本研究は,よりよい話し合いにとって必要な会話技術を解明することを目的とし,フォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を題材として印象評定実験とやり取りの構造を分析し,話し合いの評価基準についてプロの司会者とそうでない素人の評価の違い,またその要因となる会話行動について比較・考察したものである.忠実に再現された4グループ各3場面,計12場面のFGIデータをプロの司会者(モデレータ群)と素人(大学生群)に見せ,印象評定をさせた.その因子分析の結果,3因子が抽出された.このうちの第1因子と第2因子に関して,各群の因子得点と,各場面における発話のやり取りを構造化し,分類された発話行為の諸特徴との相関を調べた.その結果から,大学生群とモデレータ群の評価の差に影響を与えた要因を明らかにし,話し合いの表面的な盛り上がりよりも,話し合いの質を重視するプロの視点が印象評定にも影響したことが示唆された.
抄録全体を表示