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山本 龍一, 鈴木 和彦, 嶋本 敬介, 木村 真之, 藤井 雄太, 盛田 怜子, 石井 雄二, 渋谷 淳, 三森 国敏
セッションID: P-184
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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[緒言] 我々はこれまでにラット肝二段階発がんモデルを用いたI3Cの8週間投与において、肝腫瘍促進作用を認め、その作用にはcytochrome P450 1A (CYP1A) の誘導による活性酸素種 (ROS) の産生が関与することを明らかにした。本研究では、I3Cを26週間投与した際の肝腫瘍促進作用増強の検証および更なるその促進機序の探索を目的として以下の実験を行った。[方法] 6週齢雄性F344ラットにdiethylnitrosamine (DEN) の単回腹腔内投与を行い,その2週間後から0%I3C (DEN単独群) ないし0.5%I3Cを26週間混餌 (I3C群) した。DEN投与3週間後には2/3部分肝切除を行った。[結果] I3C群では変異肝細胞巣が増加し肝細胞腺腫も誘発された。また、glutathione
S-transferase placental form (GST-P) 陽性細胞巣の数および面積はI3C群で有意に増加し、肝ミクロソーム分画におけるROS産生、チオバルビツール酸反応性物質 (TBARS) 、8-hydroxydeoxyguanosine (8-OHdG) も有意に高値を示した。real-time RT-PCRでは、AhR遺伝子バッテリーである
Cyp1a1,
Cyp1a2,
Cyp1b1および
Nrf2遺伝子バッテリーである
GGT1,
Gpx2 がI3C群で発現増加した。免疫組織化学染色では、TGF-β情報伝達経路の因子であるp-Smad2/3が、DEN単独群では肝組織全体で陽性を示したが、I3C群では陰性領域が見られ、その中には腺腫を含む一部のGST-P陽性巣と一致した局在も認められた。Ki-67は、GST-P陽性巣内で巣外よりも有意に高い陽性細胞率を示し、p-Smad2/3陰性GST-P陽性巣がp-Smad2/3陽性GST-P陽性巣よりも高い陽性細胞率を示す傾向が見られた。[考察] I3Cの肝腫瘍促進作用により26週間の投与で肝腫瘍に進展することが示され、その肝細胞腺腫への進展には、TGF-βシグナルの破綻に伴う肝細胞の形質転換が関連し、それが細胞増殖を付与する誘因となるものと推察された。
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伊豫田 智子, 岡本 誉士典, 牛田 真理子, 高田 達之, 小嶋 仲夫
セッションID: P-185
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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【目的】生体内にはわずかに組織幹細胞が存在し,自己複製と分化を繰り返して生体の恒常性を維持している.近年,がん組織においても増殖・分化するがん幹細胞が発見され,その起源の一つとして幹細胞のがん化が挙げられる.本研究では,強力な発がん物質イニシエーターとして知られる7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン(DMBA)がマウス胚性幹(mES)細胞に対して引き起こすDNA損傷や異物代謝酵素誘導,未分化状態への影響を検討した.また,これらの影響の程度をマウス胎児性線維芽細胞(MEF)と比較し,未分化細胞特有の応答について検討した.
【方法】
使用細胞および薬物処理:mES細胞はD3細胞株,MEFは12.5日齢の胎仔より調製した初代細胞を使用.DMBAまたは3-メチルコラントレン(3-MC)処理(50-500 nM,24 h)によりDNA付加体形成と異物代謝酵素の誘導を確認.
DNA損傷:DNA付加体を
32P-ポストラベリング法により定量.
遺伝子発現:
Cyp1a1,
Cyp1b1および
Sox2発現をリアルタイムRT-PCR法により相対定量.
アルカリフォスファターゼ(ALP)染色:ALP染色によりmES細胞の未分化状態を評価.
【結果・考察】DMBA処理により両細胞ともDNA付加体量が増加し,それはMEFにおいて顕著であった.化学物質非存在下により,
Cyp1a1発現は両細胞で同程度だが,
Cyp1b1はMEFにおいて高発現であった.また,DMBA処理により
Sox2発現・ALP染色陽性細胞が減少したことから,mES細胞が分化傾向を示していることが確認された.一方,3-MC処理では,
Cyps発現誘導は確認されたが,DNA付加体は検出されず,mES細胞の未分化状態に影響を及ぼさなかった.したがって,未分化状態の破綻にはDNA損傷が寄与していると考えられる.以上の結果から,mES細胞は発がん物質の標的となること,DNA損傷により分化誘導されることが示唆された.この分化誘導は,異常な幹細胞を排除するという幹細胞防御機構の一つであると考えられる.
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辻 暁司, 織原 由佳理, 桐畑 佑香, 堤 俊輔, 野口 ちひろ, 佐藤 靖
セッションID: P-186
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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【目的】第38回本学会において、飼料中のCa或いはVitamin D
3(V.D
3)含有量の差が、正常ラットのCa代謝に影響を及ぼすことを報告した。今回、卵巣摘出(OVX)ラットに、V.D
3含有量の異なる2種類の基礎飼料(MF、CRF-1)を給餌したときのCa代謝に関連するパラメータ変動について検討した。
【方法】6週齢時に偽手術(Sham)或いはOVXした雌性ラットに、MF又はCRF-1(V.D
3含有量:MF<CRF-1)を13週間、自由摂取させた。検査は、体重、摂餌量及び摂水量に加え、4、8及び12週に尿生化学的検査、血液生化学的検査及び骨代謝マーカー検査(DPD、オステオカルシン、PTH)を実施した。また、Sham及びOVX後13週に剖検し、大腿骨及び胸骨の病理組織学的検査を実施した。
【結果および考察】MF及びCRF-1ともにOVX群において、摂食亢進及び脂肪の蓄積を示唆する変化が認められ、骨吸収を示唆する尿パラメータ及び骨代謝マーカーの変動、並びに骨梁の減少が認められた。V.D
3含量の高いCRF-1の給餌では、Sham群及びOVX群とも尿中Ca、Zn及びMg排泄量の高値、並びにIP排泄量の低値が認められたものの骨パラメータ及び病理組織学的検査に影響は認められなかった。以上より、V.D
3含有量の異なる2つの基礎飼料(MF、CRF-1)を13週間、自由摂取させたが、OVXラットの骨及び関連パラメータに影響を及ぼさなかった。
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守田 淳哉, 和泉 智子, 須之内 真奈, 堤 俊輔, 大野 理絵, 有馬 和範, 佐藤 靖
セッションID: P-187
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】ラットでは摂餌・体重減少が毒性試験パラメータに及ぼす影響についての報告はあるが、イヌではほとんどない。そこで本研究では、イヌにおいて制限給餌により体重を減少させたときの心電図及び血液への影響について検討した。また、給餌制限を解除し、体重を回復させたときの各パラメータの回復性についても検討した。
【方法】雄性イヌ(ビーグル、n=5/群)を用いた。制限給餌群には、制限給餌期間の1~8週は150 g/日、9~12週は200 g/日、4週間の回復期間は300 g/日を給餌した。対照群には、制限給餌期間及び回復期間ともに300 g/日を給餌した。一般状態、体重、摂餌量、標準肢誘導及びホルター心電図の測定、並びに血液学及び血液生化学的検査を実施し、対照群及び制限給餌群の2群間比較を行った。また、制限給餌群は、体重の変化率と各パラメータの相関について評価した。
【結果及び考察】制限給餌群において、体重は制限給餌開始前に対し約17%減少し、対照群に比較し約18%低値を示した。心電図検査では循環血液量の減少の影響と思われる心拍数の減少、血液学的検査では低栄養の影響と思われる白血球パラメータの減少が認められた。また、体重減少と上記パラメータとの間には相関関係が認められた。制限給餌期間に認められた変化は、回復期間には体重のみならず、上記パラメータの回復性が確認された。
【結論】イヌで継続的な摂餌量減少に起因した体重減少がみられる場合、心電図及び血液(心拍数、白血球低値)に影響を及ぼすことが示唆された。イヌの毒性試験では、化合物投与により継続的な摂餌・体重減少が認められることがある。本結果は、毒性試験パラメータの変動が化合物の直接作用か、二次的作用によるものかを判断する上で有用な情報になると考えられた。
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角 将一, 永田 百合子, 畑 千恵, 山本 亮太, 安藤 稔, 鈴木 倫, 内田 和美, 加藤 幾雄, 金子 公幸
セッションID: P-188
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【緒言】Probioticsは「人体に有益な影響を与える生きた微生物」と定義されている。Probioticsの一つ
Lactobacillus casei シロタ株(LcS)および
Bifidobacterium breve ヤクルト株(BbY)は、宿主の整腸作用、種々の免疫調節作用を有し、70年以上もの食経験がある。近年では、Probioticsは癌治療における抗腫瘍薬の副作用軽減や炎症性大腸炎を含めた消化器疾患の治療に使用されている。一方、免疫不全や種々の疾患を持った患者においてProbioticsのbacterial translocation(BT)が報告されている。そこで我々は、抗腫瘍薬により誘発された腸管粘膜傷害および免疫抑制を伴うBT model miceを用いて、BTを指標としたLcSおよびBbYの安全性の評価を行った。【方法】7週齢の雄性BALB/cマウスをSaline群、5-FU+saline群、5-FU+LcS群および5-FU+BbY群に群分けした。Saline 群には、Saline(0.2 mL)を7日間経口投与した。5-FU+saline群には、5-FU(400 mg/kg)を1 回経口投与後、Salineを7日間経口投与した。5-FU+LcS群および5-FU+BbY群には、5-FU投与後、LcS菌液(2.0×10
10 CFU/kg以上)あるいはBbY菌液(1.5×10
10 CFU/kg以上)を7日間経口投与した。5-FU投与7日後に血液、腸間膜リンパ節および肝臓におけるBTを確認するために培養法による細菌検査を実施した。【結果】5-FU+saline群、5-FU+LcS群および5-FU+BbY群において血液、腸間膜リンパ節および肝臓から細菌が検出された。これらの細菌の検出頻度および細菌数には、3群間に差は認められなかった。一方、5-FU+LcS群および5-FU+BbY群のマウスの各臓器においては、LcSあるいはBbYのBTは1例も認められなかった。【総括】常在する腸内細菌がBTする状態下の宿主に、LcSおよびBbYを経口投与しても、これらのプロバイオティクス菌株は他臓器にトランスロケートしないこと、また他の細菌のBTに対しても増悪作用を示さないことが明らかになった。
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元村 淳子, 首藤 康文, 小松 豊, 藤江 秀彰, 小嶋 五百合, 富田 真理子, 坂 真智子, 青山 博昭, 原田 孝則
セッションID: P-189
