本研究は,北海道東海大学屋上(地上51m)にて1991年から2006年まで観測された大気エアロゾル中の主要化学成分における長期変化について考察したものである。海塩粒子の指標となるNa
+およびCl
-は冬季から春季にかけて高濃度を示し,春季から夏季にかけては低濃度を示した。これは冬季に北西風が卓越するため,海洋上から輸送されたと考えられる。NH
4+およびNO
3-は春季から夏季に高い傾向を示した。またNH
4+およびNO
3-の間にはR=0.70(n=712)と正の相関がみられ,少なくとも本観測点ではこの比に大きな変化がないことがわかった。次に陸起源物質の指標となるnss-Ca
2+については毎年春季に高い傾向を示し,偏西風による大陸からの寄与が考えられた。さらに海洋の生物生産に影響を与えていると考えられている鉄などの金属元素についても同様な傾向を示しており鉱物粒子の大陸からの飛来が示唆された。
抄録全体を表示