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木藤 学志, 厚見 育代, 山際 慶典, 倉田 昌明, 榊 秀之
セッションID: P-91
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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【背景】幼若動物を用いた非臨床安全性試験ガイドラインでは、特定の器官・機能への影響を検討する場合には片性での評価も可能と記載されている。しかしながら、眼科領域では実験動物の性差に関する知見が少ないことから片性使用の科学的な妥当性は示されていないのが現実である。本検討では眼科用医薬品の非臨床試験において汎用されているウサギであるDutch belted品種(Dutch)の眼球及び眼周辺組織について、特に幼若動物における解剖学・組織学的観点から性差の有無を検討した。
【方法】Dutchの雌雄について、性成熟前後の3つの週齢群(6、13、及び20週齢)の眼球、眼瞼及び涙腺を生産施設から入手した。眼球パラメータとして重量並びに容積(眼球、水晶体、及び硝子体)、直径(眼球、角膜、及び水晶体)、眼軸長、角膜の高さ、及び水晶体の厚さの計測を行った。また、眼球、眼瞼、及び涙腺のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本を作製し、光学顕微鏡で性差の有無を観察した。
【結果】眼球パラメータはいずれの項目についても雌雄ともに各週齢で同程度の値を示した。眼球パラメータの成長率は性別間でほぼ同じであり、6-13週齢間における成長率は13-20週齢間における成長率よりも概して高値を示した。また、HE染色標本の観察において眼球の角膜、虹彩、及び網脈絡膜を含む各組織、眼瞼のマイボーム腺、及び涙腺の組織構造に性差は認められなかった。
【結論】本検討で、6-20週齢のDutchの眼球及び眼周辺組織において解剖学・組織学的な性差は認められなかった。本結果は、幼若齢Dutchを用いる非臨床眼毒性試験を実施する際の片性使用を科学的に支持する基礎データのひとつとなり得る。
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額田 祐子, 大内 淳子, 伊藤 勇一, 曽根 瑞季, 武士田 寛人, 劉 舒捷, 森田 修
セッションID: P-92
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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【背景】化学物質の反復投与による毒性影響は、対象臓器や毒性応答が多岐に亘るため、その代替法開発は他の毒性評価に比べ遅れている。本研究では、反復投与毒性試験で主要な標的臓器である肝臓に焦点を絞り、肝毒性の主要なメカニズムに着目した
in vitro 試験と既存の
in silico 技術を用いて、肝毒性ポテンシャル及びリスク評価への有用性を確認した。
【方法】反復投与毒性試験データまたはヒト臨床データの存在する医薬品、化粧品、化学品原料を試験に供した。
In vitro 試験では、HepaRG細胞を用い、細胞膜傷害、酸化ストレス、β酸化阻害、トリグリセリド蓄積を指標とし、肝細胞障害性、胆汁うっ滞、脂質代謝異常を評価した。また、既存の
in silico モデルのうち、HESS、Multi-case, Derek Nexusを選択して
in silico 評価に用いた。
【結果・考察】初めに肝毒性ポテンシャルの予測に対する有用性を確認したところ、
in vitro 試験と
in silico モデルの組み合わせ評価により、感度良く肝毒性ポテンシャルを検出可能であることが確認された。次に、
in vitro 試験での細胞応答量と、C
max 等で示される生体への暴露量を比較したところ、肝障害を引き起こすことが知られている医薬品であるアミオダロン塩酸塩やシクロスポリンAでは、細胞応答量とC
max が近似した値を示すのに対し、家庭用製品に汎用され、ヒト健康影響に関するリスク評価にてリスクが小さいとの報告があるアミンオキシドに関しては、細胞応答量と推定C
max の間に大きな違いがあることが確認された。
【結論】本研究の結果から
in vitro 試験と
in silico モデルを組み合わせた評価により、医薬品、化粧品、化学品の肝毒性を検出可能であり、
in vitro 試験の細胞応答量を肝毒性のリスク判断に活用できる可能性が示唆された。
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高橋 千尋, 中村 大地, 伊藤 雅彦, 岩浅 央
セッションID: P-93
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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【背景及び目的】再生医療用の細胞加工製品中に混入した造腫瘍性細胞のin vitroでの検出系として、軟寒天コロニー形成試験が用いられている。しかし、従来から用いられている形成されたコロニー数を顕微鏡下で計数する方法(従来法)では、実験に1箇月を要するとともに感度も十分ではない。本研究ではDNA結合蛍光色素を用いた蛍光法において、HeLa細胞(陽性対照)及びMRC-5細胞(陰性対照)を用いて評価し、高感度な検出条件を検討すると共に従来法との比較を踏まえて検証を行った。
【方法】1×10
4又は1×10
5 cells/well のMRC-5細胞に対しHeLa細胞を0.1 ~ 3%又は0.01 ~ 0.3%の割合で段階的に混合(スパイク)した細胞混合液を、軟寒天中で培養した。培養7、14、21及び28日後に、CytoSelect 96-Well Cell Transformation Assayキット(Cell Biolabs)を用い、DNAに結合したCyQuant GRの蛍光強度を指標として細胞数の定量を行った(蛍光法)。培養後の測定値(蛍光強度)が、細胞播種時(Day0)の測定値+3.3×S.D.を超えていた場合を陽性(足場非依存性増殖能有)、それ以下の場合を陰性(同なし)として、本系における造腫瘍性細胞の検出感度を算出した。また、同様の細胞混合液を用いて従来法を実施し、蛍光法と比較した。
【結果及び考察】蛍光法においては、MRC-5細胞中に少なくとも0.1%の割合で混合されたHeLa細胞を14日間以上の培養により100%検出することができた。さらに培養期間を21日間以上に延長することで検出感度が0.01%まで向上した。一方、従来法を用いた場合は、コロニー形成を確認できるまで21日間以上かかった(検出感度は検討中)。よって、蛍光法では従来法に比べ、短期間かつ高感度に造腫瘍性を有した細胞の検出が可能であると考えられた。
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吉田 徳幸, 内藤 雄樹, 佐々木 澄美, 内田 恵理子, 小比賀 聡, 内藤 幹彦, 井上 貴雄
セッションID: P-94
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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近年、「標的mRNAを分解するタイプのアンチセンス(= Gapmer型アンチセンス)」の開発が進んでいる。2013年に全身投与性の核酸医薬品として初めて上市されたMipomersen(商品名Kynamro:ApoB-100を標的とする高コレステロール血症治療薬)もGapmer型アンチセンスであり、その有効性は実用化のレベルに達している。一方で、Gapmer型アンチセンスを初めとした核酸医薬品の安全性を考える上で、核酸医薬品に特有の懸念点となるオフターゲット効果に留意する必要がある。特に、Gapmer型アンチセンスはmRNAを標的とするため、標的以外の類似した配列を有するRNAと相補的に結合し発現を抑制する「相補配列依存的オフターゲット効果」のリスクが懸念される。
この点を解決するため、これまで我々は「Gapmer型アンチセンスとどの程度の相補性を有するmRNAが影響を受けるのか」について検証し、13塩基長のGapmer型アンチセンスがオフターゲット効果を誘導する配列条件を見出した。そこで本研究では、Gapmer型アンチセンスの塩基長によるオフターゲット効果の誘導条件の違いを検証するために、eGFP mRNAを標的とする15・18塩基長の抗eGFPアンチセンスとeGFP安定発現ヒト細胞を用いて、ヒト細胞に内在的に発現する遺伝子への影響を検討した。その結果、いずれの塩基長のGapmer型アンチセンスにおいても明確なオフターゲット効果が観察され、Gapmer型アンチセンスの塩基長が長くなるほどミスマッチの影響は小さくなり、多くのミスマッチが入っても発現抑制される確率が高くなる傾向にあった。本発表では、各塩基長のGapmer型アンチセンスによって、「どの程度の相補性を有するmRNAが発現抑制を受けるか」について具体的な数値を議論したい。
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舞原 文女, 本多 泰揮, 山根 雅之, 森田 修
セッションID: P-95
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適正に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
アルキルジメチルアミンオキシド(AO)は洗浄力や起泡力に優れた両性界面活性剤であり、家庭用洗浄剤に広く配合されている。AOの生分解性は良好であるが、藻類に対する毒性が魚類・甲殻類に比べて強いことが知られており、生態影響の観点から化審法優先評価化学物質として国による環境影響評価が実施されている。AO配合の家庭用洗浄剤は、使用後にその大部分が家庭排水として汚水処理施設を経由して公共用水域(主に河川)に排出されることから、環境リスクアセスメントには実環境の暴露実態把握と藻類毒性メカニズム解析に基づく環境影響評価が重要と考えられる。
そこでまず、実環境の暴露実態の把握に、全国規模の環境濃度の予測が可能な水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL、以下SHANEL)を用い、河川水推算濃度と環境モニタリングデータの一致性について評価した。その結果、推算値と実測値の一致率は概ね0.1~10の範囲にあり、SHANELによるAO河川水推算濃度が実環境を反映していることを明らかにした。一方、藻類毒性メカニズムに関してはAO暴露により藻類の光合成色素合成に係わる酵素が競合的に阻害され、光合成色素と前駆体がAO濃度依存的に減少することが原因であることを明らかにした。
以上、全国を対象としたSHANELによるAO予測環境濃度(PECwater:0.28 μg/L)が藻類毒性メカニズム解析で明らかとなった光合成阻害を誘発する最低濃度(114 μg/L)に比べて低いことから、実環境においてAOが藻類生長に影響を及ぼすリスクは低いことが示唆された。
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佐々 友章, 本多 泰揮, 山根 雅之, 森田 修
セッションID: P-96
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿って化学物質を適切に管理するためには、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響に関するリスクを科学的に解析することが重要である。
トリエタノールアミン 4 級塩(TEAQ)は衣料用柔軟仕上げ剤に配合される陽イオン性界面活性剤であり、工業的に製造されるTEAQはアルキル鎖の炭素数や一分子当たりのエステル結合数が異なる同族体(結合数に応じてモノ体・ジ体・トリ体と表記)から構成される混合物である。TEAQの各成分は物理化学的性状の違いに由来して環境中での挙動が大きく異なることが予想されることから、精緻なリスクアセスメントには個々の成分についての実環境を考慮した環境挙動の把握が重要と考えられる。
そこで、TEAQを構成する各成分の物性を考慮した条件を設定の上、好気反応槽を再現したシミュレーション試験(OECD TG 314B)および都市下水処理場を対象とした野外調査により、環境中濃度に大きく寄与する下水処理場での動態(消失速度、除去率等)を明らかにすることを試みた。なお、試験には汚泥由来の夾雑物による定量性の低下を改善するため、構造の一部を重水素化したTEAQを用いた。その結果、TEAQは試験開始直後から全成分が汚泥に吸着して水層中から除去されるとともに、汚泥層中で速やかに濃度低下することが明らかとなった。分解速度はトリ体→ジ体→モノ体の順で大きくなったが、試験終了時には全成分で>99.7%の除去率を示した。また、シミュレーション試験より算出した下水処理除去率は野外調査から得られた除去率と良好に一致することから、OECD TG 314Bが野外調査の代替試験となる可能性が示唆された。
以上の検討より、環境に対するリスクを科学的に解析するには実環境を考慮した挙動の把握が重要であり、TEAQは実環境中で高い除去性を示すことが示唆された。
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中島 晶, 佐藤 宏樹, 織田 進吾, 横井 毅
セッションID: P-97
