周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第22回
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
序文
  • 戸苅 創
    p. 3
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     「日本周産期学会」は本回をもって新しく生まれ変わることとなった。すなわち,次回からは装いも新たに「日本周産期・新生児医学会周産期シンポジウム」と呼称される。そのまさに節目にあたる本会を名古屋の地で,449名という過去最大の参加者を得て開催できたことは主催者として大変光栄なことである。参加者が多かったのは,ひとえに常任幹事会の企画によるそのテーマにある。「母児の予後からみた娩出のタイミング」なるメインテーマのもとに,preterm PROMでのタイミング,絨毛膜羊膜炎でのタイミング,PVL発症からみたタイミング,一絨毛膜二羊膜双胎でのタイミング,双胎間輸血症候群でのタイミング,IUGRでのタイミング,等々,いずれも娩出のタイミングに特化したきわめて実際的な,まさに興味のつきない演題の連続で,周産期医療の第一線で活躍している臨床家のみならずこの領域の研究者にとっても,まさに眠る間もない一日であった思われる。加えて,オーストラリアMonash大学のAdrian Walker教授による“Cerebral circulation at birth in term and preterm infants”なる特別講演も,種々の状況下で出生を余儀なくされた低出生体重児の脳循環に関する最新知見であり,多くの参加者が食い入るように拝聴していたのが印象的であった。

     かくして,本会が歴史的な会になったのも,本シンポジウムを企画していただいた日本周産期学会常任幹事会各位,座長,シンポジスト各位,さらには学会運営に携わった関係諸氏のお陰であり,ここに深甚の謝意を表したい。また,これまで本会の貴重な学術集会としての知見を「周産期学シンポジウム」として継続して雑誌にまとめ,現在活躍中の医師のみならず後世に渡って周産期医療を志す若い医師達に提供することで多大な貢献を惜しまなかったメジカルビュー社の原鎮夫氏,清沢まや氏に衷心より感謝の意を表したい。

シンポジウム午前の部
  • 酒井 正利, 佐々木 泰, 渡邊 弘道, 米田 哲, 塩崎 有宏, 吉田 丈俊, 二谷 武, 宮脇 利男, 斎藤 滋
    p. 11-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     preterm PROM(pPROM)は早産原因の約30%を占めている。また,pPROMは子宮内胎児炎症や,脳室周囲白室軟化症,慢性肺疾患の原因となり,新生児予後に深く関与しているが1),いまだ明確な管理方針が定まっていない。妊娠32週未満のpPROMの管理として重要なことは,胎児成熟のために妊娠期間の延長を図る一方で,子宮内炎症がある場合は,早期に児を娩出しなければfetal inflammatory response syndrome(FIRS)をきたし予後不良となることから,児の娩出のタイミングは非常に難しい。すなわち,妊娠32週未満のpPROMでは単に妊娠期間を延長させるのではなく,いかにFIRS発症のリスク症例を抽出し早期に児を娩出させるかが重要と考えられる。

     今回我々は,まず新生児予後からみたpPROMにおけるリスク因子の抽出を後方視的に行い,次にそのリスク因子である羊水過少例に対して積極的に産科的介入を行うことにより,新生児予後が改善されるかにつき前方視的検討を行った。

  • ―母体臨床所見および母体検体(羊水,血液)からの新生児感染症,新生児予後の予測―
    中田 高公, 小塚 良哲, 今福 紀章, 田中 勝彦, 田中 幸子, 長尾 昌二, 石川 博康, 小池 浩文, 多田 克彦, 藤原 恵一, ...
    p. 19-28
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     かつては早産・前期破水の多くは原因不明であったが,近年,腟炎,頸管炎が上行性に子宮内に波及し絨毛膜羊膜炎(CAM)をきたし,炎症反応によりプロスタグランジン(PG)が産生され早産に至ると考えられている。感染により,脱落膜中のマクロファージを代表とする免疫担当細胞が活性化するとさまざまなサイトカインが産生されるが,初期の段階ではIL-1やTNFαが産生され,これらはcyclooxigenase II(COX-2)を誘導しPGの産出を促すだけでなく,パラクリン・オートクリン的にIL-6やIL-8といった他のサイトカインの産出をも促す1)。すなわち,CAMは当然のことながら,サイトカインによって引き起こされる炎症が早産に原因として重要であることが判明してきた。

