土壌または液体培地で,殺菌作用を有する2,4-dichlorophenol(DCP)の微生物分解を比較した。DCP分解菌の一種Pseudomonas sp. DP-4の純粋培養において,土壌ではDCPが多量(風乾細土1gに分解菌の懸濁液1mlを入れた試験管当たりのDCPの炭素量で10〜100μg)添加されたときのみ分解された。いっぽう,液体培地ではDCPが少量(分解菌の懸濁液を1ml入れた試験管当たり0.1〜10μg)のときのみ分解された。土壌ではDCPは少量(3.30〜3,88μg)が残留したが,液体培地では残留しなかった。DP-4の数は培養初期の数を維持したか増加した。ただし,液体培地では多量のDCP(30〜100μg)が添加されたとき,DP-4は死滅した。土壌ではDCPは添加量に関わらず95%以上が固相に吸着された。また,土壌の土着のDCP分解微生物群は,土壌ではDCP添加量(0.1〜100μg)に関わらず分解したが,液体培地では少量のときのみ分解した。土壌中のDCP残留量は極めて少量(0.0082〜2.65μg)であった。これらの結果は,土壌に多量のDCPが添加されても,液相のDCP濃度が低いため,液相のDCP分解微生物は殺菌されずにDCPを分解できること,液体培地では吸着がないため低濃度のDCPしか分解できないこと,そして,土着DCP分解微生物群にはDP-4より低濃度のDCPを分解できる種が存在することを示唆した。
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