワクチン不応といった、感染症への脆弱性が問題となっている。本稿では、抗CD19/CD20抗体製剤と感染症の問題に焦点をあてて概説する。

シンポジウム7「自己免疫性脳炎の病態と治療」
  • 田中 惠子
    2025 年30 巻1 号 p. 124-130
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    傍腫瘍性神経症候群(paraneoplastic neurologic syndrome:PNS)には、腫瘍と神経症候と自己抗体の間に一定の関連を有する複数の病型があり、腫瘍合併の確率が高い抗体(高リスク抗体)と病型(高リスク症候群)の組み合わせが示されている。頻度が高い病型は、辺縁系脳炎、急速進行性小脳失調症、脳脊髄炎、感覚ニューロパチー、腸管偽閉塞、Lambert-Eaton筋無力症候群などであり、合併腫瘍としては、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、乳癌、婦人科系癌(卵巣・子宮)、悪性胸腺腫、リンパ腫、神経内分泌腫瘍などが多い。神経症状の改善には、腫瘍の早期治療と免疫療法の併用が有効である。

  • 木村 暁夫
    2025 年30 巻1 号 p. 131-135
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    自己免疫性脳炎の治療は、エビデンスは確立していないが、免疫療法と傍腫瘍性の場合、腫瘍に対する治療が必要となる。免疫療法に関しては、いずれも保険適用外となるが、ステロイドパルス療法、大量免疫グロブリン静注療法(intravenous immunoglobulin therapy:IVIg)、血液浄化療法のいずれかを単独もしくは組み合わせて行うファーストライン免疫療法と、リツキシマブもしくはシクロフォスファミドのセカンドライン免疫療法が施行される。一般的にこれら免疫療法の反応性は、神経細胞表面抗原抗体陽性の自己免疫性脳炎では有効であるが、神経細胞内抗原抗体陽性の自己免疫性脳炎の場合、一部の例外をのぞきその効果は限定的である。

シンポジウム9「性感染症と神経感染症」
  • ~梅毒と先天梅毒
    川名 敬
    2025 年30 巻1 号 p. 136-141
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    2013年ごろから始まった梅毒の流行は、半世紀に一度の大流行期である。梅毒は近年、身近な感染症であり、積極的に梅毒抗体検査を行う必要がある。症状がない潜伏期も治療対象である。さらに、女性の梅毒患者数が増加したことに伴って、梅毒合併妊婦が増加し、母子感染(胎内感染)による先天梅毒も増加している。母子感染は後期梅毒でも起こりうる点が、性行為感染と異なる点である。先天梅毒の予防のためには、母体に適切なペニシリン剤治療が不可欠である。経口ペニシリン剤による母子感染予防効果は限界があり、最近国内でも使用できるようになったベンザチンペニシリンG筋注の妊婦への投与による母子感染予防が期待される。

  • 細川 隆史
    2025 年30 巻1 号 p. 142-147
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器に浅い潰瘍性または水疱性病変を形成する疾患である。初感染および再発があり、特に再発が高頻度に認められる。HSVは1型(HSV-1)と2型(HSV-2)の2つのサブタイプがあり、再発例のほとんどはHSV-2によるものである。HSV-2は、また、さまざまな神経感染症の原因となり得る。髄膜炎、脊髄炎を引き起こし、再発性無菌性髄膜炎であるMollaret髄膜炎や、無菌性髄膜炎に伴う仙髄神経根炎であるElsberg症候群の主要な病因ともされる。治療にはアシクロビルなどの抗ウイルス薬が使用され、脊髄炎ではステロイドの併用も検討される。

  • 山野 嘉久
    2025 年30 巻1 号 p. 148-153
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    ヒトT細胞白血病ウイルス(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)の感染者は日本に多く、先進国のなかでは唯一の高侵淫地域である。HTLV-1に感染した大多数は無症候で経過するが、約5%が成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL)を、約0.3%がHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1-associated myelopathy:HAM)を発症する。これらはいずれも重篤な疾患であり、現在のところ確立された根治療法は存在せず、感染予防がきわめて重要である。本稿では、HTLV-1の感染メカニズムと病態、特にHAMの発症機序に関する最近の知見を概説するとともに、母子感染、性行為感染、臓器移植による感染といった主要な感染経路に対する予防策の現状と課題を包括的に論じる。また、希少疾患であるHAMの診療と研究を支える全国レジストリの役割と、その成果についても紹介する。

