日本森林学会大会発表データベース
第126回日本森林学会大会
選択された号の論文の855件中1~50を表示しています
口頭
林政部門
  • 小菅 良豪, 伊藤 勝久
    セッションID: A01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    林業作業員を取り巻く環境は、現在大きく変化している。森林資源の成熟による伐期を迎えた林木の増加に伴い、林業労働力の需要は造林作業から林産作業への転換が進んでいる。また森林・林業再生プラン等の制度的な変化も、林業作業員の労働環境に大きな影響を与えている。他にも木質バイオマスエネルギーへの利用の増加やA材需要の減少など、木材利用の変化も労働環境変化の要因と考えられる。その只中で林業作業員は、どのような仕事観を持って林業に従事しているのかを明らかにすることが本報告の目的である。
    調査は中国地方の森林組合の林業作業員(現場で作業する者)に対し、仕事観に関するアンケートを実施した。林業作業員約100名から回答があり、この結果をクラスター分析し、林業作業員の意識分析を行った。林業作業に関するアンケート調査の主な質問内容は、安全性、経済性、社会性、作業意識・評価等に関する事項である。林業作業員の仕事観のなかでも、特に山村生活と林業の関係性に注目して意識分析を行う。
  • 川﨑 章惠, 武藤 周作, 佐藤 宣子
    セッションID: A02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     林業従事者数は著しい減少傾向から2005年には下げ止まりを見せ、若年者率もわずかながらも増加傾向にある。また、2005年から2010年にかけて家族林業経営体において素材生産量の増加率が大きいことも指摘されている(佐藤、2013)。
     そこで本研究では、2014年10~12月にかけて、素材生産が活発な大分県佐伯市の佐伯広域森林組合の請負班のうち操業歴が浅い、もしくは新規就業者が従事している小規模な請負班4班6名に対して聞き取り調査を実施した。設問項目は、創業の経緯、事業の内容、所有機械、経営の展望などについてである。
     その結果、聞き取り調査の対象となった6名のうち5名は10年以内に請負作業を始めており、前職は製材工場職員(2)、運送業職員(2)、土建業技術者と比較的安定した雇用条件であった。林業の請負業については、多くが出来高給で働いた分だけ収入につながることを魅力とあげた。一方で、各班新たな林業機械の導入や新規就業者の雇用を検討しているものの、経営の継続性に見通しが立たず事業拡大につなげることが難しいとのことである。
  • 正垣 裕太郎, 川﨑 章惠, 佐藤 宣子
    セッションID: A03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    2000年代以降,国産材の生産量は増加し,需要が拡大傾向にある。その中で,国産材の加工・流通構造の変化が指摘されているが,こうした状況における林家の経営動向については十分に明らかになっていない。そこで本報告では,国産材需要の拡大を牽引する宮崎県の中でも,これまで家族経営的林業の分析対象とされてきた諸塚村において,林家の経営動向について調査した結果を報告する。
     調査対象は,諸塚村K公民館の林家8戸である。2014年12月から翌年1月にかけて,世帯構造・就業構造・経営動向について聞き取りを行った。なお,K公民館は,村内の中でも自営農林業を営む世帯が多いとされ,16ある公民館の中で最も自伐生産量が多い公民館である。
     2014年に木材販売収入を得た林家は7戸で,保有山林を自家労力で伐採(自伐)した林家は3戸だった。また,所属する森林組合作業班によって保有山林を伐採した林家が1戸あった。こうした保有山林における伐採は,近年の需要拡大への対応というよりも,かつての主要な収入源であったシイタケ生産の減収分を補うためであった。なお,自家労力における伐採は利用間伐よりも主伐が中心で,0.5ha/年程度の小規模皆伐が行われていた。
  • 興梠 克久, 田口 新太郎