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景・目的】医薬品の副作用として、スティ—ブンス・ジョンソン症候群 (SJS)や中毒性表皮壊死症 (TEN)のような重篤な皮膚障害が発現することがある。これら疾患は免疫因子が関与する遅延型のアレルギー反応であることが示唆されているが、その発症機序は未だ明らかにされていない。本研究では、ヒト血球系細胞株であるHL-60細胞を用いた
in vitro 試験系において、SJS/TENの被疑薬として報告数が多い抗菌剤レボフロキサシンおよび解熱鎮痛消炎剤ロキソプロフェンによる免疫因子の活性化について検討した。
【方法】HL-60細胞にレボフロキサシンあるいはロキソプロフェンを一定時間処置し、細胞を回収後、免疫関連因子のmRNA発現量をリアルタイムRT-PCR法により定量した。SJS/TENの報告数が少ないネガティブコントロールとして、レボフロキサシンの構造類似体であるノルフロキサシンおよびロキソプロフェンの構造類似体であるケトプロフェンを用いた。
【結果・考察】レボフロキサシンあるいはロキソプロフェンの処置によりHL-60細胞において、MCP-1、IL-8、IL-1βおよびTNF-αのmRNA発現量が増加し、さらに、近年SJS/TENとの関連が示唆されているAnnexin A1 mRNA発現量が増加した。また、これら薬物によるMCP-1、IL-8、IL-1β、TNF-αおよびAnnexin A1のmRNA発現誘導は濃度依存的かつ時間依存的であり、処置24時間後に最も強い発現誘導が観察された。ネガティブコントロールであるノルフロキサシンおよびケトプロフェンによるMCP-1、IL-8、IL-1βおよびAnnexin A1の発現誘導はレボフロキサシンおよびロキソプロフェンと比べ弱かった。
【結論】レボフロキサシンおよびロキソプロフェンによる重篤な皮膚障害の発症には免疫因子の活性化が関与する可能性が示唆された。
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長沼 悟, 小林 鋭祐, 埴岡 健一, 岡田 晃宜
セッションID: P-98
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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薬剤誘発性肝障害は,医薬品の開発中止または市場撤退の主な原因の一つである。これらの肝毒性の発現機序に関しては不明な点が多いが,多くのものが反応性代謝物を生成し,それが肝毒性の発現に関与していると考えられている。反応性代謝物は主に肝臓におけるグルタチオン抱合によって解毒されるが,この解毒能はヒトに比べげっ歯類の方が高いことが知られており,標準的な毒性試験において反応性代謝物起因性の肝毒性の検出感度が低い一因と考えられる。そこで本研究では,γ-グルタミルシステイン合成酵素阻害剤であるButhionine-sulfoximine投与により肝臓中グルタチオンレベルを低下させたラットを用いて,臨床での肝毒性の有無および反応性代謝物生成の有無の観点から選択した複数の化合物(アセトアミノフェン,アモジアキン,チクロピジン等)における反応性代謝物起因性の肝毒性ポテンシャルの有無について検討した。また,臨床での血中薬物濃度とグルタチオン枯渇モデルラットの血中薬物濃度を比較し,曝露レベルの相関性についても考察した。本発表では,市販化合物での検討結果とともに,自社化合物の評価事例も交え,in vivo薬物性肝障害リスク評価系としてのグルタチオン枯渇モデルラットの有用性について紹介する。
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豊田 武士, 曺 永晩, 赤木 純一, 水田 保子, 西川 秋佳, 小川 久美子
セッションID: P-99
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景と目的】化学物質の安全性評価における反復経口投与毒性試験は、健常な実験動物を用いて実施される。TDI/ADIの設定に際しては、これらの試験で得られた無毒性量に対して、種差・個体差としてそれぞれ10倍の不確実係数(安全係数)を用いることが一般的である。一方で、ヒト集団の多くが高脂血症や高血圧などの基礎疾患を有する現状を考慮すれば、個体差10倍の範囲が妥当であるのか検証を要する。今回我々は、既知の化学物質による90日間亜慢性毒性試験を健常ならびに高脂血症ラットを用いて実施し、無毒性量の差を比較することで、個体差に対する不確実係数の妥当性を検討した。
【方法】各群10匹の6週齢、雄F344またはobese Zucker(fattyおよびlean)ラットに、アセトアミノフェン(0-8000 ppm)または3-MCPD(0-900 ppm)を90日間経口投与した。無毒性量の10倍の差を検出するため、投与濃度は公比√10で5段階を設定した。
【結果】アセトアミノフェン投与では、体重増加抑制とMCV・MCHの上昇がleanおよびF344ラットの8000 ppm群に認められた一方、fattyラットに顕著な変化は認められず、無毒性量はleanおよびF344ラット2530 ppm、fattyラット8000 ppmと判断された。3-MCPD投与では、体重増加抑制、脳・心・腎・精巣相対重量増加、RBC・HGB・HCT低下、A/G増加とCre低下、病理組織学的に精巣上体管上皮単細胞壊死の増加が、すべてのラットに共通して認められた。この中で、fattyラットではHGB・HCT低下、leanおよびF344ラットではCre低下が90 ppm以上の群で観察され、無毒性量は3系統とも28.5 ppmと考えられた。以上より、健常ならびに高脂血症ラットの無毒性量の差は10倍以内で、個体差に対する不確実係数の範囲に収まることが示された。一方で、3-MCPDによる骨髄系組織への毒性はfattyラットでより顕著に認められ、高脂血症の存在が毒性感受性に及ぼす影響は臓器特異的である可能性も示唆された。
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長尾 友子, 池田 博信, 伊藤 昭人, 山本 真史, 飯高 健
セッションID: P-100
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【目的】近年、様々な分野においてミニブタの使用頻度が高まっており、心血管系の評価においてもミニブタでのテレメトリーシステムを用いた検討が必要となった。パソコンの処理能力や心電図パラメータの解析精度が年々向上し、個体別QT補正法よる補正が容易に出来るようになった。そこでミニブタを用い、個体別QT補正法の有用性について検討した。
【方法】ミニブタに高電位心電図を取得できる体内埋め込み式テレメトリー送信器(D70-PCT ;DSI社)を埋め込み検討した。心電図測定用の電極は、頸静脈内と横隔膜に固定した。無麻酔、無拘束下、無処置の状態で連続24時間測定した心電図から、Bazettの補正式、Fridericiaの補正式及び個体別QT補正式でQTc間隔を算出した。QT補正式の補正能を検討するため、それぞれのQTc間隔とRR間隔との関係を回帰直線の傾きによって比較した。次に、モキシフロキサシンを投与し、それぞれのQT補正式でQTc間隔を求めた。
【結果、考察】ミニブタの心電図を用いて、それぞれのQT補正式の補正能について検討した結果、個体別QT補正式はBazettの補正式及びFridericiaの補正式に比べ、回帰直線の傾きは小さく、0に近かった。この結果、個体別QT補正式が最も良好な補正能を示した。次に、モキシフロキサシンを投与した結果、RR間隔に変動なく、QT間隔に延長が認められた。それぞれの補正式で求めたQTc間隔において延長が認められ、QT補正法での延長の感度に違いはなかった。
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杉山 光, 岡山 祐弥, 大門 孝行, 本橋 昌也, 鷹橋 浩幸, 武藤 朋子, 和久井 信
セッションID: P-101
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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我々は、これまでの検討から健常雌雄ラットの腎臓では糸球体数・体積・糸球体構成細胞数に有意差があることを、三次元再構築解析法で明らかにしてきた。そして、ラットを用いた安全性試験結果の腎臓評価には、雌雄差を考慮する必要性について報告してきた。しかし、健常ラットの腎臓に認められる雌雄差の原因については不明である。そこで、本検討ではラット腎臓に対する、性ホルモンの影響について検討を試みた。検討には、新生児期・雌雄のWisterラットを対象とし、精巣または卵巣を摘出した後、通常飼育を行った。また、対照群として精巣または卵巣無摘出ラットを設けた。雌雄ラットは9週齢の時点で安楽死剖検後に左右腎臓を採取し、通常観察で異常がない事を確認した後、定量的三次元構造解析(Amira, v6.0.1, FEI, USA: Vox Blast, Vey Tek, inc., USA)を行い、精巣または卵巣摘出群と、精巣または卵巣無摘出群の間で比較検討を行った。腎臓の重量・発達に関しては、精巣および卵巣摘出による影響は認められなかった。糸球体体積は、精巣または卵巣摘出群の、特に雌で増加する傾向が認められた。また、腎臓単位体積あたりでの糸球体の個数・分布形態には、精巣または卵巣摘出群と、精巣または卵巣無摘出群の間で違いが観察され、現在、定量的三次元構造解析を行っている。
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劉 聡, 関根 秀一, 伊藤 晃成
セッションID: P-102
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【目的】肝臓では主にミトコンドリアでの酸化的リン酸化によりATPが合成される。一方、通常の培養条件では培地中にGlucoseが高濃度存在するため、ATPの大部分がサイトソルの解糖系で供給される(Crabtree効果)。そのため通常の培養条件では薬物によるミトコンドリア障害に起因する細胞毒性を過小評価している可能性がある。我々はラット初代肝細胞をGalactose培地で培養し、更に酸素濃度を80%に上昇させることで、通常の培養条件と比べ、肝障害誘発薬物によるミトコンドリア毒性の感受性が増強することを明らかにした。ミトコンドリアは活性酸素種(ROS)の主な発生源として知られている。そこで、本研究においては薬物によるミトコンドリア障害に寄与する細胞毒性感受性を増大させることを目的として、薬物と共にtransferrinを曝露し、毒性感受性が増強するかを検討した。また、ラット肝細胞はヒト肝細胞と比べ、代謝酵素や酸素要求性などに種差が存在することが知られている。そこで、ヒト肝細胞を用いて、種々の培養条件下でミトコンドリア毒性感受性の変化について検討した。【方法】ラット肝細胞、またはヒト肝細胞をGlucose/Galactose培地、および酸素濃度を20/40/80%の種々条件で培養し、酸化的リン酸化活性の指標として、酸素消費と乳酸産生量を測定した。Transferrin(6.25 μg/ml)の添加により、活性酸素と細胞毒性への影響を検討した。【結果・考察】ラット肝細胞はGalactose培地・酸素濃度80%、ヒト肝細胞は、Galactose培地・酸素濃度を40%で培養することで、乳酸産生量が低下すること、更に薬物をtransferrinと共曝露することで、細胞毒性の感受性がより増強した。以上から、ラット・ヒト肝細胞を生体の肝臓により近い条件で培養し、更にtransferrinを添加することで、ミトコンドリア障害に起因する肝細胞毒性をより効果的に評価できることが明らかとなった。
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林 多恵, 松本 博士, 赤堀 有美, 山下 京介, 宮浦 英樹, 小林 俊夫, 菊野 秩, 石井 聡子, 中井 誠, 齋藤 文代
セッションID: P-103
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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発がん性の評価は、化学物質のリスク評価及び管理において重要な項目の一つである。しかし、発がん性試験は、多大なコストを必要とし、多数の試験動物を用いることから、短期の発がん性評価手法の開発が望まれてきた。我々はこれまでにラットを用いた28日間反復投与試験から得られる肝臓の遺伝子発現量データを用いた短期発がん性スクリーニング法としてCARCINOscreen®を開発してきた。CARCINOscreen®による発がん性の有無の予測一致率は非常に高精度であることを報告しているが、発がん性リスク評価に適用するためには、定量的な予測指標が不可欠である。これまでにCARCINOscreen®から算出される発がん性の有無を予測するための値が用量依存性を示すことが確認されていることから、発がん性リスク評価のための定量的な指標に利用できる可能性が考えられた。この値は投与量に依存して変動することから、本研究では、発がん性が陽性と予測された物質について、直線または曲線回帰によって求めたCARCINOscreen®での発がん性を予測するための値が0を示す際の投与量 (DV0) を算出し、従来の有害性評価値の指標として用いられているBMDL10 (発現頻度10%とした時のベンチマークドーズ信頼下限値) 又はT25 (発がん頻度25%の用量)との相関解析を行い、DV0の発がん性のリスク評価への適用可能性について検討した。その結果、DV0はBMDL10及びT25と良好な相関性を示したことから、CARCINOscreen®によって得られるDV0は発がん性リスク評価のための定量的な指標として利用可能であることが示唆された。
