日本地球化学会年会要旨集
2007年度日本地球化学会第54回年会講演要旨集
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生物
課題1
課題2
大気降水
  • 近藤 宏壮, 智和 正明, 佐久川 弘, 竹田 一彦
    セッションID: 3D01
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    ヒドロキシル(OH)ラジカルは大気気相中における最も強い酸化剤であり、様々な化学反応に関わっていることが知られている。OHラジカルは、大気液相(エアロゾル、雲、雨、霧)中においても重要な役割を果たしていると考えられるが、その生成消失機構についての知見は十分であるとはいえない。筆者らはこれまでに大気エアロゾル抽出水中におけるOHラジカルの生成量および生成機構に関する研究を行い、光フェントン反応および硝酸、亜硝酸の光化学反応が重要な生成機構であることを見出した。今回、これら以外の生成源として、溶存有機物からの生成が示唆された。講演では、その結果に加えてOHラジカル消失過程と溶存有機物の関係についても発表する。
  • 岡崎 寛大, 南 秀樹, 植松 光夫
    セッションID: 3D02
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    本研究は,北海道東海大学屋上(地上51m)にて1991年から2006年まで観測された大気エアロゾル中の主要化学成分における長期変化について考察したものである。海塩粒子の指標となるNa+およびCl-は冬季から春季にかけて高濃度を示し,春季から夏季にかけては低濃度を示した。これは冬季に北西風が卓越するため,海洋上から輸送されたと考えられる。NH4+およびNO3-は春季から夏季に高い傾向を示した。またNH4+およびNO3-の間にはR=0.70(n=712)と正の相関がみられ,少なくとも本観測点ではこの比に大きな変化がないことがわかった。次に陸起源物質の指標となるnss-Ca2+については毎年春季に高い傾向を示し,偏西風による大陸からの寄与が考えられた。さらに海洋の生物生産に影響を与えていると考えられている鉄などの金属元素についても同様な傾向を示しており鉱物粒子の大陸からの飛来が示唆された。
  • 坂田 昌弘, 朝倉 一雄
    セッションID: 3D03
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    本研究では、わが国の水銀の乾性沈着フラックスに対する大気中の粒子状およびガス状水銀(reactive gaseous mercury, RGM)の寄与率を評価した。これには、2004年4月~2006年3月の間に全国の10地点で観測された水銀および他の微量元素(Cd, Cu, Mn, Ni, Pb, V)の月別乾性沈着フラックスと大気中濃度のデータを用いた。水銀の年間乾性沈着フラックスに対する粒子状水銀の寄与率は、全国10地点の平均で26%であった。また、多くの地点で、水銀の乾性沈着フラックスと光化学オキシダント濃度との間には正の相関関係があった。このことから、わが国では、大気中のオゾンによるガス状金属水銀(Hg0)の酸化で生成したRGM(Hg2+)の沈着が水銀の乾性沈着における主要なプロセスであることが示唆される。
  • 小田 幸平
    セッションID: 3D04
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    1964年に福岡管区気象台にて採取された大気降下物試料は137Csや90Srといった人工放射性核種が近年に比べて多量に検出されるため、当時は核実験による環境汚染が顕著であったと気象研究所は報告している。一方、1964年の試料中のU濃度は他の土壌起源元素濃度との相関が低くその由来が核実験であることが示唆される。そこで大気降下物試料からのUの分離・精製方法及び測定方法の検討をし、1964年、2000年に同地点にて採取された試料中のU同位体比と天然におけるU同位体比の測定及び比較を行い、大気降下物中の人工放射性核種の濃度とU同位体比の関係性から現在と過去における核実験の大気への影響を考察する。
  • 三好 拓朗, 高橋 嘉夫, 矢吹 貞代, 金井 豊, 張 仁健, 清水 洋
    セッションID: 3D05
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    東アジアにおいて、大陸内部の乾燥地域から巻き上げられた鉱物エアロゾル(黄砂)は偏西風により東へと運ばれていく。その過程で、鉱物エアロゾルは中国都市部や日本付近の大気中において酸性雨の原因物質である硫酸と反応する。鉱物エアロゾル中には主要なカルシウム鉱物としてカルサイトが含まれている。このカルサイトが大気中の硫酸と反応して石コウを生成することにより、酸性雨を防ぐ働きをすると考えられている。しかし、今までエアロゾル中のカルシウムの化学種を定量的に明らかにすることは比較的困難であった。本研究では、カルシウムのK-edge XANESから、中国および日本の各地域で採取されたエアロゾル試料のカルシウム鉱物に占める石コウの割合を決定し、カルサイトによる大気中の硫酸の中和過程について議論する。
  • 陳 兵
    セッションID: 3D06
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    The Songnen saline land (SSL) is located in the semi-arid region of the northeastern part of China where lies in the pathway of Asian dust transport from Mongolian deserts. It was proposed that the dust loading from SSL can increase the dust deposition in the downwind areas such as Northeastern China, Korea and Japan. The carbon and oxygen isotope analyses of soil carbonate from SSL might be useful for examining the hypothesis about recently increased dust deposition. The carbon and oxygen isotope variations of soil carbonate from SSL will be discussed.