    セッションID: A04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    鳥取県智頭町では日本1/0村おこし運動や百人委員会よる地域活性化対策が行政,住民の協働によって進められており,そこでは「手づくり自治区」(小田切,2009)の特徴を備えた旧村単位の地区振興協議会および各旧村に存在する財産区が中核的な存在として注目されている(家中,2013)。また,百人委員会の発案で定年帰農者や高齢者等の副業的自伐林家を育成し,担い手のすそ野を広げる木の宿場プロジェクトが2010年より開始された。その流れを受けて木の宿場プロジェクト実行委員長の発案で,葦津財産区でも財産区有林を財産区メンバーによる共同作業=「自伐」的に管理する試みが始まった。葦津財産区(1,270ha)は以前は林業事業体への施業委託,立木販売を行っていたが,官行造林地を買い戻したことを機に,定年退職者を中心に集まった12人による「自伐」的管理(特に間伐材の伐出・出荷)が行われ,葦津集落の財政に一定程度寄与している。本研究では,「自伐」的管理に転換した葦津財産区を対象に2014年に聞き取り調査を実施し,「自伐」的管理前後の経営状況の変化とそれが地域社会の維持・活性化に果たす役割を明らかにする。
  • 伊藤 勝久
    セッションID: A05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    林業・林産業の循環を形成するため、伐採、利用、植林・育林のシステムをつくる重要性が指摘されている。これを実現するには、森林経営計画作成・団地化による施業の集約化、低コスト伐採・流通システム、木材加工の効率化、新たな木材利用促進、担い手育成および森林経営・森林所有者の意識改革などの多くの課題がある。本報告では、森林所有者の意識改革を目的に、現在島根大学で実施している「経営マインドをもつ革新的森林経営の担い手育成」事業(文科省「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進事業」)の基本となる森林所有者の状況・意向アンケートをもとに、現在のとくに後発林業地における森林所有の問題を検討し、森林経営が真に改善される条件を検討する。
  • 松本 美香, 玉城 佐和
    セッションID: A06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     近年、森林・山村多面的機能発揮対策交付金を活かした新たな小規模私有林管理の動きが見られる。当交付金は、初年度全国で40道府県973団体が活動面積計4478haを申請。高知県では42団体が計440.6haを申請しており、事業活用度は高い。本報告では、高知県における森林・山村多面的機能発揮対策交付金受給事例にみる小規模な私有林管理への影響と課題を明らかにすることを目的とし、高知県における平成25年度の申請事業体を対象とした資料調査とその結果を元に選定した7団体への聞き取り調査を行った。その結果、高知県の事業活用度の高さの背景として、森林組合申請比率の高さ、民間団体の設立・活動への行政支援の手厚さ、民間団体の相互支援関係の強さ、過疎先進地故の危機意識の強さ、手厚い事務局対応などの影響が示唆された。活用効果では、地域の世代間交流・相互扶助機能の強化、地域資源の活用意識の醸成、新活動への展開等、当初の想定外の多面的な効果の発現が確認され、地域の小規模な私有林管理への意識変化も見られた。課題は共通して事業継続性で、運転資金確保のための技術・設備・資金・人材の不足に、地方の過疎地域故の課題が難しさを加えている。
  • 田村 和也
    セッションID: A07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    林家の経営行動の要因として、保有山林状況や地域的差異の他に、世帯や世帯員の状況が大きいと考えられる。そこで農林業センサスにおける家族林業経営体について、2005・10年個票を接続加工したミクロデータを用い、経営主など世帯員の状況、世代数、農業・非農業経営体の相違などで経営体の分類を試み、林業経営活動との関係を分析した。世代数分類による観察では、3世代等世帯が最も多いが減少しており、1人世帯は数%で、非農業経営体に限れば構成比は倍となる。両センサスで継続して林業経営体であった割合は、1世代~3世代等世帯で5割以上だが、1人世帯では4割にとどまる。林業従事・作業実施・林産物販売状況は、1人世帯で低調だが他で大きな差は見られない。経営主の交代は、両センサス間に7分の1で起きたと推定され、1世代世帯では女性への交代が多い。経営主が男性から女性に交代した場合は、作業実施率の低下がやや目立つ。これら得られた知見を報告する。