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】我々は2種の有機リン剤を成熟雌ラットに対し複合反復経口投与を実施し、複合投与による毒性作用の増強、毒性作用の2相性あるいは空間認知機能の低下などを報告した。本試験ではOECD発達神経毒性試験ガイドラインに準拠し、異なる2種類の農薬を複合暴露した際の発達期におけるヒト健康影響へのリスク評価に必要な情報を収集することを目的とした。【方法】Wistarラットを供試動物とし、低用量群にはパラチオン (P) 0.3 mg/kgとメタミドホス (M) 0.4 mg/kg、また高用量群にはP 0.6 mg/kgとM 0.8 mg/kgを各々混合したものを妊娠6日 (GD6) から哺育21日 (PND21) まで反復強制経口投与した。母動物および児動物について、体重測定および臨床症状観察、コリンエステラーゼ (ChE) 活性の測定を実施した。さらに児動物に対しては自発運動量、身体発達および性成熟の観察、学習および記憶、感覚機能への影響を評価した。また、乳汁中のPおよびMを分析した。【結果】母動物では、高用量群で死亡および重篤な神経症状が認められ、さらに妊娠期間中に有意な体重抑制が認められた。児動物では、高用量群の雌雄において有意な体重抑制と身体発達の遅延が認められた。低用量群および高用量群において探索行動の亢進が認められた。その他の検査項目に異常は認められなかった。ChE活性測定では、低用量群および高用量群の母動物において血清ChE活性の有意な低下が認められた。児動物においてPND4の高用量群の雄で血清ChE活性の有意な低下が認められた。【考察】PおよびMを混合投与すると相加的に毒性が強く発現し、さらに生理学的変化が著しい妊娠期では、症状および毒性は増強される。PおよびMの経乳汁移行は認められないが、代謝物の移行や母動物の行動変化が児動物の身体発達に影響を及ぼす。(厚生労働省 食品の安心・安全確保推進研究事業)
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阪西 弘太郎, 松本 昌浩, 川端 里佳恵
セッションID: P-190
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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目的 医療機器等のポリマー材料の感作性リスクを評価するにあたり、ポリマーからの抽出液(抽出物)を用いて評価を行っている。このポリマーからの抽出液(物)作製による試験方法では、大きく分けて2つの方法があり、ISO10993-10,12に従い生理食塩液とゴマ油による抽出液を用いた方法、もう一つに国内のガイドラインに従う有機溶媒による抽出物(液)を用いた方法である(現在のISOでは、本方法も記載されている)。そこで、陽性対象物質(DNCB)を0.1%含有させて重合したPMMA(陽性対照プレート:PCプレート)及び、実使用において10年以上の長期使用実績があり、感作性の報告が無い既承認材料Aの2つの試験試料を、ISO(生理食塩液とゴマ油抽出)及び国内ガイドラインに記載されている有機溶媒(アセトン)による抽出、による2つの方法で試験を行い、それぞれの方法による検出感度の違いを確認した。
方法 Hartley系モルモットを使用し、FCAを併用したモルモットMaximization test法により実施した。
結果、考察 ISOに従った生理食塩液・ゴマ油による抽出では、PCプレートにおいても、感作性を全く検出出来なかった。一方、国内ガイドラインによる有機溶媒による抽出では、PCプレートにおいて、明確な感作性が認められたが、材料Aにおいても、僅かに感作性を認める結果となった。これらの結果から、PCプレートの感作性はISOに従った抽出では検出出来ないが、国内ガイドラインによる方法では検出可能であった。この結果を見る限りアセトンでの抽出で十分な感度が得られた。しかし、既承認材料Aでの結果を考えると、感度が非常に高く、陰性のものまで偽陽性と判定される可能性が示唆された。実使用で発生する感作性について、アセトンによる抽出で実施した結果と必ずしも相関があるとは考えにくく、より適切な抽出条件、抽出溶媒を使用する事で過剰に検出される結果を現実的なものに置き換える事も考慮する必要があると思われる。この場合、PCプレートでの抽出を同条件で実施し、抽出操作も含めた試験系の妥当性を保証する必要があると考える。
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鈴木 勝也, 福原 裕司, 岩田 恵実, 小松 加代子, 原 裕一, 大山 わか, 加藤 幾雄, 内田 和美, 小林 稔秀, 金子 公幸
セッションID: P-191
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【緒言】近年、CytochromeP450を介する食品と医薬品との相互作用(食-薬相互作用)が報告されている。特に機能性を有する食品は、医薬品と併用するケースが多いと考えられることから、安全性を評価する際に、医薬品との相互作用について検討することは有用である。そこで、ラット小腸および肝臓におけるCYPの発現変動を指標とする食-薬相互作用の
in vivo評価系を確立するため、代表的な食品を用いて検討した。
【方法】SD系ラット(雄性、7週齢)を用いて、以下の試験を実施した。何れの試験も、対照には注射用水(DW)を用いた。実験1:グレープフルーツジュース(GFJ)20 mL/kgを5日間反復または単回投与し、小腸および肝臓CYP3Aの発現量をWestern blot法により解析した。また、反復投与群については、投与終了後の経時的な変動についても解析した。実験2:セントジョーンズワート(SJW)1,000 mg/kgを14日間反復投与し、投与終了後の経時的な小腸および肝臓CYP3Aの発現量の変動を解析した。
【結果】実験1:GFJを単回あるいは反復投与したラットで、小腸CYP3Aの発現量の減少を認められた。また、GFJによる小腸CYP3Aの抑制は、投与終了後3日以上継続して認められた。実験2:SJWを反復投与したラットで、小腸および肝臓CYP3Aの発現量の増加が認められた。また、小腸CYP3Aの誘導は、投与終了後3日目で対照群と同程度まで回復した。一方で、肝臓CYP3Aの誘導は、小腸よりも回復に時間を要した。
また、実験1および2の回復期間は臨床で報告されている相互作用の持続期間と一致していた。
【まとめ】今回の結果から、食品によるCYPの発現変動について、当評価系により評価することができた。さらに、CYPの発現変動を経時的に解析した結果、臨床報告と一致する結果が得られた。
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福原 裕司, 鈴木 勝也, 小松 加代子, 岩田 恵実, 原 裕一, 大須賀 勇, 加藤 幾雄, 小林 稔秀, 金子 公幸
セッションID: P-192
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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[緒言]食品中に含まれる成分には、薬物代謝などの反応に広く関与するCytochromeP450(CYP)の発現に影響をおよぼし、薬剤との食-薬相互作用を起こすものが存在する。相互作用のリスクをラットを用いて評価することは有益であるが、ラットの肝臓におけるCYPの発現・誘導には系統差があることが知られている。しかしながら、消化管CYPの発現・誘導に関するラット系統差については十分な報告がない。そこで我々は、各系統のラットにCYP誘導剤(Dexamethasone:DEX)を投与し、小腸で誘導されるCYP3Aが肝臓と同様に系統差を示すかどうか検討した。[方法]9週齡の雄性Crl:CD(SD)系(以下SD)、Crl:WI(Han)系(以下Han)およびCrlj:WI系(以下WI)ラットに、蒸留水(10 mL/kg)またはDEX(60 mg/10 mL/kg)を4日間連続経口投与した。投与終了日の翌日、小腸および肝臓を摘出し、P450総量の測定およびWestern blottingによるCYP3A発現量の定量と、免疫組織化学染色(抗CYP3A染色)による組織学的評価を行った。[結果]肝臓においてはDEX投与後のP450総量およびCYP3A発現量に系統差がみられ、Hanで最も高度な誘導が認められた。一方、小腸においては免疫染色の結果からCYP3Aの誘導開始部位が系統により異なる傾向が認められたが、定量的にはCYP3Aの発現量に明らかな系統差はみられなかった [結論] 肝臓で確認されたCYP3Aの発現・誘導の系統差はCYP3Aが関与する食-薬相互作用の肝臓における評価に影響を及ぼす可能性があると考えられた。一方、小腸では定量的にはCYP3Aの発現・誘導に系統差が認められなかったため、CYP3Aが関与する食-薬相互作用を消化管で評価する上で、系統の違いは毒性学的に問題とならないと考えられた。
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加藤 哲希, Gary B FREEMAN, Thomas P BROWN, Karin WALLACE, Kelly R BALES
セッションID: P-193
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【背景】アミロイドβ(Aβ)は,アミロイド前駆蛋白(APP)のペプチド断片であり,アルツハイマー病の病態に中心的な役割を果たすと考えられている。PF-04360365(Ponezumab)は,Aβ40の33~40番目のアミノ酸を認識するヒト化IgG
2抗体であり,より安全な脳Aβの除去を目的に,Fc領域を改変することでエフェクター機能を減弱している。近年,類薬投与において脳の血管浮腫や微小出血の発現に対する懸念が挙がっていることから,PF-04360365と同一機能を有する代替マウス抗体をAPP過剰発現マウスに慢性投与し,脳組織への影響について検討した。
【方法】12ヵ月齢以降に脳実質及び血管への顕著なAβ沈着が認められるTg2576(APP
K670N;M671L)マウス(16~19月齢雌,N=200)に,PF-04360365の代替マウス抗体(CHO由来,AβのC末端認識モノクローナル抗体)10,30または100 mg/kgを週に1回,腹腔内投与した。26週間投与後,病理組織学的検査を実施し,脳の微小出血の有無を精査した。加えて,一般状態,体重,摂餌量,血漿中の投与抗体及びAβ濃度を観察・測定し,剖検を行った。
【結果・考察】血漿中Aβ濃度の上昇が血漿中投与抗体濃度の上昇と共に用量依存的に認められ,本抗体の効果が確認された。一方,脳微小出血の発現頻度はいずれの用量においても低く,その程度も用量に相関した変化はみられなかった。これらのことには,本抗体のエフェクター機能の減弱が寄与している可能性が示唆された。なお,一般状態観察,体重及び摂餌量測定並びに剖検の結果,投与に関連する変化は認められなかった。
【結論】Tg2576マウスにPF-04360365代替マウス抗体を26週間投与した結果,血漿中Aβ濃度の上昇がみられたが,脳微小出血の増加は認められなかった。
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坂本 憲吾, 坂口 靖江, 大谷 光嗣, 野村 護, 下井 昭仁, 佐藤 伸一
セッションID: P-194
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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<目的>化合物の子宮運動に対する影響を評価するため,カニクザルを用いた評価系の確立を目的に実施した.
<方法>非妊娠雌サルの月経周期を確認し,排卵前及び排卵後の性周期に該当する各2~3例に,イソフルランの麻酔下で生理食塩液,子宮収縮薬のジノプロスト(1,3,10又は30 μg/kg)及びオキシトシン(30,100及び300 mU/kg),子宮収縮抑制薬のリトドリン(10 μg/kg)をそれぞれ静脈内に投与した.子宮の収縮波形を,子宮体部の筋層に留置した小バルーンカテーテル及び圧トランスデューサーを介してデータ解析ソフトウェアで記録した.収縮波形における投与前を基準とした波形の変化,収縮曲線下面積,平均収縮圧及び最大収縮圧を指標に,各化合物の子宮運動に及ぼす影響を評価した.
<結果>無処置時の子宮の自発収縮は排卵前が活発であり,排卵後はわずかであった.子宮収縮薬のジノプロストは3 μg/kg以上,オキシトシンは30 mU/kg以上で子宮収縮が認められ,収縮の頻度及び強度が増加した.また,ジノプロストは排卵後の個体において強い収縮作用を示し,子宮収縮は細かい収縮を伴わない一過性の強い収縮(強直性)であった.子宮収縮抑制薬のリトドリン10 μg/kgでは収縮の頻度及び強度の低下が認められた.いずれの化合物も反応がみられた投与量は臨床用量とほぼ同じであった.
<結論>本評価系において,臨床用量とほぼ同じ投与量で子宮収縮薬及び弛緩薬の作用を検出できた.子宮の自発収縮には排卵前後で違いが認められ,子宮収縮薬のジノプロストの反応性は排卵後において強い作用を示したことから,本評価系では使用動物の性周期の選択が重要であると考えられた.