     また,最近敗血症と同様の病態を示しながらも感染や起炎菌が同定されない病態をsystemic inflammatory response syndrome(SIRS)と称するようになり2),さらにDudleyらは,病理学的にCAMと診断されながらも羊水中や子宮内に病原体が検出されない病態を同様のものと考えintrauterine inflammatory response syndrome(IUIRS)とよぶことを提唱している3)。その具体的な基準は臨床的子宮内感染症状(38.0℃以上の発熱,子宮圧痛,白血球数20,000/mm3以上,羊水や帯下の悪臭)以外に羊水中糖濃度15mg/dl未満,羊水中IL-6値11.3ng/ml以上であると規定している。

     こうした流れの中で,近年,羊水中のサイトカインなどの炎症マーカーを測定することによりCAMを早期診断しようとする多くの研究が報告されてきた4)。こういった報告からも羊水中のサイトカインがCAMのマーカーとなりうることは明らかとなったが,それでは胎児感染のマーカーとしてはどうであろうか。これについても,Gomezらが胎児の高サイトカイン血症(IL-6>11pg/ml)をfetal inflammatory response syndrome(FIRS)と定義し,FIRSと診断された症例のうち,新生児期の重篤な疾病(RDS, 敗血症,肺炎,BPD, IVH, PVL, NEC)が77.7%と高頻度に認められたと報告している5)

     今回我々も羊水中サイトカイン濃度や臍帯血サイトカイン濃度と新生児期の重篤な罹病との関係を検討することにより,これらの情報が胎児感染のマーカーとなりうるか,ひいては娩出のタイミングを決定する一助になるかどうかについて検討した。

  • 平野 秀人
    p. 31-38
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     緒言

     絨毛膜羊膜炎(chorioamnionitis:CAM)は早産の原因となるばかりでなく,児の感染や全身性炎症反応(fetal inflammatory response syndrome:FIRS)による臓器・脳障害など,生命予後や神経学的後遺症と密接な関係を有している1)。したがってCAMによる切迫早産の場合,単に妊娠の維持に努めるだけでなく,ときには児の予後向上のため,むしろ早期に適切な分娩のタイミングを判断する必要があるといえる。

     本稿ではCAMにおける新生児感染や炎症に起因する疾患の発生状況について検討し,CAMの診断マーカーを用いた適切な分娩のタイミングに関する判断基準について述べる。

  • 松田 直, 奥山 和彦, 上田 恵子, 岡嶋 覚, 長 和俊, 片岡 宙門, 古林 与志安
    p. 39-47
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     慢性肺疾患(Chronic lung disease, 以下CLD)が低出生体重児の長期予後に重大な影響を与えていることには他に論を待たないが,低出生体重児の大多数においてCLDは自然軽快することもまた臨床の現場ではよく知られている1)。同様に,出生前に子宮内炎症を合併するCLD III型は死亡率10%であり最も予後不良とされているが2),子宮内炎症を合併した胎児では生化学的な肺成熟が促進されるため呼吸窮迫症候群(Respiratory distress syndrome, 以下RDS)の合併が少ないことも古くからよく知られている3)。したがって,子宮内炎症合併早産における娩出のタイミングを考えるうえで問題としなければならないのは低出生体重児の長期予後に影響を与えるような重症CLD III型を発症する危険性であろう。我々が今最も知りたいのはどのような特徴をもった子宮内炎症がCLDを重症化させるのかということである。