  • 松下 幸司, 高橋 卓也, 青嶋 敏, 吉田 嘉雄, 仙田 徹志
    セッションID: A08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     農林業センサスでは林家以外の林業事業体のうち一定の条件を満たすものを「慣行共有」と総称し、その保有山林に関する集計が行われてきた。『1960年世界農林業センサス林業調査報告書―慣行共有編―』(農林省統計調査部編, 1962年)は、その最初の報告書である。1970年~2000年調査では単独の報告書は発行されなかったものの、都道府県別集計結果が調査報告書に含まれていた。本研究では、慣行共有林野の現状を分析するため、2000年世界農林業センサス・2005年農林業センサス(以下、センサス)の再集計を行った。2000年センサスの再集計は、出来るだけ1960年センサスの集計結果と比較できるように行った。本報告では、2000年・2005年センサスに関する再集計結果の一部を報告する。
     本報告の集計は、京都大学農林水産統計デジタルアーカイブ講座におけるプロジェクト研究の一部である。
  • 高橋 卓也, 松下 幸司
    セッションID: A09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    1969年から2010年までの42年間の都府県別入会林野整備(所有関係の近代化)データを整理し、どのような要因が入会林野整備進捗に影響しているかについて探った。影響を及ぼす要因としては、入会林野の当初条件、すなわち、入会林野事業体の規模(事業体当たり平均戸数など)、入会林野管理のルール(総有的特徴)、過去の労力の投入状況、入会林野が当該都府県森林に占める割合、を想定した。想定した要因関連変数と進捗関連変数との間の相関係数を求めた結果、入会林野事業体の規模は整備一般の進捗と負の関係を、総有的特徴は協業化の進捗と正の関係を、過去の労力の投入は整備一般の進捗と正の関係を、また入会林野の全森林に対する比率は整備一般の進捗と負の関係を、それぞれ有していることが分かった。当初条件が整備の進捗に及ぼす影響は、時間が経過するのとともに、小さくなるのが一般的であるが、過去の労力の投入については、時間が経っても影響が持続することがわかった。また、規模と整備一般の進捗との間の負の関係は、一定規模以上の範囲で出現し、小規模な場合は、かえって規模が大きいほど整備一般が促進される可能性が示唆された。
  • 福嶋 崇
    セッションID: A10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    タンザニアは、自国で約20年にわたり実施・展開してきた参加型森林管理(PFM)事業を、気候変動政策の1つであるREDD-plus事業として適用することを検討している。本発表では、この適用における可能性と課題について、現地調査を通じ明らかにすることを目的とする。
    現地調査の結果、タンザニアにおけるPFM制度の課題として、最新データの不足、地方政府レベルのキャパシティ不足といった制度面・ガバナンス面の不備、コミュニティにとっての参加インセンティブの低さや理解不足、といった多くの課題があることが明らかになった。
    このことから、REDD-plusによる経済インセンティブはタンザニアのPFM制度の拡大・発展の可能性を持つものの、PFM自体が多くの課題を抱えている現状からは、安直なREDD-plusへの適用はこれらの課題がますます拡大する懸念をはらむと言えよう。地域住民(特に貧困層)の疎外や事業設計・データ収集などにおける地方政府・コミュニティのキャパシティの不足により、とりわけ現場レベルでの政策・事業の円滑な実施・運営はますます困難なものとなろう。
  • 松原 英治, 渡辺 守, 白木 秀太郎
    セッションID: A11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
  • 橋本 沙優, 小池 浩一郎