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今野 和則, 松田 浩典, 斉藤 義明, 臼見 憲司, 野口 聡, 千坂 亜希子, 太田 亮, 桑形 麻樹子
セッションID: P-195
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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近年、体内埋め込み型の医療機器の開発に伴い、各組織内での生体に対する適合性が求められている。動物実験を用いた安全性評価では筋肉、骨、皮下を主な適用部位として評価をしてきたが、脳における埋植も視野に入れる必要性が高まっている。そこで、我々は脳内埋植による手技の検討ならびに周囲組織の反応について検討した。
筋肉内埋植試験にて用いられている対照材料(陰性対照:高密度ポリエチレン、陽性対照:0.75% zinc diethyldithiocarbamate含有ポリウレタン)を日本白色種(Kbs:JW)ウサギの脳半球内に1および4週間埋植し、生体への影響を検討した。ウサギを深麻酔後、頭頂部皮膚を切開して頭蓋骨を露出させ、ハンドドリルを用いてBregmaから側頭葉側に約5 mm、後頭葉側に約3 mmの位置に穴をあけ、各対照材料を脳半球内に埋植(深さ約5 mm)した。剖検では4%パラホルムアルデヒド含0.5%グルタール固定液にて灌流固定をした後、脳を採取し、病理学的検査を実施した。その結果、埋植後の観察期間中、死亡動物はなく、体重推移および一般状態にも異常は認められなかった。剖検時の肉眼的検査では、各対照材料の周囲組織に赤褐色の変色が認められた。1週間埋植の組織学的検査では、対照材料に接していた大脳皮質層の神経細胞は壊死し、グリア細胞の浸潤が認められた。また、陰性対照材料よりも陽性対照材料に対する神経組織変化が強く認められ、材料埋植周囲での出血、浮腫が顕著だった。4週間埋植の検査でも同様の変化が認められたが、程度は1週間埋植時よりも弱かった。
今回、埋植部位に選択した領域は一次運動野に該当したが、ウサギでの脳内埋植の手技的操作は実施可能であった。今後、他の領域での検討や、術後の疼痛管理、運動・感覚機能に対する影響も合わせて検討する必要があると考えらえた。
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長尾 友子, 池田 博信, 渡部 貴仁, 左近上 博司
セッションID: P-196
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】従来の体内埋め込み式テレメトリー送信器による呼吸系の計測は血圧の揺らぎからの呼吸数のみであった。新たに開発された体内埋め込み式テレメトリー送信器(D70-PCTR;DSI社)は胸郭インピーダンス法を用いた呼吸機能の計測方法であり、血圧、心拍数及び心電図と共に呼吸数及び換気量などの呼吸系の機能が同時に測定出来るようになった。今回、イヌにおいてD70-PCTRを埋め込み無麻酔・無拘束下でのテレメトリーシステムを用いた長時間の連続した呼吸機能評価を試みた。
【方法】雄性ビーグル犬4匹にD70-PCTRを埋め込み以下の検討を行った。麻酔下でのニューモタコメータとD70-PCTRの同時測定を行い、各種パラメータの相関性を確認した。次に、無麻酔・無拘束下でのD70-PCTRを用いた連続24時間による無処置時の呼吸パラメータの基礎データを収集した。最後に薬剤を投与した時の呼吸機能変化を検討した。
【結果】ニューモタコメータとD70-PCTRによる呼吸系の計測に相関性が認められた。無麻酔・無拘束下での換気量の値について個体間のばらつきがあった。呼吸促進剤を投与した結果は一過性ではあるが呼吸数及び換気量の増加が認められた。
【考察】呼吸パラメータである換気量については個体差があるものの、薬剤における呼吸機能の変化を捉えることが出来た。以上のことからD70-PCTRを用いた呼吸機能はイヌにおいて評価可能と判断された。
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王 瑞生, 須田 恵, 大谷 勝己, 柳場 由絵
セッションID: P-197
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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tert-ブチルアルコール(TBA)は、バイオ燃料であるエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)の生体内中間代謝物であり、また溶剤型接着剤としても使われている。私達はETBEについて検討した結果、高濃度では肝細胞障害、DNA損傷などを誘発するが、その代謝に関与しているALDH2酵素の遺伝子ノックアウト(KO)マウスではその生体影響はより低い濃度においても現れることが判明された。TBAの体内代謝は不明な部分はあるが、代謝の途中、アルデヒド類が産生されるため、ALDH2酵素がその分解に関与すると推測される。TBAの生体影響についての資料は少ないが、一般的にそのシステム毒性が弱く、また遺伝毒性がないと思われる。今回、TBAの生体影響を評価するとともに、KOを用いて、TBAに対する感受性の変化を検討する。【方法】8週令の雄性C57BL/6J(WT)マウスおよびKOマウスに、TBAを0、5または20 mg/mlを添加した飲用水を連続6週間与えた。臓器、血液を採集し、生化学測定、病理解析および網状赤血球の小核頻度の測定を行った。【結果と考察】腎臓、肺、精巣および精巣上体の体重比に対し、両遺伝タイプのいずれの投与群においても影響はなかった。肝臓体重比は、WTマウスは高用量群のみで、KOマウスは低用量と高用量群の両方で有意に増大した。血液系では赤血球数、ヘモグロビン濃度およびヘマトクリット値の上昇は、肝肥大と同じ群で検出された。小核頻度の変化はWTマウスでは検出されなかったが、KOマウスではバックグランド値はWTより高く、両投与群において対照群より増加した。このようにTBAはALDH2活性欠損マウスにおいてより低濃度で肝障害やDNA損傷を誘発することができ、この酵素はTBAの代謝や毒性発現に関与している可能性が示唆された。また、これらの生体影響はETBEと類似しており、TBAがETBEの生体影響の少なくとも一部に係わっていることも示唆された。
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大久保 博充, 新野 竜大, 押岡 香, 大堀 祐司
セッションID: P-198
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】欧州医薬品庁(EMA)は2006年に人用医薬品の新規申請時に環境リスク評価書の提出を義務付けるガイドライン(以下,EMAガイドライン)を発行した。本発表では,現在,我が国の市場に流通している約100種類の人用医薬品について定量構造活性相関(QSAR)データを使ってEMAガイドラインに従った環境リスク評価を行い,環境リスクが懸念される物質の種類やその特性等を明らかにした。また,数種の医薬品を対象にして環境動態試験あるいは環境影響試験を実施し,QSARデータによる環境リスク評価結果との比較からQSARの適用限界や試験実施の重要性等について考察した。
【方法】評価対象物質は国内年間消費量の上位のもの,売上高上位製品のうち使用量が年間10 t以上および国内の水環境中から検出され,かつ,その濃度が10 ng/L以上のものとした。物理化学性状および生態毒性値のQSARはUS EPAのEPISuiteを用いた。活性汚泥呼吸阻害あるいは水/底質系中好気及び嫌気性変換試験についてはQSARによる推算値が得られなかったため,PhaseⅡBの微生物および底生生物へのリスク評価は行わなかった。また,環境リスク評価結果より,環境リスクが懸念された医薬品の中から数種の医薬品について環境動態試験あるいは環境影響試験の各種試験を実施し,QSARデータによる環境リスク評価結果との比較を行った。
【結果】QSARデータによる評価結果より,ほぼ全ての医薬品がPhaseⅠからPhaseⅡA,そのうちの約半数がPhaseⅡAからPhaseⅡBに進むことが分かった。しかしながら,最終的に環境リスクが懸念された医薬品は水生生物,陸生生物へのリスク評価でそれぞれ1物質であった。また,数種の医薬品を対象にして環境動態試験あるいは環境影響試験を実施した。その結果,例えば,ニザチジンについては,QSARデータによる評価結果ではPhaseⅡBへ進み,陸生生物へのリスクが懸念されたものの,環境動態試験結果などからは土壌への移行性(logKoc>4)は認められず,陸生生物へのリスクは懸念されなかった。
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湯田 浩太郎
セッションID: P-199
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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インシリコ(コンピュータ)による安全性(毒性)予測は、薬理活性予測と比較すると適用手法も限定され、その実施条件もかなり厳しい。従って、薬理活性分野で開発されてきたQSAR(構造-活性相関)、3-D QSAR(3次元構造-活性相関)、ドッキングといった既に確立された手法を安全性(毒性)予測に適用することは基本原理上できない。このような中で、化学多変量解析/パターン認識の手法が基本原理的にも安全性(毒性)予測に適用可能な手法であり、現在はこの手法による予測が試みられている。しかし、この化学多変量解析/パターン認識手法はスペクトル解析や分析等の研究分野で精力的に開発されてきた技術である。従って、安全性(毒性)予測分野特有の要求事項等に充分に答えるべく最適化された解析手法や技術は殆ど展開されていない。現在は、他のスペクトル解析や分析研究分野で展開されてきた手法や技術をそのまま用いて安全性(毒性)予測に利用しているにすぎない。
このため、化学多変量解析/パターン認識技術は安全性(毒性)予測に適用可能な数少ない手法/技術であるが、安全性(毒性)予測分野が要求する様々な要求条件を充分に満たしているとは言えない。今回、インシリコ(コンピュータ)上での安全性(毒性)予測に最適化することを目指した予測手法の開発を試み、「KY法」と呼ぶ安全性(毒性)予測手法を開発したので、この手法に関する発表と討論を行う。
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古賀 利久, 湊 宏一, 佐藤 隆, 皆川 俊哉, 古田 盛, 倉橋 良一, 内藤 真策, 中村 和市
セッションID: P-200
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】本邦で2010年2月にStep 5となったICH M3(R2)ではヒト代謝物の安全性評価について概略が示された。その後,ICH M3(R2) Q&A(metabolites)Step 4では安全性の懸念される代謝物として,反応性アシルグルクロナイド(AG)が言及されたが,安全性評価や判断基準について具体的な記載は無く,その対応は各企業に委ねられている。そこで,AGの安全性を考える上で役立つ情報を発信するため,2011年11月~12月に日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 基礎研究部会加盟の60社を対象に,その評価方法及び判断基準についてアンケート調査を実施した。
【結果及び考察】AGが同定された場合、特別な検討をする企業が2/3を占めた。一方,残りの1/3は特別な検討をしておらず,「市場にAGを産生する薬物があること」及び「投与量・吸収量・生成量が少ない」等が主な理由であったが,「AGが生成される開発品は扱わない」という意見も得られた。AGの毒性リスク評価(go/no go)の時期は、「臨床試験開始前」と「臨床試験開始後」に二分した。AGの毒性リスク評価方法として、「蛋白との共有結合試験」、「化学的安定性試験」及び「Mechanism-Based Inhibition試験」等が考えられており、更に「非臨床・臨床安全性」及び「推定一日投与量」の情報も重要視されていた。その一方で「定量的なクライテリアの設定」、「バリデートされた評価系」、「AG標品の入手」及び「AG標品を用いた安全性評価の妥当性」が問題点として浮き彫りになり,AGの毒性リスクを判断する上で、「毒性リスク評価方法」、「判断基準」及び「規制当局の考え方」等に必要性を感じている企業が多かった。これらのアンケート結果を受けて,AGの安全性評価における効率的かつ具体的な評価方法及び判断基準について議論したい。
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川瀧 拓, 山本 敏誠, 松岡 奈央子, 和崎 正彦
セッションID: P-201
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】肝毒性は医薬品開発中止の主要な要因であり,また,ミトコンドリア機能傷害は肝毒性発現メカニズムの一因である.今回,HepG2細胞を用いた2種類のミトコンドリア機能評価系の有用性を既知化合物を用いて検証した.
【方法】培地中のグルコース(Glc)をガラクトース(Gal)に代替することで,解糖系からのエネルギー供給が遮断され,ミトコンドリア障害性を有する化合物では細胞毒性が増強する.その性質を利用して,化合物による細胞毒性を,Glc又はGal培地(Glc/Gal)を用いて評価した.更にミトコンドリア呼吸鎖に関連したパラメーターを測定できる細胞外フラックスアナライザー(XF24,SeahorseBioscience)を用いて,化合物による酸素消費量(OCR)及び酸性化速度(ECAR)への影響を評価した.
【結果および考察】Rotenoneなどミトコンドリアに障害を示す化合物では,Gal培地において呼吸鎖阻害によりATP供給が遮断されるために,より低濃度から細胞毒性を発現したが,ミトコンドリアに障害を示さないcytochalasin Dでは両培地間で細胞毒性に違いは認められなかった.一方,XF24では,Rotenone処理によりOCRが減少し,逆に,ECARが上昇した.呼吸鎖阻害により電子伝達系の酸素消費が抑制されたためOCRが減少し,一方,代謝が呼吸鎖から解糖系にシフトしたことで乳酸産生量が増加しECARが上昇したと推定された.Glc/Gal培地を用いた細胞毒性の評価系は簡便かつスループットと再現性も良好であり,一方,XF24はミトコンドリア毒性の発現メカニズムを詳細に解析可能であった.
【まとめ】以上,両評価系はミトコンドリア機能を評価する際に有用なツールであり,また両評価系を組み合わせることで,ミトコンドリア機能を傷害する化合物を効果的にスクリーニング可能と考えられる.
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松岡 奈央子, 山本 敏誠, 宮崎 登志子, 川瀧 拓, 藤村 久子, 岩瀬 裕美子, 杉山 明男, 和崎 正彦
セッションID: P-202
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】Reactive oxygen species(ROS)アッセイは,化学物質に光照射を行い,singlet oxygen (SO)とsuperoxide anion (SA)の生成を調べる光化学的特性試験の一つである.現在,ROSアッセイの有用性について,多施設バリデーションがJapanese Center for the Validation of Alternative Methods (JaCVAM)において実施されている.プレバリデーションの結果,陽性対照物質quinineでは,濃度依存的にSOが増加するのに対し,既知光毒性物質のchlorpromazine (CPZ)では濃度に逆比例して減少することが判明した.我々は,その原因を明らかにするため,光照射前後のCPZ含有反応液の解析を行った.
【方法】96ウェルプレートに入れたCPZ(20及び200 µM)を含む反応液を,擬似太陽光照射装置中で1時間照射し,
p-nitrsodimethyl aniline 法によりSO産生量を測定した.また,光照射前後の反応液について250~700 nmの吸光スペクトルを測定するとともに,HPLCを用いて反応液を解析した.
