失語症研究
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13 巻 , 3 号
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原著
  • 中村 健正, 杉本 啓子, 長谷川 泰弘, 種田 二郎, 山口 武典
    1993 年 13 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
    症例は一過性の発語障害を繰り返したあと,最終的にその発語障害が持続性となった,61歳,左利きの男性。発語障害は,内言語障害を伴わずに口頭言語表出のみの障害であること,しかも構音筋の麻痺を伴わないことから,いわゆる純粋失構音に相当する症候と考えられた。 MRIでは,左前頭葉から頭頂葉にかけての皮質下白質,尾状核および島深部白質に, Gadolinium-DTPA で増強効果を示す病変が認められた。本症例の発話における特徴は,従来の純粋失構音とは若干異なり,構音運動の巧緻性の障害という印象が強いことであり,左大脳皮質下白質の障害により,左右大脳半球を連絡する文運線維,および左皮質延髄路が同時に障害されたことが原因で発現したものと考えられた。純粋失構音の責任病巣を考える上で交連線維の重要性を示唆する1例である。
  • 吉村 菜穂子, 相馬 芳明
    1993 年 13 巻 3 号 p. 224-229
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
    Broca失語の聴理解障害と病巣の広がりについて検討した。対象は8名の Broca 失語患者で,原因疾患は全例脳梗塞,その病巣は左第3前頭回三角部・弁蓋部・島・中心前回を含むものとし,病巣が広範で側頭葉におよぶもの,多発性脳梗塞,被殻出血は除外した。これらを頭部 CT の所見からI群 : 第3前頭回のうち三角部は保たれ弁蓋部に病巣が限局するもの,II群 : 第3前頭回の病巣がより大きく三角部と弁蓋部を含むものにわけた。SLTA の結果を比較するとI群は単語の聴理解は正常であったが,II群では理解障害が認められた。また病巣の大きさと関係なく単語より仮名一文字,短文の聴理解が悪かった。文字言語理解についても同様に単語より短文の成績が悪かった。以上より文章理解能力は両群で障害されていたが,語義理解は左第3前頭回三角部が比較的保たれたI群では正常であり,II群で障害されていたと考えられた。
  • 兼本 浩祐, 馬屋原 健
    1993 年 13 巻 3 号 p. 230-236
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
    本院にてんかんを主訴として来院し,単純部分発作を示した 563人の患者から失語発作を呈した 42人の患者を対象として選択した。その内訳は,言語理解障害が 24人,言語表出障害が 25人,喚語困難が 5人,錯語が 4人,読字困難が 2人であった。夢様状態(dreamy state)を訴えるてんかん患者群と比較して,失語発作を呈した症例群は,(1) 脳波上前頭部焦点を示す率が高い,(2) 複雑部分発作の合併率が低い, (3) 部分運動発作の随伴率が高く, (4) 複合視覚発作,不安発作の随伴率が低いことが統計的に確認された。この結果から,両群とも脳波上側頭部焦点を示すことが多いが,夢様状態は大脳辺縁系が深く係わっているのに対して,失語発作は新皮質との関わりが深いことを論じた。
  • 小嶋 知幸, 宇野 彰, 加藤 正弘
    1993 年 13 巻 3 号 p. 237-246
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
        仮名音読が他の発話モダリティより比較的保たれた Wernicke 失語例1例に対して,3種の発話モダリティ (復唱,仮名音読,漢字音読) を刺激モダリティとして呼称訓練を行い,呼称促進効果の違いを比較した。
        その結果,仮名音読はつねに呼称を促進し,漢字音読は単語によって呼称を促進した。しかし,復唱は呼称を促進しなかった。
        刺激法による言語治療では聴覚モダリティに対する刺激がもっとも重要とされている。しかし,本研究の条件下では呼称を促進したモダリティは復唱ではなく,仮名音読と1部の単語での漢字音読であった。本症例での呼称促進効果のメカニズムについて考察し,さらに失語症言語治療におけるモダリティ別の障害メカニズムの分析と刺激モダリティ選択の重要性について論じた。
  • 春原 則子, 宇野 彰
    1993 年 13 巻 3 号 p. 247-255
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
        失語症タイプ間の音の誤反応の差異を検討した。従来の単一モダリティでの分析に対し,本研究では,呼称,復唱,漢字・仮名音読の発話4モダリティ間の誤反応の共通性を検討した。誤りパターンは, Broca 失語,伝導失語は4モダリティにほぼ共通していたが, Wernicke 失語はモダリティによって異なっていた。誤り方は伝導失語と Wernicke 失語では,置換と転置がほぼ9割を占めたが,その割合は症例によって異なっていた。 Broca 失語では最も大きな割合を占めた誤り方が症例によって異なっていた。
        以上から,単一モダリティでの分析よりも発話4モダリティ間の誤反応の検討が失語症のタイプ間の分離に有効と考えられた。また誤りパターンが4モダリティで共通だった Broca 失語と伝導失語では,音の誤りは各発話モダリティに共通の発現機序で生じ,モダリティごとに誤りパターンが異なっていた Wernicke 失語では,複数の障害によって生じている可能性が考えられた。
  • 松田 実, 藤吉 健司, 熊倉 勇美, 水田 秀子
    1993 年 13 巻 3 号 p. 256-263
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
    超皮質性感覚失語の症例の発語にみられた特異な錯語について報告した。症例は47歳の右利き男性。頭部外傷による脳挫傷, 硬膜下・硬膜外血腫の術後, 著明な言語障害をきたした。意識レベルや知能は正常。自発語は fluent で多弁だが, 錯語の頻発のため, 情報量には乏しく, 聴覚理解は単語レベルで著明に障害されていた。本例の錯語は, 目標語との意味的・音韻的関連は不明瞭で, 1つの発語を契機として, これと同一カテゴリーに属する語彙が次々と形を変えて頻発することが特徴的であった。無関連錯語の出現には, 重篤な語義理解障害 (語音と語義の分離) と共に, 潜在的には語彙目録が保存されていることが重要であることを指摘した。また特徴的な錯語の連鎖は波多野(1986)のいう意味性変復パターンに相当すると考えられたが, Lhermitte (1973)の意味性保続とも捉えることが可能であると考えられ, その機序について若干の考察を加えた。
  • 石合 純夫, 杉下 守弘, 李 英愛, 綿引 定清, 中山 貴裕, 小寺 実
    1993 年 13 巻 3 号 p. 264-271
    発行日: 1993年
    公開日: 2006/06/14
    ジャーナル フリー
    左角回を中心とする脳梗塞による失読失書1例と左上頭頂小葉に限局した脳梗塞による純粋失書1例を対象とし, 文字書き下し過程をVTRで記録し検討した。失読失書例は, 書取り不可能な漢字では主に無反応を示し, 一方, 写字では, 書取り不可能な漢字も, 書取り可能な漢字と同じ速度かつ正しい筆順で書くことができた。このことから, 本例では書くべき文字の想起困難あるいは選択障害があるが, 文字自体を正しく書き下す能力は保たれている可能性が示唆された。純粋失書例は, 書取りにおいて字画をいくつかに分解し, ところどころを書き加えながら正答に至る場合と同様にして部分的誤りや一部の不足を示す場合がしばしばみられた。手本が呈示され文字の想起を要さない写字においても, 同様の特異な運筆がみられ, 書字運動パターンの障害も本例の失書の一因である可能性が示唆された。書取りと写字における文字書き下し過程の分析は失書の機序を知る上で有用と考えられた。
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