シンポジウム10「基礎セッション企画:疲労と疼痛の基礎医学」
  • 小泉 修一
    2025 年30 巻1 号 p. 154-160
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    痛みは外傷や疾患を脳に伝える重要な警告シグナルであるが、不必要な痛みも存在する。神経障害性疼痛は、外傷やウイルス等により神経が強く傷害されることにより起こるが、最初の傷が治癒したあとにも痛みが続く慢性痛である。神経障害性疼痛の病因には不明点が多く、その治療法は確立されていない。今回、この病因に「グリア細胞」である「アストロサイト」が中心的な役割を果たしていることを明らかとした。末梢神経の傷害による強く長期的な痛みシグナルが脳に達すると、大脳皮質一次体性感覚野(S1)のアストロサイトが変化し、シナプス新生分子「トロンボスポンジン1(TSP-1)」産生、無秩序なシナプス新生が起こり、S1の神経ネットワークが変化してしまう。これにより、触覚を感知する「触覚回路」と痛みを感知する「痛覚回路」が誤接続して、軽く触った刺激が激痛として感じられる「アロディニア」が引き起こされることが明らかとなった。このように神経障害性疼痛の治療には、従来の神経細胞に特化した治療ではなく、アストロサイトへの介入戦略が必要であることが明らかとなった。

Original Article
症例報告
  • 德永 航, 野村 隆之介, 星野 愛, 松田 健剛, 渡邉 真太郎, 川口 忠恭, 青木 政子, 桃木 恵美子, 石井 和嘉子, 熊田 聡子 ...
    原稿種別: 症例報告
    2025 年30 巻1 号 p. 166-171
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー
    抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎は、先行感染後に精神症状や不随意運動を伴う脳神経症状で発症する自己免疫性脳炎である。先行症状がなく、繰り返す無熱性けいれんで発症した3歳女児例を経験した。入院18、13、6日前にけいれんし、発作間欠期は意識清明であった。脳波検査や頭部MRI検査で異常所見を認めなかった。入院2日前から精神症状や不随意運動があり、入院後の各種検査から自己免疫性脳炎の可能性を考えて治療を開始した。その後、髄液中抗NMDA受容体抗体が陽性と判明し、抗NMDA受容体脳炎と確定診断した。小児では発症経過にかかわらず、精神症状や不随意運動を伴う脳神経症状を認める場合には、抗NMDA受容体脳炎を念頭に早期治療を行う必要がある。
  • 田中 裕彬, 七浦 仁紀, 形岡 博史, 桐山 敬生, 中道 一生, 杉江 和馬
    原稿種別: 症例報告
    2025 年30 巻1 号 p. 172-177
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー
    80歳男性、発熱と意識障害で救急搬送された。単核球優位の髄液細胞増多と水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus、以下VZV)DNA PCR陽性を認めVZV脳炎と診断し、アシクロビル(Acyclovir、以下ACV)を投与開始した。入院8日目に発熱と意識障害悪化と頭痛の訴えがあり、再検した髄液検査でキサントクロミーを認め、頭部CTでくも膜下出血を認めた。VZV血管症によるくも膜下出血と診断し、ステロイドパルスを追加した。意識障害が改善し、回復期リハビリテーションを経て8ヵ月後に復職した。VZV血管症ではACV単剤よりもステロイド併用療法で神経予後が改善する可能性が報告されており、VZV脳炎患者ではVZV血管症の有無を評価してステロイド併用を考慮するべきである。
  • 熊谷 勇太, 髙橋 祐子, 三條 佑太, 丸子 真奈美, 関口 輝彦, 金澤 俊郎, 大久保 卓哉
    原稿種別: 症例報告
    2025 年30 巻1 号 p. 178-182
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/09/12
    ジャーナル フリー

    80歳男性、発熱と意識障害で救急搬送された。単核球優位の髄液細胞増多と水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus、以下VZV)DNA PCR陽性を認めVZV脳炎と診断し、アシクロビル(Acyclovir、以下ACV)を投与開始した。入院8日目に発熱と意識障害悪化と頭痛の訴えがあり、再検した髄液検査でキサントクロミーを認め、頭部CTでくも膜下出血を認めた。VZV血管症によるくも膜下出血と診断し、ステロイドパルスを追加した。意識障害が改善し、回復期リハビリテーションを経て8ヵ月後に復職した。VZV血管症ではACV単剤よりもステロイド併用療法で神経予後が改善する可能性が報告されており、VZV脳炎患者ではVZV血管症の有無を評価してステロイド併用を考慮するべきである。

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