    セッションID: A12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     タイでは、1993年に国王により、農家の生計安定の必要性から持続可能な環境保全型複合農業への転換を推奨する新たな農業理念New Theoryが提唱され、近年農村内部では、この理念に基づき、自立度の高い生計の確立や渇水の緩和等の働きを強めるため、単一商品作物栽培から森を生かした複合農業へ転換する動きがみられる。この森を生かした複合農業において、樹園地は持続的な収入源として重要視されているが樹園地利用を総体的に鑑みた報告は少ない。そこで本研究では、代表的な天水農業地域であるタイ東北部Maha Sarakham県で森を生かした複合農業を実施している農家において、農場内のため池、樹園地、畑作地の相互の有機的連関を明らかにするとともに、樹園地活用の可能性を農家経営の実態から検討を行った。
     タイ東北部は元来水環境が悪く、通年での野菜や果物の栽培は困難とされているが、両農家ともに農場内に、ため池を複数造成したことにより局所気候を変化させ、樹園地の造成が可能となるよう水環境を改善していた。また灌漑設備の導入により、乾季でも樹園地の維持や畑作地での農作物栽培が可能となり、年間を通じて収入を得ることが可能となっていた。
  • 王 昭文, 笹田 敬太郎, 佐藤 宣子
    セッションID: A13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     近年、経済成長が著しい中国の主要都市では空前の緑化ブームとなっている。緑化は周囲の環境と調和しなければならず、地域の景観と統一されている必要があると共に、地域住民の生活環境の改善に寄与することが求められる。しかし、中国では、都市緑化の計画策定、利用、保全管理への住民参加という視点が低いことが指摘されている。
     本報告は、北京市を事例として、①緑化プロジェクトの展開過程、②緑化の事業体制、③緑化地の使用権と行政による土地収用における居住住民への補償方法を考察し、中国緑化政策の課題を明らかにすることを目的に、行政資料の収集および専門家への対面調査を実施した。北京市では、2008年北京「緑のオリンピック」を行うために、2002年春より、生態環境建設計画における緑化プロジェクトを開始した。それによって、2014年までに北京市の都市緑化率は46.8%になった。緑化体制は、官主導の緑化計画、事業の民間委託、専門家による指導、農民の雇用確保が重視されている。
  • 定行 祐李, 興梠 克久
    セッションID: A15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     近年、放置林の増加等中山間地域における自然資源の荒廃が問題になっている。中山間地域における自然資源の持続可能な管理の方法として林内放牧が注目されているが、先行研究では林内放牧の持続可能性は必ずしも明らかにされているとは言えない。そこで本研究では、林家と畜産農家が協力し村ぐるみで林内放牧に取り組む宮崎県諸塚村と、一経営体が林内放牧に取り組む山口県防府市の山本牧場に対し聞き取り調査を行い、林内放牧を活用した持続可能な農林複合経営の存立条件と課題について考察する。
     諸塚村と山本牧場の比較の結果から、持続可能な林内放牧の特徴は①壮齢林の強度間伐等により、条件の良い新植地に放牧地を移動しなくても放牧が可能であること、②一経営体内で林業と畜産業を行い、林家と畜産農家の間での調整の難しさ(主として経費負担を巡る合意等)を回避していることだと考えられる。
     また、山本牧場での聞き取り調査により、林内放牧を活用した農林複合経営は、林業部門においては下刈り、間伐、路網整備、特用林産物の成長促進に効果を発揮し、土地や機械の共用による経費節減や家族労働力の1年を通じた完全燃焼に効果があるということが分かった。
  • 峰尾 恵人, 松下 幸司
    セッションID: A16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     「木の文化」は近年注目を集めているが、従来林学分野で考慮されることは少なかった。人工林長伐期化や広葉樹林化が課題となっている現在、「木の文化」を一つの視角として導入してはどうかというのが本報告の提案である。わが国の伝統的な「木の文化」から森林利用の歴史を見ると、多様な樹種・寸法の植物性資材が持続的に活用されてきたことが浮かび上がる。
     「木の文化」は持続可能であるという言説がしばしばあるがこれは誤りで、枯渇性資源的性質の強い長大材は近世に枯渇の危機を迎え、近代には外材に供給を依存するようになり、近年では違法伐採材まで利用されるようになっている。その他の再生可能資源も、社会経済の近代化の過程で林野利用の様式や需要のあり方が変化し、近年では生産の最終局面を迎えている資材があることも報告されている。これらの原因には、選好の変化や不完全情報などの市場の失敗が挙げられ、公的な介入の必要がある。
