アブラナ科野菜根こぶ病の発生史について述べたのち,本病原菌(Plasmodiophora brassicae)の生活環並びに発生生態からみた防除視点について問題点を指摘し論議した。本病原菌の生活環からみた防除視点として,(1)休眠胞子の発芽あるいは死滅促進による菌量の減少,(2)第1次遊走子の活動制御による根毛感染阻止と感染根毛内における発育阻害,(3)第2次遊走子の活動制御による皮層感染阻止と宿主体内における増殖阻害を挙げた。さらにこの種の防除法確立の基礎知見として,休眠胞子の発芽とそれに及ぼす要因,第1次および第2次遊走子の特徴,宿主体への侵入と体内における増殖について述べた。また本病の発生生態からみた防除視点の基礎として,温度,土壌湿度,土壌pH,日照,±質などの環境要因,その他病原菌の土壌中の分布,生存期間と死滅要因,伝搬方法などについてふれた。今後さらに病原菌の諸性質を良く理解し,理論的総合防除法確立の必要性について述べた。
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