アフリカレポート
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57 巻
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論考
  • 松波 康男
    2019 年 57 巻 p. 1-12
    発行日: 2019/01/07
    公開日: 2019/08/03
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    2011年に南スーダンは分離独立を果たしたが、そのわずか2年後、サルバ・キール大統領率いるSPLM/Aと、リアク・マシャール前副大統領率いるSPLM/A-IOとの戦闘が勃発した。この際、和平調停の役割を担ったのがIGADだった。和平協議は和平合意文書へのキールらの署名という形で結実したが、1年を待たずに両軍による戦闘行為が勃発し、合意文書は死文化した。

     本稿では、合意文書の締結を巡り周辺国に生じた力学を整理し、合意締結後南スーダンで勃発した武力衝突に対する国際的要因を検証することを通じて、紛争解決に対する地域機構加盟国の関与のあり方を考察する。

  • 片山 夏紀
    2019 年 57 巻 p. 22-33
    発行日: 2019/02/13
    公開日: 2019/08/03
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    ルワンダ・ジェノサイドに加担した民間人の罪を裁くガチャチャ裁判は、ローカルレベルにおける移行期正義の取組みであり、和解の促進もひとつの目的であった。被害者と加害者が同じ村で暮らし、日常的に顔を合わせる状況で、裁判が促す赦しや和解の可能性についても先行研究で議論されてきた。本稿の目的は、裁判閉廷から6年が経過した現在、農村における赦しや和解がどのように行われているのかを明らかにすることである。窃盗や器物損壊罪の賠償をめぐって「賠償」という語句を用いず、被害者は「赦す」(-babarira)、加害者は「赦しを求める」(-saba imbabazi)という語句を用いて交渉することが独特であり、本稿はその点に着眼した。このような交渉からみえてきたのは、当事者同士が関係を断たずに保とうと努めていることであり、筆者はそれを現実的な和解と捉える。本稿では、先行研究が論じた和解の理念という視点を変えて、ジェノサイド後の和解を考察する。

  • 藤井 広重
    2019 年 57 巻 p. 61-72
    発行日: 2019/09/28
    公開日: 2019/09/28
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    本稿の考察は、司法および人権アフリカ裁判所(ACJHR)の設置が進捗しない要因を解き明かすことを目的としている。ACJHRは、国際刑事裁判所(ICC)によるアフリカでの司法介入に対する反発の結果、オルタナティブなメカニズムとして生み出されようとしていた。だが、多くのアフリカ諸国がACJHRの構想に賛成した一方で、設置のためのマラボ議定書を批准した国はない。本議論を紐解けば、マラボ議定書が有する現職の国家元首と政府高官の訴追免除規定によってヨーロッパ諸国からの支援を得ることができず、また、マラボ議定書成立当初はNGOなどからの批判も見受けられたが、近年は現実に即した規定でありACJHRは機能するのではないかと肯定的な評価に変わってきた。ここに、ICCに対するアフリカ諸国のスタンスに関わらずACJHR設置議論が進捗しない要因を見つけることができる。さらにこのような考察を通して、ICCに対し影響力を行使しようと試みるアフリカの姿も垣間見えてきた。本稿での考察は、アフリカをICCとの関係性において客体としてではなく主体として捉えることが重要であることを示すことにつながった。

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