MEDCHEM NEWS
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33 巻, 3 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
創薬最前線
  • 鳥居 義史
    2023 年 33 巻 3 号 p. 106-111
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    協和発酵工業株式会社とキリンファーマ株式会社の統合により生まれた協和キリン株式会社は、日本発のグローバル・スペシャリティファーマを目指し、Life-changingな価値の継続的創出に向けた挑戦を続けている。研究開発部門では、これまで培った独自の疾患インテリジェンスに基づく「疾患軸」とともに、抗体技術のさらなる進化に加えて、多様なモダリティを駆使する「技術軸」を強みとして保持しつつ、オープンイノベーションも活用した「Technology-driven創薬」を遂行することを研究開発コンセプトとして創薬研究に取り組んでいる。加えて、低分子創薬分野においても外部の優れた技術を自社の強みと融合させながら、革新的な創薬技術基盤の確立を目指して取り組んでいる。本稿では、「圧倒的競合優位性をもつLife-changingな価値の創出」へチャレンジする当社の取り組みを紹介したい。
DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 MCS優秀賞 受賞
  • 秋生 麻由子, 辻 貴司, 飯田 孝樹
    2023 年 33 巻 3 号 p. 112-116
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    NAD+サルベージ経路の律速段階に関与する酵素であるNAMPTを活性化し、複数のエネルギー生産経路に関わっているNAD+量を増加させることは、肥満などの代謝異常疾患に対して有望な治療になると考えられる。そこで筆者らは新規抗肥満薬を指向し、NAMPT活性化剤の創薬研究を行った。HTSヒットからin vitro活性、ADMEプロファイル、CYP DIなどを指標に誘導体展開を行い、良好な活性とPKプロファイルを有するDS68702229を創製した。本化合物はDIOマウスへの経口投与により、組織内NAD+増加作用と抗肥満作用を示した。一方、本化合物はsix-well Ames試験において陽性であったため、Ames陰性化を指向した展開を行い、standard Ames陰性であるNAMPT活性化剤11を見出した。
  • 伊藤 俊也
    2023 年 33 巻 3 号 p. 117-121
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)を含むキナーゼ融合は、強力な発がんドライバーとして作用することが知られ、治療標的として認識されている。社内のキナーゼ阻害剤ライブラリーのスクリーニングの結果、ユニークな四環性骨格を有する有望なヒット化合物を同定した。ヒット化合物は高いTRK選択性を示したが、細胞増殖阻害活性が中程度であったことからTRK阻害活性向上が必要とされた。また、CYP3A4誘導リスクが高く薬物間相互作用の懸念があったので、CYP3A4誘導を回避する必要があった。本稿では、ヒット化合物からCH7057288創製に至るキナーゼ阻害活性改善ならびにCYP3A4誘導回避に関する構造活性相関を発表する。
  • 佐藤 篤史, 山元 康王, 諸熊 賢治, 宮代 昌彦, 鈴木 毅
    2023 年 33 巻 3 号 p. 122-126
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    メラノコルチン1受容体(Melanocortin 1 Receptor:MC1R)作動薬は、メラニン形成の促進や炎症および線維化を抑制することが期待される。実際に、合成ペプチドであるアファメラノチドが赤芽球性プロトポルフィリン症(Erythropoietic Prorotoporphyria:EPP)の治療薬として欧米で承認されている。しかし、本剤は皮下インプラント製剤であり、経口投与可能な薬剤の開発は患者さんの利便性に大きく貢献できる。筆者らは、最適化における試行錯誤の中で、「カルボン酸の導入」「フッ素原子の導入」および「3級アミド化合物への変換」により、強力なアゴニスト活性を有し、薬物動態および安全性に優れるMT-7117(dersimelagon phosphoric acid)の創製に成功した。
  • 玉井 太一, 石川 俊平, 宮村 伸, Emiliano Tamanini, Dominic Tisi
    2023 年 33 巻 3 号 p. 127-131
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)は、エピジェネティックな遺伝子の制御において重要な役割を果たし、神経変性疾患など、多くの疾患の治療標的として注目されている。特にHDAC2はヒストンアセチル化の低下と、それに伴う学習・記憶に関連する主要遺伝子の発現低下への関与が報告されており、中枢移行性を有するHDAC2阻害剤を開発することが、神経変性疾患の治療に有益であることを示唆している。筆者らは、フラグメントベース(FBDD)を首尾よく活用し、新規で中枢移行性と活性を兼ね備えるHDAC2阻害剤を見出した。タンパク質-リガンド複合体X線結晶構造情報を利用した構造ベース創薬(SBDD)により、中枢薬として適したプロファイルを維持しつつ、初期のフラグメントヒットから活性を大幅に改善させ、 in vitroおよびin vivoにおいて薬効を示すリード化合物へと導いたので紹介する。
DISCOVERY 2022年度 日本薬学会 医薬化学部会 BMC/BMCL賞 受賞
  • 大橋 功, 岸 義人
    2023 年 33 巻 3 号 p. 132-135
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    ハリコンドリン類は、複雑かつユニークな構造を有する海洋産ポリエーテルマクロライドであり、抗がん作用を期待されたが、開発に必要な化合物量の確保が困難であった。近年、ハーバード大学が主導する全合成研究の進展を受けて、ハリコンドリン類からの創薬研究に再挑戦し、全合成を通じて医薬品候補化合物E7130を見出した。ハーバード大学とエーザイの緊密なコラボレーション、タイムリーな情報共有、総力をかけたプロセス研究により、創薬研究初期のミリグラムスケールのE7130全合成から約1年半で、グラムスケールでのGMP製造を達成した。本製造ではHPLC精製を一切行うことなく高純度(99.8%)のE7130原薬をGMP管理下にて11.5g得ることに成功し、第一相臨床試験に使用された。
SEMINAR
  • 清中 茂樹, 堂浦 智裕
    2023 年 33 巻 3 号 p. 136-141
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2023/08/01
    ジャーナル 認証あり
    記憶や学習に代表される高次脳機能は、数多くの神経細胞とグリア細胞が複雑に相互作用して神経回路を形成することにより生み出される。高次脳機能を理解するために、動物個体レベルで神経回路を構成する特定の細胞種の活動を制御可能な光遺伝学(オプトジェネティクス)や化学遺伝学(ケモジェネティクス)などの細胞操作技術が非常に有用である。しかし、既存の手法では、観察対象となる細胞に本来存在しない人工受容体を発現させて細胞機能を制御するため、細胞が有する本来の機能を観察できていない可能性がある。本稿では、筆者らが取り組んでいる特定の神経細胞やグリア細胞に内在的に発現する受容体の細胞種選択的な制御を可能にする「分子標的ケモジェネティクス」の構築について述べる。
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