     我々はすでに第16回本シンポジウムにおいて,出生前に壊死性臍帯炎を合併する低出生体重児では臍帯血中の好中球数が著しく増加し,高率にCLDを発症して重症化することを報告した4)。この結果に基づき,本研究ではヒツジ胎仔の慢性実験系を用いて胎生期の好中球数増加とその活性化が出生後の肺損傷に与える影響を解析した。一方,赤ちゃんの肺に優しい人工換気(nasal DPAP, HFOなど)と人工肺サーファクタント補充療法の発展に伴い,CLDの病態像は1967年にNorthwayが報告し1979年のNIH workshopで定義された気管支肺異形成(Bronchopulmonary dysplasia, BPD)とは異なり5, 6),fewer and larger alveoliを主徴とする‘new BPD’の概念に移行しつつある7, 8)。この点を踏まえて,本研究では肺病変の組織病理学的解析にmorphometory analysisを導入し9),ヒツジ未熟仔の肺損傷におけるalveolarizationについても考察した。

  • 加藤 英二, 茨 聡, 丸山 有子, 丸山 英樹, 下野 隆一, 熊澤 一真, 徳久 琢也, 楠元 雅寛, 松井 貴子, 丸古 慶子, 谷口 ...
    p. 49-57
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     脳室周囲白質軟化症(periventricular leukomalasia; PVL)は,未熟児における脳性麻痺の重要な原因の一つであり,脳性麻痺の減少のためには,PVLの発症予防は,重要な課題となっている。

     PVLの発症素因については,脳室周囲白質を還流する血管の発育が悪く,虚血に陥りやすいという解剖学的特徴1, 2),大脳白質部の代謝が活発であり,障害を受けやすいという大脳白質の脆弱性3),体血圧低下で容易に脳血流量の減少をきたすという脳血流自動調節能の未熟性が関連している4)

     またPVLの発症は,以前から胎児期,分娩周辺期発症が注目されており,原因として脳血流を障害する因子と細胞障害因子の関与が考えられている。脳血流を障害する因子として,心拍出量の低下,体血管抵抗の低下などによる脳灌流圧の低下と,低CO2血症による脳血管抵抗の上昇によるものがあり,それに引き続く脳血流の低下,虚血がPVL発症に関与している。細胞障害因子として,エンドトキシン,興奮性アミノ酸,サイトカイン,フリーラディカルなどが関与している5, 6)

     平成7年茨らは,fetal heart rate (FHR) monitoring所見とcystic PVL発症の関係(図1)で,severe variable deceleration, prolonged decelerationが,PVLの発症に強く関与していると報告し5, 6), 当センターでは,胎児徐脈発生予防を目指した妊娠分娩管理を行ってきた。今回,我々は,PVL発症因子の再検討と,当センターが行ってきた妊娠分娩管理によるPVL発症頻度を評価し,PVL発症予防を目的とした児娩出のタイミングを考察した。

  • 福田 純男, 桑原 里美, 安田 真里, 加藤 丈典, 加藤 稲子, 側島 久典, 藤本 伸治, 戸苅 創
    p. 59-65
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     緒言

     脳室周囲白質軟化症(PVL)は早産にて出生した低出生体重児に発症し,後に脳性麻痺,特に痙性両麻痺,痙性四肢麻痺の原因となることが多いため,その病態と発症時期の解明や予防は臨床上重要な課題である1)。また最近では,脳性麻痺だけでなく,てんかんや視力障害,精神発達遅滞との関係も指摘されている2)。従来,PVLは脳動脈の分布境界領域での虚血がその原因と考えられてきたが,最近のMRIによる検討では脳全体に及ぶ病変であることが示唆されるようになった3)。今回我々は低出生体重児において後大脳動脈という側脳室三角部に血液を供給する血管の平均血流速度を測定するとともに,同時に他の各脳動脈においても血流速度を測定し,得られた結果について正常例とPVL例とを比較検討した。その結果よりPVLの病態やその発症時期について考察した。

