ダイズ根粒菌にはBradyrhizobium 属のB. japonicum, B. elkanii, B. diazoefficiens,およびSinorhizobium(Ensifer)属のS. fredii が主なダイズ根粒菌として知られている。これらの根粒菌は環境に応じてその根粒占有率や土壌での優占化の度合いを異にしている。本シンポジウムでは16S–23S rRNA 遺伝子ITS領域の解析を基にした根粒菌群集構造について,緯度,土壌pH,塩類集積,酸化還元の環境因子の傾度による違いを纏めてみた。日本は南北に長い国土を有し,北から南へダイズ根粒菌群集の遷移が認められる。さらに,水田転換畑でB. diazoefficiensの高い根粒占有率が観察される。また,アルカリ性の塩類化土壌でS. fredii の高い根粒占有率が観察される。これらの現象は研究室レベルでの再現が可能であった。ダイズ根粒菌に関しては,環境因子の変動に応じた根粒占有率の変化や土壌での優占化が観察され,環境因子と根粒菌群集構造に密接な関連が認められる。近年,次世代シークエンサーによる群集解析が容易になり,特異的プライマーをデザインすることにより,土壌中のBradyrhizobium 属ダイズ根粒の群集構造解析が可能になってきた。さらなる根粒菌生態のデータ蓄積により,根粒菌群集構造のコントロールとダイズ生産性の向上を目標に研究の展開が期待される。
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