【結果/考察】その結果,CPZ含有反応液では,光照射後に吸収波長のベースラインの上昇が認められ,その上昇は200 µMの方が20 µMより顕著であった.さらに,これらのサンプルをHPLC分析した結果,光照射したサンプルでは,分解されたCPZのピークがブロードに認められた.従って,CPZのSO値が用量に逆比例した原因は,光照射によって生じたCPZ分解産物が測定波長に影響したためと推定された.以上のことから,化学物質のSO生成を評価する際には,光分解物による影響を考慮する必要があると考えられた.
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松本 康浩, 尾上 誠良, 細井 一弘, 若栗 忍, 岩瀬 裕美子, 山本 敏誠, 松岡 奈央子, 中村 和市, 戸田 嗣人, 高木 広憲, ...
セッションID: P-203
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】近年,光化学的反応性を調べるReactive Oxidative Species (ROS) アッセイが開発され,医薬品の光安全性評価への利用が期待されている.今回,singlet oxygen (SO) 及びsuperoxide anion (SA) の産生を指標としたROSアッセイの有用性を検証するため,日本動物実験代替法評価センター(JaCVAM)主催による多施設バリデーションを実施した.
【方法】被験物質として23種類の光毒性物質及び19種類の非光毒性物質を用いた.コード化された被験物質(最終濃度200 µM)を含む反応液を96ウェルプレートに分注して1時間光照射を行った後,SO及びSAの産生量を測定した.陽性対照物質としてquinineを,陰性対照物質としてsulisobenzoneを用いた.実験は3回繰り返した.
【結果及び考察】Atlas社製の擬似太陽光照射装置を用いた3施設では,陽性対照物質の日内・日間変動は小さく,施設間の再現性も良好であった.また,難溶性のため評価不可能であった被験物質を除くと,光毒性物質の陽性検出率は全施設とも100%であった.一方,非光毒性物質の陰性検出率は,施設により41.7~81.8%と異なったが,ROSアッセイ陰性の化合物は,3施設ともに全て非光毒性物質であり,偽陰性は認められなかった.以上の結果から,ROSアッセイは,難溶性物質の評価は困難であるものの,in vitroまたはin vivoの光毒性試験の必要性を判断するスクリーニング試験の一つとして有用であると考えられた.現在、使用する光照射装置の種類を増やして,アッセイ系の汎用性について検討中である.
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今井 純, 吉成 浩一, 山添 康
セッションID: P-204
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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[背景] 核内受容体constitutive active/androstane receptor (CAR) は、肝臓に高発現する受容体型転写因子であり、生体異物などにより活性化されると、CYP3A4やCYP2B6などの薬物代謝酵素の遺伝子の転写を亢進する。また、CARの活性化物質のいくつかは、齧歯動物において肝肥大や肝発がんを引き起こすことが知られている。したがって、CARは生体異物に対する防御因子であるとともに肝障害発現のリスクファクターであると考えられる。また、CARの活性化物質の種類には、しばしば大きな種差が認められる。このため、齧歯動物で認められたCAR依存的な化学物質の生体影響が必ずしもヒトで認められるとは限らない。CARは肝由来培養細胞にほとんど発現していないため、CARの機能解析やCAR活性化物質の探索には、培養細胞に一過的にCARを過剰発現させる必要がある。しかし、培養細胞に発現させたCARは多くの場合、活性化物質の有無に関係なく細胞質に留まらず核内移行し、標的遺伝子の転写を亢進してしまう。そのため、培養細胞を用いたCAR活性化物質の探索は進んでいない。そこで本研究では、レポーターアッセイによるCAR活性化能評価系を構築し、その有用性を検討した。[方法] C末端にV5エピトープとHisタグを付加したヒトCAR (hCAR) を発現するプラスミドを用いてレポーターアッセイを行った。[結果・考察]タグの付加により、hCARの恒常的な転写活性が減弱し、CITCOに対する応答性が増大することが明らかとなった。このことから、V5およびHisタグを付加したhCARを用いることで化学物質のhCAR活性化作用を評価できることが示唆された。そこで、化審法既存化学物質176物質についてhCAR活性化作用をスクリーニングしたところ、4物質がhCARを強く活性化した。これら4物質による転写活性化は、hCARのinverse agonistであるclotrimazoleの同時処置により抑制された。以上の結果から、本研究で構築したhCAR活性化能評価系は、リガンドタイプのhCAR活性化物質の簡便な検出に有用であると考えられた。
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大野 克利, 溝田 泰生, 山田 敏広
セッションID: P-205
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】化学物質の発がん性リスク評価において、遺伝毒性試験の情報は重要である。従来の遺伝毒性試験法に比べ、ヒトへの外挿性に優れ、偽陽性の少ない遺伝毒性試験法の開発を目的とし、DNA損傷時p53により発現調節されるDNA修復遺伝子p53R2の発現に基づくヒト細胞を用いた遺伝毒性試験法(NESMAGET
®)を構築し、900種類以上の化学物質を評価してきた。特長として、様々なDNA損傷様式を検出でき、スループットが高く、必要検体量が少ないなどが挙げられ、創薬毒性研究における遺伝毒性スクリーニングに有用であることを示してきた。今回、従来使用してきたヒト乳がん細胞MCF-7に加え、IWGTやICHガイドラインにて遺伝毒性試験への利用が推奨されるヒトリンパ芽球TK6細胞を本試験法へ適用し、その性能評価として、欧州代替法評価センター(ECVAM)から公表されている「遺伝毒性試験性能評価のための遺伝毒性物質及び非遺伝毒性物質の推奨リスト」記載の化学物質61種や代表的な遺伝毒性物質、発がん物質20種を評価し、比較検討したので報告する。
【方法】MCF-7、または、TK6細胞にp53R2の転写調節部位を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを導入し、被験物質添加後のルシフェラーゼ活性を測定することにより、被検物質の遺伝毒性を判定した。
【結果と考察】TK6を用いた本試験法は、陽性対照adriamycinに対し、MCF-7に比べ最大活性は低いものの、ばらつきの少ない安定したルシフェラーゼ活性増加を示した。浮遊細胞であるTK6を使用することにより、試験期間を1日に短縮できた。ECVAMリスト記載61物質+20物質を評価した結果、両細胞とも90%を超える高い陽性一致率、陰性一致率を示した。一方、反応性の異なる物質も数種あり、TK6はMCF-7に比べin vivo小核試験に高い相関を示す傾向が認められた。以上よりTK6を用いたNESMAGET
®は、従来のMCF-7を用いた試験法と同様に遺伝毒性評価法として有用な試験法であることが示唆された。
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合田 圭佑, 山田 直人, 山崎 裕次, 小林 章男, 高橋 統一, 正田 俊之, 公納 秀幸, 菅井 象一郎
セッションID: P-206
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【緒言】薬剤性肝障害の発現と肝臓中グルタチオン (GSH) 量の関連性は広く知られており,肝臓中GSH量を推定することができるバイオマーカー (BM) は,薬剤性肝障害に対する感受性を予測する上で有用性が高いと考えられる。しかし,肝臓中GSH量を高精度で推定可能なBMに関する報告は少ない。そこで我々は,肝臓中GSH量を反映する血漿中BMの探索を目的として,γ-glutamylcysteine synthetase阻害薬L-buthionine (S,R)-sulfoximine (BSO) によるラットGSH欠乏モデルを用いて検討を行った。血漿中BMは,GSH生合成に関連したアミノ酸等を選択して測定した。
【方法】一晩絶食した6週齢の雄性SDラットにBSOを0及び1000 mg/kgの用量で単回腹腔内投与し,投与後24時間まで経時的に血液及び肝臓を採取した。肝臓中総GSH量,血漿中のアミノ酸及び総GSH濃度をLC-MS/MSを用いて測定した。結果の解析は,肝臓中総GSH量を目的変数,血中BMを説明変数とする重回帰分析により行った。
【結果及び考察】BSO投与により,肝臓中GSH量は投与後1~8時間まで,対照群と比較し低値で推移した。一方,血漿中では,GSH生合成に関わるアミノ酸濃度及びGSH濃度等にBSO投与による変動が認められた。これらの結果をもとに,肝臓中GSH量と血漿中各測定項目との相関を調べたところ,肝臓中GSH量の変動を単一項目で説明するのは困難であった。しかしながら,重回帰分析の結果,肝臓中GSH量を説明し得る良好な回帰式が得られ,肝臓中GSH量を推定可能なBMとして,血漿中GSH,アルギニン及びクレアチン濃度等が有用であることが明らかとなった。
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近藤 千真, 山田 直人, 鈴木 優典, 山崎 裕次, 小林 章男, 正田 俊之, 公納 秀幸, 菅井 象一郎
セッションID: P-207
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【緒言】アセトアミノフェン(APAP)誘発慢性肝障害は,絶食などの栄養状態変化によりその発現が影響を受けることが知られている。本発表では,不断給餌ラットあるいは1日4時間のみ給餌した制限給餌ラットにAPAPを反復経口投与し,肝毒性発現について比較検討したので報告する。
【方法】雄性SDラットを不断給餌群(ALF群)あるいは制限給餌群(RF群,1日4時間,10:00-14:00に給餌)の2群に分け,それぞれの摂餌条件でAPAPを0(対照群),300及び500 mg/kgの用量で約3ヵ月間反復経口投与した。試験期間中,血漿中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST),アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT),グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GLDH)活性,血漿中・尿中グルタチオン(GSH)関連メタボロームを経日的に測定した。また,最終投与後に肝臓を採取し,肝臓中GSH含量を測定した。
【結果及び考察】ALF群の血漿中AST,ALT,GLDH活性には,APAP投与による明らかな変動は認められなかった。一方,RF群では,APAP投与により血漿中ALT及びGLDH活性が上昇した。ALF群の肝臓中GSH含量はAPAP投与による増加が認められ,APAPの投与に対する適応反応として肝GSH合成の亢進が示唆された。一方,RF群の肝臓中GSH含量はAPAP投与による減少が認められ,血漿中・尿中GSH関連メタボロームの変化は,肝GSH含量の減少を示唆するものであった。これらの結果から,APAPの投与に対して肝臓におけるGSHの生合成能が十分に適応できていないことが示唆された。以上,制限給餌で飼育したラットは,不断給餌と比較して,APAP長期投与時の肝臓におけるGSH含量が十分ではないため,肝障害に対する感受性が高まったと考えられた。
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足立 民子
セッションID: P-208
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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Phototoxicity sometimes has a strong impact on drug development. However, there is no validated in vivo system likes as 3T3 NRU PT test
in vitro. This study focused on the usefulness of an
in vivo phototoxicity model using Long-Evans (LE) rats for quantitative human risk assessment. Four typical phototoxic drugs for human, 8-Methoxypsoralen (8-MOP, 1.5, 5, 15 and 50 mg/kg), Lomefloxacin (LMFX, 50, 100 and 200 mg/kg), Sparfloxacin (SPFX, 50, 100 and 200 mg/kg), and Pirfenidone (PFD, 160, 320 and 750 mg/kg) were administrated once orally to female LE rats. The skin and eyes of LE rats were exposed by UVA at 10 J/cm
2 around the T
max of each compound. Daily observation of skin and eyes, ophthalmological examination 4 days after dosing, and blood sampling for toxicokinetics (TK) was also performed. Skin and/or eye reactions were noted with dose-dependency in all compounds. At each NOAEL, C
max of 8-MOP in plasma was estimated to be lower than that in humans at therapeutic dose levels, i.e., no margin of safety was noted. In contrast, LMFX, SPFX, and PFD had some margin of safety compared with human exposure levels, i.e., 5, 4 and 7 times, respectively. These results appear to correlate with the phototoxic potential, because 8-MOP is a “contraindication” for light exposure, and LMFX, SPFX, and PFD are a “warning”. Therefore, it is considered that the
in vivo phototoxicity assay using LE rats with TK analysis is useful to quantitatively predict phototoxicity risk of pharmaceuticals to humans.