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Marc Oliver NIEHOFF, Birgit NIGGEMANN, Gerhard F WEINBAUER
セッションID: P-104
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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While previously the dose selection in early maximum tolerated (MTD) or dose range finding (DRF) studies was mainly based on findings in body weight, clinical observation, food consumption, clinical pathology, and feces evaluation, it can now also comprise evaluation of CNS, respiratory and cardiovascular safety assessment data. This study suggests a feasible study designs and discuss potential advantages and disadvantages considering different pharmacological activities of compounds (small vs large molecule). While classical examinations are still essential for such studies, more comprehensive physical and neurological examinations and spinal reflexes testing as well as neurobehavioral observation (modified Irwin) can be included. Furthermore, quantitative assessment of locomotor activity videos from conscious, freely moving and group housed animals can be taken by video-tracking EthoVision™ XT system and evaluated for distance moved, velocity, duration of movement, time in seconds spent per zone, duration movement in seconds per zone as necessary. Respiratory measurements include blood gas saturation and respiratory rate. For cardiovascular assessment, blood pressure as well as electrocardiogram can be monitored by minimally invasive jacketed external telemetry. Conclusion: In these study designs 4 to 5 days will leave sufficient time to decide about the next dose level of the DRF/MTD phase not only based on “classical” endpoints (e.g. food consumption, clinical observation, feces), but also on CNS, cardiovascular, and respiratory safety pharmacology endpoints. With appropriate bioanalytical methods established, the exposure can also be measured in parallel.
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西土井 悠作, 児玉 篤史, 尾崎 晴茂
セッションID: P-105
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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神経電気生理学的検査は、毒性試験でみられた運動障害の原因部位を特定する上で有用な検査である。我々はイヌにおける同検査をメデトミジン鎮静で実施しているが、体動が結果に影響を及ぼすことを考慮し、検査に最適な麻酔を決めておくことは重要である。本実験では、①三種混合麻酔(メデトミジン、ミダゾラム及びブトルファノール)、②アルファキサロン、③プロポフォール又は④ケタミンを用いた麻酔(②~④はメデトミジン前投与)を用いて神経電気生理学的検査を実施し、各麻酔で得られた結果をメデトミジン鎮静で得られた結果と比較することで麻酔の影響を評価した。
運動神経伝導検査、F波伝導検査、感覚神経伝導検査及びH反射検査では、いずれの麻酔でもメデトミジン鎮静と比較して各パラメータに統計学的に有意な差は認められなかった。短潜時体性感覚誘発電位(SSEP)検査では、プロポフォール麻酔でメデトミジン鎮静と比較して前頭部波形の潜時及び第5胸椎棘突起上-前頭部ピーク間潜時の延長が、三種混合麻酔及びアルファキサロン麻酔でも同部位に延長傾向がみられた。一方、ケタミン麻酔ではいずれのパラメータにおいても明らかな変化はみられなかった。三種混合麻酔に含まれるミダゾラム、アルファキサロン及びプロポフォールはγ-アミノ酪酸サブタイプA(GABA
A)受容体作動薬であることから、前頭部波形の潜時及び第5胸椎棘突起上-前頭部ピーク間潜時の延長はGABA
A受容体を介した影響であると考えられた。
以上のことから、運動神経伝導検査、F波伝導検査、感覚神経伝導検査及びH反射検査においては今回検討したいずれの麻酔を用いても問題はないと考えられた。一方、SSEP検査で脳幹から大脳皮質体性感覚野に至る体性感覚神経路の評価を実施する場合はケタミン麻酔が適しており、三種混合麻酔、アルファキサロン麻酔及びプロポフォール麻酔の使用は避けるべきと考えられた。
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後藤 浩一, 丸 ちか子, 後藤 真由美, 菊池 勇, 本多 久美, 森 和彦, 谷 吉朗, 高崎 渉
セッションID: P-106
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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非げっ歯類を用いた
in vitroコロニーアッセイは、化合物による骨髄毒性の感受性種差を検討する上で重要なツールであるが、骨髄細胞の採取には採取者の技術を要するとともに、動物への負荷も大きいことから、より簡便に細胞を採取する方法は有用と考えられる。本研究では、イヌ末梢血から採取した単核細胞を用いた
in vitro CFU-GMコロニーアッセイ法の検討を行った。雄性ビーグル犬より採血した血液8 mLを、比重1.067 g/mL、1.070 g/mL、1.073 g/mL、及び1.077 g/mLの比重遠心試薬で処理し単核細胞を得た。次に、stem cell factor、GM-CSF、G-CSF、IL-3、及びIL-6を含むメチルセルロース含有培地(MethoCult H4230)に播種し、37℃、5% CO
2の条件下で9日間培養後、CFU-GMコロニー数を計測した。その結果、形成されたCFU-GMコロニー数は、それぞれの比重遠心試薬濃度において平均で0個/dish 、3.0個/dish、12.7個/dish、及び3.7個/dishであり、形成されるCFU-GMコロニー数は比重1.073 g/mLで処理した時が最も多かったが、
in vitroで評価するには不十分であった。そこで、G-CSF製剤であるフィルグラスチムの30 μg/kg/dayを雄性ビーグル犬に3日間反復皮下投与し(投与開始日をDay 1とする)、投与前並びに最終投与2時間後(Day 3)及び2日後(Day 5)に採取した血液を比重1.073 g/mLの比重遠心試薬で処理し、得られた単核細胞を用いてCFU-GMコロニー数を調べた。その結果、フィルグラスチム投与前では平均3.1個/dish、Day 3で平均33個/dish、Day 5では平均27個/dishであり、Day 3に採血した血液から採取した単核細胞で最もCFU-GMコロニー数が多かった。
以上、フィルグラスチムの30 μg/kg/dayを雄性ビーグル犬に3日間反復皮下投与し、最終投与2時間後に採取した血液を用いることで、
in vitroで評価するのに十分な数のCFU-GMコロニーが形成されることが明らかとなった。
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堀 寿子, 杉本 恭平, 菅沼 英里香, 小松 利光, 塩田 和也, 平井 亮, 石井 俊也, 渡辺 大, 桑原 正貴
セッションID: P-107
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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[目的]薬物誘発性QT延長は、致死性不整脈などの重篤な副作用を誘発する可能性があり安全性試験においてその評価は重要である。房室ブロック犬モデルなどが開発されているものの、比較的簡便に検出できるイヌのモデルは開発されていない。本実験では、副交感神経系機能の亢進が、心室筋の再分極電流を抑制する可能性が示唆されていることから、自律神経系機能の変化を利用した新たな薬物誘発性QT延長の検出方法について検討した。[方法]ビーグル犬雌雄各3頭を使用した。JETシステム(DSI Inc.)を用いて第Ⅱ誘導心電図を記録できるようにした後、メデトミジン(α2アドレナリン受容体作動薬:20 μg/kg, i.m.)及びE-4031(I
Kr遮断薬E-4031 n水和物:0.1 mg/kg, i.v.)を単独あるいは併用投与した。得られた心電図からQT間隔を測定すると共に心拍変動解析(株式会社ソフトロン)を行い、HF(高周波数成分)、LF(低周波数成分)およびLF/HF比を測定した。[結果]メデトミジン+E-4031投与時のQT間隔は、何れの動物でも単独投与に比べて有意に延長した。併用投与することにより投与開始直後から期外収縮などの不整脈が認められ、その発現頻度は投与30分後付近で最も高く、投与1時間後にはほぼ消失した。また、心拍変動解析の結果、メデトミジン単独投与及び併用投与時のHFは無処置時と比較して高値を示し、LF/HF比は低値を示した。[考察]メデトミジンの投与により副交感神経系機能が亢進するために心拍数は減少し、そのような状況においてI
Kr遮断薬を投与するとI
Kr遮断薬の単独投与時よりもQT間隔が有意に延長することが明らかとなった。本法は、メデトミジンの前投与を行うだけで比較的簡単に自律神経系機能を変化させることにより薬物誘発性QT延長を高感度に検出できる有用な方法であると考えられた。
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長井 大地, 中嶋 直子, 奥田 祐司, 市村 英資, 伊藤 亮治, 片野 いくみ, 伊藤 守, 岡本 一也, 河城 孝史
セッションID: P-108
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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顆粒球減少などを誘発する骨髄毒性は,殺細胞性抗がん剤に共通した副作用であり,多くの薬剤で用量制限因子となっている.この骨髄毒性は,通常,非臨床試験で実験動物を用いて評価されるが,骨髄細胞の感受性や障害から回復までの期間などにヒトと大きな相違が見られることがある.そのため,ヒトと同等の骨髄毒性感受性を示し,変動推移を評価できる動物モデルの構築は,開発化合物の選択並びに臨床試験に先駆けての副作用対策に極めて有用である.重度免疫不全動物であるNOGマウスは,異種細胞の生着効率が極めて高く,ヒト造血幹細胞を移植することで,マウス体内でリンパ球主体のヒト造血環境を再構築できるヒト化マウスとして汎用されている.最近我々は,ヒトIL-3及びGM-CSF遺伝子を導入したNOGマウス(hIL-3/GM Tg NOG)を作製し,ヒトリンパ球と共に成熟ヒト顆粒球が分化するヒト造血系マウスを開発した.本研究では,このヒト造血系hIL-3/GM Tg NOGマウスを用いて,ヒト顆粒球変動を指標とした殺細胞性抗がん剤のin vivoヒト骨髄毒性評価モデルの確立を試みた.
