日本毒性学会学術年会
第39回日本毒性学会学術年会
選択された号の論文の420件中201~250を表示しています
ポスター
  • 山下 晃人, 稲田 拓, 千原 和弘, 国松 武史, 木村 重紀, 船橋 斉
    セッションID: P-34
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フタル酸エステルの1つであるDEHPはラットにおいてEstradiolの分泌低下や性周期異常などの生殖内分泌異常を引き起こすことが知られている。我々は、これまでにDEHPの活性代謝物であるMEHPがラット培養卵胞において生殖内分泌異常を誘発することを報告している。今回、MEHP添加ラット培養卵胞を用いて当該異常に関連すると考えられるCholesterol合成及びステロイドホルモン変換に関連する酵素について遺伝子発現解析を行い、MEHPが誘発する生殖内分泌異常の発現メカニズムについて検討した。
    【方法】生後14日のSD系雌性ラットから採取した卵胞を培養し、MEHP(0、10、30及び100 µg/mL)添加後48時間まで培養を継続した。培養後の卵胞については、HMG-CoA redeuctase(HMGCR)、Steroidogenic acute regulatory protein(StAR)、P450 cholesterol side-chain cleavage enzyme(P450scc)、3β hydroxysteroid dehydrogenase(3β-HSD)、17α hydroxylase及び17,20-lyse(P450c17)、並びに17β hydroxysteroid dehydrogenase(17β-HSD)のmRNA量をqRT-PCRを用いて測定した。
    【結果及び考察】MEHP添加ラット培養卵胞において、HMGCR、StAR及びP450sccの発現上昇が認められたことから、MEHPは、HMGCR活性化によるCholesterol合成亢進作用並びにStAR及びP450scc活性化によるCholesterol~Pregnenoloneの合成経路亢進作用を誘発することが示唆された。また、P450c17については、10及び30 µg/mLにおいてその発現が上昇したが、100 µg/mLにおいて低下したことから、MEHPは、添加用量によってProgesterone~Androstenedioneの合成経路を亢進あるいは阻害することが示唆された。以上の如く、MEHPはラット培養卵胞において、Cholesterol合成及びCholesterol~Androstenedioneの合成経路に影響を及ぼすことにより生殖内分泌異常を誘発するものと考えられた。
  • 稲田 拓, 山下 晃人, 千原 和弘, 国松 武史, 木村 重紀, 船橋 斉
    セッションID: P-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウム(Sodium Valproate、VPA)は、ヒトに多嚢胞性卵巣症候群様の生殖内分泌異常を誘発することが知られている。我々は、これまでにラット培養卵胞におけるVPAのステロイドホルモン合成阻害作用について報告しているが、今回、当該作用に関連すると考えられるCholesterol合成及びステロイドホルモン変換に関連する酵素について遺伝子発現解析を行い、VPAのステロイドホルモン合成阻害メカニズムについて検討した。
    【方法】生後14日のSD系雌性ラットから採取した卵胞を培養し、VPA(0、0.2、1.0及び5.0 mM)添加後48時間まで培養を継続した。培養後の卵胞については、HMG-CoA redeuctase(HMGCR)、P450 cholesterol side-chain cleavage enzyme(P450scc)、3β hydroxysteroid dehydrogenase(3β-HSD)、17α hydroxylase及び17,20-lyse(P450c17)、17β hydroxysteroid dehydrogenase(17β-HSD)並びにAromatase(P450arom)のmRNA量をqRT-PCRを用いて測定した。
    【結果】VPA添加ラット培養細胞において、HMGCR、P450scc、3β-HSD、P450c17、17β-HSD及びP450aromの発現低下が認められた。
    【考察】ラット培養卵胞におけるVPAのステロイドホルモン合成阻害メカニズムとして、HMGCR阻害に起因するCholesterol合成阻害作用、並びにP450scc、3β-HSD、P450c17、17β-HSD及びP450arom阻害に起因するCholesterol~Estradiol合成経路阻害作用の関与が示唆された。
  • 向井 大輔, 天野 彰子, 牧田 真輝, 杉 麻衣, 各務 進, 長谷川 和成, 田中 友美, 坪井 優, 松本 一彦
    セッションID: P-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ラット血漿中の甲状腺ホルモン濃度は,通常ELISA,RIA,化学発光等の手法で測定されているが,いずれの方法についても50~200 µL/項目程度の検体量を必要とするため,同一動物を用いた経時的な評価が困難である.この問題点を解決し得る方法として,近年,微量検体での同時多項目測定が可能なマルチプレックスアッセイが開発された.そこで本研究では,甲状腺ホルモンを撹乱することが知られるphenobarbital,食用赤色3号を投与したラットにおける血中甲状腺ホルモン濃度の経時的変動を調べた.
    【方法】0.4% phenobarbitalまたは4% 食用赤色3号を,雄性Crl: CD(SD)系ラット(6匹/群)に6週齢から2週間混餌投与した.投与期間中に,一般状態の観察,体重および摂餌量を測定し,投与開始日(投与前),投与2,4,8,11,15日目に,尾静脈より0.3 mL/匹の血液を採取した.この血液から血漿を分離し,同血漿中の甲状腺ホルモン(T4およびT3)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)を,Rat Thyroid Hormone Panel(メルク)およびタンパク質多項目同時測定システム Luminex200 xPONENTシステム(メルク)を用いて測定した.
    【結果および結論】Phenobarbital投与群では投与4日以後T4が減少を示した.食用赤色3号投与群では,投与11日以後T4 およびTSHが増加を示した.マルチプレックスアッセイは,化学物質によるラット血漿中甲状腺ホルモン変化について,同一動物を用いた経時的な評価を可能とするために有用であることが示された.
  • 川嶋 潤, 中村 知裕, 小川 祐布子, 代田 欣二, 渡辺 元, 永岡 謙太郎, 田谷 一善, 吉田 緑, 代田 眞理子
    セッションID: P-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】脳の性分化における臨界期は外来性エストロジェン(E)に対する感受性が高い時期と考えられている。我々は本学会第38回学術年会において、新生雌ラットにエチニルエストラジオール(EE)を投与すると比較的若齢で性周期の回帰を停止して連続発情に至り、乳腺過形成、肝臓および下垂体重量の増大が認められることを報告した。今回我々は、これらの動物の内分泌系における遅発性影響の有無を知るため、血清中性腺刺激ホルモン濃度測定、ならびに肝臓および子宮におけるE応答遺伝子の定量解析を行ったので報告する。
    【方法】日本チャールスリバーから購入したCrl:CD(SD)系妊娠ラットから自然分娩により得られた雌ラットに1日齢からEEを0(コーン油10 mL/kg/day)、0.4、2.0 μg/kg/dayの用量で5日間反復経口投与し、21日齢で離乳後、性周期を観察し22-23週齢で剖検して試料を得た。遺伝子発現解析では肝臓および子宮から総RNAを抽出し、CYP3A9およびプロジェステロン受容体(PR)をコードするmRNAについてリアルタイムRT-PCRにより定量解析した。CYP3A9は別に同様の処置を行い、膣開口日に剖検し採取した試料も解析した。また、ラジオイムノアッセイにより血清LHおよびFSH濃度を測定した。
    【結果・考察】EE投与群では膣開口日の肝臓におけるCYP3A9発現に差はみられなかったが、22-23週齢ではEEの用量に依存して低下し、子宮でのPR発現も低下した。これらの遺伝子はEにより直接、あるいは間接的に誘導されるため血中E濃度の低下が疑われたが、Eのフィードバックを受ける血清中LH濃度には差がみられず変化に一定の方向が認められなかった。一方、血清FSH濃度はEE投与群で増加し、LHとは異なる動向がみられた。卵巣重量が低値を示し、嚢胞状卵胞が認められた動物で血清中FSH濃度が上昇していたことから、卵巣からのインヒビン等による抑制刺激の減弱が考えられた。本研究の一部は厚生労働省科学研究費の補助を受けた。
  • 鈴木 優典, 小林 章男, 高橋 統一, 正田 俊之, 公納 秀幸, 菅井 象一郎
    セッションID: P-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】毒性試験では,採血あるいは血漿の分離操作によって溶血が起こり,血液生化学的検査結果に影響を及ぼすことがある。血液生化学的検査結果への溶血の影響は古くから知られており,これまでに数多くの検討結果が報告されてきた。しかし,これらの報告は,いずれも目視による溶血の有無あるいはヘモグロビン濃度を指標にした検討で,毒性試験の結果を評価する上で実用的とは言えなかった。今回我々は,測定値が溶血の影響を大きく受けることが知られている血漿中乳酸脱水素酵素(LDH)活性を指標にして,血液生化学的検査項目に対する溶血の影響を検討した。
    【方法】雄性ビーグル犬のヘパリンNa処理血液を試料とした。動物から溶血しないように注意深く採血し,血液を2分割した。一方は血液を凍結して溶血させた後,遠心分離して溶血血漿を得た。他方は,溶血させずに遠心分離して非溶血血漿とした。これら溶血及び非溶血血漿を割合を変えて混合し,自動生化学分析装置で血液生化学的検査項目を測定した。各項目に対する溶血の影響は,血漿中LDH活性との相関性及び一次回帰式により解析した。
    【結果及び考察】血漿中LDH活性は溶血血漿の混合により明らかに上昇し,溶血血漿を2%混合した場合,非溶血血漿に比較して約7倍の活性を示した。血漿中LDH活性と良好な相関性を示した項目として,血漿中アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びクレアチンキナーゼ活性並びに総ビリルビン濃度などがあり,これらの項目は,溶血時の血漿中LDH活性の変動率と比較してその1/4から1/10程度の変動を示した。一方,LDH活性との相関関係がほとんどみられない検査項目は,血漿中アラニンアミノトランスフェラーゼやグルタミン酸脱水素酵素活性などであった。これらの知見は,毒性試験の血液生化学的検査値における溶血の影響を考察する上で,有用な情報と考えられた。
  • 大嶋 洋介
    セッションID: P-39
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    がん原性試験の評価においては、使用する動物の自然発生性腫瘍を把握しておくことが重要である。当施設ではB6C3F1マウスががん原性試験に繁用されているが、近年、CD-1 (ICR)マウスを使用する機会が増加している。本報告では、CD-1 (ICR)マウスにおける腫瘍の発生時期を把握する目的で、当施設で2006年から2010年の間に行われたがん原性試験(5試験、雌雄各310匹)における対照群動物のデータを集計し、検討を行った。投与経路はいずれも強制経口投与であった。58週齡(投与52週)までに雄37例と雌28例が死亡し、そのうち雄10例と雌11例に腫瘍がみられたが、悪性リンパ腫が最も高頻度であり(雄4例、雌8例)、かつ致死性であった。悪性リンパ腫は、雄で14週齡、雌で26週齢からみられ始め、週齢を重ねるにつれてその発生頻度が増加し、ICRマウスでは好発する腫瘍の一つであったが、比較的早期に発生することも判明した。他に58週齡までにみられた腫瘍として、細気管支肺胞上皮腺腫/癌が雌雄各2例、肝細胞腺腫/癌が雄3例、後肢あるいは肺の血管肉腫が雄2例、後肢の骨肉腫が雄1例、皮膚の基底細胞癌が雌1例にみられ、これらの腫瘍における最速の発生はそれぞれ、33、41、51、24及び44週齡であった。これらの腫瘍のうち、基底細胞癌及び骨肉腫は比較的希な腫瘍であり、背景データの重要性が示された。58週齡以降、最も発生頻度が多かった腫瘍は、雄で肝細胞腺種(雄全動物の集計で約12%)、雌で悪性リンパ腫(雌全動物の集計で約14%)であり、次いで細気管支肺胞上皮癌(雄約5%、雌約7%)、細気管支肺胞上皮腺腫(雌雄とも約5%)、子宮内膜間質ポリープ(約7%)、肝細胞癌(雄約6%、雌約1%)、ハーダー腺腺腫(雄約5%、雌約2%)、乳腺腺腫(雌約5%)及び肝臓の血管肉腫(雄約3%、雌約2%)であった。
    なお、現在病理組織学検査実施中の1試験についてもそのデータも追加する予定である。