     かつて林学は高齢林・広葉樹林を林相「改良」の対象とみなしてきたが、ポスト産業社会における森林科学にとって、「木の文化」という概念は生態系・経済・文化や川上・川下の関係を再構築する鍵となりうるのではないか。
  • 高野 涼, 伊藤 幸男
    セッションID: A17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    これまでの農山村研究では、農山村における内発的な取り組みが報告されてきたが、急速な資本主義のグローバル化への対抗軸を見いだせずにきた。一方で、近年地域通貨を用いた自伐林業促進運動など、地域活性化と地域通貨を結びつける取り組みが広がりをみせている。本研究では、農山村再生における地域通貨の意義について考察するために、地域通貨に関連する経済学者ないし思想家の理論の整理を行った。その結果、次のように整理された。近代以前の社会では共同体内部と外部で異なる貨幣が用いられており、現代の法定通貨はそれらの多様な貨幣が駆逐された結果生じた。望ましい経済取引が実現されない一因は、貨幣発行権の独占や利子にある。しかし、貨幣は富ではなく信用により交換を媒介する手段であり、自分たちで貨幣を発行することにより、地域内における財・サービスの生産と流通を活性化することが可能となる。以上から、自伐林業促進の地域通貨は、地域通貨に関連する経済理論や思想を十分に踏まえているとは言い難い。しかし、持続可能で安定した農山村経済を構築する上で、貨幣を新たな認識枠組みで捉えなおすことは非常に重要であるといえる。
  • 久本 真大, 岡田 秀二
    セッションID: A18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、地域における森林と住民の係わりを歴史的に明らかにする一方、広く人々と森林との今日的関係構築を媒介するものとしての生産森林組合(「生森」)に注目し、その展開と現状について整理し、地域共同組織の現代的意義について考察した。対象地とするのは奥州市前沢区生母地域である。
    方法としては、「生母生森」有林、集落共有林、そして個人有林からの聞き取り調査、アンケート調査、地域の集会や植樹祭への参加等によった。今後については「生母生森」の地域活動や、地域で広がりをみせている森林経営計画の受け止め方とその内容を把握し、それらがどのような意義を持っていくのかを分析・考察した。
    「生母生森」は昭和31年の設立から根強く地域活動を続けており、さらに森林経営計画導入による収入を機に、平成26年には累積赤字の解消も見込まれている。また、地域の集落共有林や1ha未満の個人有林を含んだ森林経営計画の認定も進んでいる。さらに、施業委託をしている地方森林組合や行政、生協や県民とも協力し、森林への認識を高めつつある。
  • 小渡 太, 岡田 秀二, 伊藤 幸男
    セッションID: A19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、森林経営計画制度の運用状況を岩手県内の5事業体を中心に明らかにし、当該する地域や事業体を含む地域森林・林業発展に如何に係りつつあるかを把握しようとするものである。森林整備を主な事業としていた岩手中央森林組合は、新たな制度を通し、素材生産体制の構築を目論んだ。伐採・搬出の体制形成には、地域の多様な事業体等との連携に活路を見いだしている。一関地方森林組合では、地域森林の保育作業が遅れていたことから経営計画の策定を積極的に進め、補助金受給が組合員の意識向上と再投資力へ繋げるべく対応している。久慈市の大規模山林所有者Oは、広葉樹更新伐制度を活用し、利用が途絶え、展望を失いかけていた広葉樹林業に活路を見出し、事業体としての安定を実現している。滝沢市の事業体Nは、サプライチェーンの経営内統合を指向することから、機械化と搬出間伐を軸に事業量の拡大と安定化に寄与するものと受け止めている。遠野地方森林組合の活動エリアは、その林齢構成から間伐・主伐の移行期にある。森林経営計画は販路の確立しているカラマツ林を中心に大きく展開しており、組合は川下需要と山元を結びつけるツールの性格を評価している。
  • 枚田 邦宏, 小鯖 希音