骨髄毒性を評価する薬剤には,顆粒球減少を誘発することが知られている代表的な殺細胞性抗がん剤(タキサン系,カンプトテシン系,プラチナ系など)の中から,in vitroにおけるヒトとマウスの骨髄毒性感受性が同程度の薬剤,ヒトで感受性の高い薬剤,マウスで感受性の高い薬剤を選択して用いた.各薬剤をヒト造血系 hIL-3/GM Tg NOGマウスに単回投与した後,末梢血中のヒト及びマウス顆粒球をフローサイトメトリーで経時的に解析し,感受性差及び変動推移について評価した.
本検討結果から,ヒト造血系hIL-3/GM Tg NOGマウスは,マウス体内で分化維持されるヒト由来顆粒球とマウス由来顆粒球に対する薬剤応答性を同時に解析することが可能であり,殺細胞性抗がん剤の臨床予見性の高い骨髄毒性評価モデルとして有用であることが示唆された.
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藤澤 希望, 齊藤 遼太, 伊藤 辰哉, 石原 可奈, 松尾 沙織里, 金丸 千沙子, 豊田 直人, 池上 仁, 千葉 修一
セッションID: P-109
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景・目的】マウスを用いた毒性試験では、同一個体からの反復採血による毒性評価パラメータへの影響が懸念されることから、同一個体で反復採血を行うこと及び反復採血で得たサンプルを用いて被験物質投与による血液学的・血液化学的パラメータの変化を経日的に評価することは難しいとされてきた。そこで本研究では、反復マイクロサンプリング実現による毒性評価精度の向上及び動物数削減を目的として、〔実験①〕マイクロサンプリングによる毒性評価パラメータへの影響と、〔実験②〕被験物質に起因した経日的な毒性評価パラメータ変化の検出可否を検討した。【方法】〔実験①〕無処置のCrl:CD1(ICR)マウスの頸静脈より反復採血(30 µL/回、6回/5日間)した群、及び非採血群に分けた。反復採血5日目にイソフルラン麻酔下で後大静脈より採血し、血液学的・血液化学的パラメータを両群で比較した。〔実験②〕同系統マウスにANIT(4日間反復経口投与、50 mg/kg/day)、Cisplatin(4日間反復静脈内投与、5, 10 mg/kg/day)又はPhenylhydrazine(単回静脈内投与、10, 40 mg/kg)をそれぞれ投与し、30 µL/回で4回/5日間、頸静脈から採血した。反復採血した頸静脈血及び連続採血5日目に採血した後大静脈血を用いて血液学的・血液化学的検査を実施した。【結果・考察】〔実験①〕反復採血群では非採血群と比較して軽度RBC/HGB/HCT減少と軽度CK増加が認められたが、毒性評価において許容される範囲内であると考えられた。〔実験②〕ANIT/Cisplatin/Phenylhydrazine投与群では、それぞれ肝・腎障害又は急性溶血性貧血を示唆する毒性評価パラメータの変化を同一個体で経日的に検出できた。以上より、マイクロサンプリングは被験物質投与による変化を同一個体で経日的に捉えられ、また毒性評価上懸念すべき影響のない手法であることが明らかとなった。本法により、毒性評価精度の向上及び毒性試験に供される動物数の削減が期待できる。
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齊藤 遼太, 難波 美保, 長谷川 妙子, 小宮山 ゆかり, 豊田 直人, 藤澤 希望, 金丸 千沙子, 石原 可奈, 池上 仁, 千葉 修 ...
セッションID: P-110
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景・目的】マウスにおける反復マイクロサンプリング(反復MS)は,複数項目の評価が求められる臨床検査への応用が進んでいない。応用するには,希釈した試料における低値での測定精度の向上が求められる。本研究は,マウスの微量採血(30 μL)に対応するために測定法の変更・改良を行い,これらの測定法の妥当性を確認した。
【方法】マウス(Crl:CD1(ICR), 6-8 wks, Male)の血液・血漿を用いた。①血液化学的検査 (AST, ALT, TBIL, UN, CRE, IP, Ca, GLU):10倍希釈血漿を測定するために分析装置TBA-120FRの分析パラメータの最適化を図った。改良法の並行精度,希釈直線性及び検出限界の確認,並びに改良法での10倍希釈測定値と当施設の従来法による未希釈測定値を比較した。②血液学的検査 (CBC, WBC-DIFF, Reticulocyte):5倍希釈血液を分析装置XT-2000iVの微量モードで測定し,並行精度の確認,並びに標準モードでの測定値と比較した。
【結果・考察】①いずれの項目も並行精度はCV = 0.2-12.2%,Salineによる希釈直線性はR
2 > 0.9,検出限界は10倍希釈したマウス血漿(無処置)を検出できるものであった。また,改良法と従来法との相対誤差は10%未満であった。②CBC及びReticulocyteの並行精度はCV < 5%,WBC-DIFFは装置の並行精度の仕様を満たした。標準モードに比べ微量モードはReticulocyteが低値傾向を示したが,R
2 > 0.9の相関が確認され,標準モードと同等の毒性変化を捉えることが可能と判断した。また,微量モードはMonocyteが高値を示し,WBC-DIFFの正確さに懸念があったが,塗抹標本観察により代替可能と判断した。以上より,改良または変更した測定法の妥当性が確認され,これらの測定法をマウスの反復MSに適用可能と思われた。反復MSをマウスの毒性試験に応用することで,個体毎の経日的変化を捉えることが可能となり,かつ動物数の削減が期待できる。
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大石 久仁彦, 小泉 治子, 有賀 和枝, 室田 尚哉, 佐藤 伸一, 西銘 千代子, 井上 貴史, 西中 栄子, 井上 亮, 仁井 一夫, ...
セッションID: P-111
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景・目的】我々は、サル類の中でも小型でハンドリングが容易なコモンマーモセット(マーモセット)での飼育・試験操作法の体制を整え、背景データの集積を進めている。マーモセットを用いる利点として、被験物質の大量供給が困難な創薬初期段階でも臨床試験への橋渡しとなる試験が実施可能となる一方、頻回採血を必要とするToxicokinetics(TK)でのサテライト群設定を視野に入れなければならない短所もある。これらの問題を改善し、さらに安全性薬理分野(中枢神経系、心循環器系、呼吸系)の同時評価の可能性を検討するため、マーモセットで申請用非臨床安全性試験が行われた市販薬を用いて複合型反復投与毒性試験を試行したので報告する。【方法】「バルサルタン(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」の200mg/kg/dayを、雌雄各3匹のマーモセットに2週間反復経口投与した。評価項目は、一般毒性試験での検査・測定項目に加えて、安全性薬理試験の評価項目(FOB、血圧・心拍数、血液ガス分析)を実施した。TK測定では、少量採血技術と高性能LC/MSを使った超高感度定量法を組み合わせたPlasma Micro-sampling Toxicokinetics(PMS-TK)法を導入した。【結果】本試験では、嘔吐、体重および摂餌量の減少、赤血球系パラメータの低値、尿素窒素およびクレアチニンの高値、腎臓の組織学的変化、血圧低下が認められた。また、PMS-TK測定では、1回の測定に用いた血漿量が2.5 μLと極めて微量であったため、動物に採血による負担はみられず、継時的血漿中薬物濃度が検出できた。【考察・結論】本試験で確認された変化は、バルサルタンでの承認申請データと同等であり、さらに血圧低下といった薬理作用も確認できた。本試験法の開発により、従来の安全性試験よりも、試験数および被験物質必要量を劇的に削減することが可能であった。また、PMS-TK法の導入により、実験動物の3Rsの観点[Refinement(少量採血)およびReduction(サテライト群不要)]からもマーモセットの大きな弱点である採血量の問題を克服できた。
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阿部 浩幸, 岡村 愛, 白川 誉史, 白川 敬一, 佐藤 薫, 宮本 憲優, 板野 泰弘, 山本 渉
セッションID: P-112
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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ヒトiPS細胞応用安全性評価コンソーシアムの神経チームでは、ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた新たな安全性評価法の開発を目指している。厚生労働省が作成した重篤副作用疾患別対応マニュアルに記載されている中枢神経系の副作用の中から、安全性評価のニーズが高い痙攣及びてんかんに着目し、微小電極アレイ(micro-electrode array: MEA)システムを用いて神経細胞の自発発火を指標とした評価手法の確立を試みている。我々はこれまでに、単独培養条件ではヒトiPS細胞由来神経細胞(iCell Neurons、CDI社)の自発発火がほとんど観察されないものの、げっ歯類の初代培養アストロサイトで調製した培地を添加することにより発火頻度が増加することを報告している。本研究では、iCell NeuronをヒトiPS細胞由来アストロサイト(iCell Astrocytes、CDI社)と共培養することにより自発発火の増加が誘導されるか否かを確認した。さらに、自発発火に対する種々の薬剤の影響を評価した。比較対照標本としてラット初代培養神経細胞のデータも取得した。実験方法としては、ラミニンコートしたMEA(MED-P210A/PG515A、アルファメッドサイエンティフィック社)上にiCell NeuronsとiCell Astrocytesを3:1の割合で播種し、8~11週間培養した後にMEAシステム(MED64システム、アルファメッドサイエンティフィック社)を用いて細胞外膜電位を記録した。痙攣誘発物質として知られているGabazine(GABA-A受容体遮断薬)、4-aminopyridine(K
+チャネル阻害薬)を陽性対照化合物として、痙攣を起こさないとされるAspirin(非ステロイド性抗炎症薬)を陰性対照化合物として、各化合物を累積添加し各濃度について10分間暴露した。これらのiCell Astrocytesの影響、評価薬剤の自発発火に対する影響を定量的に解析するためにデータ解析手法も最適化した。今回はこれらの検討結果を合わせて報告する。
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讃岐 陽介, 荒木 徹朗, 鶴井 一幸
セッションID: P-113
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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ミトコンドリアは細胞内でATP産生を担う重要な細胞小器官である。近年、ミトコンドリアの障害は薬物肝障害(DILI) の原因の1つとして注目されている。創薬研究において、候補化合物のミトコンドリア毒性を研究開発早期に
in vitro で検討することは、効率的な医薬品開発を行う上で重要である。
ヒト肝癌由来HepG2細胞は、
in vitro 試験で広く利用される不死化培養細胞株である。一般に不死化培養細胞は、細胞培養で汎用されるグルコース (Glc) 培地条件において,解糖系優位にATP産生を行う(Crabtree効果)ことが知られている。そのためGlc培地条件下では酸化的リン酸化反応などを障害するミトコンドリア毒性化合物の検出感度は低いと考えられてきた。そこでこれまで、解糖系でのATP産生が理論的になくなるガラクトース (Gal) 培地に交換し、ミトコンドリア優位なエネルギー産生へ置換することで、ミトコンドリア毒性に起因する細胞毒性評価が可能であることが報告されている (Marroquin
et al.,
Toxicol. Sci., 97:539-547, 2007)。一方でこの方法は、試験前に予め細胞をGlc培地またはGal培地下で数代培養する必要があり、培養中のクロスコンタミネーションリスク、高細胞培養コスト、あるいは試験準備期間が長い、といった問題があった。今回我々は、従来のGlc/Gal培地法を基に、従来法と同等な検出感度のままに、より短期間、低コストな
in vitroミトコンドリア毒性評価系を確立した。本試験法は、簡便でスループットに優れた
in vitroミトコンドリア毒性評価系として有用であると期待される。
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関根 秀一, 大泉 久美子, 川口 萌実, 廣田 衛彦, 田村 亜紀子, 桑田 奈々, 上月 裕一, 伊藤 晃成
セッションID: P-114