  • 斎藤 滋, 岡村 州博
    p. 67-69
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     産科医療,新生児科医療の進歩とともに,周産期医療に携わる医師,コメディカルスタッフの献身的な努力により,わが国の周産期死亡率は世界一の低率を保っている。このことは世界に誇るべきことではあるが,同時に陰の部分としてなんらかの障害を持つ子供達も存在する。従来は,児の生存を確保するために妊娠期間を延長することが必須であったが,新生児医療のめざましい進歩のおかげで,児の予後向上のため,早期に適切な分娩を行うことも1つの選択肢となってきている。現在の周産期医療は児の救命を第一に考えていた時代から,intact survivalをめざした医療へと変化しつつある。しかし,いまだ早産児娩出に関する明確な工ビデンスは確立しておらず,多くの周産期医は児の娩出のタイミングに苦慮されていることでありましょう。

     今回,周産期学会としては最後となるシンポジウムで「母児の予後からみた娩出のタイミング」を議論することは,タイムリーな企画であり,周産期学会常任幹事,幹事の先生方をはじめ,学術集会長の戸苅創教授に感謝を申し上げます。以下に5名のシンポジストと1名の関連演題から得られた結論を簡単にまとめたが,詳細は各論文を参考にしていただきたい。

シンポジウム午後の部
  • MD-Twin Scoreの有用性に関する前方視的研究
    金子 政時, 鮫島 浩, 池田 智明, 池ノ上 克
    p. 73-80
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     背景

     周産期予後

     近年の周産期医療の向上にもかかわらず,一絨毛膜二羊膜性双胎(MD双胎)の周産期死亡率は30~40と高い。二絨毛膜二羊膜性双胎(DD双胎)と比較しても周産期死亡率は2~3倍高く1),その原因の一つに,胎盤血管吻合に基づくMD双胎特有の病態があると考えられる。

     我々は,1991年から1996年の期間に,膜性別にみた双胎妊娠の予後を後方視的に検討した。その結果を図1に示す2)。対象は妊娠26週以降に分娩となった症例で致死的奇形は除外されている。妊娠・分娩時期の管理は単胎妊娠と同様の管理を行った。この検討結果からも,DD双胎に比較してMD双胎の予後が明らかに悪いことがわかる。さらに,予後を詳細に検討すると,DD双胎では妊娠36週で第1子娩出後に常位胎盤早期剥離が起こり,第2子に神経学的後遺症を残した症例が1組あるのみであった。一方MD双胎では,妊娠26週から36週までのいかなる妊娠時期においても予後不良例が発生しており,特に妊娠32週未満で著明であった。

  • 市塚 清健, 松岡 隆, 大槻 克文, 長谷川 潤一, 白土 なほ子, 関沢 明彦, 岡井 崇
    p. 81-89
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     概要

     一絨毛膜性双胎(以下MD twin)において各種心機能を計測し,新生児の予後から,前方視的にどの指標が分娩のタイミングをみるうえで有効かを知ることを目的に本研究を行った。対象は当科で管理したMD twin(2001年3月~2002年10月)14組28症例である。心機能の評価としてAoVmax, PLI, CTAR, Tei indexを経時的に計測した。併せてUARI, MCARI, NST, 羊水量,推定児体重も計測した。本研究期間における分娩のタイミングはTTTSの発症とした。TTTS群とnon-TTTS群に分類し,それぞれの群における各計測値を解析した。合併症のない正常単胎胎児40例(妊娠22週から37週)よりTei indexの正常値を得た。TTTS recipient fetusにおけるAoVmax, PLI, CTARは妊娠経過中その値はほぼ正常範囲内であったが,両心室Tei indexはTTTS発症以前から高値を示し,妊娠経過とともに増加傾向を示し,TTTS発症時には正常域を大きく逸脱していた。一方,分娩直前のTei indexはTTTS群recipient fetusでコントロールに比べ有意に高値を示した。donor fetusおよびnonTTTS群とコントロール群間で差は認められなかった。新生児カテコラミン投与例は7例存在し,そのTei indexは非使用症例に比べ高値であった。以上の成績から心室の収縮・拡張能の指標であるTei indexの上昇はMD twinにおけるTTTS発症の予知情報であり,また新生児心機能の予後との関連も示され,Tei indexはMD twin分娩のタイミングを決定するための重要な指標になりうる可能性が示唆された。