  • 板橋 恵, 林 仁美, 谷合 枝理子, 盛田 怜子, 赤根 弘敏, 鈴木 和彦, 小西 良子, 三森 国敏, 渋谷 淳
    セッションID: P-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】国際的には問題とならないカビ毒でも、わが国の食習慣に関するカビ毒などは、重大な危害物質となりうる。ペニシリウム属毒素のシトリニン(Citrinin: CTN)は腎臓や卵巣に対する毒性標的性が指摘されている。本研究では、CTNの実験動物に対する毒性プロファイルを明らかにすることを目的として以下の実験を行った。【方法】予備試験として、雌BALB/cマウスにCTNを0 ppm、1.25 ppmないし7.5 ppmの濃度で10週間飲水投与し(各群15匹)、剖検時に腎臓、肝臓、卵巣、及び子宮を採取し、病理組織学的検索を実施した。本試験として、CTNの用量を予備試験の2–4倍とし、0、15、30 ppmの割合で雌BALB/cマウスに90日間飲水投与した後剖検し(各群15匹)、全身臓器の病理学的検索を実施した。【結果】予備試験では卵巣相対重量が高用量群で有意に増加し、子宮粘膜で発情期の組織像を示す個体が多い傾向が認められた。腎臓では、尿細管に明らかな組織学的変化は認められなかった。本試験では、剖検時に卵巣相対重量がCTN投与群で用量依存的に有意に増加した。子宮粘膜で発情後期の組織像を示す個体が多い傾向が認められ、更にCTN投与群で大型卵胞数の増加が認められた。腎臓では、CTN投与各群で、1例ずつに尿細管上皮の腫大が認められ、再生尿細管の発生頻度が増加傾向を示したものの、尿細管上皮のPCNA染色陽性増殖細胞率に明らかな変化は認められなかった。【考察】予備試験で極低用量のCTNによる卵巣毒性の可能性が示唆されたものの、明らかな組織学的変化は見出せなかった。より高用量での本試験において、CTNの飲水投与による卵巣に対する毒性が示唆された。一方、腎臓では対照群とCTN投与群との間に統計学的に有意な変化は見出せず、最高30 ppmの用量では腎臓標的性はないものと判断された。
  • 北口 隆, 宮内 慎, 菊地 聡美, 中川 裕介, 戸来 江美子, 川村 文, 仲野 善久, 松本 茂樹, 榊 潤一
    セッションID: P-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】
     近年、創薬早期に医薬品候補化合物の毒性プロファイルを取得することが求められている。創薬初期に実施されるin vivo探索毒性試験では少量の薬物を用いて短期間のうちに毒性的エンドポイントを見出す必要があることから、少ない動物数、短期間、比較的高用量で試験が実施される。このような試験条件において、化合物投与による摂餌量の低下とそれに伴う二次的な毒性変化がしばしば認められる。化合物による直接的な毒性と、摂餌量低下を介した二次的な変化の切り分けが毒性学的考察をする上で必要である。一方、ラットを制限給餌した毒性試験は数報報告があるものの、4日間という短期間の試験は報告されていない。そこでラットを4日間制限給餌し、その各種パラメータに対する影響を検討した。
    【方法】
     11週齢の雄性RccHanTM:WISTラットを試験に用いた。自由摂食群、75%給餌群、50%給餌群を各群3例で設定し、各群0.5%メチルセルロース溶液5 mL/kgを4日間強制経口投与した。体重および摂餌量は毎日測定した。最終投与翌日にラットを解剖し、血液学的検査および血液生化学的検査、器官重量測定、病理組織学的検査を行った。
    【結果・考察】
     給餌制限群において、経日的な体重の減少が認められたが、一般状態に影響は認められなかった。栄養欠乏(血液生化学パラメータの変動)、飲水量の減少(血液濃縮によるRBC、HGB、HCTの高値)および摂餌制限に伴うストレス(白血球系細胞の減少、胸腺重量の低下、副腎重量の増加)に由来すると考えられる変化が認められた。また、自社と既報の解剖条件(前日絶食の有無)の違いによると思われる変化も認められた。
  • 瀬堀 理生, 勝亦 宏晃, 村田 悠人, 堀本 政夫
    セッションID: P-42
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    鉄は補給・補完を目的とした栄養機能食品の成分や鉄欠乏性貧血の治療剤としても認められているが、過剰に摂取すると生体膜における過酸化脂質の生成が促進され、組織の機能障害を引きおこすことが報告されている。近年、ファーストフードの普及やダイエット志向により鉄摂取量の不足とともにタンパク質の摂取不足につながる可能性が指摘されているが、このようにタンパク質不足の状況下で貧血改善のための鉄サプリメントを過剰摂取すると鉄の酸化促進作用による影響が危惧されている。そこで、本研究では、ラットに軽度の肥満と脂肪肝を誘発させることが報告されている低タンパク質・コレステロール添加飼料(カゼイン13%、コレステロール0.25%、以下、LP食)に過剰の鉄を添加した飼料で飼育した場合のラットに及ぼす影響について検討した。5週齢の雄ラット(Slc:SD)各群6匹にそれぞれLP食、2.5%フマル酸第一鉄含有LP食(LPF)、0.01%アロプリノール含有LPF食(LPFA)を4および12週間摂取させた。一般状態、体重および摂餌量を測定し、各期間終了後に臓器重量測定、血液学的検査、血液生化学的検査等を実施し、また肝臓の病理組織学的検査を行った。摂餌4週間の群ではいずれの群にも死亡例はなかったが、12週間の群ではLPF群2例死亡(Day 52, 60)、3例が瀕死(Day 61, 62, 81)、LPFA群では1例死亡(Day 82)、3例が瀕死状態(Day 79, 80, 83)に陥った。これらの例では死亡または瀕死状態を呈する直前に一般状態が急変した。LP群に比べてLPF, LPFA群ともに有意な体重増加抑制がみられた。肝臓の病理組織学的検査ではLP群では肝細胞の脂肪化と炎症性細胞浸潤が認められたが、LPF, LPFA群ではこれらの所見はみられず、肝細胞に鉄沈着が認められた。12週間の群では、赤血球数の有意な減少がLPF, LPFA群でみられ、LPFA群では血清中の過酸化脂質が有意に上昇した。以上のことから、低タンパク質飼育条件下で過剰鉄をラットに12週間負荷した場合に死亡例を含む著しい毒性を示すことが示唆された。
  • 児玉 晃孝, 吉田 正尚, 服部 則道, 長谷川 大樹, 關 拓也, 渋井 勇祐, 成田 隆博
    セッションID: P-43
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Wistar Hannover(WI)ラットはSDラットに比して小型であり,生存率が高く自然発生腫瘍が比較的少ないことから,安全性試験への利用が注目されている。今回,IGSラット研究会の活動の一環として,WIラットの一般毒性試験に関する背景データを収集するとともに,SDラットとの比較を行った。
    【方法】雌雄WIラット(Crl:WI (Han))を4週間(W4)あるいは13週間(W13),飼育(無処置),注射用水を強制経口投与,あるいは生理食塩液を静脈内投与し,一般毒性試験で実施される各種評価を行った。比較対照として,雌雄SDラット(Crl:CD (SD))を同様に飼育(無処置)し評価した。動物数は,1群あたり雌雄各10例とした。
    【結果及びまとめ】WIラット無処置群ではSDラット無処置群に対して,体重及び摂餌量の低値,角膜混濁の頻度の増加及び角膜の鉱質沈着,白血球数の低値,γグロブリンの低値,胸腺重量の高値,並びにハーダー氏腺の腺房細胞単細胞壊死の出現頻度の増加,腎臓の好塩基性尿細管,鉱質沈着及び単核細胞浸潤の出現頻度,及び肝臓の小肉芽腫の病変程度の低下が認められた。また,大差ではなかったが,カリウム排泄量の低値,尿蛋白の陰性例及びケトン体陰性例の増加,網赤血球数の高値,血小板数の低値,AST,ALT及びALPの低値,並びに尿素窒素の高値が認められた。
    WIラット及びSDラットとも,W4に比べてW13では,γグロブリンの高値,並びにカリウム排泄量,ALP,無機リン及び胸腺重量の低値が認められ,これらは加齢性の変化であると考えられた。また,雄に比べて雌では,PT,APTT,フィブリノゲン,ALP及び中性脂肪の低値,並びに下垂体重量及び副腎重量の高値が認められた。これらの結果は,WIラットを用いた一般毒性試験結果の解釈に有用な情報であると考えられた。
  • 三村 雄一, 柴田 誠司, 久田 茂, 児玉 晃孝, 吉田 正尚, 増山 剛, 成田 隆博, 立花 滋博, 古谷 真美, 桑形 麻樹子, 早 ...
    セッションID: P-44
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    Wistar HannoverラットはSDラットに比して小型であり、生存率が高く、自然発生腫瘍が比較的少ないことから、安全性試験への利用が注目されている。今回、IGSラット研究会の活動として、4施設参画によるCrl:WI(Han)ラットの一般毒性試験に関する背景データの収集を実施した。下記の共通プロトコールを基に、各施設で試験条件を設定し、Crl:CD(SD)ラットの背景データとの比較を行った。
    共通プロトコール:
     • 観察・投与期間 : 4週、13週または26週
     • 動物数 : 雌雄 n=10/ 性 (無処置または溶媒投与)
     • 飼育条件 : 任意 (実施施設で決定,飼料等の条件設定はしない)
     • 検査項目 : GLP 適用試験で実施する検査項目
    結果及びまとめ:
    Crl:WI(Han)ラットは、Crl:CD(SD)ラットと比較して、以下の特徴が認められた。なお、主要な所見について、施設間に相違は認められなかった。
     • 体重及び摂餌量:低値
     • 眼科学的検査:角膜混濁 頻度増加
     • 血液学的検査:WBC、Platelet低値
     • 血液生化学的検査:脂質系、AST及びALT低値
     • 器官重量(相対):胸腺高値
     • 眼の病理組織学的検査:角膜鉱質沈着 増加
  • 立花 滋博, 古谷 真美, 加藤 博康, 根倉 司, 高岡 裕, 田面 喜之, 関 剛幸, 堀内 伸二, 稲田 浩子, 三枝 克彦, 渡辺 ...
    セッションID: P-45
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール;TBC)はエストロゲン受容体結合性試験ではビスフェノールA(1.4 x 10-5M)とほぼ同濃度(1.8 x 10-5M)にてエストラジオールと拮抗してエストロゲン受容体に結合し、子宮増殖性試験では60 mg/kg/dayの用量でエストロゲン作用を有する。これまでに28日間反復経口投与毒性試験、2カ月間混餌投与雄性生殖毒性試験が実施されており、肝臓、消化管および雄の生殖器官への影響が155~250 mg/kgにて報告されている。一方、簡易生殖毒性試験では、80 mg/kg以上の用量で消化管壁の肥厚が観察されたが、繁殖能への影響は500 mg/kgでも認められていない。今回、TBCをさらに長期間暴露した場合の毒性変化を調べるために、6カ月間反復経口投与毒性試験を行った。
     Wistar Hannover (Crl:WI(Han))ラット(雌雄各9匹/群)に0(5%アラビアゴム水溶液)、100および500 mg/kgのTBCを6カ月間強制経口投与し、医薬品毒性試験法ガイドラインに沿った検査項目に加えて精子検査を実施した。その結果、500 mg/kg投与群では、投与開始後に軟便および摂餌量の一時的な減少がみられた。血液および血液生化学的検査では、血小板数の増加、総コレステロール濃度の増加、ALTおよびAST活性の上昇が認められた。病理学的検査では、肝臓重量の増加、肝臓の中間帯での単細胞壊死が観察されたほか、小腸および大腸粘膜上皮細胞の過形成、盲腸粘膜層に単核細胞浸潤が観察された。また、100 mg/kg投与群でも軟便および肝臓の変化が観察された。その他、体重、眼科学的検査、尿検査にはTBCによる影響はみられず、精子検査および生殖器官の病理組織学的検査にも異常は認められなかった。
     以上の結果から、既報と同様の毒性変化が主に腸管および肝臓に認められたが生殖器官に異常はみられず、精子機能にも影響は認められなかった。
  • 和田 聰, 遠藤 和守, 北見 真由美, 平嶋 昂, 爰島 洋子, 友成 由紀, 大西 康之, 倉田 祥正, 平塚 秀明
    セッションID: P-46
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マーシャルビーグルは小柄な体格および従順な性格を有し,安全性試験を行う上では被験物質使用量の削減,ハンドリングの容易さといった利点がある.近年,中国に生産施設を設けたために中国産マーシャルビーグルが使用可能となったが,国内での使用実績はまだ少ない.今回,中国産マーシャルビーグルを安全性試験へ使用するのに先立ち,背景データ収集試験を4試験実施した.これらの試験から得られた中国産マーシャルビーグルの生理学的特徴を,別の生産施設(TOYOおよびHRA)のビーグルと比較したので詳細を報告する.