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景】ミトコンドリアにおける脂肪酸β酸化は細胞内エネルギー産生において重要な因子の一つであり、薬物により阻害されると脂質異常蓄積(ステアトーシス)の副作用を誘発する。一方培養細胞においては培養培地中に含まれる高濃度グルコースの影響により、生体の肝臓と異なり細胞内ATP産生が解糖系に依存し、ミトコンドリアによるATP産生の割合が低下している (Crabtree効果)。これまでに我々は、ガラクトース含有培地で細胞を培養することで、薬物誘発性ステアトーシスの評価が行えることを明らかとした(第42回日本毒性学会にて発表)。しかしCrabtree効果を回避することにより脂質代謝のどの過程が影響を受けているかは不明である。そこで本研究において、Crabtree効果の回避によるミトコンドリア脂質代謝の亢進について、エネルギー代謝関連遺伝子の発現、代謝産物を定量し比較することで評価を行った。【方法】ヒト肝癌由来HepG2細胞を使用し、25 mMグルコース含有培地、及び10 mMガラクトース含有培地にて培養した。各代謝酵素の遺伝子発現はリアルタイムPCRにて定量を行った。細胞内代謝産物はエタノール抽出後、LC-MSMSにて定量を行った。【結果・考察】脂質代謝関連遺伝子の発現を各培地培養条件にて比較したところ、ガラクトース培地においてミトコンドリアへの脂質取り込みに関わるCPT-1(carnitine palmitoyltransferase 1)の遺伝子発現亢進が認められた。またこの時、β酸化の補酵素であるFAD(Flavin adenine dinucleotide)の消費が認められた。以上より、ガラクトース培地への置換によってCrabtree効果を回避した際の脂質代謝亢進には、主に脂質のミトコンドリアへの取り込み及びβ酸化の亢進が関わることが示唆された。本試験系でステアトーシス陽性と判定される薬物は、特にこれらの過程を阻害している可能性が考えられる。
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田島 均, 元村 淳子, 藤江 秀彰, 林 宏一, 小松 豊, 首藤 康文, 青山 博昭, 原田 孝則
セッションID: P-115
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景・目的】 農薬の毒性は,週齢,性別および媒体の違いによって異なる感受性を示すことが知られている。そこで,神経毒性試験や生体機能影響試験等における有機リン剤の陽性対照物質を用いて,急性毒性試験の上げ下げ法により半数致死量(LD
50値)を推定し,条件の違いによる毒性変化の違いを検討した。
【方法】 LD
50値の算出は,OECDのガイドラインに準拠して急性毒性試験の上げ下げ法を用いて,開始投与用量をLD
50予備推定値未満に設定した。有機リン剤であるパラチオンとメタミドホスを1%Tween80,Corn oilを媒体にそれぞれ懸濁した。若齢期(3週齢)および成熟期(8週齢)の雌雄Wistar系ラットに被験物質を単回経口投与し,投与後48時間までの生存状況に基づき次の投与用量を決定した。症状の観察は,投与後30分,1,4,6時間,その後1日1回,合計14日間実施した。
【結果・考察】 パラチオンに関して,毒性の差が最も顕著だった組み合わせは,成熟期の雌性の1%Tween80と成熟期の雄性のCorn oilで,8.43倍毒性の差が認められた。成熟期より若齢期,雄性より雌性,Corn Oilより1%Tween80の組み合わせで毒性が強く発現する傾向が認められた。一方,メタミドホスでは,若齢期の雄性のCorn oilと成熟期の雄性の1%Tween80で,最大1.94倍の毒性の差が認められたが,その他の組み合わせでは顕著な差が見られなかった。また,使用媒体によって毒性発現が大きく異なる場合があり,オイルを基剤とした若齢動物における毒性が最も強く現れるとは限らない。これらの実験条件の差異による影響についても留意して,毒性試験のデザインや評価を行う必要性があることを改めて確認した。
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薄田 健史, 関根 秀一, 時園 茉由子, 廣田 衛彦, 田村 亜紀子, 桑田 奈々, 上月 裕一, 伊藤 晃成
セッションID: P-116
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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[目的] 薬剤性胆汁うっ滞型肝障害(胆汁うっ滞型DILI)は、肝細胞内からの胆汁酸排泄阻害に起因する。これまでに我々はサンドイッチ培養肝細胞(SCH)を用いた胆汁酸蓄積に伴う肝細胞毒性評価法を確立し、臨床での胆汁うっ滞型DILI発症リスク予測に有用であることを示してきた。一方で化粧品については、確立された全身毒性試験法が存在しないことが問題となっている。そこで本評価法が化粧品の全身毒性リスク評価に必要な複数試験系の一端を担うことが期待できると考えた。本研究では、医薬品で構築したリスク評価法とその判定基準を臨床情報が無い化粧品原料に適用した場合に、正しく評価可能となるかどうか検証した。
[方法] (1)PMDA副作用自発報告データベースを参照し、DILI様式として胆汁うっ滞型の割合の大小を広く網羅する22医薬品、及び(2)2化粧品原料(glycerol及びL-ascorbic acid)をそれぞれ被験化合物として選択した。医薬品についてはInterview FormよりDILIの臨床診断マーカー (alkaline phosphatase (ALP)、transaminases) の上昇頻度を抽出した。ヒトSCHに被験化合物50 µM (cyclosporine Aのみ10 µM)とヒト血清中胆汁酸(150倍濃度)を24時間曝露し、細胞毒性を評価した。
[結果、考察] 各被験薬物について臨床診断マーカー上昇頻度1%を境に、DILI高リスク群・低リスク群に分類した。ヒトSCHにおける各薬物の胆汁酸存在下での細胞毒性についてReceiver Operating Characteristic解析を行った結果、至適Cutoff値は、それぞれ6.8% (ALP)、3.6% (transaminases)と得られた。この時、ALP上昇リスクは感度60.0%、特異度83.3%、transaminases上昇リスクは感度62.5%、特異度 83.3%と、何れの臨床診断マーカー上昇頻度についても良好なリスク判定が可能であった。今回検討した化粧品原料については、これらCutoff値を用いることで何れも陰性と判定された。以上より、医薬品で算出されたCutoff値を用いることでDILI陽性薬物と、これら化粧品原料との分離は可能であり、本予測法が化粧品原料に対しても適用できる可能性が示された。今後はより多くの化粧品原料について同様の評価を行い、予測法の妥当性と頑健性を検証していく必要がある。
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古賀 利久, 瀬川 雅博, 水野 克彦, 梅原 健, 森下 克美
セッションID: P-117
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【目的】
ヒト薬剤誘発性肝障害(DILI:Drug-induced Liver Injury)は,今日に至るまで安全性懸念による医薬品開発中止ないし市場撤退の主要な原因となっている。ヒト肝臓由来細胞株HepaRG細胞は,サンドイッチ培養することなく通常の培養条件で胆管腔を形成し,BSEPのみならず多数のトランスポーターや薬物代謝酵素を発現することが知られている。本研究では,DILIの胆汁鬱滞型に着目し,胆汁酸存在下でHepaRG細胞を用いて,薬剤性胆汁鬱滞を検出する新規
in vitro 試験系の構築を試みた。
【方法】
㈱ケーエーシーより購入したHepaRG細胞を6 x 10
4 cells/wellにて96 well plateへ播種し,1週間のプレ培養後,胆汁酸及び薬物を2日間曝露して胆汁鬱滞に伴う細胞毒性を評価した。細胞内放射能濃度は,胆汁酸成分として放射性基質(
3H-タウロコール酸,2 µM)を追加し,上記方法に準じて処置後,アルカリ処理して得られた細胞溶解液を液体シンチレーションカウンターにて測定した。
【結果及び考察】
1)胆汁酸条件の検討:胆汁酸の約9割は体循環しており,ヒト血清で認められる胆汁酸12成分を200倍濃度まで細胞培養液に添加後2日間培養したところ,細胞毒性が認められない最大濃度は100倍濃度であった。
2)市販薬物を用いた薬剤性胆汁鬱滞の検討:22種(BSEP阻害の報告有り:20種,同報告無し:2種)の薬物を用いて,100倍濃度の胆汁酸存在下で細胞毒性を評価したところ,シクロスポリンA,リトナビル,トログリタゾン等のBSEP阻害能を有する14種の薬物で有意な細胞毒性が認められた。一方,細胞毒性が認められなかった薬物には,BSEP阻害の報告がなく胆汁鬱滞に伴うDILIの報告がない薬物だけでなく,強いBSEP阻害能を有するがDILIの報告がほとんどない薬物も含まれた。更に,細胞毒性が認められた薬物では,放射性基質を用いた検討から細胞内への胆汁鬱滞が確認できた。
以上,HepaRG細胞を用いた簡便かつ高感度な
in vitro 胆汁鬱滞の試験系が構築できた。
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Pierre-Maxence VAYSSE, Anita M. VAN DEN HOEK, Gregory HAMM, Robert KLE ...
セッションID: P-118
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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NASH (Non-Alcoholic Steatohepatitis) is emerging as a real health concerning the progression from simple steatosis to more severe liver pathologies like steatohepatitis and cirrhosis. The characterization of this pivotal step using predictive biomarkers can improve the knowledge on the pathogenesis of the disease in various aspects such as modifications of lipid metabolism, inflammatory processes and development of fibrosis. As the hallmarks required for the diagnosis of NASH still rely on liver biopsy, the identification of biomarkers using a Mass Spectrometry Imaging (MSI) approach associated with histopathological evaluation has a very interesting role to play. Here, we investigated the targeted metabolite profiling in two translational mouse models of metabolism disorders (APOE*3Leiden.CETP and LDLR-/-.Leiden) exposed to various diets to assess liver histological specificities. A multimodal approach focused on various molecular classes (small metabolites & lipids) was used to describe alterations in the liver lobules in these NASH models. Potential disease or histology related biomarkers were observed especially at the level of lipids, phospholipids or lysophospholipids classes. Smaller molecules were detected such as bile acids in the portal vein area or the GSH/GSSG couple. Potential association with fibrotic and inflammatory processes has been advanced at a biological point of view. Molecular distribution was correlated with H&E (for classical histology) staining on adjacent tissue section to highlight histological specificities related to metabolites levels. In conclusion, MSI was used to achieve a better understanding of the underlying process in development of NASH by linking changes in metabolite profiles to histopathological alterations.
