土と微生物
Online ISSN : 2189-6518
Print ISSN : 0912-2184
ISSN-L : 0912-2184
76 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 「土と土壌微生物研究のフロンティア」について
    染谷 信孝
    2022 年 76 巻 2 号 p. 35
    発行日: 2022/10/01
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
  • 南澤 究
    2022 年 76 巻 2 号 p. 36-42
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    人為的な温室効果ガス排出による地球温暖化について,最近のIPCC 報告書の警告と土壌から温室効果ガス(N2O, CH4, CO2)排出について色々な観点から概説した。土壌への微生物接種の歴史と生態系への影響評価に関する最新の研究動向についても紹介し,生態系への影響の再評価が必要であることを明らかにした。これらの背景の下,筆者が関わるムーンショット研究開発事業について大課題毎に概説し,全体のデータマネージメントと新たに開始した市民科学「地球冷却微生物を探せ」の取組みと意義についても説明を行った。
  • 佐伯 雄一
    2022 年 76 巻 2 号 p. 43-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ダイズ根粒菌にはBradyrhizobium 属のB. japonicum, B. elkanii, B. diazoefficiens,およびSinorhizobium(Ensifer)属のS. fredii が主なダイズ根粒菌として知られている。これらの根粒菌は環境に応じてその根粒占有率や土壌での優占化の度合いを異にしている。本シンポジウムでは16S–23S rRNA 遺伝子ITS領域の解析を基にした根粒菌群集構造について,緯度,土壌pH,塩類集積,酸化還元の環境因子の傾度による違いを纏めてみた。日本は南北に長い国土を有し,北から南へダイズ根粒菌群集の遷移が認められる。さらに,水田転換畑でB. diazoefficiensの高い根粒占有率が観察される。また,アルカリ性の塩類化土壌でS. fredii の高い根粒占有率が観察される。これらの現象は研究室レベルでの再現が可能であった。ダイズ根粒菌に関しては,環境因子の変動に応じた根粒占有率の変化や土壌での優占化が観察され,環境因子と根粒菌群集構造に密接な関連が認められる。近年,次世代シークエンサーによる群集解析が容易になり,特異的プライマーをデザインすることにより,土壌中のBradyrhizobium 属ダイズ根粒の群集構造解析が可能になってきた。さらなる根粒菌生態のデータ蓄積により,根粒菌群集構造のコントロールとダイズ生産性の向上を目標に研究の展開が期待される。
  • 九町 健一
    2022 年 76 巻 2 号 p. 49-58
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    Frankia は窒素固定能を持つ多細胞放線菌である。Frankiaは厚い外壁で覆われたベシクルと呼ばれる球状構造体を形成 することで,好気条件でも窒素固定を行うことができる。加えて,アクチノリザル植物と総称される8 科200 種以上の樹木に根粒を形成して共生する。我々の研究室では,Frankia特有のこれらの能力に関わる遺伝子を同定することを目的として,窒素固定能が欠損したFrankia の変異株を多数単離した。一部の変異株はベシクルをほとんど形成しなかった。また,球状構造の拡大や外壁の発達に著しい異常を示す変異株も存在した。相補実験により変異原因遺伝子を同定することを目指して,Frankia の形質転換法の確立に取り組んだが成功には至らなかった。そこで,二次的変異により窒素固定能が回復した細胞を単離し,そのゲノム配列を解析することで変異原因遺伝子を推定した。
  • 門馬 法明
    2022 年 76 巻 2 号 p. 59-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    土壌還元消毒法は,太陽熱土壌消毒法を発展させた技術で,土壌に有機物を投入し,潅水を行い,土壌表面を被覆した状態で2 ~ 3 週間ほど放置することで土壌中の病原菌密度が低減する。土壌還元消毒では土壌の還元化の過程で酢酸や酪酸などの有機酸やFe2+ やMn2+ などの金属イオン蓄積してくる。これらが病原菌の密度低減に関与していると考えられている。土壌還元消毒では,一般の土壌微生物群密度が処理前とほとんど変化することがないため,再汚染のリスクが低く抑えられることも大きな特徴となっている。日本で開発された土壌還元消毒法は今日までに日本国内に限らず,アメリカや中国などでも様々な工夫がなされ普及が拡大してきている。日本国内においては,低濃度エタノールをはじめ,糖蜜配合飼料や糖含有珪藻土などの製剤が用いられる場合と,米ぬかや小麦フスマなどが用いられる場合などさまざまである。土壌還元消毒は微生物の力に依存しているところが大きいため,特に低温条件下で効果が不安定になることがあり,使える地域や時期も限定される。この課題を解決することで,普及の拡大や新たな技術開発にもつながると考えている。
  • 唐澤 敏彦
    2022 年 76 巻 2 号 p. 63-67
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    土壌有機物は微生物の働きで徐々に分解されるため,農耕地土壌で生産性を維持するには,土壌への有機物補給(土づくり)が必要である。土壌に有機物を蓄積させる効果は,緑肥の種類によって異なることから,各種緑肥の有機物蓄積効果を,堆肥との比較で定量的に示した。緑肥による養分供給のうち,窒素については,マメ科緑肥の根粒菌による窒素固定や緑肥根による吸収を介した溶脱低減などの機能が役立つ。カリについても,緑肥導入によって表層の交換性カリが増え,カリ減肥に役立つことが示された。リン酸については,土壌中のリン酸循環機能に関わる微生物が緑肥の栽培やすき込みで増え,次の作物のリン酸減肥に役立つ可能性が示された。こうした緑肥の効果は,導入する緑肥作物の種類,すき込み時期,主作物を栽培するまでの腐熟期間などによって変わる可能性があり,これらを最適化した上で導入することが重要である。
  • 竹腰 恵, 池永 誠, 富濱 毅, 野口 勝憲, 境 雅夫
    2022 年 76 巻 2 号 p. 68-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ジャガイモそうか病の種イモ伝染を防除するには,種イモ消毒による病原菌密度の低減が重要である。しかし種イモ消 毒はそうか病菌だけでなく,種イモに共存する多様な細菌叢にも影響を及ぼす可能性がある。現在一般的には化学合成殺菌剤が利用されているが,新たに焼酎蒸留残液を用いる種イモ消毒法が報告された。焼酎蒸留残液に浸漬した罹病種イモ表皮では,殺菌剤と同等に病原菌密度が低下し,種イモ伝染が抑制される(富濵ら,2018)。本論文では,焼酎蒸留残液と殺菌剤(フルアジナム)による種イモ消毒が,植付け後の種イモ表皮に共存する細菌叢に及ぼす影響を調査した。その結果,殺菌剤は広範囲の細菌群の増殖を抑制し,その中にはそうか病菌に対して拮抗作用を示し,かつ,種イモに優占的に共存するBacillus 属細菌も含まれた。種イモ表皮の共存細菌群の一部は新生塊茎へ移行するため,殺菌剤による種イモ消毒は次世代の種イモの細菌叢の変化および静菌作用の低下をも引き起こす危険性が推察される。一方,焼酎蒸留残液処理によって増殖が抑制される細菌群は認められず,連用によっても健全な種イモ細菌叢を維持しながら,そうか病の種イモ伝染を抑制できる可能性がある。
  • 2022 年 76 巻 2 号 p. 77-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
feedback
Top