土と微生物
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  • ―硝化制御による N2O 発生抑制剤開発の基盤構築―
    大林 翼, Nobuhiro Luciano Aoyagi, 山崎 俊正, 多胡 香奈子, 早津 雅仁
    2023 年 77 巻 2 号 p. 51-60
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    硝化は脱窒と窒素固定とともに生物地球化学的に重要な窒素循環プロセスのひとつである。硝化反応によって,アンモニアが硝酸に変換される過程において,温室効果ガスの 1 種である一酸化二窒素(N2O)が生成される。さらに,農耕地土壌における硝化反応は窒素肥料成分の地下水への溶脱といった環境汚染や窒素損失にもつながっている。硝化による窒素損失や N2O 発生を低減させるために,抜本的な対策が求められている。本稿では,農耕地における「硝化(特にアンモニア酸化)」と「N2O」の 2 点に着目し,まず,硝化反応に関わる微生物と硝化からの N2O 生成機構を解説した。次に,農耕地土壌における硝化と N2O 発生について,環境要因と微生物の両面から説明した。農耕地土壌における硝化由来の N2O 削減のための既存の硝化抑制技術を概説した後,農耕地土壌での N2O 発生の寄与度が大きいアンモニア酸化細菌(AOB)の生理生態の特徴を述べた。そして最後に,ヒドロキシルアミン酸化還元酵素(HAO)に着目した新規硝 化抑制剤の開発について解説した。
  • ―脱窒制御剤の開発に向けて―
    原 新太郎, 圷 ゆき枝, 鈴木 倫太郎, 早津 雅仁, 多胡 香奈子
    2023 年 77 巻 2 号 p. 61-73
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    土壌微生物による脱窒は,土壌からの一酸化二窒素(N2O)発生源の一つであり,農耕地における脱窒を制御するための新しい手法が求められている。著者らはこれまでに実用化されていない脱窒制御剤(NirK 阻害剤)の開発に向けて,メタゲノム解析を構造ベース創薬に応用した“メタゲノム創薬”に取り組んでいる。本稿では,まず土壌環境での脱窒について概説し,続いて,メタゲノム創薬や土壌メタゲノム解析による NirK 多様性解析について紹介した。構造ベース創薬は医薬品開発では普及しているが,土壌など微生物群集ではターゲットのタンパク質構造を把握することが困難であるためほとんど行われてこなかった。今後,メタゲノム情報を活用してタンパク質構造の多様性を正確に把握することができれば,幅広い微生物群に広く効果のある薬剤開発が可能になると期待される。
  • ブレイクスルーに向けた13の取組み
    菅野 学, 玉木 秀幸
    2023 年 77 巻 2 号 p. 74-92
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    食糧の安定供給と環境負荷の低減(減肥や温室効果ガスの排出削減)を両立する持続的農業を実現するために,微生物資材の開発に対する関心が高まっている。しかし,圃場における微生物資材の成功は依然として予測不可能で信頼性に欠ける。微生物資材は,実験室内での活性に基づいて選択される傾向があり,土壌中での微生物の安定的な生存や機能発現といった圃場において求められる生態学的形質とは大きな隔たりが存在する。このボトルネックを解消するうえで,資材化技術の高度化は極めて重要である。本稿では,既報のレビューによって微生物資材開発の現況を浮き彫りにし,より信頼性の高い革新的な資材を開発するために有用と思われる13 の研究要素について紹介する。微生物資材が農業現場で機能を発揮するためには,微生物(叢)の環境定着や長期生存を可能にする適切な資材設計から,土壌の物理構造と微生物叢の複雑な関係性の解明や,生態学的知見に基づく新しい施用戦略の策定まで,多面的な検討が必要であり,学際的な取組みを期待したい。
  • 犬伏 和之
    2023 年 77 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
    土壌微生物の影響は作物生産から地球環境にまで広く及ぶ。まず土壌微生物バイオマスの水田土壌生態系における窒素動態での役割を解明するため,クロロフォルム燻蒸法を改良し土壌ATP も測定し長期肥料連用と湛水の影響を調べ,土壌微生物が養分循環の要となっていることが量的質的に示された。また水田土壌中の微生物が畑土壌より,嫌気的湛水ストレスに適応し,レジリエンスが強いことも見いだされた。肥効調節型被覆肥料の水田土壌中の微生物バイオマス窒素量への影響を尿素と比較して4 種類の土壌で調べ,表層と次表層では増減が異なるものの,それぞれで湛水後の経時変化には土壌間で類似性が見られ,肥料による有意差は認められずリン脂質脂肪酸組成でも同様の傾向が見られた。CO2 濃度上昇により土壌微生物バイオマス炭素は増加したが,土壌生物バイオマス窒素では収穫期まで増加せず水稲と微生物の間で窒素競合が起こっていたことが示唆された。またCO2 濃度上昇によってCH4 放出量が増えることも見いだされた。東南アジア水田で土壌全鉄含量が高いほど,CH4 生成量が抑制され,製鋼スラグを用いて,水田からのCH4 放出が抑制され水稲収量も増加する可能性が見出された。さらに水資源の限 られた南インドにおいて節水栽培がCH4 放出を抑制しN2O発生量や水稲の生育収量には変化がないことが圃場試験で実証された。また中国の内モンゴルや中央アジア,ウズベキスタンなどで塩類土壌でのシアノバクテリアの生態や植物生育に及ぼす効果が検証された。
  • 2023 年 77 巻 2 号 p. 101-115
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル オープンアクセス
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