    セッションID: A20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    日本型フォレスター(以下Fと略す)の活動は、地域の森林管理、林業再生のために、自然的社会的条件を踏まえて、広域的視点を踏まえて将来像を見据えた構想を描くことである。このような人材育成は、2011年の准F研修の開始、2013年の認定試験により始まった。この間、市町村森林整備計画の一斉変更、森林経営計画の策定開始により、各都道府県において林業普及指導活動と一体となってF活動が動いている。しかし、本来目指したF活動のレベルには達していない。本報告では、主にFが所属する都道府県の林業政策との関係の中に本来のF活動の展開可能性があるのではないかという考えのもと、鹿児島県を事例にして現在の到達段階の確認、今後の方向性について検討した。鹿児島県では、森林・林業の中期計画に基づき生産拡大を目指しており、Fの活動に期待されるところが大きい。F活動は、森林計画制度の変更に伴う活動と現場人材を育成することを中心に行われており、長期的視点での活動は一部のFの力量に寄っている。県全体の課題の中でのF活動は、構築途上にあることが明らかになった。
  • 岡 裕泰
    セッションID: A21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    2012年の森林資源現況と山元立木価格(利用材積あたり円)の都道府県別の統計値から、9齢級(41年生)以上のスギの蓄積量は全国で14億立米であり、蓄積の8割を利用材積とすると9齢級以上のスギの立木総額は2兆7千億円と推計された。9齢級以上の面積平均では83万円/haである。40年後の9齢級以上の総蓄積量を初期時点よりも減らさずに主伐生産できるのは年2100万立米までで、それに対応する立木総額は520億円と推定される。全国平均では13齢級以上になるとhaあたりの立木額が100万円を超えるが、地域別にみると半数余りの都道府県ではどの齢級になっても平均で100万円/haに達することがないと推計された。このことから、再造林費用を考慮する必要がなければ、スギの林木には一定の資産価値があるといえるが、再造林費用が100万円/haかかるとした場合、再造林を前提にすると、多くの都道府県で平均的なスギ人工林では林地・林木合わせた森林の資産価値がほとんどないことになる。これは政策及び税制上考慮が必要な事実と考えられる。
  • 柴田 晋吾
    セッションID: A22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    様々な問題点の露呈や紛争が起こり、「従来型の森林管理を変えねばならない」という強い意志のもと、1992年にカナダ連邦政府の肝入りで開始された国際モデルフォレストネットワーク(IMFN)は、今日まで世界各地にネットワークを拡げてきた。IMFNは現在世界で主流となってきている「ステークホルダーの協働による広域の景域管理」に早くから取り組んできており、この分野での草分けの一つといえるであろう。2014年11月4日には、日本で唯一のモデルフォレストのメンバーである京都モデルフォレストにおいて、ベッソー事務局長を迎えてシンポジウムが開催され、現在までのIMFNの成果や開始後7年目に入っている京都モデルフォレストの活動についての議論がなされた。京都モデルフォレストは、民間企業のCSRの取り組みや地域の森林整備協議会などのユニークな活動を軸に、パートナーシップを拡げてきている。本報告では、この分野でのIMFNの取り組みの成果と京都モデルフォレストの活動内容と課題について紹介する。
  • 都築 伸行, 鹿又 秀聡, 田村 和也
    セッションID: A23
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     本研究の目的は、全国47都道府県の県庁及び林業用種苗組合(県苗組)への聞き取り調査からコンテナ苗を含めた苗木生産・流通の実態と課題を把握することであり、本報告では、その中間整理を行う。統計分析及び聞き取り調査から、苗木生産者は減少・高齢化が進み、苗木供給量が不足している地域が多かった。苗木生産者は、個人生産者が多く、比較的大規模な者でも数十万本程度の生産量であり、会社形態でも100万本を超える生産者は極僅かである。潜在的な生産力としては百万本以上生産できる生産者も存在しているが、残苗補償が実質的に機能していないことや育苗過程で病虫害や気象害により大量枯死した場合のリスクを考慮し、大規模な生産に踏み切れないのが現状である。苗木安定供給のためには、設備投資を行うための生産者の大規模化や共同生産体制の構築と残苗や枯死リスクを回避できる新たな仕組みの創設が必要と考えられる。尚、本研究は(独)農研機構生研センターの「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立)の予算による成果である。