  • 徂徠 正夫, 吉田 尚弘
    セッションID: 3D07
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    温室効果ガスであり、かつオゾン層破壊物質でもあるN2Oの大気中での濃度が近年急速に増加しつつあり、地球環境への影響が危惧されている。このようなN2O濃度の増加を抑制するためには、N2Oの生物地球化学的循環メカニズムについて定量的に理解することが重要である。このような状況に鑑み、これまで、N2Oに直接関係したプロセスのみならず、それ以外の主要な窒素循環プロセスまでを全て考慮に入れたグローバル窒素循環ボックスモデルを構築してきた。本研究では、従来の窒素収支に加えて、アイソトポマーを含めた窒素同位体比を導入することにより、未知のパラメータに対する制約を強化した条件で、対流圏N2O収支の推定を行った。また、不確定性の高いパラメータである同位体分別係数について感度解析を行い、モデルのアウトプットに対する信頼性評価を行った。
  • 今野 祐多, 小松 大祐, 角皆 潤, 中川 書子
    セッションID: 3D08
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    近年の研究により大気中水素分子(H2)は間接的な温室効果ガスであることがわかってきた。H2のソースとして化石燃料やバイオマス燃焼など人為的なものが40%程度を占めていると考えられているが未解明の部分も多い。またH2の特徴として放出源毎に大きく異なる安定同位体組成を持つため、大気循環とレーサーとして水素同位体組成は大きな力を発揮する可能性がある。そこで本研究ではH2の安定同位体組成定量法を開発するとともに、都市大気中H2の濃度および水素安定同位体組成の短期的な変動を求め、都市大気中における水素の挙動や起源を解析した。
  • 上田 哲大, 杉本 敦子
    セッションID: 3D09
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    東シベリアタイガ林はユーラシア大陸の内陸地に位置するが、海洋から離れているにもかかわらず、発達した積乱雲が形成され局所的な降水がもたらされる。その降水の元となる水蒸気の起源を解明するのに必要とされる大気水蒸気と降水の安定同位体比の測定をし、その変動要因について考察した。大気水蒸気について、気温の上昇に伴う地表面からの蒸散の活発化によるとみられる変動が観測された。また、日変化の観測では、気温の上昇に伴う混合層厚の増大による、自由大気内の水蒸気の混合層への取り込みを示唆する結果が得られた。これらより、東シベリアタイガ林での短期間での水蒸気の同位体比は、植物の蒸散由来の水蒸気と自由大気中の水蒸気の混合がその変動を支配していると考えられる。また、降水の同位体比は降雨イベント毎に異なり、蒸発の影響や複数の水蒸気のソースの存在を示唆する結果が得られた。
  • 杉本 敦子, 大手 信人, 尾坂 兼一, 鄭 俊介
    セッションID: 3D10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/01/18
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    東シベリアタイガ林は、乾燥した永久凍土上に成立した落葉針葉樹のカラマツが優占する広大な森林地帯で、降水量の変動は永久凍土の水循環系の中で遅れ時間をもって土壌水分を変動させ、炭素固定量を変動させていると考えられる。そのメカニズムを明らかにするため、カラマツ炭素・窒素の安定同位体比、樹体内の硝酸の窒素・酸素同位体比を測定した。炭素同位体比は前年の晩夏の土壌水分に依存し、水不足が炭素固定を制限していることを示していた。また、葉の窒素含量の年々変動、および硝酸酸素同位体比は、大気降下物中の窒素が葉から吸収されている可能性を示しており、貧栄養な状況も炭素固定量を律速している可能性を示唆している。
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