    【方法】中国産マーシャルビーグルに4,13,39及び52週間,滅菌水を反復経口投与した.各試験では雌雄各4~10匹(6ヵ月齢)を使用し,飼料にはDS-A(250または300g/日)を用いた.ルーチン的に行われる検査項目(体重,摂餌量,血液学的検査,血液生化学的検査,尿検査,心電図・血圧検査,眼科学的検査,病理組織学的検査)に加えて,ホルター心電図検査,網膜電図検査(ERG),機能観察総合評価法による観察(FOB)を実施した.
    【結果】体重,摂餌量,FOB,器官重量および病理組織検査において,生産施設間で顕著な差が認められた.6および12ヶ月齢時の平均体重は,TOYO:雄9.6および11.1kg 雌9.5および10.4kg,HRA:雄7.5および9.5kg 雌7.3および8.6kgである一方,中国産マーシャルビーグルでは雄6.4および8.4kg,雌6.2および7.5kgであり,低値であった.摂餌量は,中国産マーシャルビーグルではTOYOおよびHRAと比べ少ない傾向を示した.FOBでは,中国産マーシャルビーグルにおいて手押し車歩行,立ち直り反応などが観察されなかった.器官重量では,雄性生殖器の低値および副腎の高値が認められた.また病理組織検査では,精巣の未成熟が7ヶ月齢動物の半数近くに認められた.
    【考察】多くの検査項目で施設間差が認められたことから,中国産マーシャルビーグルを安全性試験で用いる場合は,十分な背景データが必要であることが示された.
  • Werner FRINGS, Sven KORTE, Birgit NIGGEMANN
    セッションID: P-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    CSF sampling from both the lumbar and cisterna magna location of cynomolgus monkeys, is frequently required during the conduct of regulatory studies for assessment of inflammatory cerebral conditions. With only limited reference data available in the literature, a laboratory based background data set is considered important. CSF samples, taken by lumbar or cisterna magna puncture, from overall 73 (19 male and 54 female) cynomolgus monkeys were used to determine hematology parameters including immunophenotyping of lymphocyte subsets in low volume (0.4 – 1.0 mL) of CSF. Additionally, analysis was conducted in EDTA blood as reference. Results showed that it is critical to avoid sampling related CSF contamination with peripheral blood. The risk of contamination was higher for sampling from the cisterna magna. The samples with low red blood cell numbers were investigated separately. Alternatively, a cisterna magna port catheter system can be surgically implanted to allow repetitive CSF collection on non sedated animals, without blood contamination. Lymphocytes represented the predominant cell population (a mean of approximately 90% for both sampling methods). Within the lymphocytes, T cells were almost exclusively present (mean >97%) with T Helper cells being the largest population (means of 59.7% and 57.8% for lumbar and cisterna magna sampling).
    In conclusion, these data are considered helpful for the assessment of inflammatory cerebral conditions in non-human primate toxicity studies. Lumbar puncture allows for repeated dosing and comparison of predose and dosing phase data.
  • 松山 恵吾, 福島 民雄, 高木 信伍, 殿村 優, 藤澤 可恵, 上野 元伸, 鳥井 幹則
    セッションID: P-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    Poly ethy1ene glycol (PEG) は,エチレングリコールが重合した構造をもつ高分子化合物(ポリエーテル)である.近年では核酸医薬や組換蛋白医薬等において,高分子量のPEGを蛋白あるいは核酸性の薬物に結合させて分解されにくい構造とし,血中滞在時間を長くする目的で広く使用されている.しかし,高分子量のPEGに関する安全性情報は十分に入手できないのが現状である.
     そこで我々は,高分子量の40及び80kDaのPEGの安全性に関する情報を収集するために,まず初めに1320 mg/kg/dayで,Crl:CD(SD)ラットに4日間反復尾静脈内投与し,一般状態観察,体重および摂餌量測定,血液学及び血液生化学検査,赤血球沈降速度測定ならびに病理検査を実施した.さらに,両PEGの10,60及び300 mg/kgの単回投与における血中PEG濃度及び赤血球沈降速度を測定した.反復投与試験において,PEG投与群全例にPEG80kDa投与群では貧血を伴った死亡が見られ,肝臓や腎臓などにおけるうっ血,マクロファージの空胞化と血管拡張は見られたが,全臓器において組織学的な障害は認められなかった.一方,特徴的な変化として,血中AST,ALTなど各種生化学検査値の著しい低値,ならびに赤血球沈降速度の亢進が確認された.単回投与試験においては,60,300 mg/kg投与群においてPEGの分子量及び血中濃度依存的な赤血球沈降速度亢進が認められた.10 mg/kg投与群においては赤血球沈降速度への影響は認められなかった.また,PEG80kDaの方がPEG40kDaと比較して,血中滞在時間が長く赤血球沈降速度の亢進も投与後長時間認められた.今回みられた変化は,PEGの物性による血球への影響に起因している可能性があり,PEGを用いた医薬品開発においては,分子量及び投与量に注意すべきであると考えられた.今後,血漿中PEG濃度とPEGによる影響の関連性について精査することによって,PEGを用いた医薬品開発における安全性面での指針提示に繋げたいと考えている.
  • Christopher BANKS, Raluca KUBASZKY, David ESDAILE
    セッションID: P-49
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    The Extended One-Generation Toxicity Study (EOGRTS) was adopted as OECD TG 443 in July 2011. A full protocol based on the draft guideline was performed at CiToxLAB Hungary and presented jointly with Syngenta at the SOT meeting 2011. Lead Acetate was provided in drinking water to the F0 adult Wistar rats at 0 (sodium acetate control), 100, 800 and 1700 ppm Pb, from 2 to 4 weeks pre-mating, gestation, and lactation, and to the F1 generation to adulthood. Adults were mated and evaluated for standard in-life parameters, reproductive function and histopathology. Resulting litters were assigned to 3 subgroups for clinical pathology/thyroid function/neurotoxicity; immunotoxicity; and reproductive toxicity assessments. Selected pups were evaluated for developmental milestones, growth, neurobehaviorial assessments (FOB, grip strength, landing foot splay, and motor activity with automated image analysis via a SMARTTM Video Tracking System), TDAR immunotoxicity (IgM response to sheep-RBC challenge), thyroid hormones, standard pathology and neurohistopathology (with perfusion-fixation in situ and serial brain sectioning). The work conducted demonstrated the feasibility of a CRO performing this study. Careful planning and good communication between the Study Director, technical staff and Sponsor was required, especially following data analysis to decide if an F2 generation phase should be performed. In the final guideline, changes were made, including reduction of the pre-mating period of the parental P generation to 2 weeks and reassignment of the pups to cohorts to reproductive/developmental toxicity testing (including cohort 1B possibly extended to include an F2 generation), developmental neurotoxicity testing and developmental immunotoxicity testing .
  • 田山 邦昭, 坂本 義光, 安藤 弘, 久保 喜一, 高橋 博, 長澤 明道, 矢野 範男, 湯澤 勝廣, 中江 大, 小縣 昭夫
    セッションID: P-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】染毛剤成分の中でフェニレンジアミン(PD)類の精子機能を含めた雄性生殖器系への影響については,昨年の本学会で報告した。今回,トルエンジアミン(TDA)類,アミノフェノール(AP)類およびアミノクレゾール(AC)類の雄性生殖器系への影響を調べたので報告する。
    【方法】薬物: TDA (2,5-, 2,6-, 3,4-),AP (2-, 3-, 4-),AC (2-A-3-C: 2-amino-3-cresol,2-A-4-C,4-A-3-C,5-A-2-C,6-A-3-C),投与量:予備実験で400mg/kg/dayから公比2で降下させて求めた最大耐量を各薬物の投与量とした。投与法:薬物はプロピレングリコールに溶解または懸濁し,11週齢の雄性 Crlj:CD-1マウスに5日間連続皮下投与した。動物は各群10匹用い,1,5週目で5匹ずつ剖検し,生殖器系の臓器重量計測後,左精巣上体尾部を用い、精子パラメータの計測(精子数・粒度分布:CDA-500,精子運動性:SQA-ⅡC)をした。さらに精子形態を位相差顕微鏡で観察し,その他の臓器はホルマリン固定後に病理組織学的検討を行った。
    【結果・考察】死亡:本実験では2,6-TDA: 3/10,2-A-3-C: 1/10,2-A-4-C: 2/10みられた。体重:2,6-TDAの1週目で低下がみられた。臓器重量(相対):精巣重量は3-APの1週目,4-APの1,5週目で低下を示した。精巣上体には有意差はみられなかった。精嚢重量は4-APの5週目で増加がみられた。精子パラメータ:精子数・運動性は有意差を示さなかった。精子の形態観察や粒度分布曲線では,4-AP,2-A-4-Cの5週目の一部の例で軽度の変化を認めた。組織学的観察:精巣・精巣上体の変化は3-APの5週目,4-APの1,5週目,2-A-4-Cの5週目の一部の例にみられた。精巣では精上皮の変性・壊死が,精巣上体では,管腔内精子数減少,細胞残渣貯留が認められた。以上より,染毛剤成分3-AP (100mg/kg), 4-AP (400mg/kg), 2-A-4-C (200mg/kg)で精巣・精子障害性がみられ,その作用は比較的軽度であった。
  • 藤谷 知子, 大山 謙一, 広瀬 明彦, 西村 哲治, 中江 大, 小縣 昭夫
    セッションID: P-51
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    ナノマテリアルは、電子工学製品・医薬品・化粧品等への応用で注目され、多種多様なナノマテリアルが開発・生産されているが、その健康影響について、科学的に充分に検討されていない部分がある。この状況に鑑み、当センターは、ナノマテリアルの健康影響評価の一端を担っており、これまでに、腹腔内投与した多層カーボンナノチューブ(MWCNT)がラットに中皮腫を誘発することを報告した。本研究は、当センターにおけるナノマテリアル安全性評価の一環として、MWCNTの催奇形性について試験を行った。
     MWCNT(三井MWCNT-7、Lot No. 060125-01k)を2%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に超音波ソニケーターを用いて懸濁し、妊娠9日目のICRマウスに2、3、4および5mg/kg体重で腹腔内投与、あるいは、3、4および5mg/kg体重で気管内投与した。
     腹腔内投与実験では、4および5mg/kg群で早期死胚数の増加および生存胎仔の減少が見られ、すべての投与群で用量に相関して、四肢減形成、口蓋裂、脊椎や肋骨の癒合などの奇形が発生した。ヒトでの暴露経路を想定して行った気管内投与実験では、4および5mg/kg群で、四肢減形成、脊椎や肋骨の癒合など、腹腔内投与の場合と同様の奇形が発生したが、3 mg/kg群では統計学上有意な奇形が発生が見られなかった。
     MWCNTのヒト暴露量はいまだ明らかになっていないが、職業現場における暴露量を0.58-6.20 μg/kg体重/日と推定した報告があり、本研究の気管内投与催奇形試験で得られた最大無毒性量(NOAEL)の3 mg/kg体重は、この値の480-5170倍にあたる。以上より、MWCNTは一定の条件下で催奇形性を発揮することが判明したが、MWCNTのヒトに対する直接的な催奇形リスクを直ちに懸念する必要はないものと判断する。
  • 中村 知裕, 川嶋 潤, 小川 祐布子, 代田 欣二, 吉田 緑, 代田 眞理子
    セッションID: P-52
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    ヒトを含む多くの哺乳類では生殖細胞の顕著な増殖は出生前に限定され、それを貯蔵する原始卵胞は排卵に向け漸次発育開始することによりその数を減じていると考えられている。第38回本学会で我々は、新生雌ラットへのEE投与が若齢での性周期停止といった遅発型影響を及ぼすことを報告した。雌ラットの新生児期は脳の性分化時期であると同時に卵巣での原始卵胞形成時期でもあることから、新生児期EE曝露が原始卵胞数の推移に及ぼす影響を検討した。
     Crl:CD(SD)妊娠ラットから自然分娩により得られた雌ラットにEEを0(コーン油)、0.4、2.0 μg/kg/dayの用量で1日齢から5日間反復経口投与し、10日齢および22-23週齢に剖検して卵巣を採取し、片側をブアン固定した。固定した卵巣は常法に従いパラフィン包埋し、6 μm厚で薄切して連続切片とし、HE染色標本とした。連続切片から原則として5枚間隔で卵巣組織を選び、核小体が確認された原始卵胞を数えた。また、22-23週齢の卵巣について黄体および嚢胞状卵胞の有無を確認した。その結果、いずれの投与群も22-23週齢の卵巣における原始卵胞数は10日齢のそれと比べ減少していたが、対照群とEE投与群の間で有意差は認められず、加齢に伴う消費量に顕著な差のないことが示唆された。22-23週齢の卵巣では、対照群の10例中1例、0.4 μg/kg/day投与群の9例中7例ならびに2.0 μg/kg/dayの10例全例に黄体を確認できなかった。また、EE投与群の全例に嚢胞状卵胞が認められ、排卵周期が長期にわたり停止し、排卵しなかった卵胞が嚢胞状に変性して残留したものと推測された。以上の結果から、新生児期にEE曝露を受けた動物では排卵周期が停止しても排卵周期を回帰している動物と同様に原始卵胞が消費されていると考えられた。
     (本研究の一部は厚生労働科学研究費の補助を受けた)
  • 則武 健一, 池田 高志, 伊藤 圭一, 三輪 洋司, 瀬沼 美華, 高島 宏昌, 立石 大志, 久田 茂, 牧 栄二
    セッションID: P-53
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】IGSラット研究会の活動として、6施設参画によるWistar Hannover(WH)ラットの胚・胎児発生試験に関する背景データの収集を実施した。
    【方法】日本チャールスリバー株式会社より提供されたCrl:WI(Han)ラットを用いて胚・胎児発生試験に関する背景データの収集を実施した。また、得られた結果をCrj:CD(SD)ラットの背景データ(Cong. Anom., 37: 47-138, 1997)と比較した。飼料、投与期間、投与物質、投与容量、帝王切開日、胎児標本の作製方法などは、各施設の通常の実施方法に準じた。
    【結果】帝王切開時の観察において、黄体数、着床数、生存胎児数の低値、胎児体重および胎盤重量の低値が認められた。着床後死亡率および胎児の性比は、SDラットと同程度であった。胎児の外表異常は観察されなかった。内臓異常としては左臍動脈遺残が、骨格変異としては頸肋、過剰肋骨、波状肋骨が高頻度に観察された。
    【考察】WHラットの特徴として、黄体・着床・生存胎児数および胎児体重の低値、ある種の内臓異常・骨格変異の出現頻度の増加が確認され、背景データ収集の重要性が示された。NTPは2009年にWHラットの繁殖能力の問題点(胎児数が10例に満たない、性比に偏りがある)を指摘したが、今回の共同研究ではそのような問題点は観察されず、WHラットを生殖発生毒性試験の評価に用いることに問題はないと考えられた。
  • 高倉 郁朗, 横井 亮平, 寺島 ゆかり, 小野里 知哉, 丸山 喜正, 茅野 友信, 田原 享, 田村 啓, 小林 一男, Dianne ...
