Fusayium属菌の分類学的研究について,その歴史,体系による違い,日本での状況,近年の変革と最近の動きについて概説した。本属菌の分類体系はWollenweber・Reinkingによる集大成の後,Snyder・Hansenによる体系との対立状態という構図が長く続いた。Boothなど,両者の中間的な体系もその後派生し,日本にもそれら主要な体系が導入された。1983年に米国の学派がSnyder・Hansenの種概念を放棄したことによって,Fusarium属菌の分類体系はWollenweber・Reinkingに一旦は収斂しかけたが,形態学的種概念に対する生物学的種概念(交配群,菌糸融合群の解析)や分子系統学的種概念(DNA解析)の導入と研究の進展に伴い,分類体系の根幹からの再評価が実施される状況に至った。形態学的には種を細分化する勢いが加速し,識別される種数も急増中である。属と種の中間に位置する分類群であった節は多くが人為的であるとの理由から,改廃を含めた議論が始まっている。菌株の保存法に関しては,菌株の変質を避けるためPDA培養基の使用制限が求められる。形態学的形質の再評価に伴い,既存の用語法の問題点も指摘される。
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