失語症研究
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7 巻, 3 号
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シンポジウム座長記
シンポジウム
カレントスピーチ
原著
  • 遠藤 美岐, 脇阪 圭子, 山鳥 重
    1987 年 7 巻 3 号 p. 227-234
    発行日: 1987年
    公開日: 2006/11/10
    ジャーナル フリー
    疾病無関心は右半球損傷でおこると考えられているが,左半球損傷の失語症例で,言語障害への無関心を示し,言語訓練へのニーズがなかった4例を報告した.この4例には無関心をひきおこしやすいと考えられる諸要因は含まれていない.全例,話量多くないが流暢で努力感ない自発語で,書字を除き回復は割合良好であった.障害の自覚は,2例で初期に否定,後に4例共,具体的に低下部分を指摘されれば認めるようになった.しかし,困惑感なく平然としている点は変化なし。3例で情動異常を伴っており,また,右片麻痺のある2例では2例共,病初期に麻痺の無視を示した.4例の病巣は全て左半球皮質下であった.このような情動変化,右側無視を伴った無関心は,左半球皮質下構造が損傷を受けた結果生じた注意障害によるものと考えた.さらに,4例の発語特徴より, fluent な自発語が無関心の発現に何らかの影響を持つのではないかと考えた.
  • 波多野 和夫, 木村 康子, 関本 達也
    1987 年 7 巻 3 号 p. 235-242
    発行日: 1987年
    公開日: 2006/11/10
    ジャーナル フリー
    左前頭葉脳内血腫術後後遺症として超皮質性感覚失語を呈した症例を報告した.本例の脳損傷部位は主として左前頭葉に含まれるが,後の MRI の所見よりこの病変が左基底核前部外側にも伸長していることと,手術中に左側頭葉前端部にも小病変が観察されていることが注目された.これらの病変は前頭葉のかなりの部分を占拠し, Broca 領野の少なくとも一部は侵襲されていると思われるが,失語像には非流暢性要素に乏しく,反響言語,保続,語性錯語,空語句の優勢な超皮質性感覚失語であった.本報告に於いては特に言語の反響・反復症状を取り上げ,観察された強迫的または自動的な音読現象を 「視覚性反響言語」 として位置付ける立場から検討した.超皮質性感覚失語の病変部位の問題について若干の論ずるところがあった.
  • 大野 恭子, 浦上 郁子, 渡辺 真理, 西川 隆, 田伏 薫, 柏木 敏宏
    1987 年 7 巻 3 号 p. 243-250
    発行日: 1987年
    公開日: 2006/11/10
    ジャーナル フリー
    失語症者を対象に, (1) 動物や物品の名称とそれに対応する擬音語の聴覚理解・語想起を比較し,更に, (2) 実際の音響 (環境音) の認知ならびに環境音からの擬音語・名称の想起を調べた.擬音語と名称の成績の間には,聴覚理解・想起とも正の相関が認められた.聴覚理解には失語症型による有意な差はなかったが,想起については, Fluent 群は Nonfluent 群に比べ擬音語が名称より有意に困難であった.また,環境音の認知に障害を示す症例があり,環境音と言語音の認知の成績の間には正の相関が認められた.擬音語が音と意味の繋がりがより直接的であるという特性にもかかわらず名称よりかえって想起が困難な傾向を示した要因として,擬音語も社会的な記号体系である言語の一部で,普通の名称と共通の音韻処理過程を経ること,擬音語の使用頻度の問題,及び失語症者は環境音とその対象との意味的連合に障害が及いでいる可能性があることを考えた.
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