タイ国では, さまざまな粉体関連機器が, 農業, 工業などの幅広い分野で使用されているものの, 学問としての粉体工学は, ほとんどない状態であり, 核となる研究者や企業もほとんどいないのが現状である。これは, タイ国の工学全体が未分化であり, 鉱山学以外では独立した学会組織を持っていないことに因るところが大である。したがって, 粉体工学のように非常に専門化した分野ではなおさらである。
このため, タイ国には先進国の技術や知識の導入を計る団体が多数あるが, なかでも, 泰日経済技術振興会 (TPA) は先進的な役割を果している。TPAは日本の経済援助により, 日本への留学経験を持つ人達を中心に組織された非営利団体であり, セミナー, 翻訳出版, 日本語教育等に精力的に取り組んでいる。粉体工学との関連では, これまでに, 大気汚染と集塵技術に関するセミナーを開いた程度であまり活溌とはいえない。しかし, 今後は固体ハンドリングや空気輸送について, セミナー, 翻訳を手掛けたいと考えている。
いづれにしても, タイ国に粉体工学が定着するかどうかは工業化のスピード, それをとりまく環境の変化などにもよるが, 最も重要なことはタイ国内に核となる研究者グループが形成されるてとであろう。このためには外国からの援助が必要であり, その窓口として, Chulalongkorn 大学や, TPAが一定の役割を果せると思う。
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