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黒瀬 光一, 宇梶 真帆, 斎藤 嘉朗, 打田 光宏, 土屋 敏行
セッションID: P-209
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】医薬品のヒトにおけるアレルゲン性(感作性)を予測することは,その開発および安全性確保の観点から重要なことであるが,非臨床試験では必ずしも予測することができず,未だ確立された試験法は無い.一方,アレルギー性の接触皮膚炎に対する評価系としては,ヒト単球様培養細胞THP-1を用いた human Cell Line Activation Test (h-CLAT)の有用性が認められ,in vitro皮膚感作性試験法として確立されつつある.そこで我々は,外用剤だけでなく全身投与用医薬品のアレルゲン性を評価する系として,h-CLATの検討を行った.
【方法】アレルギー性副作用報告のある医薬品17物質に対して,定法に従ってh-CLATを実施し,アレルゲン性の評価を行った.
【結果・考察】試験を試みた医薬品17物質のうちh-CLATのアッセイ要件を満たしたものは11物質(ampicillin sodium,D-penicillamine,ticlopidine hydrochloride,cephalothin sodium,diclofenac sodium,levofloxacin hydrochloride,gefitinib,albendazole,amiodarone hydrochloride,carbamazepine,pravastatin sodium)であり,これらはいずれも陽性判定となった.他の6物質(いずれも脂溶性物質)については,最大溶解濃度になるよう被験物質を培地に加えても細胞生存率が十分に低下せず,アッセイ要件の一つであるCV75(被験物質の暴露による75%の細胞生存率)を満たすことができなかった.CV75を得られる条件の検討が今後の課題であり,発表時にはこの点に加え,h-CLAT の医薬品アレルゲン性評価に関する有用性についても考察する.
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勝呂 繭子, 河部 真弓, 沼野 琢旬, 古川 文夫, 浦野 浩司, 堤 秀樹
セッションID: P-210
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【背景】rasH2マウスの皮膚を用いてより短期に発がん性の有無を評価できる「超短期皮膚二段階発がん性評価法」を開発する目的で、イニシエーターとしてDMBA(50 μg/100 μL)を用いたモデルの検討をこれまで実施してきた。このモデルは、過去の検討で既知の皮膚発がんプロモーターであるTPA(第36回トキシコロジー学会にて報告)やBenzoyl peroxide (BPO)を投与することにより8週間で皮膚腫瘍が発生することが確認されている。しかし、溶媒又は非発がん物質の投与によっても少数の腫瘍が発生するという問題点が認められたことから、再度DMBAの用量の検討を行った。【方法】雌のrasH2マウス (7週齢、各群10匹)の背部皮膚にDMBA (12.5又は25 μg/100 μL)を1回経皮投与し、その1週後より既知の皮膚非発がん物質であるOleic acid diethanolamine condensate (OADC, 30 mg/kg b.w. ) 及びその溶媒の99.5%エタノールを週7回、Benzethonium chloride (BC, 1.5 mg/kg b.w.)及びその溶媒の無水エタノールを週5回投与した。さらに陽性対照群としてBPO (20 mg/200 μL)を週5回投与する群 (各群5匹)を設けた。実験8週で剖検し、皮膚の病理学的検査を実施した。【結果】実験5週時にBPO投与群で皮膚腫瘤の発生が認められ、DMBA 12.5 μg処置群及び25 μg処置群でそれぞれ7週及び6週時に発生率が100%に達し、剖検時の平均発生個数はそれぞれ29.2個及び35.6個であった。一方、OADC、BC、及び溶媒投与群では腫瘤の発生は認められなかった。【まとめ】rasH2マウスの皮膚に12.5又は25 μg/100 μLの用量のDMBAでイニシエーションをした結果、プロモーターの投与により皮膚腫瘍が発生した一方で、溶媒又は非発がん物質による腫瘍の発生は認められなかった。この結果から、DMBAの用量は12.5 μg/100 μLで十分量と考えられ、今後もこのモデルを用いたデータの蓄積を進めていく予定である。
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Mutsumi MIYAMOTO, J. SENTZ, D. HIGGINS, J. SHEEHAN
セッションID: P-211
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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The invasive telemetry system and snapshot recording of ECG are commonly used to monitor cardiovascular (CV) endpoints in safety pharmacology and toxicity studies. Due to the recent development of non-invasive jacket telemetry systems, CV endpoints can be monitored for longer periods on toxicity studies in unrestrained dogs and monkeys. It is essential to habituate animals to the jacket prior to the data collection period to obtain good quality data. The purpose of this study was to determine the optimal habituation period based on heart rate response. Heart rate (HR) was collected from 4 jacketed non-human primates (NHPs) following 3 consecutive occasions of jacket habituation. Heart rate was also collected from two sets of canine jacketed dogs (Set A: 18 dogs, Set B: 4 dogs) following 3 and 7 consecutive occasions of jacket habituation. Heart rate data collected following 3 and 7 day jacket habituation was compared with the Testing Facility’s historical control data collected from non-jacketed, invasive telemetry models in both species. The Testing Facility’s historical control data consisted of an average HR collected from 107 primates and 145 canines. Heart rate collected from jacketed monkeys (following 3 day habituation) and dogs (following 3 and 7 day habituation) are comparable to data from non-jacketed animals. Therefore, we concluded that a three day habituation is optimal to prevent undesirable effects in the CV data that may result from insufficient jacket habituation.
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西土井 悠作, 尾崎 晴茂, 平井 加津子, 高井 有一, 大塚 博比古
セッションID: P-212
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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超音波画像検査は、同個体より経時的に臓器の形態観察や血流速度測定を非侵襲的且つ簡便に実施できる検査法である。本実験では、精巣の毒性評価における同検査の有用性を検証するため、11週齢の雄性F344/Jclラットにhuman chorionic gonadotropin (hCG)の2000 IU/kgを単回皮下投与し、投与28日後まで超音波画像診断装置(aplio-XG、TOSHIBA)を用いて精巣の変化を評価した。形態観察、精巣表面を蛇行する動脈(精巣動脈)の血流速度測定及び造影超音波検査を麻酔下にて実施した。投与2及び28日後に病理組織学的検査も実施した。
形態観察では、hCG投薬群で精巣の矮小化、精巣下部の輝度上昇および精巣下部の音響陰影が経日的変化としてみられた。輝度上昇は、病理組織学的にみられた鉱質沈着を伴う巣状壊死を反映していた。造影超音波検査においては、hCG投薬群で血行動態の指標である時間音圧曲線下面積(AUC
0-40sec値)の低下及び最大音圧到達時間(TP)の延長が、精巣上部では投与6時間後に、精巣下部で投与6時間~2日後にそれぞれ認められた。特に投与6時間後の精巣下部での変化は顕著で、同時間帯には精巣動脈の血流速度も低下していることから、精巣下部は虚血状態となり、巣状壊死に陥ったと推察される。この病変の中心部では血管の壊死及び消失を特徴とする間質の壊死を伴っていたことから、投与2日後に精巣下部でみられたAUC
0-40sec値の低下は壊死病変に伴う血行動態の低下を示唆している。投与7日後以降はAUC
0-40sec値及びTPに変化はみられず、巣状壊死があるにも関わらす、血行動態が回復したと考えられた。以上の結果より、超音波画像検査を用いて形態観察、精巣動脈の血流速度測定及び造影超音波検査を実施することにより、hCG投薬起因の精巣毒性及びその特性を生前検査で評価することができ、その有用性を確認することができた。
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藤原 淳, 飯野 雅彦, 星野 満, 若狭 芳男, 佐藤 伸一, 下井 昭仁, 野村 護
セッションID: P-213
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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通常の毒性試験や安全性薬理試験で行われる一般状態観察やFOBでは観察できない有害作用(感覚機能や認知機能の障害,嫌悪感)を検索するために,サルを用いた行動薬理試験を確立したので報告する.
実験にはアカゲザル又はカニクイザルを用い,FOB,微細運動機能試験,注意機能試験及び嫌悪効果試験を実施して,各試験における効果発現最小用量を比較した.
FOBでは,所定の観察基準に従い行動変化及び反射等を肉眼的に観察した.微細運動機能試験では,餌ペレットを両手指先でつまみながら取り出すように加工した特殊給餌器を用いて摂餌所要時間を測定した.注意機能試験では,短時間のランプ点灯時間中に限定する餌強化レバー押し行動を訓練し,ランプ点灯からレバー押し開始までの反応速度を測定した.嫌悪効果試験では,レバー押しによる餌強化と同時に薬物を強制静脈内注入し,薬物効果によりレバー押し行動を中止するまでの総薬物注入量を観察した.
中枢神経系抑制作用を有するジアゼパム及びペントバルビタールでは,FOB,微細運動機能及び注意機能の各試験における効果発現最小用量はそれぞれ2,4及び1 mg/kg,p.o.,16,16及び4 mg/kg,i.m.であった.
嫌悪効果を有することが知られているオピオイドκ受容体作動薬U-50488Hでは,FOB,微細運動機能及び嫌悪刺激の各試験における効果発現最小用量はそれぞれ0.064,0.064,i.m. 及び0.05~0.1 mg/kg,i.v.であった.
以上の通り,サルにおいて,FOBでは観察できない微細運動機能及び注意機能への影響ならびに嫌悪効果の発現を,FOBで変化を検出した用量と同量もしくはそれ以下の用量で検出できた.したがって,これら一連の行動薬理試験は,非臨床試験における被験物質の有害作用の検出に有用であると考えられた.
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坂口 靖江, 星野 満, 飯野 雅彦, 宮崎 淳, 西村 正吾, 若狭 芳男, 坂本 憲吾, 野村 護, 下井 昭仁, 佐藤 伸一
セッションID: P-214
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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<緒言>一般毒性試験に機能観察総合評価法(FOB)を組み込んで実施することが提唱されている.本研究では,FOBの観察操作に対する馴化の有無がFOBの観察精度に及ぼす影響を検討した.その後,中枢神経系抑制薬のクロルプロマジン(CPZ)及び興奮薬のコカイン(COC)を投与し,FOBを実施した.
<方法>育成段階でヒトへの馴化を行っているが,FOBの経験のない雄カニクザル8例を用いた.FOBは,ケージ内の状態,観察者への反応性,運動機能などのほか,モンキーチェアーに保定し,各種反射機能等を投与前,投与後5分,1,2,4及び6時間に観察した.初めに,6例を用いFOB観察操作及び一般毒性試験での捕獲,投与,採血の操作のいずれも未経験の状態(未馴化)で生理食塩液(SAL)を投与し,FOB及び各観察の直前に採血(n=3)を実施した.次いで,FOB操作(モンキーチェア及び捕獲操作)に対する馴化を3日間以上実施後,同様にしてSALを投与してFOB及び採血(n=4)を実施した.最後に,CZP及びCOCを投与してFOBを実施した.
<結果>未馴化では,採血操作の有無に関わらずSAL投与前と比べて投与後に接触反応や聴覚反応の反射機能の低下がみられたが,馴化後には反射機能の低下はみられず,投与前とスコアの違いはわずかであった.馴化後のCPZ投与では,運動低下,閉眼,動作緩慢及び運動失調等の中枢抑制症状,また,COC投与では,運動持続,異常発声,被刺激性の亢進等の中枢興奮症状が認められた.
<考察>未馴化の状態では,反射機能の低下がみられたが,FOB操作に対する馴化によりその変化は消失した.したがって,一般毒性試験にFOBを組み込む場合,薬物投与前にFOB操作に関して3日間以上の馴化を実施することで,より精度の高いFOBデータが得られると考えられる.FOBの馴化は血液生化学検査等に影響するため,馴化期間における検査の順番を考慮する必要がある.