  • 加地 剛, 平吹 信弥, 橋本 洋之, 濱中 拓郎, 大平 裕己, 渡場 孝弥, 吉野 潔, 橋本 一昌, 門脇 浩三, 末原 則幸
    p. 91-100
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     目的

     双胎間輸血症候群(TTTS)は,一絨毛膜性双胎(MD双胎)において胎盤の吻合血管を介し循環血液量の不均衡が生じることにより発症する。受血児はhypervolemicとなり多血症,羊水過多,心不全,胎児水腫を呈し,一方供血児はhypovolemiaとなり貧血,乏尿,羊水過少,腎不全とそれぞれの児が特有の症状を呈し,また経過中急激な変化を起こすことも多く,娩出のタイミングを逸さないことが重要である。今回,児の予後および受血児心機能からTTTSのより望ましい娩出のタイミングを知ることを目的とした。

  • 望月 純子, 天野 完
    p. 101-107
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     子宮内胎児発育遅延(IUGR)で,児の未熟性が問題となるpretermの時期に,胎児適応でいつ娩出すべきかについてのコンセンサスは必ずしも得られていない。胎外生活のリスクが高い時期には,胎児ジストレス(non-reassuring fetal status, 以下NRFS)のより精度の高い診断法が求められる。一般的な方法として,胎児心拍数陣痛図(CTG)が,広く用いられているが,未熟な児の場合には評価の基準が成熟児と異なることや,acidosisの予測でfalse-positive rateが高いことなどが問題になる。Biophysical profile score(BPS)も,児の成熟に伴う変動がみられ未熟な時期の評価は明確ではない。臍帯穿刺による胎児血分析(percutaneous umbilical blood sampling, PUBS)は,hypoxemiaやacidemiaの状態を知るよい指標であるが,リスクが少なくないのが難点である。超音波ドプラ法による血流計測は,IUGRの血行動態の把握に有用であるが,児の長期予後を含めた検討がまだ十分になされていない。

     今回,CTG所見とPUBSによりNRFSと診断し帝王切開を施行した24~33週の症例を対象に,pretermのNRFSの診断と対応について後方視的検討を加えた。

  • ―胎児心拍陣痛図,超音波所見,胎児血pHの関係および妊娠週数による信頼性についての検討―
    宮下 進, 千葉 喜英
    p. 109-119
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     背景

     胎児心拍モニタリングを主体とした胎児well-beingの臨床的評価方法は,おおむね妊娠32週以降では確立されており,この時期の子宮内発育遅延(IUGR)児をはじめとするハイリスク児の管理は困難ではない。しかし,これらnear termの症例とは異なり,早期に指摘されたIUGR児に対しては,胎児心拍陣痛図や超音波血流計測による胎児アシドーシスの推定について限界があることが指摘されてきた1)。例えば,well-being fetusにおけるnon-stress test(NST)上の一過性頻脈や基線細変動は,妊娠32週未満では週数が若くなるほど出現率が低下するため,NSTのみの評価では胎児アシドーシス診断のsensitivityが低くfalse positiveが多くなるため信頼性に乏しい2)。このような時期のヒトIUGR児における胎児心拍陣痛図所見とwell-beingの関連については,なお未解決の問題であり,32週以降のnear term IUGR児についての議論をそのまま適応するのは妥当ではない。

