我が国の花きの生産額は63百億円で,農業粗生産額の約6.3%を占める。その伸びは,1980〜1995年に生産額が2倍以上に増加しており,農業部門の中で特筆に値する。しかし,ほとんどが種苗・球根を購入し,花きを生産して出荷している。近年,輸入苗が増加し,我が国の花き生産に海外に大きく依存し,種苗流通の国際化が花き生産の特徴となっている。また,需要の多様化,種類,品種,花色などの流行がめまぐるしく変わるため,この速さに健全苗供給や栽培技術が追いついていけないのが現状である。組織培養生産,苗生産,切花生産という細分化されたリレー栽培が確立し始め,先進地域の欧米ではさらに細分化へ向かっている。また,雇用を多数入れて,大規模化へ進む生産者が現れており,生産規模の多様化,分極化が進んできている。花き生産の現場では,新しい花きがさかんに導入され,施設野菜栽培などから新たに参入する生産者の中には,生産が安定しないこともある。一方,栽培の長く続いた産地では,連作に伴うさまざまな障害も多くなっている。そのため,これらの問題に対し技術的支援の要望が高まっている。特に,病害虫部門では情報量が少ないためこの要望が高い。病害虫分野では苗の流通の国際化に伴い,病害虫の同時多発や侵入病害虫の発生などが問題となっている。また,薬剤耐性菌や薬剤抵抗性害虫や難防除病害虫も他の分野同様に問題を抱えている。このために,無病苗生産技術の開発・支援や診断・同定技術の向上や低価格で迅速な病原菌の検出技術の開発,ハイテク化された圃場衛生管理技術,環境調節技術による病害虫の制御方法の開発,薬剤の適用拡大の促進と合理的使用法の開発などが求められている。特に土壌病害に対して現在は土壌くん蒸剤による防除が主流であるが,抵抗性育種,耕種的防除,生物的防除技術の開発も求められている。
抄録全体を表示