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藤村 久子
セッションID: P-215
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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近年の医薬品開発において難溶性の候補化合物が増加しており,低曝露により毒性試験が困難なケースが生じている.難溶性の問題に対しては塩/媒体検討あるいは微細化が一般的に用いられるが,前者は検討に時間を要し,後者は特殊な技術を必要とするなどの難点があり,特にスピードを要する開発初期段階では適用し難い.今回,実験室レベルでナノ化調製が可能な新規微細化装置を用いてナノ化法の詳細検討をおこない,動物における毒性試験用量での曝露改善を確認したので報告する.【材料と方法】 微細化装置:NP-100(シンキー社製).難溶性化合物のモデル化合物としてシロスタゾール,フェニトイン等を用い調製方法を検討した.化合物1 gに対しジルコニアビーズ(0.1 mm径)20 g, 媒体 5 mLを投入.粉砕10分後に媒体 5 mLを追加し解砕1分後にビーズを分離した.本ナノ化法と別途メノウ乳鉢法で調製したシロスタゾール投与液(30および300 mg/kg)を各々雄ラット(CD(SD),6週齢)に単回経口投与し,両処方による全身曝露量を比較した.血漿中の薬物濃度はLC-MS/MSにより測定した.【結果】 媒体によってはナノ化後の二次凝集が進む場合があり媒体選択の重要性が明らかとなった.今回検討の化合物では,媒体として「0.5% HPMC(TC5E,信越化学)-0.5% Tween80」が最適であった.得られたナノ化投与液(粒径:200 nm前後)において調製前後の結晶形の変化はなく,また,冷蔵保存下で2週間まで結晶形,粒径ともに安定であった.ラット単回試験におけるシロスタゾールの曝露はメノウ乳鉢法と比較してナノ化法ではC
max,AUC
0-24ともに3.5倍に上昇した.【結論】本微細化装置と最適媒体を用いることにより毒性試験で使用する高濃度投与液のナノ化が可能であった.最適化したナノ化処方により難溶性化合物の明らかな曝露改善が確認できた.本法は操作も簡便で汎用性が見込まれることから,難溶性化合物の毒性評価において極めて有用である.
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加藤 英男, 伊藤 格, 今井 順, 内藤 一嘉, 久木 浩平
セッションID: P-216
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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目的:皮下投与による刺激性の評価には、ウサギあるいはげっ歯類が用いられることが多い。しかし、臨床上、脂肪組織を多く含むヒトの腹部皮下を投与部位とする場合、これらの動物種の皮下組織は脂肪組織が少ないため、刺激性の評価に適さない場合が考えられる。そこで、各種実験動物の皮下組織の構造を比較検討し、その中でもヒトの腹部皮下組織と構造的に類似性の高いミニブタを用いて、酢酸の皮下投与による局所刺激性を検討した。
方法:(1) 10種類の実験動物の皮膚の病理組織標本を作製した。(2) ミニブタの皮下投与を「注射剤の局所刺激性に関する試験法改正案」を参考に実施した。生理食塩液、0.425%酢酸、1.7%酢酸の0.1 mLあるいは1 mLを、ミニブタ (Göttingen) の頸部、背部及び鼠径部に皮下投与した。投与後2日及び14日に投与部位皮膚を採取し、病理組織学的検査を行った。
結果: (1) ミニブタの皮下組織は脂肪組織を多く含み、その構造はヒトとの類似性が高かった。(2) ミニブタの皮下投与において、酢酸投与後2日では、頸部、背部及び鼠径部ともに出血、脂肪細胞壊死及び炎症性細胞浸潤が認められた。酢酸投与後14日では、頸部、背部及び鼠径部ともに出血、脂肪細胞壊死及び肉芽組織の形成が認められた。また、これらの組織変化の程度は、酢酸の投与液量及び濃度に依存していた。
結論: ミニブタでの皮下投与は、ヒトの皮下組織に類似する組織での局所刺激性の評価を可能とするものと考えられる。
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三輪 恵子, 足立 民子, 佐藤 優子, 佐藤 寛子, 竹川 晃司, 杉山 明男
セッションID: P-217
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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創薬の過程において薬剤性光線過敏症のリスク評価が重要になっている.今回,ヒトで光線過敏症が報告されているLomefloxacin(LMFX,50,100,200 mg/kg),Sparfloxacin(SPFX,50,100,200 mg/kg)およびPirfenidone(PFD,160,320,750 mg/kg)をLong-Evans(LE)ラット(雌)に単回投与し,各化合物のT
maxに近い時点で背部皮膚および眼にUVAを30分間照射(10J/cm
2)して4日後まで観察するとともに,血漿,眼球および背部皮膚中濃度をLC/MS/MS法で測定し,全身曝露量及び組織移行性の評価を実施した.その結果,上記3化合物ともにいずれも投与量に依存したの紅斑・水腫などが認められ,LOAELにおける光照射時の血漿中濃度はLMFXで13.5μg/mL,SPFXで4.46μg/mL,PFDで167μg/mLだった.このとき皮膚のKp値(光照射時の皮膚中濃度/血漿中濃度)はLMFX(1.2~3.2)≒SPFX(2.1~2.3)>PFD(0.6~0.8)とLMFXおよびSPFXでは血漿中濃度と同等以上の高い皮膚移行性を示したが,PFDではやや低値だった.一方,水晶体については全ての化合物で毒性変化を認めず,またKp値はPFD(0.6~0.7)>SPFX(0.2~0.3)>LMFX(0.1~0.2)とPFDを除き組織への移行性は皮膚と比較して低値を示した.以上,モデル化合物を使用したin vivo光毒性試験に伴う組織移行性の検討結果から,組織移行性(Kp値)が比較的高い薬剤及び標的組織で光照射による組織毒性反応が惹起されたことを確認した.本試験系は,ヒトの光毒性リスクを評価するための有用な方法であると考えられた.
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緒方 聖也, 渡辺 智宏, 高田 早苗, 前田 尚之, 谷 吉朗, 三分一所 厚司
セッションID: P-218
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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我々は、アミオダロン塩酸塩(AH)を4日間反復経口投与したラットに鼻粘膜障害が生じることを見出し、その病理組織学的特徴から、投与液の鼻咽頭管・鼻腔への直接曝露に起因する可能性があることを報告した(第28回日本毒性病理学会)。しかし、投与液の明らかな逆流は認められなかったことから、曝露経路の検証のために以下の検討を実施した。
まず、投与液の鼻粘膜刺激性を調べた。0、1.5、15 mg/mLのAHを雄性F344ラットの片側の鼻孔から40 µL点鼻投与し、鼻腔の病理組織検査を実施した。15 mg/mL(4日間反復経口投与により、鼻粘膜障害が生じた濃度)の投与により、投与した側の鼻腔にのみ病変が生じ、鼻粘膜刺激性が確認された。主な病変は呼吸上皮、移行上皮および嗅上皮の変性/壊死であり、4日間反復経口投与での病変と同様であった。病変の発生頻度は投与経路に合致し、鼻腔のLevel 1と比べてLevel 3で低かった。これは、4日間反復経口投与での病変の発生頻度とは逆であった。
また、経口投与時の投与液の口腔への到達を調べるために、3、10、20 mL/kgの墨汁をラットに単回経口投与し、綿球を口腔内に入れ、綿球から回収された墨汁の濃度を分光光度計により測定した。いずれの条件でも、回収された墨汁は少なく、高い値を示した動物でも0.2 µLの墨汁原液に相当する量であった。
以上より、AHは鼻粘膜に対する刺激性を有するとともに、直接曝露では鼻腔病変の頻度が曝露経路に合致することが示唆された。また、墨汁を用いた検討では極めて微量の投与液の口腔への到達が確認された。げっ歯類では鼻咽頭管と口腔が接しており、同様に鼻咽頭管にも投与液が飛沫などの形で到達する可能性が考えられる。AHの4日間反復経口投与で認められた鼻腔・鼻咽頭管病変が鼻咽頭管側からの直接曝露に起因することを示唆するデータが得られた。
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高井 翔平, 樋口 悟法, 矢野 梓, 常山 幸一, 深見 達基, 中島 美紀, 横井 毅
セッションID: P-219
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】海外で使用されている抗菌薬フルクロキサシリン (FLX) を服用した患者において、稀に重篤な肝障害を発症することが知られており、死亡例や肝移植例も報告されている。肝障害を発症した患者に、発熱や肝臓への免疫細胞の浸潤などのアレルギー様症状が認められていることから、FLX誘導性肝障害の発症には免疫反応が関与していることが示唆されている。これまでに、FLX誘導性肝障害の動物モデルを作製した報告はなく、肝障害への免疫反応の関与を明らかにした例もほとんどない。本研究はFLX誘導性肝障害のモデルマウスを作製し、FLX誘導性肝障害における免疫学的因子の関与を明らかとすることを目的とした。
【方法】FLX(1,000 mg/kg, in saline)をBALB/c (6週齢、雌)に単回腹腔内投与した後、経時的に血漿および肝臓を採取し、血漿中の血液生化学的パラメータの測定、肝臓の組織学的な評価を行った。また、免疫学的関連因子の肝臓中mRNAの発現変動の測定および血漿中HMGB1の定量を行った。
【結果および考察】FLX投与により血漿中のALT値、AST値およびT-Billの有意な上昇が認められ、ALT値は薬物投与3から6時間後、AST値とT-Bilは薬物投与3時間後に最も高値を示した。Toll-like receptor 4 (TLR4) のリガンドであるS100A8/A9 mRNAと血漿中HMGB1量の発現変動を解析したところ有意な上昇が認められた。また、肝臓中の炎症性因子のmRNAの発現変動を解析したところ、mRNA interleukin (IL)-1β、IL-6、CXCL1、macrophage inflammatory protein (MIP) -2、monocyte chemoattractant protein (MCP) -1等の炎症関連因子の上昇が認められた。また、IL-17を誘導する転写因子であるretinoid-related orphan receptor (ROR) -γtとIL-6の有意な上昇が認められた。IL-17が増悪因子として作用するか検討するため、recombinant IL-17を投与したところALT値の有意な上昇と肝臓中へ浸潤した免疫細胞数の増加が認められた。以上、FLX誘導性肝障害モデルマウスを作製し、肝障害の発症における免疫学的因子の関与を示唆することができた。
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香月 康宏, 小林 カオル, 大島 毅, 墳崎 靖子, 千田 直人, 秋田 正治, 鎌滝 哲也, 阿部 智志, 久保 欣也, 千葉 寛, 押 ...
セッションID: P-220
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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市販薬の約50%を代謝する薬物代謝酵素cytochrome P450 3A (CYP3A) は主に肝と小腸に発現しており、経口投与された薬物の血中濃度の制御に重要な役割を果たしている。しかしながら、CYP3Aの特性は動物とヒトで異なるため、ヒトにおけるバイオアベイラビリティや薬物相互作用を動物実験から予測するには限界がある。本研究において、我々がこれまでに開発したヒト人工染色体(HAC)ベクターシステムを用いて、ヒトCYP3A遺伝子クラスター(CYP3A4, CYP3A43, CYP3A5, CYP3A7)およびその制御領域を含む約700kbをHACベクターにクローニングし、CYP3A-HACベクターを導入したマウスを作製した。また、完全なCYP3Aヒト化マウスを作製するために、マウスの内在性
Cyp3a遺伝子クラスターが破壊されたマウス(Cyp3a-KOマウス)を作製し、CYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウスを作製した。このマウスでは、ヒトと同様に肝臓と小腸にCYP3A4の発現が組織特異的に認められ、さらに成体期特異的に発現するCYP3A4は成体期に、胎仔期特異的に発現するCYP3A7は胎仔期にそれぞれ発現し、CYP3A分子種の時期特異的な発現も再現された。また、CYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウスにおいてトリアゾラム代謝の動態、CYP3Aを介した不可逆的阻害、およびDHEAの胎児期特異的代謝物について調べたところ、ヒト型化されていることが示された。さらに、胎仔培養システムにおいて、胎仔培養液中にサリドマイドを添加し、11.5日胚の胎仔を24時間培養したところ、サリドマイドを投与したCYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウス群においてのみ21例中9例(42.9%)において、四肢の奇形が優位に観察された。従って、CYP3A-HAC/Cyp3a-KOマウスはCYP3Aにより代謝される薬物評価や催奇形性評価に利用できることが示唆された。
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横谷 亮, 野崎 裕美, 奥村 佳奈子, 中山 拓生, 石川 典子, 平田 真理子, 木口 雅夫, 溝口 定之, 百瀬 清一, 堀本 政夫, ...