    セッションID: P-54
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】国内の非臨床安全性試験にはSprague Dawleyラットが広く用いられているが,海外ではWistar Hannover (Wistar Han)ラットが主要な系統の一つであり,国内においても注目されている。生殖発生毒性試験では,交配に性成熟動物を用いることが推奨されているが,両系統間における雄の性成熟時期の違いが指摘されており,用いる系統によって,この点を考慮する必要がある。そこで,雄性Wistar Hanラットの交配適期を明らかにするため,週齢による生殖能及び精子形成能等の比較を行った。【材料と方法】RccHan:WISTラットの雌12週齢を8,10あるいは12週齢の雄のケージに一晩同居させ,翌朝交尾判定した。雄は交尾成立当日に剖検し,精巣上体尾部の精子検査(精子数,精子運動性,精子形態等)及び精巣における1日当たりの精子産生数を算出するとともに,精巣,精巣上体,精嚢及び前立腺を組織学的に検索した。雌は交尾成立後20日に子宮内を観察し,受胎の有無を確認した。【結果】交尾率に差は認められなかったが,受胎率に8週齢で低い傾向が認められた。精子検査では8週齢は精子数,精子運動性及び精子形態において,10週齢は精子数及び精子形態において12週齢に比べて未熟であった。組織学的検査では,精巣上体尾部において8週齢では10及び12週齢に比べて精巣上体管上皮が未熟であった。子宮内観察の結果,8週齢の雄と交配した雌では着床前胚損失率が高く,同腹生存児数が少なかった。【結論】Wistar Hanラットの雄は,8週齢から10週齢にかけて性成熟過程にあり,12週齢で成熟することが示唆されたことから,生殖発生毒性試験の交配には12週齢以降の雄を用いることが推奨される。
  • 松岡 俊樹, 大島 よし子, 本多 久美, 加藤 多佳子, 鈴木 千春, 則武 健一, 下村 和裕, 三分一所 厚司
    セッションID: P-55
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    <背景>ウサギの胚・胎児発生毒性試験では、母動物の摂餌量低下にともなう流産がしばしば認められる。摂餌量減少と流産の関連については過去に多くの報告があるが、摂餌量減少がどのような機構により流産を引き起こすかについて詳細な解析は行われていない。また、キノロン薬など広範囲抗菌スペクトルをもつ抗菌薬のウサギ胚・胎児試験では薬効用量付近で流産が頻発する。この事象は、抗菌薬投与にともなう摂餌量の低下が二次的に流産を発生させたものと考察されることが多い。
    <目的>抗菌薬投与時の摂餌量が妊娠維持に与える影響を確認する。
    <方法>Kbl:NZWウサギ(各群5例)を用いて胚・胎児発生毒性試験を実施した。妊娠6~18日にキノロン薬を投与した群を抗菌薬群とし、媒体投与のうえ抗菌薬群と等量の飼料を給餌(pair-fed)した群を摂餌調整群とした。対照群には媒体を投与し、150 g/日を給餌した。毎日採血を実施し、プロゲステロン濃度を測定した。
    <結果>抗菌薬群では、投与開始後に摂餌が低下(約20 g/日)し、全例が妊娠20~26日に流産した。摂餌調整群は、全例が妊娠23~25日に流産した。対照群の摂餌量は全期間で100 g/日以上であり、流産はなかった。プロゲステロンは、対照群では妊娠28日の剖検まで高値を維持したものの、抗菌薬群及び摂餌調整群では流産の約一週間前から漸減した。
    <考察>抗菌薬投与によって減少した摂餌量では、抗菌薬投与の有無に関わらず妊娠の継続が不可能であることが明らかとなった。また、抗菌薬投与、摂餌調整のいずれでも流産以前にプロゲステロンの低下が認められ、妊娠維持のための内分泌的制御に異常が生じることにより流産が引き起こされていると考えられた。なお、流産時期やプロゲステロンの変化には、抗菌薬群と摂餌調整群で若干の差異が認められたが、その意義については今後の検証が必要である。
  • 河村 佳徳, 松本 清, 佐藤 恵一朗
    セッションID: P-56
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    我々の研究施設で1990年から2010年まで20年以上に渡って実施したKbl:JWウサギの胚・胎児発生試験における対照群の動物の生殖関連指標及び自然発生性の奇形のデータ並びに1988年、1995年及び2007年に実施したサリドマイドの胚・胎児発生試験における奇形のデータをレトロスペクティブに解析した。対照群のデータを5または6年毎に分割して解析したところ、生殖関連指標並びに胎児の外表、内臓及び骨格所見の発現頻度は安定しており、胎児の自然発生性の奇形及び変異の発現頻度にも顕著な変動はなかった。さらに、サリドマイドで誘発される奇形の特徴も3時点間でほぼ同等であり、再現性は高かった。以上より、Kbl:JWウサギは自然発生性あるいは薬剤誘発性の催奇形性の経時的変動が少なく、被験物質の胚・胎児発生への影響を安定して評価することに適した系統であることが確認された。
  • Satoru ONEDA, Narine LALAYEBA, Rebecca WATOSON, Takashi MATSUYAMA, Nor ...
    セッションID: P-57
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    Background: Historical background data of pregnancy loss, nonviable birth, premature and preterm births, and postnatal neonate mortality are essential for interpretation of reproductive and developmental toxicity (DART) studies. In this presentation, frequencies of these asessments in Cynomolgus monkeys under experimental conditions are summarized.
    Methods: Frequencies of prenatal loss (PL, abortion, resorption and in utero embryo-fetal death before GD140), stillbirth (SB, birth of a nonviable neonate or in utero fetal death on or after GD140), premature birth (PMB, birth of viable neonate before GD140) and preterm birth (PTB, birth of a viable neonate between GD140 and GD154), normal birth (NB, birth of viable neonate after GD154), and postnatal neonate death (ND) were reviewed in control groups from 31 DART studies. This included a total of 510 maternal animals at GD0.
    Results: Mean frequencies of all studies were 16.6 ±7.3% in PL, 14.1 ±9.1% in SB, 3.3 ±4.3% in PMB, 18.7 ±11.7% in PTB, and 67.3 ±15.1% in NB. Mean gestation length was 159 ± 8 days (including SB, PMB, and PTB). Thirteen neonates out of 216 live births died (6.0 ±5.3%), and 10 of the 13 NDs (77%) occurred within 7 days after birth. Frequencies of ND were 71.4% in PMB, 10.0% in PTB, and 2.3% in NB.
    Conclusion: Frequency of ND clearly increased in PMB (71%) when compared with that of PTB (10%) or NB (2%). Since PTB was not uncommon (18.7%) and frequency of ND in PTB (10%) was generally comparable with that of NB (2%), PTB is considered to be within normal biological variation in Cynomolgus monkeys.