  • 田爪 和成, 大地 俊介, 藤掛 一郎
    セッションID: A24
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     南九州では再造林用苗木の不足が深刻化する中、苗木生産拡大に取り組む地域が出てきている。本研究では、一事例として村内の苗木生産量が最近10年で4倍強に増加した宮崎県諸塚村を取り上げ、林業地における苗木生産拡大がどのように進んでいるのかを探ることを課題とした。結果、同村における苗木生産は、再造林拡大による苗木需要の高まり、シイタケ・茶など従来の作目の価格低下、担い手の高齢化を背景に、農林複合経営の一作物として導入が進んでいることが判明した。苗木はシイタケ・茶と比べ生産者にとって扱いやすく、安定した需要・価格が見込めることから、シイタケ・茶から苗木へ乗り換える生産者が散見された。また生産拡大の契機として、林業地ゆえにもともと苗木生産の技術を持つ生産者がいたことと、平成17年に彼らを中心に設立された苗木部会の存在があり、森林組合や村・県行政との連携も図られていた。農林複合経営による小規模生産の集積であるため、今後どこまで生産が伸ばせるかは未知数であるが、苗木産地として林業地ゆえの技術的、組織的優位性もあることが確認できた。
  • 金山 知広
    セッションID: A25
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    愛知県の原木市場は,90年代まで小牧地域を中心として展開したが,近年,小牧地域と新城地域の間で,近隣の資源を対象とした競争が見られるようになった。独自の原木流通拠点を持たなかった東三河においてその形成を目指して取扱量を伸ばした新城市場だが,小牧市場もまた買手の求める材を確保するため東三河にサテライトを形成したことから,東三河地域の良質材は川上側によって小牧地域へ選択的に出荷されている。この実態を比較する為に,新城市場の市売データと,小牧市場の聞き取り調査から両市場の比較分析を行った。その結果,東三河流域において,新城市場での平均単価と材積が下落する一方で小牧市場のサテライトが取扱量を伸ばした地域が存在し,両市場が東三河流域において競合していることが明らかとなった。このように愛知県の原木市場では小牧市場の比重が高まりつつあり,地域材の取り纏めを行う新城地域と,良質材の取扱量増加を目指す小牧地域による競争は,新城市場と比較して小牧市場が相対的に優位となっている。この要因として川下側の買手の需要が違うことによる販路の違いが考えられるが,より詳細な分析には更に山元と製材工場への調査が必要となる。
  • 横田 康裕
    セッションID: A28
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    全国的に見ても木質バイオマス発電への取組が活発な宮崎県を対象に、発電用木質バイオマスの安定確保に向けた方策を検討するため、同県における発電用木質バイオマスの中で最も発生量が多い「林地残材」(=未利用材)に注目してその流通構造を明らかにした。林地残材の商流については、出荷者-集荷者-発電事業者が基本型であり、物流については、山元―集積拠点―チップ加工施設-発電施設が基本型であるが、それぞれ地域の状況(既存の流通構造、発電事業者の規模・地元との関係等)に応じて変化型がみられた。発電施設の本格稼働を目前に控え、多くの発電事業者が原料確保を本格化させており、宮崎県北部では既に原料獲得競争が激しくなっていた。このため、原料価格の上昇がみられ、「未利用材」として発電所着価格7,000円/生トンが相場となりつつある。また、商流面で、発電事業者が直接出荷者と取引する傾向や、物流面で、発電事業者が積極的に山側に原料調達を働きかける動きが見られた。林地残材の安定確保のための取り組みは、林業活動の振興による発生量の増大と、採算性の向上、出荷者の拡大、商流の整備・促進による利用可能量の増大とに分類された。
  • 知念 良之, 芝 正己
    セッションID: A29
