大気汚染学会誌
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18 巻, 6 号
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  • 大喜多 敏一, 太田 幸雄, 内山 政弘, 阿部 潤一, 南部 佳弘
    1983 年 18 巻 6 号 p. 491-495
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    バブリング法およびトランスパィレーション法を用いて12℃ における数十ppm以下でのホルムアルデヒド, アセトアルデヒド, 過酸化水素のヘンリー定数を求めた。ヘンリー定数はホルムアルデヒド: 3500, アセトアルデヒド: 11.5, 過酸化水素: 1.8×105 (moll-1atm-1) である。定数を水滴中のSO2と過酸化水素の反応による硫酸の生成に適用したところ, この生成反応はかなり早いことが分った。
  • 河合 昭宏, 後藤 純雄, 塩崎 卓哉, 松下 秀鶴
    1983 年 18 巻 6 号 p. 496-507
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    多環芳香族炭化水素 (PAH) を希釈したディーゼル排ガスに暴露させ, そのニトロ化反応について, 変異原性試験および化学分析により検討した。
    試験には, ピレン, ペンゾ (a) ピレン, クリセン, ベンゾ (ghi) ペリレン, ベンゾ (b) フルオランテンおよびペリレンの6種を用いた。各PAH試料はテフロンコーテッドグラスファイバーフィルターおよび同種フィルターに捕集したディーゼル粒子に均一に塗布し調製した。これらの試料は, 約10倍希釈の大型ディーゼルエンジン排気ガスのフィルター炉過したガス状成分に, 4および8時間暴露させた。暴露した試料の変異原活性は, Salmonella typhimurium TA98株, S-9mix無添加の条件でプレインキュベーション法により求めた。また, 化学分析は窒素リン検出器を装着したシリカキャピラリーカラムガスクロマトグラフィーで行った。
    6種の被験PAHのうち, ベンゾ (b) フルオランテンを除く5種に, ディーゼル排ガス暴露により, direct-mutagenの生成が認められた。フィルターにPAHを塗布した場合の変異原活性の順位は, ピレン, ベンゾ (a) ピレン, クリセン, ペリレンおよびベンゾ (ghi) ペリレンであり, ディーゼル粒子に塗布した場合は, ピレン, ペリレン, ベンゾ (a) ピレン, ベンゾ (ghi) ペリレンおよびクリセンであった。また, ディーゼル粒子にPAHを塗布した試料の方が, フィルター-にPAHを塗布した場合よりも高い変異原活性が認められた。また, 両試験共, 変異原活性は暴露時間の増加とともに増大した。
    ガスクロマトグラフィー分析では, ピレン試料からは1-ニトロピレンが, ベンゾ (a) ピレン試料からは3種のニトロ誘導体の生成が認められ, そのうちの1種は6-ニトロベンゾ (a) ピレンであることが判った。ペリレン試料からは3-ニトロペリレンの生成が示唆された。これらのニトロ化合物の生成量は, 暴露時間の増加とともに増大し, また, これは, ディーゼル粒子にPAHを塗布した試験の方がフィルターにPAHを塗布した場合よりも高い値を与え, これらの分析結果は変異原性試験結果と類似していることが認められた。
  • 川崎市における犬肺1000例を対象にした病理組織学的研究
    阿部 義昭
    1983 年 18 巻 6 号 p. 508-522
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/12/15
    ジャーナル フリー
    犬は大気汚染と肺癌の関連性を調査するための, 好適な指標材料であることから, 川崎市において年齢, 飼育歴など明らかな犬1000例の犬肺について病理組織学的に調査を行った。
    肺汚染度は年齢と共に進行する傾向が見られ, 工業地区は住宅地区よりも高度汚染肺の発生率が高く, 肺内の粉じん色調も黒色粉じん色の比率が高率であった。気腫性病変は小葉中心性で老犬の高度汚染肺からの発生が高い傾向を示した。上皮増殖性病変は犬糸状虫 (Dirofilaria immitis) による血管閉塞性病変が多く, 地区間の差は認められなかった。
