1.コガラの貯食行動に関する調査を,自然状態での群れ行動の観察および餌付けにより,長野県菅平高原で行った。
2.コガラは4月から8月にかけ,鱗翅目や膜翅目昆虫の成虫や幼虫を食べており,これらが餌内容の88%以上を占めていた。秋の9月以後は,種子食へと変化し,冬の間は秋に貯蔵した貯蔵餌の採食が,全体の7割以上を占めていた。
3.貯蔵は繁殖期にも行われているがきわめてわずかであった。貯蔵は,8月以後の秋の時期に活発に行われ,最盛期の10月には取った餌の86.3%が貯蔵されていた。冬から春先には,積雪により貯蔵ができなくなるため,ほとんど行われていなかった。
4.貯蔵は,ほとんど樹上に行われており,53.9%が針葉樹,残りが広葉樹に行われていた。コガラは,アカマツ,ミズナラ,ダケカンバといった樹皮がむける性質の樹木に好んで貯蔵し,逆にミズキ,ブナなど幹がすべすべした樹木はさける傾向があった。
5.貯蔵場所は,樹皮のすき間が最も多く,全体の67.9%を占めていた。その他は,枝の割れ目,マツカサのすき間,幹についたコケ•地衣類などで,いずれもすき間に貯蔵が行われていた。
6.8月以後は,複合家族群が形成された。繁殖した個体は,群の行動圏全体に広く貯蔵しており,繁殖した場所など,個体による特定地域への貯蔵場所の集中はみられなかった。
7.群の個体間には,明確な順位が存在したが,貯蔵量は必ずしも順位とは関係していなかった。しかし,雄の方が雌より,若鳥より成鳥の方がやや多く貯蔵していた。
8.貯蔵期間は比較的短く,全体の74%が貯蔵した日から6日間以内に消失した。しかし,貯蔵物の移し替えが頻繁に行われており,秋に貯蔵された餌は,秋から冬を通しコガラの重要な餌となっていた。
9.コガラの貯食行動の特性についての考察を行った。
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