  • 上野 晋, 笛田 由紀子, 石田尾 徹, 野中 美希, 柳原 延章, 保利 一
    セッションID: P-58
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】1-ブロモプロパン(1BP:CH3CH2CH2Br)は産業現場に導入されている特定フロンの代替化合物の一つであり、主に電子部品洗浄溶剤としての需要が高い。しかしながらその中枢神経毒性についてはいまだ不明な点が多い。本研究では1BPの曝露がもたらす中枢神経学的影響について、成獣ラットを用いた亜慢性曝露モデル、ならびに妊娠ラットを用いた胎生期曝露モデルを作製し、主に神経行動学的表現型から評価するとともに、神経回路の電気生理学的解析についても検討した。【方法】7週齢の雄性Wistar系ラットに1BPを濃度700ppmで6週間(1日6時間、週5日)曝露した亜慢性曝露ラットを作製し、曝露最終日より24時間後にオープンフィールド試験を施行して探索行動量を検討した。また11週齢の妊娠Wistar系ラットに対して妊娠初日から連続20日間1BPを濃度700ppmで吸入曝露し(1日6時間)、出産後得られた雄性仔ラットを胎生期曝露ラットとして、特に若年期を中心にオープンフィールド試験の他、新奇物体探索試験や受動的回避試験によって短期記憶を評価した。また5週齢の海馬スライス標本を用いて長期増強(LTP)についても検討した。【結果と考察】対照ラット(同じ条件で新鮮空気を吸入させたもの)に比べ、亜慢性曝露ラットは探索行動量が有意に増加していた。一方、胎生期曝露ラットにおける探索行動量については4週齢で増加傾向が認められたものの12週齢では減少していた。また5週齢で行ったLTPの解析からは有意な胎生期曝露の影響は認められなかったが、6週齢で試行した新奇物体探索試験および受動的回避試験では、胎生期曝露ラットにおいて短期記憶能の減弱を示唆する結果が得られた。本研究により1BPの曝露は神経行動に影響を及ぼすこと、またこの影響が次世代影響としても出現する可能性があることが示唆された。
  • 福山 朋季, 小坂 忠司, 林 宏一, 宮下 理沙, 田島 由香里, 上田 英夫, 原田 孝則
    セッションID: P-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    環境中化学物質の暴露がヒトの免疫機能に及ぼす影響について,長年調査が続けられており,近年ではその危険性を検出すべく,免疫毒性試験が他の安全性試験と同様に一般化されつつある。しかし現在の免疫毒性試験では,4週間連続被験物質投与を実施することから,免疫寛容等の免疫機構に異常が起こりやすく,被験物質の免疫毒性作用を正確に検出できない可能性がある。そこで本研究では,マウスに被験物質を短期間暴露する新しい免疫毒性試験スケジュールについて検討を行った。実験には7週齢の雌性C3H/Heマウスを用い,事前の調査で免疫抑制能を有する事が証明されている有機塩素系化合物メトキシクロル(0, 3, 30, 300 mg/kg),有機リン系化合物パラチオン(0, 0.015, 0.15, 1.5 mg/kg)および殺虫剤共力剤ピペロニルブトキシド(0, 3, 30, 300 mg/kg)を5日間経口投与した。さらに,抗原(SRBC)特異的IgM産生能を調査する目的で,被検物質投与2日目(解剖の4日前)に羊赤血球細胞(SRBC,6×107個/0.2mL)を尾静脈内に投与し,免疫を行った。被験物質最終投与翌日に麻酔下で採血を行い,安楽殺後,脾臓を摘出した。血液からは血清を分離し,SRBC特異的IgM抗体価測定を行い,脾臓は細胞単離後,IgM抗体産生能をPlaque forming cell assay(PFC法)にて,B細胞のサブセット(IgM陽性およびGerminal center陽性)をフローサイトメーターにて解析した。解析の結果,各被験物質のIgM抗体産生能が用量依存性に減少し,各被験物質投与による免疫毒性反応が示唆された。また,脾臓中のIgMおよびGerminal center陽性B細胞数も被験物質の用量に依存して減少し,IgM抗体産生能測定の結果を補佐していた。これらの結果から,マウスにおける短期間暴露スケジュールにおいて,免疫毒性の検出が正確に出来ることが示唆された。
  • 柴 隆大, 佐々木 孝, 牧野 育代, 川上 幸治, 加藤 幾雄, 内田 和美, 小林 稔秀, 金子 公幸
    セッションID: P-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】p-クレゾールはチロシンが腸内細菌によって代謝されることで生成する腸内腐敗産物の一種であり、免疫毒性を有することが示唆されている。本発表では、腸管で産生されるp-クレゾールが細胞性免疫応答に及ぼす影響に着目して検討した結果を報告する。【方法】BALB/cマウスの食餌中にチロシンを負荷することで、血中のp-クレゾール濃度が高値となるp-クレゾール高産生モデルを構築した。このモデルにアレルギー性接触性皮膚炎を誘導することで、細胞性免疫応答に対するp-クレゾールの影響を評価した。さらに、ex vivoおよびin vitroにおいて、マウス脾臓細胞のサイトカイン産生に対するp-クレゾールの影響を評価した。【結果】p-クレゾール高産生モデルマウスでは、接触性皮膚炎反応が有意に低下した。この接触性皮膚炎反応は血中p-クレゾール濃度との間に負の相関が認められた。Ex vivoでは、菌体刺激に対する脾臓細胞のIL-12産生能と、血中p-クレゾール濃度との間に負の相関が認められた。また、in vitroでは、p-クレゾールは菌体刺激により産生されるIL-12とIFN-γを抑制した。さらに、p-クレゾールは抗CD3抗体刺激によるIFN-γの産生を抑制し、IL-4の産生を促進した。【考察】経口摂取したチロシンによって腸内で産生されるp-クレゾールは、細胞性免疫応答を抑制した。また、p-クレゾールは細胞性免疫に対して促進的な作用をもつIL-12とIFN-γの産生を抑制し、抑制的な作用をもつIL-4の産生を促進した。これらの結果から、p-クレゾールはサイトカイン産生を変化させることで、細胞性免疫応答に対して抑制的に作用することが示唆された。
  • 檜垣 環, 森本 隆史, 住田 佳代, 稲若 邦文, 川村 聡
    セッションID: P-61
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Local Lymph Node Assay(LLNA)は、被験物質を媒体に溶解あるいは懸濁させ、その被験液をマウスの耳介に塗布し、所属リンパ節の細胞増殖を指標に皮膚感作性を評価する試験である。媒体は、最も一般的なacetone/olive oil(AOO)に加え、 dimethyl sulphoxide (DMSO)、N,N-dimethylformamide、propylene glycol、methyl ethyl ketoneが試験法ガイドラインで推奨媒体として挙げられているが、疎水性の高い被験物質では、これら媒体に溶解あるいは懸濁させることが出来ない。そこで、疎水性の高い被験物質をLLNAで評価するために、Tetrahydrofuran(THF)が媒体として使用可能かどうか検討した。
    【方法】THFをマウスの耳介に3日間連続で塗布した後、耳介の浮腫にて刺激性を評価した。次に、皮膚感作性の陽性対照物質であるHexylcinnamic aldehyde(HCA)をAOO、DMSO、THFのそれぞれの媒体に溶解させて、所属リンパ節の細胞増殖および網羅的遺伝子発現プロファイルを媒体間で比較した。
    【結果・考察】THFによる耳介の浮腫は認められなかった。HCAを用いた評価では、いずれも媒体でも陽性と判定され、用量反応性も同様であった。また、採取したリンパ節における遺伝子発現プロファイルを階層的クラスタリング解析した結果、媒体のみ投与の場合ではいずれの媒体にも差はみられなかった。また、HCAを溶解した被験液の場合、THFはDMSOよりもAOOに近い発現パターンを示した。以上から、THFは陽性対照に対してAOOおよびDMSOと同等の結果を示し、所属リンパ節の遺伝子発現でもAOOやDMSOと差を認めなかったことから、THFをLLNAの溶媒に使用することは可能と考える。
  • 角 大悟, 原田 久美, 小川 智子, 津山 博匡, 姫野 誠一郎
    セッションID: P-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】東アジア地域では慢性的なヒ素曝露が原因で多臓器において癌が発生するが、 腫瘍免疫に関わるナチュラルキラー(NK)細胞の機能がヒ素により影響を受けるかについてはほとんど検討されていない. NK細胞はT細胞から放出されるIL-2やIL-12に応答してサイトカインを産生し, また, NKp46などの受容体発現を上昇させることで癌細胞に特異的に結合し、 GranzymeB/Perforinシステムを用いて攻撃する. 本研究では, ヒ素化合物がIL-2およびIL-12によるNK細胞の活性化に影響を与えるかについて検討した.【方法】細胞:ヒトナチュラルキラーNK92細胞を用いた. サイトカイン発現: FlowCytomixおよびELISA法で解析した. mRNA発現: Real-timeRT-PCR法で検討した. 受容体の細胞表面発現: フローサイトメトリー法で検討した.【結果】 NK細胞にIL-2, IL-12を共添加した12時間後の培地中のサイトカインを測定したところ, IFN-γ, IL-10, IL-6, TNF-βの分泌量が著しく増加した。このようなNK92細胞のサイトカイン分泌能に対して亜ヒ酸は有意にその分泌能を抑制した. さらに, 癌細胞を特異的に認識する受容体NKp46およびGranzymeB/Perforinの発現を検討したところ, IL-2添加によるNKp46およびGranzymeBの発現上昇に対し亜ヒ酸は有意に抑制したが, Perforinの発現には影響を与えなかった。以上の結果より, NK92細胞を亜ヒ酸に曝露すると, IL-2やIL-12によるサイトカイン, 受容体の発現およびGranzymeBの発現上昇を抑制することが明らかとなった. 今後は, 亜ヒ酸によるNK細胞の癌細胞に対する攻撃能への影響, および抑制機序に関わる因子の探索を進めて行きたい.
  • 小林 亮, 中西 剛, 永瀬 久光
    セッションID: P-63
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、環境化学物質がアレルギー疾患の増悪化に関与する可能性が指摘されているが、我々はこれまでに地下水汚染で問題となっているトリクロロエチレン(TCE)が、in vivo能動皮膚アナフィラキシー反応を増悪するのみならず、抗原特異的リンパ細胞増殖も亢進することを報告してきた。今回はTCEによる抗原特異的なT細胞増殖亢進作用のメカニズムを詳細に検討するために、in vitroにおいてリンパ細胞に対してTCEを直接的に作用させることで、TCEがT細胞サブタイプ(CD4+およびCD8+陽性T細胞)の増殖に及ぼす影響について検討を行った。
    【方法】CD4+およびCD8+ T細胞は、BALB/cマウスの脾臓およびリンパ節からリンパ細胞を得た後、磁気標識ビーズで単離した。得られた各細胞を抗CD3抗体で刺激すると同時にTCEを細胞に添加し、[3H]チミジンの取り込みを指標としてT細胞増殖に対する影響を評価した。またT細胞受容体(TCR)シグナル伝達に対するTCEの影響を検討するために、抗CD3抗体刺激+TCE処理24時間後の細胞よりタンパク質を回収し、シグナル伝達に関わる分子のリン酸化状態をウエスタンブロットにより検出した。
    【結果及び考察】TCE 10-9 M以上の処理で、in vitroにおいてもTCR依存的なT細胞増殖を促進したことから、TCEはT細胞に直接作用することが示された。またCD8+ T細胞においては顕著な細胞増殖亢進が認められ、CD4+ T細胞においても細胞増殖亢進が認められたが、CD8+ T細胞と比較するとその影響はわずかであった。さらにCD4およびCD8と相互作用するTCRシグナル伝達分子であるLckのリン酸化状態が、CD4+ T細胞よりもCD8+ T細胞で大きく上昇していた。以上のことからTCEはCD8+ T細胞に対してLckのリン酸化亢進を介して細胞増殖亢進作用を示すことが示唆された。
  • 西村 和彦, 常田 将宏, 勝山 英明, 中川 博史, 松尾 三郎
    セッションID: P-64
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】Erythropoietin(EPO)は貧血や高度上昇等によって低酸素状態になると産生が増加し、赤血球産生を促進する。EPOは造血に必須なだけでなく、種々の組織で細胞保護に関わることが報告されている。鉄は赤血球産生に必須である一方で、EPO産生調節因子のHypoxia inducible factor(HIF)のサブユニットHIF-α分解を促進することでEPO産生を抑制することが知られている。鉄は酸化ストレスを引き起こすことも知られており、酸化ストレスはEPO産生にも影響すると考えられている。本研究は鉄の持つHIF抑制作用と酸化ストレスの2つの作用がEPO産生に及ぼす影響について解析した。【方法】EPO産生能を持つHepG2細胞にFeCl3を添加して24時間培養し、EPO及びHIF-αのmRNA発現量とタンパク量、酸化ストレスの指標としてmalondialdehyde(MDA)量を測定した。【結果】HepG2細胞への鉄添加は100 μMまでは濃度依存的にEPO mRNA発現を抑制したが、200 μM以上では回復し、500 μMでは増加した。 細胞内MDA量は200μM以上の鉄添加で増加した。 100 μM鉄添加によって細胞内HIF-α量は減少したが、鉄キレーターのdeferoxaminを同時添加すると減少せず、低濃度の鉄添加によるEPO産生抑制がHIF-α分解の促進によることが確認された。 500 μM鉄添加はHIF-α mRNA発現を増加させ、細胞内HIF-α量も増加した。 500 μM鉄添加によって増加したEPO産生は抗酸化剤のtempol同時添加によって抑制された。【考察】以上の結果から、鉄が促進するHIF-α分解はEPO産生を抑制するが、鉄濃度の上昇に伴って起こる酸化ストレスの増加はHIF産生を増加させ、HIF-α分解の影響を相殺することでEPO産生が促進されると考えられた。
  • 梶原 大介, 高田 元, Nick THOMAS, Liz ROQUEMORE, Alla ZALTSMAN
    セッションID: P-65
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    創薬開発において、開発後期における薬物候補の心筋への毒性現象は、開発コストの増大などに多大な影響を与える。また、販売後の心毒性の影響は、深刻な健康障害を生じると共に市場からの回収などコスト面においても影響が大きい。
    現在、in vitro 心毒性試験に利用可能な細胞株の検討や、より簡易で信頼性の高い検出方法が求められている。
    これらの要求にこたえるため、GE ヘルスケアは、ヒトES細胞より分化誘導した心筋細胞の製品化をおこなった。また、イメージング技術を用いた毒性試験方法の可能性を探るため、我々は細胞毒性を有するもしくは疑わしい化合物群を分化誘導した心筋細胞へ添加しそれらの毒性測定を行った。その結果、イメージングを用いたハイコンテンツ技術は、心毒性を有する化合物の同定を可能とすると共に、それらのプロファイルより化合物群を分類することが可能であった。
  • 古川 初江, 篠澤 忠紘, 高見 健治, 大塚 博比古
    セッションID: P-66
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【背景及び目的】医薬品開発の創薬スクリーニングや安全性評価において、網膜色素上皮細胞(RPE)に対する薬物の作用の研究は、大量の細胞が準備し易い株化細胞のARPE-19が広く利用されており、最近ではヒト初代RPEが入手可能になってきた。しかしながら、ARPE-19は形質がヒト初代RPEと異なり、ヒト初代RPEは高価でかつ大量の細胞を準備することが困難などの問題があった。今回、ヒト人工多能性幹細胞(iPS 細胞)由来RPEを上記目的に利用するため、その効率的な培養方法及び細胞の特徴について検討した。
     【方法及び結果】培養方法:胚様体を無血清培地で浮遊培養しサイトカインを添加することにより、ヒトiPS細胞由来RPEを作製した。さらに、ヒト胎児RPE培養液を用い、継代培養法に工夫を加えることにより、ヒトiPS細胞由来RPEを大量に増殖させる方法を確立した。細胞の特徴:本方法で得られたヒトiPS細胞由来RPEは、継代の有無に拘わらず、ヒト初代RPEと同様に敷石状の形態やメラニン様色素を保持し、RPE関連タンパクであるZO-1及びBESTROPHINの分布を認めた。また、ヒトiPS細胞由来RPEのBESTROPHIN、RPE65、MITF及びMERTKの遺伝子発現レベルは、ARPE-19と比べていずれも高かった。さらに、継代後のヒトiPS細胞由来RPEにおけるこれらの遺伝子発現レベルは、未継代のヒトiPS細胞由来RPEに比べ、よりヒト初代RPEに類似していた。
     【結論】本継代培養法により、ヒト初代RPEに類似した遺伝子発現レベルを示すヒトiPS細胞由来RPEを従来法より大量に作製可能となり、創薬スクリーニング及び安全性評価に利用できる可能性が示めされた。
  • 吉川 佳佑, 安藤 雅光, 有賀 千浪, 岩瀬 裕美子
    セッションID: P-67
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】薬物性肝障害の一つの原因として,ミトコンドリア毒性との関連性が考えられている.ミトコンドリア毒性を細胞レベルで検出する方法として,ミトコンドリアの形態や糖代謝への影響等,多種多様な方法が用いられているが,その検出力については明らかではない,今回我々はミトコンドリア膜電位(Mitochondrial Potential: MP)を指標として,HepG2細胞を用いたHigh Content Analysis (HCA) systemにより既知ミトコンドリア毒性物質23化合物と非ミトコンドリア毒性物質7化合物の評価を行い,HCA法の有用性を検証した.