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Gregory HAMM, Françoise Brignole BAUDOUIN, Nicolas DESBENOIT, S ...
セッションID: P-119
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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Mass spectrometry Imaging (MSI) applications to ophthalmic drug discovery have recently gained growing interest especially for pharmacological or toxicological studies. MSI was applied to assess the distribution of benzalkonium chloride (BAK); a common eye drops preservative, in specific areas of the eye after instillations in animal model tissues. Preservatives have been reported to cause ocular surface disorders with tear film alteration, eye irritation and to promote dry eye. Therefore, BAK distribution was investigated in small specific histological regions of the eyes in New Zealand rabbits in order to estimate the possible localizations of adverse effects of the treatment. Local drug concentration differences were observed according to the histological area and positions on eye cryosections, at anterior, posterior, temporal or nasal sides. MSI and immunohistochemistry results were put side-by-side to correlate inflammatory areas, degradation of corneal epithelium or apoptosis phenomena, within cornea/conjunctiva regions, with BAK localizations. Moreover, an important accumulation of BAKs was observed at the sclerocorneal junction where is located the trabecular meshwork, a crucial structure involved in aqueous humor outflow. Moreover, differential analysis was carried out to find disease state biomarkers in each ocular structure. Thus, MSI offers new insight in ocular therapeutic/pharmaceutical research, especially to improve the eye distribution understanding for any new drug candidate in order to assist studies on drug efficiency or toxicity in specific tissues targeted by eye diseases.
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穴山 久志, 山手 丈至
セッションID: P-120
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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The author has established an organotypic culture method using adipose tissue slices (Cell Biol Int. 2015;39:1288-98). For further evaluation of its usefulness as a platform for adipose tissue research including cell responses against the drug treatment, lithium chloride, which is a GSK-3β inhibitor, was added to the culture medium along with the adipogenic stimulation by insulin, dexamethasone, and 3-isobutyl-1-methylxanthine and the histomorphological evaluation of adipose tissue slices was conducted.
In the histological evaluation of H-E-stained adipose tissue slices, small-sized multilocular adipocytes appeared between the unilocular-mature adipocytes and/or perivascular spaces following the adipogenic stimulation. With supplementation of lithium chloride, the cytoplasmic area of newly formed multilocular cells were smaller than those for cells found in the other condition and the number of multilocular adipocytes was remarkably decreased. The 3-D observation of adipose tissue slices using confocal microscopy revealed adipose differentiation of mesenchymal cells and the inhibiting effects of lithium chloride on the adipogenesis induced by adipogenic stimulation.
Based on the above, the organotypic culture method developed by the author was confirmed to be a useful
in vitro research tool for the adipose tissue biology and the investigation of histomorphological changes observed in
in vivo toxicology studies.
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高橋 淳, 棚橋 新也, 田中 春樹, 橋本 貴生, 内田 圭治, 江崎 健, 関戸 徹, 早川 和宏, 則武 健一, 青木 豊彦
セッションID: P-121
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景及び目的】近年,まるごとの動物を用いる毒性試験において3Rsの要求は年々強くなり,ICHガイドラインの改定やQ&A策定の大きな要因になっている。毒性試験における薬物の血中動態(トキシコキネティクス[TK]検査)を評価するため,これまで主群とは別にTK用にサテライト群の動物を設定してきたが,分析技術の進展による微量定量法の開発に伴い,主群の動物から微量採血(マイクロサンプリング)によるTK評価が可能となり,現在,ICH S3AガイドラインのメンテナンスとしてTKにおけるマイクロサンプリングに関するQ&Aが検討されている。今回,我々は,従来より報告されているプラズママイクロサンプリング(PMS)法(斧研ら,第41回日本毒性学学術年会[2014])の自施設におけるラット反復毒性試験への導入を目指し,PMS法による頻回採血における血液採取量の違いが毒性試験評価項目に及ぼす影響を検討した。
【方法】生後8週齢の雌雄SDラットを用いて,反復投与試験開始時及び4週間後に相当する8週齢および12週齢時に頻回採血を行い,一般状態観察,体重,摂餌量,血液学的検査,病理組織学的検査について評価した。採血条件は,①0.04 mL×8ポイント,②0.10 mL×4ポイント,③0.10 mL×8ポイントの3種類とした。
【結果】0.10 mL×8ポイント採血群では,RBC, Hb, Htの低値,Retの高値が認められ,頻回採血による血液学的検査項目への影響が伺われた。一方で0.04 mL×8ポイント採血群及び0.1 mL×4ポイント採血群においてはRBC, Hb及びHtに若干の変化は認められたものの,弊社の背景値の範囲内の変動であった。
【結論】0.04 mL×8ポイントまたは0.10 mL×4ポイントの頻回採血は,毒性評価に影響しないと考えられた。従って,PMS法を導入することにより,主群の動物のみで毒性評価に影響を及ぼすことなくTK評価を行うことが可能であると判断された。
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難波 英太郎, 家木 克典, 大道 浩三, 加藤 杏子, 中井 恵子, 仁井 一夫, 二橋 陽一郎, 益山 慶, 山根 真一
セッションID: P-122
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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マイクロサンプリングは,従来よりも少ない量の試料で非臨床試験における生体試料中薬物濃度やバイオマーカー濃度を評価する技術であり,マイクロサンプリングの適用により,同一個体での毒性と薬物曝露量の直接的な関連性の評価や,試料採取量やサテライト動物の削減による3Rsへの貢献が期待される。現在,日米EU医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use,ICH)において,S3A(トキシコキネティクス)ガイダンスのQ&Aとしてマイクロサンプリングに関する指針の作成が進められている。
バイオアナリシス・フォーラム(Japan Bioanalysis Forum, JBF)は,バイオアナリシスの発展と課題解決のために国内の産官学のバイオアナリシス関係者により構成された団体であり,その活動の一つとしてバイオアナリシスに関する諸問題をディスカッション・グループで議論している。ディスカッション・グループDG2015-17は,マイクロサンプリングを実践する上での課題を明らかにし,医薬品の非臨床試験に関わる担当者間で対応策を議論,検討していくことが円滑な定着につながると考え,2015年10月に日本国内における実施状況,実施する上での問題点,留意点を把握するためにアンケート調査を行った。アンケートは,JBFの活動に関与している製薬企業及び委託研究機関,計66社に対して協力依頼し,37社から回答を得た。
アンケート結果によると,マイクロサンプリングを適用した動物実験の実施経験がある企業は回答数の3分の2に達し,従来と同等の評価が可能であり,試験結果に対する満足度も高いとする意見が多くを占めた。一方で,マイクロサンプリングを適用するために通常とは異なる操作上の留意点がいくつか指摘された。
発表では,アンケート結果の概要を紹介し,今後,取り組むべき課題について考察する。
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江﨑 善彦, 神尾 一三, 庄司 隆範, 白石 雅和, 塚本 俊平, 能登 貴久, 細井 一弘, 真野 英俊
セッションID: P-123
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【目的】点眼剤の遺伝毒性リスクを適切に評価できる
in vivo 評価系を確立することは、点眼剤の潜在的発がん性リスク評価の精度向上において有用性が高い。コメットアッセイは、2012年に改訂されたICHの遺伝毒性ガイドラインに
in vivo 遺伝毒性試験の一つとして推奨され、点眼剤の
in vivo 遺伝毒性評価系としても応用可能と考えられた。そこで、ウサギにいくつかの既知の遺伝毒性物質を点眼し、角膜上皮細胞における遺伝毒性発現をコメットアッセイにより検出することが可能かどうか検討した。
【方法】雄性日本白色種ウサギに、生理食塩液(陰性対照)、メタンスルホン酸エチル(EMS)溶液、メタンスルホン酸メチル(MMS)溶液およびN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)溶液をそれぞれ反復点眼し、点眼後に摘出眼球より角膜上皮細胞を採取した。採取した角膜上皮細胞懸濁液と0.5%アガロース液を混和し、スライドガラス上に滴下し標本を作製した。一晩細胞融解液に浸漬させたスライド標本をアルカリ条件下で電気泳動し、SYBR Gold染色後、病理スライドスキャナで観察しながら、Tail area、Head areaおよびTail lengthの測定を行った。
【結果】角膜上皮細胞における遺伝毒性発現をコメットアッセイにより検出することが可能かどうか、また、その再現性について検討した結果を報告する。
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金 ミンソク, 金 成桓, 李 圭弘
セッションID: P-124
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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Inhalation Toxicology Research Center, Korea Institute of Toxicology (KIT) is Korea leading certified GLP authority in area of the inhalation toxicity that has a leading-edge technology, facilities and human infrastructure for the inhalation toxicology study, inhalation drug delivery system, and development of new inhaled drug. In this presentation, we introduce the superiority methods for aerosol generation in Inhalation Toxicology Research Center. It is important to establish aerosol generation methods according to the characteristics and purpose of the test articles that are classified into four forms (gas, mist, dust, and fumigant). We have accumulated expertise for aerosol generation methods with a variety of test articles. The first, gas; we have a scientific techniques for gasification technology through the control of oxygen and carbon oxide levels. Second, dust; we can reduced test articles consumption and concentration deviation within ±10% (guideline=±20%) compared to the previous dust generation method using self-developed dust generator. The dust generator can also stably maintain high concentration of dust articles. Third, mist; we can stably generate test articles in the suspension state using self-developed mist generator. Chamber concentration of the exposed aerosol was handled immediately via well-establish analysis techniques (GC, LC etc). It is considered that rapid (about two weeks) and accurate technical establishment of generation methods for various test articles can benefices support the saving time and cost for evaluation of toxicity and efficacy studies, as well as development of inhaled drug.
まとめ:吸入試験における試験物質のエアロゾル発生は、吸入毒性および効能評価のみならず吸入製剤開発のための時間や経費を節減に影響を与える主な要因として減迅速かつ正確な発生法確立のため専門技術と経験が必ず必要!
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金 成桓, 金 ミンソク, 金 容才, 李 培, 李 圭弘
セッションID: P-125
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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Intratracheal instillation (ITI) has become a feasible alternative method for delivering an airborne material into the lung of rodents. This method is also simpler and safer than the inhalation method. Furthermore, since ITI is possible to perform the experiment with various doses of test article, it is used as a screen to determine an appropriate dose range for inhalation toxicity studies and for efficacy study of inhaled drug. In general, endotracheal intubation method and surgical method have been used to deliver test articles into the lung, but these methods are difficult to perform due to various reasons such as non-uniform distribution of the test materials, long instillation time, low success rate, high mortality, and high proficiency. With the objective of reducing the difficulty and complexity of the ITI procedure, we developed a visual instillobot for ITI by direct visualization of the tracheal opening in the rodents. We estimated instillation time by ITI of bleomycin (BLM, n=20) and polyhexamethyleneguanidine phosphate (PHMG, n=20) using a visual instillobot in the 40 isoflurane-anesthetized mice. As a result, the total instillation time of the ITI procedure was about 25 min (n=20) and only ITI time (except anesthesia) was less than 15 seconds per mouse. These results suggested that the visual instillobot could be used for rapid, stable, accurate and successful ITI of a test compound into the lungs and be utilized as a new method for ITI in the rodents.