セッションID: P-221
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】近年、抗肥満作用を有する医薬品や機能性食品の開発が盛んに行われるようになり、実験動物を用いた抗肥満作用評価のニーズが高まっている。そこで我々は、アシドーシス、脂肪肝および内臓脂肪増加を誘発する飼料Aをラットに摂取させ、ヒトの肥満状態により近い食餌性肥満動物モデルの作出を最終目標として、種々の検討を行っている。今回は、この飼料Aによるラットの系統間への影響について比較検討を行った。
【方法】5週齢のCrlj:WI、Crl:CD(SD)、Slc:SDの3系統の雄ラットを用いて、1群6匹に飼料として通常食(CRF-1)または飼料Aを28日間自由に摂取させ、体重および摂餌量を定期的に測定した。摂餌28日翌日に剖検し、主要臓器重量測定、血液化学的検査、病理組織学的検査を行った。各系統の試験実施時期は異なっていることから、系統間の比較に際しては、各系統の飼料A群の値をそれぞれの系統の通常食群の値で除した数値を指標とした。また、他施設で実験されたSlc:SDのデータについても併せて比較した。
【結果・考察】通常食群と比較して、飼料A群ではどの系統でも体重、肝臓、内臓脂肪重量の増加、脂肪肝ならびにLDL/HDL値の上昇などがみられた。また、Slc:SDでも同様な結果が得られ施設間の差はみられなかった。これらの結果を元に、飼料Aの影響を系統間で比較したところ、体重、摂餌量、肝臓重量、内臓脂肪重量、血中脂質、AST、ALT、ALPに系統差がみられ、特にCrl:CD(SD)の肥満化の程度は他の系統に比べ弱いと考えられた。飼料Aによる肥満化の程度に系統差が生じた要因として、摂餌量や血中脂質などで系統差がみられたことから、餌の嗜好性、肝臓での脂質・エネルギー代謝などの複合要因による影響が考えられた。以上より、本飼料による肥満の程度に系統差がみられたことから、本飼料のような栄養組成による食餌性肥満動物モデルの作出に際しては系統での比較検討も重要であることが示唆された。
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谷口 雄三, 菊森 幹人, 六角 香, 守永 太賀彦, 古川 茂典, 藤井 登志之
セッションID: P-222
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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Summary: In order to evaluate the value of diabetic Japanese monkeys (
Macaca fuscatus) as an animal model studying the pathogenesis of diabetic neuropathy, morphological examinations were performed on myelinated nerve fibers and endoneurial microvessels at three levels of the lower limb nerve in six streptozotocin (STZ)-diabetic monkeys with the duration of diabetes up to 36 months and in six roughly age-matched control monkeys using a computer-assisted image analyzer. Nerve fiber loss was not found, although a tendency for nerve fiber atrophy was found in diabetic monkeys. Endoneurial microvessels did not show either endothelial or pericyte proliferation or basement membrane thickening. The results suggest that chronically STZ-diabetic Japanese monkeys with the duration of diabetes up to 36 months might be useful for studying diabetic axonopathy, but do not closely mimic the nerve pathology found in human diabetic neuropathy.
Animals: Fourteen Japanese monkeys (
Macaca fuscatus) weighing 3.7~8.7 kg were used as experimental animals. None of the monkeys showed glycosuria or proteinuria by paper strip test before the experiment. Eight monkeys were made diabetic by a single injected of 50 mg/kg STZ dissolved in citrate buffer into the femoral vein. All monkeys that received STZ showed glycosuria within at least 2 days after the injection and persistent glycosuria was noted before death. The plasma glucose level was determined one or more times in eight diabetic monkeys. They were kept in cages and fed on monkey chow (Oriental Yeast Co., Ltd., Japan) supplemented by fruit and sweet potatoes and free access to water along with the remaining six monkeys which were used as controls.
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蓑毛 博文, 谷口 康徳, 水由 健介, 澤田 和俊, 渡邉 健太郎, 岩切 哲平, 杉本 崇至, 田淵 秀剛, 瀬戸山 孔三郎, 福岡 香 ...
セッションID: P-223
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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播種性血管内凝固症候群(DIC)は,基礎疾患の存在下で全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし,細小血管内に微小血栓が多発する病態である.ラットDICモデルの報告は多数あるが,サル類の報告はほとんどない.現在DICの治療には遺伝子組換えトロンボモジュリン等の蛋白製剤が使用されており,交差性の観点から今後の新薬の開発を行う上でサル類を用いたDICモデルの作製が望まれる.そこで,前臨床試験で用いられているカニクイザルにLPSを投与しDICモデルの作製が可能か検討した.
雄カニクイザル3例にLPS 0.6 mg/kgを2時間静脈内持続投与し,投与終了後24時間まで経時的に,血液学的検査,凝固・線溶系検査,血液生化学的検査を実施した.
投与終了直後には白血球(単球,リンパ球)の低下,トロンビン・アンチトロンビンIII複合体,α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体の上昇,投与終了後2時間にはPT,APTTの延長,投与終了後4時間にはプラスミノーゲン活性化抑制因子の上昇,投与終了後6時間には,フィブリノーゲンの低下,FDP,Dダイマーの上昇がみられた.これらの凝固活性化により投与終了直後から血小板数は低下し,投与終了後24時間には約50%に低下した.血液生化学的検査では,投与終了後4時間にはγGTの上昇,投与終了後6時間にはクレアチニンの上昇がみられ,DICで特徴的な肝臓・腎臓への影響がみられた.ヒトのDIC診断基準である血小板数,FDP,PT,フィブリノーゲンに変化がみられており,ヒトへの外挿性が高いと考えられ,カニクイザルを用いたLPS誘発DICモデルはヒトDICのモデルになる可能性が示唆された.
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中西 康晴, 山下 浩幸, 吉川 剛, 鵜藤 雅裕, 中村 稚加, 宇野 泰広
セッションID: P-224
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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【背景と目的】カニクイザル(Mf)は進化系統樹においてヒトに近いため,安全性や薬物動態などの非臨床試験に用いられているが,Mfの小腸初回通過代謝はヒトより高く,生物学的利用率が低い原因と考えられている。小腸初回通過代謝にはチトクロームP450(CYP)が関与しており,CYP3Aに関してMfにおける小腸CYP酵素活性からヒトの小腸初回通過代謝を予測する試みがなされている。ヒトにおける小腸CYP酵素活性については,個体差や性差等の基礎的な情報が多く報告されているが,Mfに関しては十分な研究がなされていない。本研究ではMfにおける小腸CYP酵素活性について,個体差,性差および産地差を調べた。産地差はカンボジアおよび中国で繁殖したMfで比較した。CYP1Aはダイオキシン類等のがん原性物質の代謝に関与しており,またCYP3Aは多くの医薬品の代謝に関与しているため,いずれも重要な酵素である。このことから,CYP1Aで代謝されるエトキシレゾルフィンおよびCYP3Aで代謝されるテストステロンを基質として,エトキシレゾルフィン
O-脱エチル化およびテストステロン6β水酸化酵素活性を測定した。
【方法】カンボジア産Mf(3-4歳齢,雌雄各20匹,計40匹)および中国産Mf(5-8歳齢,雄7匹)の小腸ミクロソームを用いて測定した。代謝物濃度は,radio-HPLCおよびLC-MS/MSを用いて定量した。
【結果および考察】カンボジア産Mfのエトキシレゾルフィン
O-脱エチル化およびテストステロン6β水酸化酵素活性を測定した結果,雌雄での差はそれぞれ0.9倍および1.1倍であり,明らかな性差(>1.5倍)はみられなかった。個体間の最低値と最高値の差はそれぞれ36.4倍および12.7倍であった。カンボジア産と中国産Mfの差は,それぞれ0.9倍および0.7倍であり,産地差(>1.5倍)はみられなかった。産地間で差異がみられなかった理由は,中国産Mfが,カンボジアを含むインドシナ半島由来の個体を元に繁殖されたためと考えられる。これらの結果は,ヒトにおいて経口投与された薬物の体内動態を,Mfを用いて外挿する重要な情報となる。
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山下 浩幸, 池川 雅哉, 三島 稔, 川原 毅, 中塩屋 一, 真鍋 ひろ子, 伏貫 義十, 前田 英則, 内野 博志, 谷口 康徳, 杉 ...
セッションID: P-225
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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【目的】
近年、成熟時体重が10 kg未満の国産ミニブタであるマイクロミニピッグ(MMPig、富士マイクラ株式会社)が作出され、非げっ歯類動物を用いた非臨床安全性試験における非ヒト霊長類やイヌの代替動物として期待されている。本研究はMMPigに四塩化炭素を単回経口投与し、血液生化学的検査および病理組織学的検査を実施し、その肝毒性を評価した。さらに、過去に行ったカニクイザルおよびラットのデータと比較した。
【方法】
実験-1 : 四塩化炭素(原液)の0.4 mL/kgを雄1匹雌2匹に単回経口投与し、24時間に剖検、病理組織標本を作製して、先に実施したラットおよびサルの試験結果と比較した。また、雌雄各1匹については、血漿中の四塩化炭素濃度を経時的に測定した。実験-2:四塩化炭素(原液)の0.4 mL/kgを雌3匹に単回経口投与し、AST(aspartate transaminase)、ALT(alanine transaminase)、ALP(alkaline phosphatase)および総ビリルビンを経時的に測定した。投与後12日目に剖検、病理組織標本を作成し、先に実施したラットおよびカニクイザルの結果と比較した。
【結果】
実験-1:投与後24時間の病理組織学的検査では、小葉中心性の肝細胞壊死がみられた。実験-2:AST、ALT、ALPおよび総ビリルビンは投与後48時間に最高値を示し、投与後12日目には投与前値まで回復した。病理組織学的検査では、ブタ特異的な小葉中心性の線維化がみられたが、肝細胞の壊死は消失し、生化学的検査値の推移や回復性には、ラットおよびカニクイザルとの類似性がみられた。以上の結果から、MMPigはラットおよびカニクイザルと同様に肝毒性を評価することが可能と考えられた。
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飯野 雅彦, 星野 満, 藤原 淳, 若狭 芳男, 佐藤 伸一, 下井 昭仁, 野村 護
セッションID: P-226
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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<緒言>カニクイザルの第7腰椎神経結紮によるカニクイザル神経障害性疼痛モデル(NPモデル)では,鎮痛効果がプレガバリンではみられるがモルヒネでは全くみられなかったことから,本モデルは有用なNPモデルと考えられること,及び神経結紮後の時間経過で疼痛発現機序が変化する可能性が考えられることを第85回日本薬理学会年会で報告した.そこで,本モデルの特性をさらに確認するため,国際疼痛学会による神経障害性疼痛治療薬選択ガイドラインに提示されているメキシレチン(MT,糖尿病性神経障害治療剤)及びパロキセチン(PT,選択的セロトニン再取り込み阻害剤)の鎮痛効果を検討した.
<方法>神経結紮後6ヶ月以上経過したカニクイザルNPモデル4例を用いた.MT及びPTは,注射用水に懸濁して経口投与した.Von Frey Filamentsを用い,足を引く時の圧重量を機械的圧刺激による疼痛発現閾値とし,薬物投与により,疼痛発現閾値が投与前値から5倍以上増加した場合に鎮痛効果有りと判定した.
<結果>MTを単回経口投与した結果,4例中1例で投与前と比べて投与後に疼痛発現閾値の明らかな上昇がみられ,同動物は神経結紮後6ヶ月のプレガバリンの経口投与において鎮痛効果を示した動物であった.一方,PTを単回経口投与した結果,疼痛発現閾値の上昇はみられず,投与後8時間に1例で嘔吐がみられた.
<考察>MTについて臨床の神経障害性疼痛では鎮痛効果は限定的であるとの報告があり,一部のNPモデル動物で明瞭な鎮痛効果がみられた今回の結果は,臨床報告と類似していた.この点からも本モデルの有用性が示唆された.一方,PTについて臨床の精神神経科領域での疼痛に良く奏効するとの報告があるが,本モデルでは鎮痛効果が全くみられなかった.