    【材料及び方法】HepG2細胞を384ウェルプレートに播種後1日目に,被験物質(各10濃度)を1,24及び72時間曝露した.その後,MitoTracker RedTM及びHoechst 33342を用いて,それぞれミトコンドリア及び核を蛍光染色した.細胞固定後にArrayScan VTIを用いてMPへの影響を画像解析により評価した.
    【結果及び考察】既知ミトコンドリア毒性物質23化合物のうち19化合物(82.6%)において濃度依存的なMPの低下が認められた.これらの多くは脱共役剤やミトコンドリア複合体阻害剤など、電子伝達系を直接的に阻害する作用が知られているものであった.MP低下がみられなかった4化合物は,β酸化阻害作用やミトコンドリアDNA合成阻害作用が報告されている物質であった。一方,非ミトコンドリア毒性物質7化合物では,いずれもMPの低下は観察されなかった。以上の結果から,MPを指標とする本試験系はミトコンドリア毒性を評価する一手法として有用であることが示唆された。
  • 大迫 誠一郎, 山根 順子, 今西 哲, 遠山 千春
    セッションID: P-68
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    ヒト胚の各発生段階における一時的な化学物質の曝露がその後の個体や細胞の性状に及ぼす影響を検出する試験系が求められている。2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD)の個体発生過程における曝露は催奇形性等の様々な生体影響を引き起こす。本研究ではヒト胚性幹細胞(ES細胞)を用いた神経系細胞発生過程においてTCDDの影響を調べた。マウス胎仔繊維芽細胞(MEF)をフィーダーとしてヒトES細胞(KhES1)を増殖させ、MEF除去後に胚様体(EB)を形成させた。ES細胞のプレート播種直後(Day0)から24時間、TCDD(0.1nM-10nM)に曝露した。また、Day8で神経誘導培地に変更しDay9でTCDDに曝露した群も設けた。Day10でオルニチンラミニンコートプレートに播種、Day12から神経増殖培地に変え、Day28で再播種、Day40まで培養して神経系細胞集団を分化させた。CYP1A1の誘導はDay9曝露のみで認められ、Day0曝露とDay35曝露群での反応性は認められなかった。Day9曝露群をDay25まで神経誘導培養した結果、ニューラルロゼッタの形成率が対照群や他の処理群より上昇しており、NESTIN, MTAP2のレベルが高く、SOX17, FOXA2の低下が著しいことがわかった。Day0曝露群ではTCDDによる影響は認められなかった。これらの結果は、EB形成後期の神経系誘導条件ではTCDDに対する反応性が他のステージより高く、またその結果として内胚葉系の細胞の分化を阻害し、外胚葉系の細胞の分化率を上昇させることを示唆している。(本研究は厚生労働科学研究費(化学物質リスク事業)により行われた。)
  • 横山 篤
    セッションID: P-69
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    我々は現在まで培養ラット胎児を用いて発生毒性試験を開発してきた。今回は降圧剤を用いてその影響を観察したので報告する。
    培養系は回転型の胎児培養装置を利用し胎齢11日から48時間の培養を行った。降圧剤はARB系を用いて
    培養ラット胎児への影響を観た。観察項目は胎児心拍動数、頂殿長、総体節数、鰓弓部の血流量、血流脈波、
    外表形態、卵黄嚢径および血液循環について解析した。
    ARBは低用量40μg、中用量80μg、高用量160μgとした。
    結果は胎児心拍動数、頂殿長、総体節数、外表形態、卵黄嚢径にはARB処理群と対照群の間には異常は認められなかった。
    但し、鰓弓部の血流、血流脈波、血液循環スコアはARBの用量に依存して増加した。
    以上について、現在 他の降圧剤を用いて培養ラット胎児の血圧と血流量への影響を解析中である。
  • 瀬沼 美華, 古谷 真美, 高島 宏昌, 太田 亮, 森 千里, 小川 哲郎, 桑形 麻樹子
    セッションID: P-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
     ヒ素は飲水への混入が問題となっている環境汚染物質であり,疫学調査では高濃度汚染地域における児童のIQ低下が報告されている.動物実験においても,発達期(胎児期-授乳期)のヒ素暴露により離乳後に自発運動減少,記憶力低下,それに伴ったモノアミン濃度の変化といった発達神経毒性(DNT)が認められ,DNT試験法のバリデーションにおける陽性対照物質の1つに挙げられている.
     我々はヒ素の神経発生初期への影響を検討する目的で,ラットの器官形成期(妊娠9-15日)にヒ素を投与し,投与直後の妊娠16日に胎児脳を観察し,ヒ素の直接的な神経発生への影響を検討してきた(第51回日本先天異常学会学術集会).その結果,母動物には体重増加抑制などの重篤な毒性が観察されたが,胎児死亡率,胎児体重に影響はなかった.また,組織中の含量分析の結果,ヒ素の胎児脳への移行は確認されたが,胎児脳の神経上皮細胞において細胞死の誘発は認められず,また,神経幹細胞の分裂能にも影響は認められなかった.今回,さらにヒ素暴露による胎児脳のモノアミン神経発生への影響について免疫組織学的方法を用いて詳細に検討した.
     Tyrosine hydroxylase陽性細胞の分布は,その神経核である腹側被蓋野および黒質緻密部で変化はなく,その投射先である線条体,大脳皮質における線維にもヒ素暴露の影響は認められなかった.一方,背側縫線核および正中縫線核のSerotonin (5-HT)陽性細胞数の減少が観察された.連続切片による詳細な観察から,5-HT陽性細胞の分布様式に異常はなく,全体的にその数が減少していることが明らかとなった.この結果から,胎生期のヒ素暴露は発生初期の5-HT神経細胞の発生に影響を及ぼすことが示唆された.
  • 村田 悠人, 瀬堀 理生, 勝亦 宏晃, 堀本 政夫
    セッションID: P-71
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    カルシウム拮抗薬において、ジヒドロピリジン系のNifedipine並びにベンゾチアゼピン系のDiltiazemではラットにおいて胎児骨格異常を誘発することが報告されている。しかし、上記と構造の異なるフェニルアルキルアミン系のVerapamil(VER)ではそのような報告はされていない。本実験ではVERの骨格形成に及ぼす影響を検討するために以下の実験を行った。VERの30 mg/kg, 30 mg/kg tid及び100 mg/kgを妊娠11日(交配確認日=妊娠0日)のラットに経口投与し、妊娠21日に帝王切開を実施した。生存胎児全例について外表観察を行った後、骨軟骨二重染色を施し、骨の発生に及ぼす影響について検討した。VER投与により母動物の自発運動の低下、腹臥位及び体温の低下が投与約1時間後より翌日まで認められた。母動物体重は100 mg/kg群で、さらに摂餌量は30 mg/kg tid及び100 mg/kg群で妊娠12日に減少を示した。帝王切開所見では、30 mg/kg tid及び100 mg/kg群で着床後胚死亡率の増加傾向並びに生存胎児数の減少傾向が認められた。性比(♂/♀+♂)はそれらの群で減少傾向を示した。さらに生存胎児体重の減少が30 mg/kg tid及び100 mg/kg群で認められた。VER投与による外表異常は認められなかった。骨格観察では、30 mg/kg tid及び100 mg/kg群で主に腰椎から仙椎にかけての椎体並びに椎弓の欠損、癒合、小型化等の骨格異常が認められ、異常の発現頻度は各々4.3%及び29.8%であった。それらのVER投与群では少数例ではあるが仙椎横突起の形態異常を伴う過剰腰椎、過剰腰椎の仙椎化、過剰仙椎及び不完全な過剰仙椎が認められた。骨格変異は全てのVER投与群で認められ、変異の種類は異常に関連した変化であり、発現頻度は30 mg/kg、30 mg/kg tid及び100 mg/kg群で各々5.0%、8.6%及び52.6%であった。以上、VERを妊娠11日のラットに経口投与することで、腰椎及び仙椎を主とした骨格異常及び変異が認められ、他のカルシウム拮抗薬と同様に胎児骨格異常を誘発することが示唆された。
  • 吉田 緑, 鈴木 大節, 松本 清司, 代田 眞理子, 井上 薫, 高橋 美和, 小野 敦
    セッションID: P-72
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    現在日本では農薬のヒト健康影響指標には、一日許容摂取量が慢性曝露に対する指標として設定されている。近年、海外や国際評価機関においては、この指標に加え、ヒトが極めて短期間に農薬を摂取した際の急性曝露影響に対する健康影響が評価され、その指標として急性参照用量(acute reference dose, ARfD)が設定されている。日本では急性影響評価は実施されていないが、ヒトが農薬等を短期間曝露した場合の急性影響評価およびその指標を設定は、食の安全のために重要である。そこで本研究では、食品安全委員会で公開された評価書およびFAMICで公開された農薬抄録を用いて、これらの農薬のARfDの設定を試みた。設定の基準として農薬の国際評価機関であるFAO/WHO 合同残留農薬専門家会議の基準を基本とした。
    [結果及び考察] 約200農薬の公開データからシミューレーションを行った結果、90%以上の農薬についてARfDの設定を行うことができた。ARfD設定根拠となる試験は発生毒性試験、急性神経毒性試験、薬理試験が多く、約30%の農薬で設定の必要がないと考えられた。農薬の作用機序別の比較では、全てのコリンエステラーゼ(ChE)阻害剤でARfD値設定が必要であり、その値は他の剤に比べて低く、ADIと近い値を示した。これはChE阻害作用が短時間に起きるためと考えられた。長鎖脂肪酸の合成阻害、細胞分裂時の紡錘糸機能阻害および昆虫の神経細胞に作用する剤ではADIとARfDの乖離が平均で300倍以上と大きいものが多かった。約10の農薬では急性影響に関するデータ不足によりARfDを設定できなかった。これらのデータ不足の多くは、評価書内の記載の充実(=投与開始直後に認められた変化の種類と観察時期)や投与翌日の検査を追加することで、多くの場合改善されると考えられた。
  • 田中 由衣, 三井田 宏明, 伊藤 和美, 清澤 直樹, 新野 訓代, 荒川 真悟, 杉浦 智美, 加藤 多佳子, 藤田 勝巳, 加藤 康子 ...