     超音波ドプラ法を用いた臍帯動脈,臍帯静脈,中大脳動脈,下大静脈などの胎児血流計測とfetal well-beingとの関連についても,最近の諸研究によりある程度明確になってきた。パルスドプラ波形(FFTエンベロープ波形)のResistance index(RI), Pulsatility index(PI), Preload index(PLI)等のパラメータによる評価が行われるようになり,妊娠週数による各正常値も報告された3)。計測は容易になったものの,実際にこれをどのように臨床で運用するのかについては,検討が不足している。正常発育児も含めて(形態異常の児を除く),現在,コンセンサスを得つつある事象として,

     ・胎盤機能低下に伴う慢性低酸素では,臍帯動脈RI, PIが正常例より上昇する4~6)

     ・臍帯動脈拡張期血流の途絶・逆流は低酸素/アシドーシスの存在を示唆する7, 8)

     ・臍帯動脈RI, PIの経時的上昇は,慢性低酸素/アシドーシスの進行を示唆する9, 10)

     ・中大脳動脈RI, PIは,慢性低酸素/アシドーシスによる血流再分配機構が作動している場合低下する11, 12)

     ・中大脳動脈RI, PIと臍帯動脈RI, PIの比は,血流再分配機構(いわゆるbrain-sparing effect)が作動している場合には低値となる13~16)

     ・慢性低酸素/アシドーシスでは下大静脈PLIの上昇,臍帯静脈や静脈管血流のpulsation増強がみられる17~19)

     などが挙げられる。ただし,これらは胎児アシドーシスの評価法に問題があったり,妊娠週数が考慮されていないなど,結局は今回問題とする32週未満では,娩出時期決定について実際には参考程度にしかならない。

  • 丸山 有子, 茨 聡, 加藤 博美, 下野 隆一, 丸山 英樹, 加藤 英二, 熊澤 一真, 徳久 琢也, 前出 喜信, 上野 健太郎, 山 ...
    p. 121-128
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     はじめに

     従来より,出生体重が標準体重の10パーセンタイル未満の児は,周産期死亡率・罹病率が高いといわれてきた。近年のME機器の発達のため,子宮内発育制限(IUGR)の診断には格段の進歩がみられているが,その病態生理については十分解明できているとはいえない。そのため,IUGRの管理方針には確立されたものはなく,IUGRの予後もいまだ満足できるものではない。IUGRの周産期管理における現在の課題として,出生前の管理方針を確立することは急務であり,現在,各周産期医療施設で検討中である。

     当センターでは,第7回の周産期学会シンポジウムにおいて,頭囲発育障害と神経学的異常の発生との間の強い相関を示し,IUGRの産科管理においては,胎児の頭囲発育を注意深く観察することが重要であると報告した。そして,それ以降は,頭囲発育を特に重視したIUGR管理を行ってきた。すなわち,胎児の頭囲発育が停止したと診断されたら,生存可能な在胎週数であれば,胎児心拍数モニタリングなどの他のパラメーターがまだ正常範囲内であっても,積極的に児を娩出させるというものである。

     一方,IUGR管理の基礎となるその病態生理についても研究が進められているが,IUGRの頭囲発育障害が病理学的にはどのようなものであるかについての知見は少なく,脳のどの部分が発育障害であるのかについてもよく知られてはいない。周産期管理を考えるうえでも,予後を予測するうえでも,今後重要視されると考えられる。

     本研究は,[I]頭囲発育停止を指標とした当センターのIUGR管理方針が,その予後にどのように影響しているかを知ること,および[II]IUGRの頭囲発育障害の病態を検討すること,を目的として行われた。

  • 茨 聡, 岡井 崇
    p. 129-130
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/07/29
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     このシンポジウムでは,娩出のタイミングを検討する妊娠合併症として,一絨毛膜性二羊膜性双胎(MD twin)と子宮内発育遅延(IUGR)を取り上げ,主として新生児の生命予後および神経学的予後の側面から娩出のタイミングに関して検討いただき,ご発表いただいた。

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