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齋藤 文代, 松本 博士, 武吉 正博, 矢可部 芳州
セッションID: P-227
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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【背景及び目的】我々はこれまでにF344ラットに28日間反復投与した肝臓の遺伝子発現量データから短期発がん性予測システム(CARCINOscreen
®)を構築し、系統の異なるSDラットに対しても80%以上の一致率を示すことを報告した(2009年学術年会)。本研究では近年がん原性試験に推奨されているWistarラットに着目して28日間反復投与試験を行い、CARCINOscreen
®への適用性を調べた。また、ラット3系統(F344, SD, Wistar)の系統差についても検討した。
【方法】5週齢・雄Crl:WI(Han)ラットに発がん性物質(2化合物)及び非発がん性物質(2化合物)を28日間連続強制経口投与した後、肝臓を採材した。カスタムアレイ(ToxArrayIII)を用いて遺伝子発現量を解析した後、CARCINOscreen
®に供して発がん性予測を行った。
【結果と考察】動物試験の結果、3系統間で肝相対重量には大きな差がみられなかったものの、血液生化学的検査では系統間で差を示す物質があった。Wistarラット肝臓における遺伝子発現量データをCARCINOscreen
®で予測した結果、発がん性を示さない2,6-Diaminotolueneでは±の判定となったものの、その他3物質は発がん性既知情報と一致し、本予測システムがWistarラットへ適用できる可能性が示唆された。また、3系統の媒体対照群の遺伝子プロファイルを比較した結果、F344とWistarラットでは約7,400種類、SDとWistarラットでは約7,000種類と系統間で発現量に差がある遺伝子が多数検出された。しかし、発がん性物質で有意に変動した遺伝子群の系統間での共通性は高く、発がん性予測に用いた遺伝子セットもこれらに含まれていたことから、肝臓での発がんメカニズムはラット系統間で共通である可能性が示唆された。
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門田 克行, 村田 里美
セッションID: P-228
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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本報告では、女性ホルモン、男性ホルモンおよびその混合物に短期間(7日間)曝露したヒメダカのDNAマイクロアレイ解析を行うことにより、性ホルモンを含む環境水の長期影響を予測する方法について報告する。女性ホルモンおよび男性ホルモンの陽性対照物質はそれぞれ17β-エストラジオール(以下E2)および17β-トレンボロン(以下TB)を用いた。内分泌攪乱化学物質の実サンプルは、女性ホルモン様物質としてノニルフェノール、エチニルエストラジオール、およびビスフェノールA、男性ホルモン様物質としてメチルテストステロンを用いた。女性ホルモンと男性ホルモンの混合曝露は、E2およびTBの等量混合物を用いて行った。それぞれの物質の各濃度区に対し、孵化直後のヒメダカを流水式で7日間暴露した。曝露後、各メダカサンプル(各30匹)からTotal RNAを抽出し、Cy3標識cRNAを作製し、36398のプローブを搭載したメダカDNAマイクロアレイスライド(化学評価研究機構開発、Agilent社製)にハイブリダイゼーションさせ、遺伝子発現解析を行った。DNAマイクロアレイ解析結果からE2曝露区およびTB曝露区で特徴的に変動した遺伝子を選別し、これら遺伝子群の発現量データからそれぞれE2およびTB濃度依存的な影響の度合いを数値化した。影響の度合いの数値化には、ユークリッド距離とピアソンの積率相関係数の両方を用いた。内分泌攪乱化学物質および性ホルモン混合物に対しても上記遺伝子群の発現量から影響の度合いを算出し、E2およびTB濃度換算値を計算した。計算結果から、各物質暴露による生物学影響を予測し、実際に得られた生物学影響と予測された影響を比較した。その結果、今回報告する手法によって、単独薬品のみならず、混合曝露においても生物学影響を予測できることが分かった。
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中津 則之, 五十嵐 芳暢, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
セッションID: P-229
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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【目的】
医薬品開発における医薬品の安全性予測に資する安全性バイオマーカーの探索を目的としたトキシコゲノミクスプロジェクト(TGP1)およびトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)において10年間の産官共同研究を行った。これらの研究の中で10年間に渡って取得した7,000例の対照群の血液学、血液化学、病理所見等のデータおよびそのうち4,000例の遺伝子発現データについて、取得した様々な条件において比較・解析を行うことを目的とした。
【方法・結果】
医薬品中心の約200化合物について、Crl:CD(SD)ラットにそれぞれ単回および反復投与した。単回投与後3, 6, 9, 24時間後および3, 7, 14, 28日間反復投与24時間後に剖検を実施した。これらの実験において、対照群として溶媒投与群を設定しており、本発表の解析にはこれら対照群のデータを用いた。血液学、血液化学、病理所見とともに各群5例中3例についてはRat Genome 230_2.0 Gene Chip (Affymetrix社)を用いて遺伝子発現データを取得した。
対照群は10年という長期にわたって大量に取得されているため、時点の他にも、4社のCRO、0.5%メチルセルロース, コーン油などを溶媒とした強制経口投与、生理食塩水等を溶媒とした静脈内投与・腹腔内投与など様々な条件の対照群が含まれている。これら様々な条件に基づき、統計解析・グラフ化により対照群を比較検討した結果、遺伝子発現におけるArntl, Cry2等の日内変動を示す遺伝子群、週齢変化に伴い発現の変化する遺伝子群、また、溶媒の差異に伴う各種測定項目といった変化を示す条件、CROの違いなど変化を示さない条件など背景情報を整理することができた。
【謝辞】
本研究は厚生労働科学研究費補助金H14-トキシコ-001およびH19-トキシコ-001による。
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森川 裕二, 上原 健城, 中津 則之, 小野 敦, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆谷 徹郎
セッションID: P-230
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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【背景・目的】小胞体はタンパク質の合成・折り畳みを司る重要な細胞小器官である.小胞体において変性タンパク質が過剰に蓄積するストレス状態が続くと,正常な機能が妨げられ,最終的には細胞死が誘導される.肝臓では多数のシトクロムP450が小胞体に局在し薬物代謝を行っていることから,小胞体ストレスを評価するマーカーは肝障害の機序解明に有用であると考えられる.本研究ではトキシコゲノミクスプロジェクトにおいて構築されたデータベース(TG-GATEs)を用いて,ヒトおよびラット肝細胞で肝臓の小胞体ストレスを予測・評価するマーカーの探索を行い,その有用性を検討した.【手法】Affymetrix社製のGeneChipを用いてヒトおよびラット肝細胞の網羅的遺伝子発現データを取得し発現差異解析を行った.正例は「小胞体ストレスを誘発することが知られているNSAIDs 4化合物」,負例は「ラットin vivoにて小胞体ストレス応答遺伝子の変動が見られない8化合物」と設定し,いずれも24時間曝露のデータを使用した.既知の小胞体ストレス応答遺伝子群から(i) 正負例間での倍率変化が1.5倍より大きい,もしくは2/3倍より小さい(ii) Mann-WhitneyのU-testにてP値<0.01という2つの条件を設定しマーカー候補となる遺伝子を絞り込んだ.そして,SVMにより予測モデルを構築し,5-fold Cross ValidationおよびTG-GATEs収載の他の化合物への予測を実行し妥当性の検証を行った.【結果】発現差異解析の結果,
ATF4,
SERP1の2遺伝子がマーカー候補として絞り込まれた.この2遺伝子を用いた5-fold Cross Validationの検証結果は良好であり,小胞体ストレス性化合物であるCyclosporine Aを陽性と判定するなど他の化合物への予測結果も妥当なものであった.【結論】本研究を通じて,ヒトおよびラット肝細胞で肝臓の小胞体ストレスを予測・評価するマーカーとして,
ATF4,
SERP1の2遺伝子が有用であることを見出した.
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松本 博士, 齋藤 文代, 武吉 正博
セッションID: P-231
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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我々はこれまでに28日間反復投与したF344ラット肝臓の遺伝子発現量データを用いた短期発がん性予測システム(CARCINOscreen
®)を構築した(2009年学術年会)。この開発で用いた学習データの投与量は、既報の発がんを起こす最も低い用量で設定した。発がん性情報がない化合物に本予測法を適用する場合、発がん性物質を正しく検出できるような用量設定が必要である。本研究では、発がん性未知物質を予測するために必要な投与量設定法の確立を目的として、化合物の最大耐用量(MTD)から投与量を設定し、得られたCARCINOscreen
®の発がん性予測値と投与量の関係を調べた。
学習データに用いた物質の中から発がん性物質(11化合物)及び非発がん性物質(2化合物)を選定し、MTDを基に公比5で4用量を設定し、F344ラット(5週齢、雄)を用いた28日間反復投与試験を行った。ラットの肝臓における遺伝子発現量をカスタムアレイ(ToxarrayⅢ)で測定した後、CARCINOscreen
®による発がん性予測を行った。TD
50の文献値が入手できた9種の発がん性物質のうち8化合物の投与量はTD50以上となった。CARCINOscreen
®の発がん性予測値は、発がん性物質では4-nitroquinoline-1-oxideを除く10化合物について上位2用量で発がん性ありを示すプラス値となり、用量が高いほどその値は増大したが、それ以下の用量では発がん性なしを示すマイナス値であった。一方、非発がん性物質(2化合物)では全ての用量で予測値がマイナスを示し、用量依存的な予測値の変化はなかった。これらのことから、CARCINOscreen
®の発がん性予測値は、発がん物質ではある用量以上で用量依存的にプラス値を示すが、非発がん性物質では最高用量においてもプラス値にはならないことが明らかとなった。今回の検討から、発がん性未知化合物にCARCINOscreen
®を適用する場合、投与量はMTDを基に公比5程度で2用量以上を設定すれば十分であると結論できる。
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山下 智也, 森 敦, 川原 拓馬, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
セッションID: P-232
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
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(独)医薬基盤研究所と(株)日立製作所はトキシコゲノミクスプロジェクト(TGP),ならびにトキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)を通じてTG-GATEs(Toxicogenomics Project-Genomics Assisted Toxicity Evaluation system)システムを開発致しました.TG-GATEsは215の化合物のラット個体およびラット・ヒト幹細胞へ暴露した際の毒性情報および遺伝子発現情報などを収載した大規模データベースと解析,毒性予測システムから構成されます.解析機能としては代表的な解析機能を備えるとともに,Base Viewという独自の発現スコア表示機能を開発致しました.BaseView機能では登録した複数のバイオマーカー単位で遺伝子発現値のスコア値をヒートマップ形式,ならびにレーダーチャート形式で表示をすることができます.in vivo, rat in vitro, human in vitroを1画面に表示が可能であり,化合物の発現変動を直感的に判断することが可能です.BaseView機能では注目したバイオマーカーにフォーカスして化合物横断的なスコアの差異,個別プローブのコントロール個体に対するレシオ値,ラットとヒトのオーソログ遺伝子の発現値の特徴を見ることができます.また毒性予測システムとしてはPAM(Prediction analysis for Microarrays)とSVM(Support Vector Machine)の二つの判別分析モデルを用いての判別分析が可能です.トレーニング,バリデーション結果を確認し,必要に応じてFalsePositive等を除いて判別器を改善する機能,ならびに作成した判別器を毒性未知サンプルに対して複数回の判別分析を1度の解析指示により実施可能な機能を開発致しました.本学会ではそれら機能と応用例について紹介いたします.
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水川 裕美子, 森川 裕二, 中津 則之, 小野 敦, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆谷 徹郎
セッションID: P-233
発行日: 2012年
公開日: 2012/11/24
会議録・要旨集
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我々は大量の網羅的遺伝子発現データを含む大規模データベースシステム“TG-GATEs”を構築し,それを用いて各種毒性を検出するバイオマーカーの抽出を行ってきた.TG-GATEs には150以上の化合物をin vivo投与したラットの肝および腎,in vitroで曝露したラットとヒトの初代培養肝細胞の遺伝子発現データが含まれる.以前我々はラット肝臓および初代培養肝細胞で利用できるPPARαアゴニストマーカーについて報告しており(J. Toxicol. Sci., 31, 471-490, 2006),その改良および検証について第85回日本薬理学会年会で報告したが,さらに今回ヒト初代培養肝細胞に適用できる判別モデルの構築および検証を行った.PPARα活性化薬物で共通に変動した遺伝子を抽出し,サポートベクターマシン(SVM)を用いて判別モデルを構築した.TG-GATEsのデータでは,典型的なPPARα活性化薬であるフィブラート系薬物の他,ベンジオダロンや多くのNSAIDsなどが陽性と判別された.この結果はラット初代培養肝細胞の場合と一致していた.またPPARαとコアクチベーターとの結合アッセイを用いてアゴニスト活性を確認した.外部の公共データベース上のデータについても判別を行ったところ,陽性化合物のWY-14643と陰性化合物のリファンピシンはそれぞれ正しく判別された.判別モデルに用いた遺伝子は脂質代謝に関連しPPARとの関連が知られているものが多かったが,ラットの判別モデルに用いた遺伝子と共通のものはなかった.発現変動のみられた遺伝子は全体としてラットより大幅に少なかったが,それらはラットでも変動がみられた.今回,PPARαアゴニスト検出に役立つ,信頼性・頑健性の高い判別モデルが構築できた.今後ラットモデルとの比較などさらに解析を進め,種差の原因解明などにもつなげたい.
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