失語症研究
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17 巻, 1 号
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原著
  • 木島 理恵子, 吉野 眞理子, 河村 満, 河内 十郎, 白野 明
    1997 年 17 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
        日本語・韓国語二言語使用者失語症例において,両言語の障害を特に日本語における漢字・仮名障害と韓国語における漢字・ハングル障害との対比を中心に検討した。
        症例は65歳右利き男性。脳梗塞 (左中大脳動脈領域) による右片麻痺と重度の失語が認められた。日本語と韓国語の習得および病前の使用状況は,口頭言語・文字言語のいずれにおいても両言語で同等であった。標準失語症検査,表出面の検査,聴覚理解検査,読み理解検査を両言語について実施したところ,すべての検査で両言語がほぼ同様の成績を示した。さらに,両言語ともに仮名・ハングルに比べ漢字が良好という同様の障害パターンが認められた。これは,本症例が2つの言語を同程度に習熟していたことに加え,日本語と韓国語の言語構造の諸側面が類似していることの結果であると考えられ,これらの要因により,本症例における両言語の脳内機構が同様であった可能性が示唆された。
  • 春原 則子, 宇野 彰
    1997 年 17 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
    失語症者の発話における自己修正の能力とその他の言語機能との関連について検討した。呼称と復唱における自己修正の能力とSLTAの聴覚的理解力と発話の各項目のクラスター分析を行った。その結果発話と聴覚的理解力の双方が自己修正能力と関連していることが考えられた。なかでも自己修正の結果正答に至る能力とは主に発話能力との関連が強く,自己修正の際,発話をよりはやい段階で中断する能力には主に聴覚的理解力がかかわっている可能性が示唆された。
会長講演
  • 山鳥 重
    1997 年 17 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 1997年
    公開日: 2006/05/12
    ジャーナル フリー
        言語理解における階層構造とそれぞれの階層で生じるカテゴリー処理について,私見を提出した。言語理解は相手のアタランスを (1) 自国語か非自国語か, (2) 命令か質問か話しかけか, (3) 実質語はどれで機能語はどれか,(4) 実質語とすれば,どのような意味カテゴリーに属するのか,と範疇を絞り込む形で階層性に進行する。
        特定の階層内でのカテゴリー性については名詞の意味構造について理解が進んでいる。著者の経験では身体部位名,屋内部位名,色名などには明らかなカテゴリー性があり,このカテゴリー性は大脳という生物学的制縛条件のなかで成立したものと考えられる。その例として色名と身体部位名について,感覚様式特異性名称操作障害と範疇特異性失語を取り上げた。
        理解におけるカテゴリー性のもう1つの側面は特定カテゴリー内の語彙集団における個別的語彙の成立基盤としてのカテゴリー性である。この点について自験例をふまえ,カテゴリー化機能の重要性を指摘した。
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