    肺腫瘍は14例で, 良性腫瘍7例 (良性腺腫5例, 気管支乳頭腫2例), 悪性腫瘍 (肺癌) 7例 (腺癌6例, 類表皮癌1例) であった。重複癌は3例認められた。肺癌の地区別発生は住宅地区2例, 商業地区1例, 工業地区4例で, 老犬の高度汚染肺からの発生が高く大気汚染の影響を示唆する地域差が認められた。
  • 川崎市における犬肺の病変と金属量
    川井 英雄
    1983 年 18 巻 6 号 p. 523-538
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気浮遊粒子中金属による汚染状況を, 犬の肺内金属量から推定可能か否かを検討した。地域は川崎市を選び, 市内の飼育犬で年齢, 生息地区などの明らかな犬の肺513例について, 肺汚染度, 気腫, 上皮増殖, 腫瘍などを調査し, 更に13種金属 (Cr, Ni, Cd, Pb, Co, Cu, Zn, Mg, Fe, Ca, Sn, TlおよびBe) の肺内含有量を測定し, 年齢, 地区, 肺汚染度, 病変などと肺内金属量との関連性を検討した。
    その結果, 工業地区に居住の犬の肺は商業および住宅地区のものに比べ, Cr, Ni, Cd, Pb, Coが有意に高い含有量で, 加齢に伴って増加する傾向も強い。地区別, 肺汚染度別の肺内金属量において, 肺内のCr, Ni, Cd, Pb, Coの含有量は, 肺汚染度の上昇に伴って増加し, すべての地区で, 上記金属は有意に肺に畜積する傾向があるが, 工業地区が最も強い。気腫, 上皮増殖, 腫瘍と各種金属の肺内含有量との間に特に関連性は認められなかった。沈着粉じんの種類 (褐色, 黒色, 黒褐色) によって, 肺内金属量に有意差はなかった。Crの含有量が高い肺 (5μg/g以上, 乾燥重量) は工業地区に集中していた。
    このことから, 肺内cr, Ni, cd, Pb, co含有量, 特にcr, 次いでNiは, 大気汚染との関連を強く示唆するものであり, 他の曝露要因 (喫煙, 職業など) を無視できる犬の肺の金属をある程度多数定量することにより, 十分大気汚染の現況およびその推移を把握することができた。
  • 種々の酸化物によるオゾンの消滅
    古賀 修, 磯辺 亮介, 堀 善夫, 鈴木 伸
    1983 年 18 巻 6 号 p. 539-543
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    オゾンは光化学大気汚染物質として知られているが, その挙動には不明な点が多い。環境中のオゾンの高度分布は他の汚染物質と異なり, 地上付近において高度の減少と共に濃度も減少することがしばしば見い出されている。また環境大気中における消滅過程も明らかではない。本報はオゾンの大気中の消滅過程を調べる一環として, 大気中に浮遊する粉じん物質とオゾンとの反応について検討した。大気浮遊粉じん物質として報告されている金属物質を中心に11種の金属酸化物について検討した。
    ppmレベルのオゾンを含む酸素を, 流通系において金属酸化物粉末に接触通過させるとき, オゾン濃度の減少が見られた。減少速度は初期に大きく, 徐々に低下した。このような経時変化はすべての酸化物についてみられた。各金属酸化物のオゾン消滅能を比較するためにオゾン暴露初期 (暴露開始1分) における速度を単位表面積, 単位濃度あたりについて求めた。オゾン減少速度はAg2O, PbO, CuO, Fe2O3が大きく, 約1-0.1cm/sであった。一方, V2O5, TiO2は不活性で10-3~10-4cm/sであった。オゾン減少速度は, 金属酸化物の生成エネルギーと負の相関を有し, 生成エネルギーからある程度活性が推定されることが示された。
  • 鈴木 伸, 堀内 宣利, 吉森 道郎, 柴山 光彰
    1983 年 18 巻 6 号 p. 544-550
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    一般にOx (オキシダント) の自動計測器ではNBKI (中性ヨウ化カリウム) 法が用いられているが, これらの自動計測器を多数, 同時に用意する場合には費用も, その維持も困難である。このことから小型, 軽量, 携帯可能で安価な, いわゆる簡易オキシダントモニターの開発が期待される。