    セッションID: P-73
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、小児医薬品開発のための幼若動物を用いた毒性試験の必要性が議論されている。幼若動物は成獣に比べ、薬物代謝酵素やトランスポーターの発現が低いことなどが知られており、成獣と異なる曝露や毒性を示す可能性があるが、その影響を包括的に調べた報告はほとんどない。そこで、幼若ラットにおける生理的条件の違いが薬物動態に及ぼす影響を調べるため、日齢を追って肝臓および腎臓を採取し、薬物代謝酵素およびトランスポーターの発現や活性を調べた。また、分布への寄与が大きいタンパク結合に関する情報を得るため、血中タンパク質やアルブミンへの薬物の結合を阻害する遊離脂肪酸(NEFA)の濃度を測定した。【方法および結果】生後7、14、21、49日齢の雌雄Crl:CD(SD)ラットを使用し、血漿を用いて血液化学的検査を、肝臓および腎臓を用いてマイクロアレイ解析および薬物代謝酵素測定(活性測定およびWestern blot分析)をそれぞれ行った。この結果、血液化学的検査では、7日齢に比べ49日齢でALBおよびGLBがそれぞれ1.36→2.5 g/dL 、1.7→3.4 g/dL と増加し、NEFAは443.1→174.0 µq/Lと減少することが分かった。薬物代謝酵素活性では、第1相反応で14日齢から21日齢の間に有意に活性の上昇が認められた反応(EROD活性:45.82 → 262.1 pmol/min/mg protein)が多く、成獣で性差が知られている分子種の活性では、21日齢から49日齢の間に雌で0.494→0.082 nmol/min/mg protein(CYP3A2:PCD活性)、雄で27.4→437.16 pmol/min/mg protein(CYP2B:PROD活性)と、顕著な増減が認められた。【考察】血液化学的検査および代謝酵素活性では、7日齢から成獣である49日齢にかけて顕著な変化が見られた。以上の結果から、幼若動物を用いた毒性試験実施の際、ADME関連因子の日齢による変動を考慮する必要がある。現在、トランスポーターの発現解析を実施中であり、その結果も合わせて報告する。
  • 千葉 健史, 木村 聡一郎, 井上 範昭, 橋本 香菜, 高橋 勝雄, 上田 秀雄, 森本 雍憲
    セッションID: P-74
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)が母乳の産生および分泌に対して影響を及ぼすことが報告された。乳腺上皮細胞の機能分化および授乳期特異的な機能発現に対するSSRIsの影響を検討することは、うつ病に罹患する妊婦および授乳婦の薬物治療において臨床上重要と考える。我々は本邦で汎用されているSSRIsのフルボキサミン(FLV)、パロキセチンおよびセルトラリンが、ヒト乳腺上皮細胞株MCF-12Aの機能分化を抑制することを報告したが、その機構は明らかではない。本検討ではSSRIsとしてFLVを選び、その乳腺機能に対する抑制機構について検討した。
    【方法】Growth medium(GM)を用いてMCF-12Aを播種し、培養2日目から0.01~1μM FLV含有GMを用いて20日間培養した細胞を検討に用いた。また、FLV非含有GMを用いて21日間培養した後、0.01~1μM FLV含有GMに72時間暴露した細胞についても検討した。乳腺機能に対するFLVの影響は、MTT assay法に基づく細胞の増殖性と細胞生存性、並びに乳腺の機能分化の指標であるβ-カゼイン発現とその発現調節に関与するSTAT5の発現を定量的RT-PCR法およびWestern blot法により測定し、評価した。
    【結果・考察】FLVで20日間処理した細胞の増殖性はいずれの濃度においてもコントロールと同等であったが、β-カゼインの発現は0.01μM共存下で増加傾向を示し、1μM共存下では有意に低下した。STAT5の発現は0.01および0.1μMで増加傾向を示した。一方、21日間培養後FLVに72時間暴露した細胞では、β-カゼインおよびSTAT5の発現は濃度依存的に減少した。以上より、FLVによる乳腺上皮細胞の機能分化の進展、およびすでに獲得した授乳期機能に対する抑制作用にSTAT5の発現変動が関与していることが明らかとなり、その詳細な機構について今後さらに検討する必要があると考えられた。
  • 高石 雅樹, 田中 陽一郎, 大竹 彩香, 池田 佳織, 沼田 蒼, 三浦 奈都子, 及川 正広, 武田 利明, 浅野 哲
    セッションID: P-75
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗がん剤の血管外漏出により、重篤な皮膚傷害を引き起こす危険性が高く、その対処方法として罨法が用いられている。多くの薬剤では血管外漏出に対して冷庵法が用いられているが、ビンカアルカロイド系抗がん剤においては、明確な根拠がないにも関わらず温庵法が用いられている。
    そこで本研究では、起壊死性抗がん剤の血管外漏出における細胞傷害性及び庵法の効果について検討した。
    【方法】①ウサギ耳介静脈血管をクランプし、パクリタキセルを3分間貯留させ、血管及び皮膚組織への傷害性を確認した。②Wistarラットの背部皮下にパクリタキセルを漏出し、30分間の冷庵法及び温庵法を行った。③HepG2細胞に、起壊死性抗がん剤に分類されるビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセルの臨床用薬液とその10, 100倍希釈溶液を0, 4, 8, 12, 24, 48時間曝露し、細胞生存率をCell Counting Kit-8を用いて検討した。④HepG2細胞に、ビノレルビン、パクリタキセル及びドセタキセルを臨床薬液の5倍希釈溶液で、23℃、37℃及び41℃で24時間曝露し、細胞生存率を検討した。
    【結果及び考察】①パクリタキセルの血管内貯留により、血管壁の変性及びα-smooth muscle actinの陰性化が確認された。②パクリタキセル漏出による背部皮下組織の傷害に対して冷庵法は効果を示さなかったが、一方で温庵法では顕著な悪化が認められた。③臨床用薬液の抗がん剤曝露では、曝露初期に細胞生存率が著しく低下した。一方10及び100倍希釈溶液での抗がん剤曝露では、曝露24時間後までの細胞生存率はcontrolレベルであったが、曝露48時間後では細胞生存率の有意な低下がみられた。④いずれの抗がん剤においても、37℃での曝露に対して23℃での曝露では細胞生存率は高い傾向であったが、41℃では低くなった。
     以上の結果より、起壊死性抗がん剤の血管内貯留及び血管外漏出による細胞傷害性が確認された。また、抗がん剤の血管外漏出に対して、温庵法はむしろ抗がん剤による細胞傷害を増強する傾向であった。
  • 浅水 秀明, 森本 かおり, 久保田 雅也, 永見 高輝, 長岡 慶, 永井 章, 小檜山 ちひろ, 吉田 文, 増田 瞳, 叶 隆, 細川 ...
    セッションID: P-76
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】Oseltamivir(OST)は肝代謝により活性本体であるcarboxylate体(OSTC)を生じる経口抗インフルエンザ薬である。本研究では,OST服用により精神症状をきたした15歳女児の血漿および脳脊髄液中薬物濃度の測定と薬物動態関連および副作用感受性遺伝子の解析を行うことにより原因を推定した。なお,患者はOST 2 mg/kgを12時間毎に5回服用し,初回投与時から精神症状を繰り返し発症したが,間欠期には正常応答が可能であった。また,症状発生時の脳波はインフルエンザ脳症とは異なるものであった。
    【方法】OST最終投与154時間後の血漿および脳脊髄液中濃度をLC-MS/MSにて測定した。薬物動態関連遺伝子としてcarboxylesterase1A; CES1Aおよびorganic anion transporter 3; SLC22A8,副作用感受性遺伝子としてsialidase 2; NEU2の遺伝子多型解析を行った。
    【結果・考察】最終投与154時間後の血漿中に1.55 ng/mLのOSTCが検出されたが,OSTは検出限界(0.5ng/mL)以下であった。脳脊髄液中にはOST,OSTC共に検出されなかった。血中濃度シミュレーションの結果から,OSTの代謝過程(CES1)あるいはOSTCの消失過程(OAT3)における機能低下が示唆された。遺伝子解析の結果,CES1 のhaplotypeはCES1A1/1A3のホモ接合体であり,CES1A のmRNAの低下型ではなかった。一方NEU2に,OSTによる阻害Ki値の低下が報告されているR41Qがヘテロ接合体で検出された。以上の結果より,本症例における精神症状には,血中薬物濃度上昇による脳内暴露量の上昇とNEU2に対する感受性の増大が関与していることが推察された。
  • 泉 幸子, 齋藤 敏樹, 上塚 浩司, 山元 哲, 岩田 晃, 土井 邦雄
    セッションID: P-77
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は,好中球前駆細胞の増殖や分化の促進,また成熟好中球の活性化に作用することが知られている.今回,開発中のイヌのG-CSF製剤をウサギに投与し,末梢血中の好中球(偽好酸球)の変化及び抗原性を調べたので報告する.
    【材料及び方法】日本白色種ウサギ(JWY-NIBS,3~4カ月齢)を用い,G-CSF製剤投与群(G群)及びG-CSF製剤とアジュバントの乳化物投与群(GA群)を設定した.G-CSF製剤(2.5μg/kg/day)を9週間にわたって毎週1日1回,2日間連続皮下投与した.各週の第1回投与前(Pre),第1回投与後24h及び48hに耳介静脈より採血し血液学的検査を,Pre採血時の血清を用いG-CSF抗体価の測定を行った.最終採血後に剖検し,肝臓,脾臓,腎臓,大腿骨(骨髄)を採取し病理組織学的検査を行った.
    【結果】G及びGA群において,Preに比して白血球数,偽好酸球百分比の有意な高値あるいは高値傾向がそれぞれ投与1~5週及び投与1~3週に認められた.ELISA抗体価はG群で投与6週以後,GA群で投与3週以後,第1週の値に比して有意な高値を示した.
    【考察】抗体価の上昇に伴いG-CSFの作用は徐々に消失し,それはアジュバントにより増強されたことから,G-CSFに対する抗体による干渉が明らかとなった.本実験と同条件で行ったイヌを用いた実験(所内データ)では,約50%のイヌに弱い抗体産生がみられたが投与期間を通じて好中球は増加した.比較対照としたヒトG-GSF製剤投与群では投与5週以後抗体価は上昇し,それに伴いG-CSFの作用は消失した.よって異種動物由来G-CSFを投与した場合,類似した抗体産生過程を示しG-CSFの作用が抑制されると考えられた.実施中の組織学的検査結果も合わせて報告予定である.