まとめ:Visual Instillobotを用いた気道内投与法は、迅速かつ正確な投与が可能なため吸入試験分野で新たな気道内投与法として活用することができるものと考えられる。
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Nicolas SIERRO, Florian MARTIN, Marja TALIKKA, Sonia OUADI, Jér ...
セッションID: P-126
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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Smoking cigarettes is a major risk factor in the development and progression of cardiovascular disease (CVD) and chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Candidate Reduced Risk Products (RRPs) are being developed to reduce smoking-related health risks. We investigated over an 8-month period the effects of exposure to cigarette smoke (CS) or to the aerosol of a candidate RRP, Tobacco Heating System (THS) 2.2, on DNA methylation in the lung of apolipoprotein E-deficient mice. Cessation or switching to THS2.2 after 2 months of CS exposure were also assessed. High-throughput sequencing of bisulfite treated DNA revealed a gradual increase in the number of hypermethylated CpG loci in DNA extracted from lungs of mice exposed to CS. The number of hypermethylated CpG loci after 2 month exposure to THS2.2 (nicotine concentration matched to CS) also increased, however, hypermethylation was limited from 3 month on. Cessation or switching to THS2.2 resulted in a decrease in the number of hypermethylated CpG loci. In this mouse model initial exposure to CS or THS2.2 resulted in hypermethylation of CpG loci in lung. Continuous exposure to CS further increased the number of hypermethylated CpG loci while continuous exposure to THS2.2 reverted the CpG methylation level to the level observed in the lung of mice exposed to fresh air. Likewise, cessation or switching to THS2.2 reverted the hypermethylation of CpG loci.
Reduced Risk Products (“RRPs”) is the term we use to refer to products with the potential to reduce individual risk and population harm in comparison to smoking cigarettes.
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Wei CHENG, Jianfeng XIU, Zhuo YU, Yan FENG, Yan WANG
セッションID: P-127
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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Gender-specific effect is widely existed, but the shortage of appropriate model restricts the study of gender-specific effect developmentally. Embryonic stem cell test (EST) has been utilized as an alternative test for developmental toxicity; despite numerous improvements to the EST, female mouse embryonic stem cells (ESC) has not been used in this test previously.
Therefore, in current study, a SP3 ESC with XX karyotype was applied to establish a “female” EST, while R1 ESC with XY karyotype was used as a “male” control, which allows testing of teratogenicity potential following chemicals exposure and their effect on each gender. Pluripotency determination and karyotype analysis were performed to assure the cellular quality of ESCs, and cardiac specific morphological and molecular endpoints were detected to monitor cardiac differentiation. A panel of test chemicals was selected for EST establishment, in which chemicals with different teratogenicity potential in vivo and without known gender-specific effect were chosen; classical microscopy observation, together with molecular endpoints Myh6 and cTnT were used to determine chemically induced embryotoxicity. The “female” EST could predict the embryotoxicity of this panel of chemicals correctly, as the “male” EST did. In addition, another three test chemicals with known gender-specific effect were assessed; an index was constructed for comparison between “male” and “female” EST, which would suggest if any gender-specific effect existed preliminarily. Endocrine disruptors with known gender-specific effect were predicted applying the “two genders” mouse EST, and their gender-specific effect could be distinguished.
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土屋 成一朗, 中嶋 紀覚, 西川 健, 平山 英樹, 安田 リエ, 蓑毛 博文, 内野 博志, 水上 利洋
セッションID: P-128
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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多項目血球分析装置用動物対応ソフトウェアXN-Vシリーズはヒト用に開発された多項目血球分析装置XNシリーズ を用いて動物の血液学的検査に対応するものである。XN-Vシリーズでは新規に白血球総数と有核赤血球を同時に測定できるWNRチャンネル、血小板を特異的に染色し低値域の測定精度向上を可能としたPLT-Fチャンネル、動物専用機能として必要血液量を低減させた低吸引量モードを搭載している。これら機能について基礎検討(再現性、希釈直線性、経時安定性、有核赤血球の測定性能評価)結果を報告する。
【方法】
[再現性試験]:各動物種(マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、モルモット、ブタ)の血液を使用し、各測定モードにて連続10回測定(マウスは5回)を実施し、変動係数を算出し再現性を確認した。[希釈直線性試験]:安定性物質およびマウス、ラットの血液を使用し、対照法(XT-2000iV測定値および理論値)と各測定モードの測定値を確認した。[経時安定性試験]:各動物種(マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、モルモット、ブタ)の血液を使用し、室温および冷蔵保存での経時変化を48時間後まで確認した。[有核赤血球の測定性能評価]:ラットおよびイヌにおいて目視測定との相関を確認した。ラットはPhenylhydrazine投与により高値有核赤血球検体を作出し、イヌは動物病院からの入手検体のうち装置測定で有核赤血球高値を示した検体を抽出し、それぞれ目視と装置測定値の相関を確認した。
【結果・考察】
基礎検討ではどの試験においても良好な結果を得ることが出来た。特に新規搭載のPLT-Fチャンネルでは従来の電気抵抗方式と比較しPLT数の測定性能が向上していることが確認できた。また、有核赤血球の測定においても良好な相関が得られていることから、新規パラメータとして応用が期待される。
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安田 リエ, 蓑毛 博文, 内野 博志, 土屋 成一朗
セッションID: P-129
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景】シスメックス株式会社製の多項目血球分析装置用の動物対応ソフトウェアXN-Vシリーズは,ヒト用に開発した多項目血球分析装置であるXNシリーズを動物仕様にしたものであり,同社のXT-Vシリーズの後継機種である.今回,同様の動物用血液学的検査装置であるシーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社製のADVIA120とXN-Vの血液学的検査値の相関を検証した.
【材料と方法】動物は,カニクイザル(n=59),イヌ(n=70),ラット(n=59),ウサギ(n=18),ブタ(n=19)およびモルモット(n=20)の6種を使用した.採取した血液はEDTA-2Kで抗凝固処理し,採取日に両機種を用いて測定した.測定項目は,赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値,平均赤血球容積,平均赤血球ヘモグロビン量,平均赤血球ヘモグロビン濃度,血小板数,網赤血球比率,白血球数および白血球分類(リンパ球,好中球,単球,好酸球,好塩基球)とした.
【結果】全ての動物種の測定項目において両機種間に概ね良好な相関がみられた.しかし,平均赤血球ヘモグロビン濃度および単球比率は両機種間に差がみられた.
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前田 尚之, 奥村 佳奈子, 松浦 正男
セッションID: P-130
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【目的】生体ステロイドホルモンの測定は一般に血液内濃度をHPLCや抗体を用いて行なわれているが、組織内の濃度を正確に定量した報告は少ない.LC-MS/MSを用いることでより微量成分を測定することが可能である.そこで我々は、ステロイドホルモン一斉分析法を開発すると共に毒性評価の例としてDiethylstilbestrol (DES)投与ラットの臓器組織内ホルモン濃度を測定した.
【材料と方法】LC-MS/MS(UPLC-TS-Q micro, Waters)を用いた各臓器中のステロイドホルモン高感度分析法を確立し,固相カラムを用いた抽出法で臓器組織内のDES並びにステロイドホルモン濃度を測定した.SD系雄ラット8週齢にDES(0.1mg/ml投与群)を2週間胃内強制投与した.臓器(全血、精巣、肝臓、腎臓、副腎、大脳、小脳、海馬、下垂体)を採取しDES濃度を調査した.さらに各臓器におけるTestosterone(TS)とその前駆物質を測定し対照群と比較した.
【結果】添加回収試験の結果、各ステロイドホルモンの回収率は良好な結果が得られた.その抽出法を用いてDES投与ラット臓器を調査した結果、投与後30分でDESが各臓器内で検出され、特に副腎に高濃度で検出された.全血、精巣と副腎のTSはDES投与後1週間で対照群より有意に減少しており、TSの前駆物質であるPregnenoloneも減少していた.
【考察】固相カラムを使用することで良好に回収されていることから、夾雑成分の多い臓器中微量分析に有用であり,毒性試験による生体内への影響調査に応用できる有効な分析法である.DES投与ラットは血中DES濃度と同程度の濃度で脳や精巣中に検出された.また,精巣の変化が見られない時期にTS合成初期段階での障害が見いだされた.よって、この障害が精巣毒性の初期反応と推察された.
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縄司 奨, 溝口 直洋, 久樂 喬, 松浦 武, 関 雅範
セッションID: P-131
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景・目的】近年、動物愛護の観点から哺乳動物を用いる既存の発生毒性試験の代替法として、
in vitroによる評価法の開発が進められてきているが、生物全体で生じる複雑な発生毒性の再現は困難である。そのため、EU諸国で非動物として認識され、遺伝学的にヒトと類似性が高い等の多くのメリットを有するゼブラフィッシュ(ZF)胚を用いた発生毒性スクリーニング法が注目されている。しかし、これらの手法ではばく露する化学物質の水溶液濃度での評価がほとんどであり、胚本体への取込量や取込速度についてはあまり議論されていない。また、化学物質の物理化学的性状等による取込の挙動の差異について実際に測定、比較した例はほとんどない。そこで本研究では、発生毒性を引き起こし、log K
owの異なる化学物質のZF胚への取込量及び取込速度の差異について検討した。【方法】ヒト及びZFで発生毒性を引き起こすことが既知であるカフェイン[CA;log K
ow -0.07(SDS情報)]及びバルプロ酸ナトリウム[VA;log K
ow 2.96(計算値)]を各設定濃度[CA:621~2.43mg/L(公比4)、5濃度、VA:166~5.19 mg/L(公比2)、6濃度]になるよう試験用水にそれぞれ溶解させ、ZF(NIES-R株)の受精卵を28.5±0.5℃の環境下で受精後約4時間(4 hpf)~6日までばく露し、24時間ごとに顕微鏡下で症状観察を行った。CAの155及び621 mg/L区、VAの166及び83.1 mg/L区については、24 hpfから24時間ごとに個体を取り上げ、前処理後にHPLC又はLC-MSを用いて濃度分析を実施した。【結果・考察】CAについて、171 mg/L区にて各時点で測定した胚中濃度から、1-コンパートメントモデルと仮定して算出した取込速度定数k1は0.030、排泄速度定数
k2は0.032、濃縮倍率は0.96となった。また、約94 hpfにおいて取込量が定常状態[-ln(0.05)/
k2と定義]に達していた。本発表では、同様の手法で実施、解析したVAの結果、CA、VAそれぞれの速度論的パラメータ等の差異についての考察及び毒性と胚中濃度の関係性の解析結果も併せて報告する。
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伊藤 浩太, 榊原 隆史, 古川 正敏, 奥村 宗平, 越田 美, 河村 公太郎, 松浦 正男, 小島 肇
セッションID: P-132
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【背景と目的】牛摘出角膜を用いた眼刺激性試験(BCOP法)は、無刺激性物質(GHS区分外)および腐食性・強刺激性物質(GHS区分1)を評価可能な眼刺激性代替法試験である(OECD TG437)。他方、BCOP法をはじめとする眼刺激性代替試験において、弱刺激性物質を含むGHS区分2Aと2Bを評価可能な試験系はなく大きな課題となっている。我々は、BCOP法に病理組織学的検査を併用することによる弱刺激性物質評価の可能性について検討を行ってきた。今回、約70の物質について、角膜上皮の病理所見とBCOP法の評価規準であるIVIS (
in vitro irritation score)の成績より、弱刺激性物質の評価基準について検討を行った。【方法】IVIS値は常法に従い被験物質暴露による角膜の混濁度とその透過性の変化に基づき算出した。病理組織学的検査は、測定終了後の角膜を10%中性緩衝ホルマリン液で固定しHE染色を行い鏡検した。角膜上皮の病理所見は以下の基準でスコア化した。Score 0:変化なし、Score 1:扁平上皮層のみの障害、Score 2:扁平上皮層および翼細胞層の障害、Score 3:障害は基底細胞層にまで至るが、正常な基底細胞が残存、Score 4:ほぼ全ての基底細胞の障害。【結果および考察】病理組織検査のスコアとIVISを比較すると、IVISが3未満では、全ての物質がScore 0または1であり,IVISが6未満の物質のスコアも0 または1であった.以上のことから,IVISが6未満の物質についても無刺激性物質と評価出来る可能性が示唆された。
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Roy FORSTER, Josée PERRON, Rene MICHAUD, Pramila SINGH, Massimi ...