    本報の簡易オキシダントモニターは遮光したシャーレ内に10%NBKI溶液とABKI (アルカル性ヨウ化カリウム) 溶液を含浸した炉紙を各々セットし, 大気に暴露する。本研究ではこの簡易オキシダントモニターについて炉紙の種類の影響, 暴露時の影響条件 (温度, 湿度など) の影響について検討した。この結果, 10%NBKI溶液を含浸した簡易オキシダントモニターの遊離ヨウ素は温度の上昇により減少し, 湿度の増大により増大した, しかしABKI溶液, 特にトリエタノールアミン (TEA) +10%NBKI溶液を含浸した炉紙においては温度, 湿度変化による影響はほとんどないことから, この方法が良法と判断した。
  • 渡辺 弘, 山岡 茂夫, 村山 ヒサ子
    1983 年 18 巻 6 号 p. 551-560
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    PFRの測定により学童の肺機能を2年間追跡調査し, SO2高感受性男子学童の出現率を検討した。
    調査は大阪市内T地区, M地区およびO地区において, 1963年から1968年の期間それぞれ2年間測定を実施した。対象学童は感冒等の呼吸器疾患の自覚症状を有する者を除外し, M校85名, T校52名, O校26名である。
    1. M地区の大気SO2濃度は各季節とも低濃度で, 肺機能測定時間帯の平均濃度は0.04ppmである。暖期と寒期の間にPFRの差は認められない。
    2.T地区の大気SO2濃度は暖期に低く, 寒気に高い。寒気の平均濃度は0.09PPmである。SO2高感受性学童は寒気にPFRが低下し, 暖期にPFRが正常範囲に戻る学童とすると, その出現率は対象学童46名中20%である (sept.1963~Jan.1965)。
    3.O地区の大気SO2濃度は年間を通じて高濃度で, 平均濃度は暖期0.08ppm, 寒期0.11ppmである。SO2高感受性学童を, SO2濃度の増大が気温の低下を伴わない月において, PFRがSO2濃度の日変化に従って変化する学童とすると, その出現率は対象学童26名中19%である。SO2高感受性学童のPFR平均値はSO2非高感受性学童のそれより低値を示した (Nov.1966~Feb.1968)。
  • 高野 二郎, 北原 滝男, 安岡 高志, 光沢 舜明, 白井 孝三
    1983 年 18 巻 6 号 p. 561-568
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究では高速液体クロマトグラィーと薄層クロトグラフィーによる含窒素環状化合物の定量分析法の開発を行い。原動機付自転車の排気ガスについて分析を行った。
    排気ガスは液体酸素捕集法により1m3をサンプリングし, これより含窒素環状化合物をメタノールで抽出した。抽出液を20℃ で減圧濃縮を行い最終的に2mlにしてサンプルとした。含窒素環状化合物はHPLCにより, 保持時間およびUVスペクトルから同定定量を行い, TLCにおいては二次展開を行うことより定性をした。HPLCは次の条件下で作動させ, 含窒素環状化合物16種類の挙動を検討した。固定相: Zorbax-SIL 6.2mmφ×250mm, 移動相: メタノール水, 流量: 1.2ml/min, カラム温度: 53℃, 検出器: UVモニター (254, 230nm)。
    本法を用いて原動機付自転車の排気ガスについて含窒素環状化合物の分析を行った結果, インドール17μg/m3, アクリドン2.9μg/m3を検出した。
  • 横山 栄二, 市川 勇
    1983 年 18 巻 6 号 p. 569-573
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    麻酔し, 気管切開を施した後人工換気下におかれたウサギを, 1.5および4.1ppmホルムアルデヒドに3時間暴露した。暴露中, 換気力学, 肺準静的圧-量曲線, フローボリウム曲線を継時的に測定した。4.1ppmホルムアルデヒドに暴露されたウサギにおいて, 肺気流抵抗の上昇が示唆された事を除けば, これらの暴露はすべての測定項目に認めうる変化を来さなかった。これらの成績をオゾン急性暴露の呼吸器影響と比較する時, 下気道に侵入する如き条件下においては, ホルムアルデヒドの換気能を及ぼす影響は, オゾンのそれよりも弱い事が示唆された。
  • 永山 恵子, 横山 栄二, 南部 滋郎, 岡田 昌二
    1983 年 18 巻 6 号 p. 574-578
