(1) トマトの根を混入した土壌にトマトの苗を植えると生育が阻害され,この時の根面には糸状菌の胞子や菌糸が多く観察された。しかし,蒸気消毒によって生育阻害は消去され根の表皮細胞には細菌が多くみられた。これらの結果から根部障害と微生物相には密接な関連があると考えられる。(2) 土壌中の糸状菌に対して細菌の多い土壌(B/F値の大きい)では糸状菌による病害の発生が少なく,B/F値によって根の状態が変り,細菌の多い土壌で根の障害が少なかった。(3) 立地条件が同じとき土壌中の細菌と糸状菌の構成比に関係する最も大きな要因は有機物の種類であり,牛ふん,堆肥,CDUなどは細菌を増加させ,稲ワラなどは糸状菌を増加させた。しかし,稲ワラも施用後の日時が経過することによって細菌が増加し,なたね粕などでは放線菌が増加した。(4) 細菌が根に直接どのような働きを示すか水耕実験で試した結果,初期生育を促進するばかりでなく,根の表皮細胞から分離した細菌はトマトの根を犯す糸状菌に抗菌作用を示し根の褐変を遅延させた。
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