セッションID: P-133
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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Multiple blood sampling times over a short period are often required in preclinical studies. Bioanalytical methods typically use blood volumes that are too large for repeated sampling in mice. The objective of our study was to improve blood sampling and bioanalytical techniques, allowing multiple sampling of each mouse over the full duration of the study. Sixteen untreated CD1 mice were sampled for T4 levels (6 timepoints over 24 hr) on Days 9 and 50 and on Days 22 and 38. The blood collection site was the saphenous vein. Fifty microliters of blood/timepoint was collected using a heparinised capillary. The capillary was placed in a tube for centrifugation, and spun to separate the plasma. The sample processing was by solid phase extraction followed by mass spectroscopy. Overall, T4 plasma levels ranged from 9 to 69 ng/ml. The results indicate that a slight decrease in T4 concentrations appears at the beginning of the nocturnal cycle. Levels of T4 showed individual variation throughout the day, and inter-individual variations during the study. In conclusion, our laboratory has developed a successful approach to sampling blood in mice on multiple occasions over a 24-hour period combined with a bioanalytical method with volumes as low as 10 uL of plasma. The results indicated circadian variation in T4 levels in mice between age 6-13 weeks. This approach is in line with 3R principles and could reduce the number of animals utilized for bioanalysis in toxicology studies.
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Manish V PATEL, Vishvesh DALAL, Ramesh VERMA, Ritu CHHIMWAL, Dhiraj BH ...
セッションID: P-134
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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The Bovine Corneal Opacity and Permeability Assay (BCOP) is an ex vivo assay, which may be used to assess the eye irritation potential of new chemicals and finished products. The BCOP assay has been accepted by several regulatory agencies for the identification of severe and corrosive ocular irritants, replacing the rabbit eye test. As per the TG OECD 437 for eye irritation (BCOP assay), non-surfactant solid materials are typically tested as 20% dilutions prepared in 0.9% sodium chloride solution or other solvent that has been demonstrated to have no adverse effects on the test system. However, the limited solubility of some chemicals adds technical challenges in finding a suitable vehicle that would ensure the material’s availability to the excised corneas without affect the test system. In this study, we evaluated three solvents in the BCOP assay: normal saline, olive oil and propylene glycol. Based on the available classification systems, our preliminary data showed that water and olive oil were predicted as non-irritants, while propylene glycol was predicted as a mild irritant. To demonstrate the influence of the type of solvent on the outcome/prediction of the BCOP assay for solid materials, we tested a 20% suspension of dicamba prepared in these solvents. Previous animal tests have reported corrosive effect of dicamba. Our results demonstrated that when mixed in normal saline and corn oil dicamba was predicted to be a corrosive, while it was predicted to be a moderate irritant when mixed in propylene glycol. These results support the need for further investigation of the solvent’s influence in the BCOP assay to allow the correct prediction of the irritation potential of solid materials.
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大谷 勝己, ヴィージェ モーセン
セッションID: P-135
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
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【目的】コンピュータ画像解析法(CASA)は精子数および精子運動能の測定に威力を発揮してきた。筆者らはCASAを利用している間に(1)塗沫や染色の操作を必要とせず無傷の状態の精子の形態を観察できること、(2)画像を容易に保存できること、(3)暗視野の画像のために未成熟精子を肉眼で検出しやすい、などの有用性を見出し毒性学会において、ジブロモクロロプロパン、1-ブロモプロパン、2-ブロモプロパンを試験物質として発表してきた。今回は1,2-ジクロロプロパン(DCP)を試験物質としてCASAの画像による形態解析の利用法について述べることとする。
【方法】12週齢F344雄性ラットに溶媒とともにDCP (250 -1000 mg/kg)を週2回4週間皮下投与した(全8回投与)。対照群には溶媒のオリーブオイルを投与した。1週間の休薬の後、麻酔下で解剖した。5%牛血清アルブミンを含む199培地中で、精巣上体尾部に鋏をいれ、精子を培地中に浮遊させ、CASA(機種はハミルトン社製IVOS)により精子運動能および精子数の測定を行った。また、テトラゾリウム塩(WST-8)法により精子ミトコンドリア代謝能を測定した。さらにCASAにおける拡大画像を保存し、後日呼び出し、短尾精子、未成熟精子、無頭精子、無尾精子、首折精子を目視計測し最終的に正常精子率を求めた。
【結果】正常精子率は全ての投与群において減少を認めた。また、未成熟精子および頭部・尾部離断精子が全ての群で有意に増加した。さらに、短尾精子および首折精子に関して有意差は得られなかった。一方、精子数および精子運動能にはいかなるパラメータにおいても有意差を見いだせなかった。他方、WST-8法により精子代謝能を測定したところ500および1000 mg/kg投与群において有意な低下が認められた。
【考察】DCPの精子への影響は十分に確かめられていなかったが、精子数、精子運動能の影響が認めらないところで精子形態には変化を認められた。本法で解析することは生殖毒性試験をする上で有用と考えらる。
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根本 真吾, 山際 慶典, 喜田 徹郎, 斉藤 義明, 倉田 昌明, 徳重 秀樹, 榊 秀之
セッションID: P-136
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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【背景】
In vivo遺伝毒性評価系として骨髄細胞や赤血球を用いた小核試験、肝臓を用いたコメットアッセイや不定期DNA合成(UDS)試験が知られている。点眼剤のように患部に直接適用することを目的とした場合には高曝露となるため、一般的に用いられている組織では曝露量が得られない場合がある。外眼部組織を用いた
in vivo 遺伝毒性評価法として、UV照射後のウサギ角膜を用いUDS誘発を検出する方法が報告されているが、薬剤の点眼投与によりUDS誘発が検出可能であるかは不明である。今回我々は点眼剤の
in vivo 遺伝毒性評価系検討の一環として、遺伝毒性陽性物質をウサギに点眼投与し、角膜においてUDS誘発が検出可能か検討した。
【方法】
1群各2匹の日本白色種雄性ウサギを用い、各動物の両眼に麻酔下で過酸化水素、パラコート、アクリジンオレンジ及び臭化エチジウムを2~4濃度で50 µLずつ単回点眼投与した。陰性対照として生理食塩液を50 µL点眼投与した。摘出角膜を
3H-チミジン共存下で培養した後、樹脂包埋してオートラジオグラフィー標本を作製し、角膜のUDS誘発細胞(SLCs: sparsely labeled cells)を計数した。
【結果】
いずれの物質も点眼投与により角膜にUDSを誘発した。UDS誘発率は、過酸化水素では5%点眼群で3.7%、10%点眼群で6.9%、パラコートでは5%点眼群で2.1%、10%点眼群で2.4%、20%点眼群で2.8%、40%点眼群で3.6%であった。また、アクリジンオレンジでは2.5%点眼群で2.1%、5%点眼群で4.0%、臭化エチジウムでは0.25%点眼群で4.3%、0.5%点眼群で5.0%、1%点眼群で8.8%であった。いずれの物質も、陰性対照群と比較してSLCsの有意な増加が認められ、その増加は用量依存的であった。
【結論】
遺伝毒性物質を点眼投与した後のウサギ角膜を用いてUDS誘発を検出することは可能であった。本試験系は、点眼剤開発における
in vivo 遺伝毒性評価系として有用であることが示唆された。
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桜田 恵里, 土山 博美, 大信田 系裕
セッションID: P-137
発行日: 2016年
公開日: 2016/08/08
会議録・要旨集
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umuテストはDNA修復におけるSOS反応を指標とした遺伝毒性評価法であり、その原理から幅広い遺伝毒性物質の検出に用いられている。Ames試験と比較して所要時間も短く、少量の被験物質で実施可能であり、遺伝毒性の簡便かつ迅速な評価法として有用である。しかしながら、従来の吸光度測定法では反応系内で析出物が生じる場合、析出物によって吸光度測定が妨害され判定が困難となる。
この問題を克服するため、SOS反応の評価に蛍光基質フルオレセイン-β-D-ガラクトピラノシド(FDP)を用いることにより、析出物の影響をほとんど受けずにSOS反応を感度良く検出できることが確認された(第41回年会)。
今回評価精度向上を目的として、被験物質による菌の生育阻害を評価するため、テスト菌の生菌数の指標を発光強度とし、SOS反応の指標を蛍光強度とする組合せ評価法(発光-蛍光法)を検討した。テスト菌を被験物質存在下で37°C、2時間インキュベートした後、発光試薬(BacTiter-Glo®、Promega社)および蛍光試薬FDG(SensoLyte®、Anaspec社)を添加し、発光強度および蛍光強度を測定した。判定は、蛍光強度測定値(SOS反応)を発光強度測定値(生菌数)で除した値、補正変異原性指標 relative β-galactosidase activity(RGA)を用いて行った。本評価系において複数の化学物質を評価した結果、吸光度に変化を生じる析出物が存在しても発光強度および蛍光強度にはほとんど影響がないことが示された。以上の結果から、本評価系は、析出物の存在下でも精度良く
umuテスト評価ができることが確認された。
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