  • 吉岡 祐一郎, 桑原 孝, 金田 信也, 宮本 裕介, 市川 慎司, 内見 秀樹, 中島 芳文, 河野 裕一, 種井 茂夫
    セッションID: P-78
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】末梢静脈栄養(PPN)において最も頻度が高く問題となる副作用は静脈炎であり、PPN輸液の酸性度は静脈炎の重要な危険因子の一つである。静脈炎のリスクを最小化するために、ほとんどの日本のPPN輸液は酸性の要因を無くした製剤となっているのに対し、ほとんどのヨーロッパのPPN輸液は酸性の製剤となっている。本研究は、これら酸性度の違いがPPN輸液の静脈炎惹起能に反映することを明らかにするために実施した。
    【方法】試験輸液として、日本のPPN輸液であるAF(pH6.56)と2つのヨーロッパのPPN輸液であるE2-in-1(pH5.88)及びE3-in-1(pH5.54)を用いた。さらに、脂肪を含有しない製剤であるAF及びE2-in-1のカロリー及び浸透圧を脂肪含有製剤であるE3-in-1と合わせるために、AFとE2-in-1に1/10容量の20%脂肪乳剤を加えた液(AF+L、E2+L)も調製した。それぞれの輸液を、8匹のウサギの耳介静脈内に10 mL/kg/hrの速度で8時間投与した。投与終了の24時間後に投与静脈を採取し、病理組織学的に検査した。「静脈内皮細胞の消失」、「炎症性細胞の滲出」などの静脈炎の所見について0(異常なし)から3(重度の変化)までにグレード付けし、それぞれの所見のグレードについてWilcoxon rank sum testを用いて検定した。
    【結果】E2-in-1、E2+L及びE3-in-1は軽度から中等度の静脈炎変化を引き起こしたが、AF及びAF+Lはほとんど起こさなかった。3つの市販製剤の比較では、AFの静脈炎惹起能はE2-in-1及びE3-in-1に比し有意に低かった。3つの脂肪含有輸液の比較では、AF+LはE2+L及びE3-in-1に比し有意に低かった。
    【結論】これらの結果から、PPN輸液の酸性度はその静脈炎惹起能に反映することが示唆され、生理的なpHのPPN輸液は末梢静脈投与に有利であると考えられた。
  • 田牧 千裕, 永山 隆, 王鞍 孝子, 米田 保雄, 服部 健一, 荻野 大和, 高島 吉治, 安木 大策, 橋場 雅道, 久田 茂, 中村 ...
    セッションID: P-79
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【方法】
    平成13~22年までに承認された新有効成分含有医薬品234剤のうち、抗腫瘍薬及びワクチン剤等を除く薬剤を対象に、5%以上の頻度の臨床副作用と非臨床毒性所見の関連性について調査した。日本標準商品分類の薬効分類番号(作用部位又は目的、薬効を表す)に基づいて分類し、5以上の薬剤かつ10以上の臨床副作用を含む薬効分類について、副作用の発現器官及び臨床-非臨床相関性を解析した。
    【結果】
    多くの薬効分類で、中枢神経系、消化器及び肝胆道系の副作用の割合が高かった。生物学的製剤、化学療法剤、その他の代謝性医薬品、中枢神経系用薬は、1医薬品あたりの副作用数が全医薬品平均(9副作用/剤)よりも多かった。
    非臨床試験からの予測性は、感覚器官用薬(眼科用剤)、抗生物質製剤、泌尿生殖器官及び肛門用薬、強心剤で高かった(93%、79%、79%、71%)。感覚器官用薬、中枢神経系用薬、消化器官用薬は、作用部位である眼、中枢、消化器の副作用がそれぞれ高頻度に認められ、薬剤の組織分布又は投与部位との関連が伺われた。泌尿生殖器官及び肛門用薬では、作用部位に対応する器官の副作用は殆ど認められない一方、薬理作用に関連した口渇が多く認められた。抗生物質製剤、強心剤では、薬理作用に関連した副作用は少ないものの、予測性が全般的に高い消化器、肝胆道系の副作用が多く認められた。一方、その他の代謝性医薬品、生物学的製剤では、非臨床試験からの予測性は低く(34%、30%)、また種々の器官に多様な副作用が報告されていたことから、作用機序や類薬情報を考慮した多角的な非臨床試験と、臨床試験の中での慎重な安全性の評価が重要と考えられた。
    【結論】
    副作用の発現器官や非臨床試験からの予測性は薬効分類で異なる傾向が認められ、薬剤の組織分布、作用部位並びに投与部位等との関連が伺われた。
  • 橋場 雅道, 王鞍 孝子, 永山 隆, 米田 保雄, 服部 健一, 荻野 大和, 田牧 千裕, 高島 吉治, 安木 大策, 久田 茂, 中村 ...
    セッションID: P-80
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【方法】平成13年~22年に承認された市販薬234剤について、5%以上の発現頻度が認められた臨床副作用を調査・解析した。これらの臨床副作用について、発現件数の多かった副作用を明らかにするとともに、副作用分類毎の発現割合を比較した。また、個々の副作用および副作用分類毎に、非臨床毒性からの予測性を解析し、予測性が高かった、あるいは予測性が低かった副作用および副作用分類を明らかにした。
    【結果】発現件数が多かった副作用は、頭痛、発熱、悪心、軟便・下痢、吐気・嘔吐、腹痛、便秘、ALT増加、AST増加、倦怠感・疲労、注射部位反応、発疹等であり、その種類は多岐にわたっていた。副作用分類毎の発現割合では、消化器、中枢神経系、肝胆道系の割合が高く、全体の70%を占めた。非臨床毒性からの予測性が60%を超えた副作用は食欲不振、嘔気・嘔吐、悪心、軟便・下痢、注射部位反応、白血球減少、口渇、AST増加、肝機能異常、傾眠であり、現状の非臨床試験の検査項目でカバーできるものが多かった。予測性が40%未満の副作用は倦怠感・疲労、頭痛、不眠、めまい、そう痒、腹痛等、現状の非臨床試験の検査項目ではカバーが困難なものが多かったが、血圧上昇、発熱、トリグリセライド上昇、発疹、咳嗽等、現状の検査項目でカバーできるものも複数含まれていた。副作用分類毎の予測性では、発現割合が高かった消化器、中枢神経系、肝胆道系のうち、消化器および肝胆道系は予測性が60%を超えていたが、中枢神経系は20%未満であった。また、その他の副作用分類のうち、投与部位、血液、口頭・咽頭は予測性が80%を超えていたが、皮膚、循環器、全身、代謝、呼吸器は40%未満であった。
    【結論】臨床副作用や副作用分類により、非臨床毒性からの予測性は大きく異なり、現状では予測性が低い副作用について、予測性を高めるための対策が必要と考えられた。
  • 高島 吉治, 荻野 大和, 田牧 千裕, 橋場 雅道, 服部 健一, 安木 大策, 米田 保雄, 久田 茂, 王鞍 孝子, 永山 隆, 中村 ...
    セッションID: P-81
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・材料及び方法】  医薬品のヒトにおける安全性を予測することを第一の目的として、非臨床安全性試験が実施されているが、動物試験成績のヒトへ外挿性については今日でも大きな課題となっている。この解を探って製薬協では過去にも種々の調査を行ってきた。過去の調査から既に15年以上が経過していることから、今回我々TF-1は臨床副作用の非臨床所見との「相関のない部分」に焦点を当て、平成13~22年の10年間に承認され、市販されている新有効成分含有医薬品(抗悪性腫瘍薬及びワクチン類を除く134剤1202副作用)について、5%以上の各種副作用を添付文書より、非臨床試験成績を公開資料概要・審査報告書より調査・集計し解析した。その中で臓器別分類での各種副作用の、非臨床試験からの予測性についての解析結果を報告する。

    【結果及び考察】 臓器別分類での副作用件数は多い順に、消化器系と中枢神経系が各々217及び203件、次いで肝機能異常1013件に続き、皮膚系、全身性、血球異常、心・循環器系異常が各々86~63件であった。消化器系副作用の非臨床試験からの予測性は全体で63%、予測性の低い副作用として腹痛(予測可能6%)及び便秘(同4%)が挙げられた。中枢神経系副作用の予測性は全体で26%、特に低いものは、頭痛、疲労・倦怠感・無気力(同5%以下)であった。肝機能異常においてALT又はAST上昇の予測性は各々59及び70%であった。以上のように、非臨床試験よりその発現予測が困難な代的な副作用として、腹痛(消化器系)、頭痛、疲労・倦怠感・無気力(中枢神経系)が挙げられ、これらは臨床において注意すべきものと考えられた。
  • 荻野 大和, 中村 和市, 久田 茂, 王鞍 孝子, 米田 保雄, 服部 健一, 田牧 千裕, 高島 吉治, 安木 大策, 橋場 雅道, 永 ...
    セッションID: P-82
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    【方法】
    平成13~22年までに承認された新有効成分含有医薬品234剤中で抗腫瘍薬及びワクチン剤等を除く薬剤を対象に、5%以上の臨床副作用と非臨床毒性所見の関連性について調査した。臨床適用経路は経口、静脈内、経口及び静脈内、皮下/経皮/筋肉、点眼/硝子体内に部類した。薬効は日本標準商品分類に基づき分類するとともに低分子と低分子以外に分けて、予測性を臨床副作用に対する非臨床所見の有無として分類し、解析した。
    【結果】
    各臨床適用経路別の低分子及び低分子以外の比率についての解析では、静脈内及び皮下/経皮/筋肉で低分子以外の比率が高かった。1薬剤あたりの副作用発現数では、低分子で経口、低分子以外で静脈内及び点眼/硝子体内が高値であった。臨床適用経路別における予測性の特徴として経口では、薬剤分類別で化学療法剤と中枢神経系用剤、副作用種類で精神神経系の予測性が悪かった。 なお、肝臓や消化器の予測性は良好であった。静脈内では、低分子の副作用種類で全身、消化器等の予測性が悪く、循環器は良好であった。一方、低分子以外では副作用全体的に予測性が悪かった。皮下/経皮/筋肉では、低分子の副作用種類で精神・神経系の予測性が悪く、投与部位や皮膚は良好であった。一方、低分子以外では血液や投与部位を除き副作用全体的に予測性が悪かった。点眼/硝子体内では低分子及び低分子以外とも眼の副作用が大多数を占め、予測性も良好であった。
    【結論】
    投与経路別特徴として経口で肝臓や消化器、経皮で皮膚、点眼・硝子体内で眼などの副作用に対する非臨床所見の発現率は良好であり、投与経路別の毒性所見の発現しそうな器官は予測性が高かった。一方、低分子では精神神経系など予測が難しい副作用や低分子以外の薬剤では副作用に対する非臨床所見の発現率が悪かった。
  • 王鞍 孝子, 永山 隆, 米田 保雄, 服部 健一, 荻野 大和, 田牧 千裕, 高島 吉治, 安木 大策, 橋場 雅道, 久田 茂, 中村 ...
    セッションID: P-83
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/24
    会議録・要旨集 フリー
    非臨床試験から得られる安全性情報が臨床副作用とどの程度相関しているかを知ることは今後の医薬品開発に有益である。そこで、市販されている医薬品の臨床所見と非臨床所見の相関性を調査し、発現頻度別副作用の特徴を明らかにした。
    【方法】平成13~22年までに承認された新有効成分含有医薬品234剤のうち、抗腫瘍薬及びワクチン剤等を除く薬剤を対象に、5%以上の臨床副作用と非臨床毒性所見の関連性について調査した。臨床副作用は添付文書から抽出し、それぞれの副作用に対応する非臨床所見の有無を承認申請資料及び審査報告書から確認した。臨床副作用の発現頻度を①5~10%未満、②10~20%未満、③20~30%未満、④30~40%未満、⑤40~50%未満及び⑥50%以上の6つの頻度領域別に解析を行った。
    【結果】全副作用の頻度別件数は、①から⑥の順に671、313、88、57、18及び52件であった。全副作用の8割は頻度20%未満であったが、⑥の高頻度のものが4%を占めていた。副作用の相関性は①から⑤までは低頻度よりも高頻度の副作用で良い傾向が認められたが、⑥の副作用中約4割は予測不可能であった(頭痛、倦怠感及び発熱)。各発現頻度の副作用を発現臓器別に分類した結果、高発現頻度では、血液、全身と中枢神経系の副作用が多い傾向にあった。重大な副作用は56件で、約8割は20%未満の発現頻度で大部分は予測可能であったが、重大な副作用件数の16%(9件)が予測不可能であり、頻度10%未満であった。
    【結論】全体の約8割の副作用の発現頻度は20%未満であり、50%以上のものは約4%程度と少なかった。低頻度よりも高頻度の副作用が良好な相関性を示す傾向ではあったが、50%以上の高発現頻度の副作用のうち約4割が予測できなかったたことは、今後の課題と考えられる。
feedback
Top