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    麻酔し, 気管切開を施した後人工換気下におかれたウサギを, 1.5および3.6ppmニトロブテン蒸気に3時間暴露した。暴露中, 換気力学, 肺準静的圧量曲線, フローボリウム曲線を継時的に測定した。低濃度ニトロブテン蒸気暴露は, 換気能に有意の変化を来さなかった。しかし3.6ppmニトロブテン蒸気暴露は, 気道分泌の尤進を来し, またフローボリウム曲線におけるピーク流量および50%肺活量位における最大気流量の有意の低下を来した。但し他の測定項目に認めうる変化は無かった。これらの成績は, ニトロブテン蒸気は気道の硬さに影響し, よって強制呼出時の気流量の低下を来す事を示唆した。
  • 特にSO3およびCO2の生成について
    鈴木 伸, 堀内 宣利, 松本 光雄, 堀 善夫
    1983 年 18 巻 6 号 p. 579-581
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    固体物質の光触媒作用が光化学大気汚染に対して及ぼす影響を予備的に検証する目的で, SO2およびcis-2-ブテンとO2の光化学反応におけるTiO2の効果を検討した。その結果, 以下のことが明らかにされた。(1) cis-2-ブテンの多くは, TiO2の存在下で光照射 (高圧水銀灯) を受けてO2により, CO2に酸化される。(2) SO2もまた, 光触媒作用を受けてSO3に酸化される。(3) cis-2-ブテン-SO2-O2-TiO2系光化学反応においては, cis-2-ブテソのCO2への光触媒作用は抑制された。以上により, 大気中に存在する粉じんの内金属酸化物など半導体物質の光触媒作用により, SO2など大気汚染質から二次汚染物質を生じる可能性が示唆された。
  • 香川 順
    1983 年 18 巻 6 号 p. 582-594
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    疫学研究には多くの交絡因子が含まれるため特定の大気汚染物質が観察された健康影響にどの程度関与しているかを評価する事は困難である。臨床暴露研究はこれらの交絡因子を比較的容易に調整できるため, 特定の大気汚染物質の健康影響を確認するため最近広く行われ, 多くの科学的に信頼できる情報を提供している。問題とする健康影響を引き起こす特定の大気汚染物質の最低濃度を評価するとき, 疫学および臨床暴露研究は重要な役割を演じているが, 疫学研究と臨床暴露研究の間には明白な不一致がみられる。現在までめ臨床暴露研究の多くは疫学研究の結果を支持していない。本報告は現在までの臨床暴露研究結果を要約し, 将来の問題点を論じた。
  • 松本 光弘, 板野 龍光
    1983 年 18 巻 6 号 p. 595-605
    発行日: 1983年
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    都市部の後背地にあたる田園地域である奈良市および生駒山中腹で, 降雨量1mm毎 (生駒山中腹では降雨量5mm毎) に雨水を分割採取し, 雨水のpH, E.C.と9種のイオン (NH4+, Na+, K+, Ca2+, Mg2+, SO42-, NO3-, Cl-, F-) を測定し, 雨水の性状を調べた。
    雨水のpH, E.C.および各イオン成分濃度は, 降雨の経過とともに減少し, 降雨量6mm目以降はほぼ一定となることより, 雨水を初期雨水 (降雨量1~5mm) と後続雨水 (降雨量6mm~) の2種に大別した。
    両地点における雨水のpHの最大頻度を示す階級は, 初期雨水も後続雨水も4.5~5.0に集中し, 酸性雨水をpH5.6以下と規定すれば, 両地点で初期雨水の90%, 後続雨水の100%が酸性雨水であった。
    両地点における雨水中のイオン組成は, 測定した6種の陽イオンと4種の陰イオンで主に構成され, そして, 全雨水中の陽・陰イオンのそれぞれの当量組成は多い順に, 奈良市がNH4+, H+, Na+, Ca2+, K+, Mg2+とSO42-, Cl-, NO3-, F-, 一方, 生駒山中腹がNa+, H+, Ca2+, NH4+, Mg2+, K+とCl-, SO42-, NO3-, F-であった。
    奈良市より海岸部に近い生駒山中腹での雨水中のイオンには海塩粒子の寄与が推測された。
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