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】戦後、沖縄の一般住宅構造の主流は鉄筋コンクリート造(RC)で, 木造率は僅かであった。2000年代後半から木造一戸建て住宅の割合は増加し,2013年には13%に達した。本研究の目的は,住宅構造材の変遷を検証し,今後の木造住宅の動向を考察することである。
    【方法】沖縄県の林政分野や住宅に関する各種統計資料・文献を収集し,時代毎に住宅や森林・林業に関する情報を整理した。これを基に住宅構造材の変遷について分析を行った。
    【結果】琉球王国時代は木材自給を目指し,森林管理と利用の両面で厳しい法整備が行われた。琉球処分後の混乱は乱伐と森林の荒廃を招き,建築用材のほとんどを県外産に依存した。沖縄戦において,戦時下の木材需要の逼迫に加えて住宅の殆どが戦火により失われた。戦後,米国管理下での独自の経済体制がとられ,民間貿易の再開と共にスギ材が輸入され,木造建築が盛んになった。通貨がドルに切り替ると,輸入代替や輸出振興のためにセメントや合板工場への支援が行われ,これはRC造振興に貢献し,木造住宅関連産業は解体状態に陥った。近年の木造率増加はプレカット材や木材利用振興政策が背景にあると考えられる。
  • 藤原 敬
    セッションID: A30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    来るべき循環社会の中で再生産可能な木材は重要な役割を果たす可能性をもっており、それに至る過程で、木材の環境負荷と貢献に関する情報を市民社会・最終消費者とサプライチェーン等を通じて共有することが課題である。木材の環境情報は、1)生産地における森林持続可能性に関するもの、2)供給過程における生産・輸送にかかる外部への環境負荷の程度に関するものがある。前者については、森林認証制度のサプライチェーン管理、合法性証明のガイドラインなどが提唱され、後者はカーボンフットプリントなどが提唱さてきた。木材の輸送距離を環境負荷の説明変数として利用するウッドマイルズ運動は上記2)のライフサイクル全体の情報のごく一部を対象としたものとしての制約はあるが、他方で1)の情報の信頼性トレーサビリティの効率性にかかわる情報でもあり、重要な役割をもつものと考えられる。木材の需給を巡っては、市場のグローバル化に対して、自給率向上・地域材住宅ブランド化など政策面でのローカル化を推進する動きなどがある。これらのふまえた日本の消費木材の輸送距離の推移を推計し、環境評価と政策評価の手法としてのウッドマイルズの可能性を検討する。
  • 大津 裕貴, 小池 浩一郎
    セッションID: A31
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    製紙・パルプ産業では従来のパルプや紙製品の生産に加え、エネルギー製品や化学製品などを生産することに注目している。これらの技術はバイオリファイナリーと呼ばれ、一部の企業では研究・開発に意欲的な意見が聞かれる。また、FIT制度の開始や木質バイオエネルギーへの期待の高まりから各地で木質バイオマスを利用したエネルギー生産施設が整備され始めている。これらのことから、森林資源の利用においてマテリアルだけでなくエネルギーとしての利用についても合わせて把握することが重要になるのではないかと考えている。しかし、燃料用に利用されている木材の量など既存の統計情報では把握しきれない部分が多くある。これらの情報を把握し整理するためにも、森林資源のマテリアル利用とエネルギー利用を合わせて記録するための何らかの枠組みを検討することは有効ではないかと考えられる。そこで、本報告ではマテリアル/エネルギー勘定について既存の研究を整理することでその表現方法について検討することを目的とする。
  • 石崎 涼子
    セッションID: A32
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    [背景と目的]ドイツには、州有林管理と私有林や団体有林の管理を一体的に行う統一森林行政の方式を長期にわたって採用してきた州が多い。ドイツ南部のバーデン・ヴュルテンベルク州もその1つである。だが、この森林行政の仕組みは、近年、改革を迫られている。2013年12月、連邦カルテル局は、バーデン・ヴュルテンベルク州における木材販売の仕組みがカルテル法に反するとし、改革を求める決定を下した。本報告では、このカルテル問題に至る議論の経緯と論点を明らかにすることを目的とする。[方法]2014 年9月にバーデン・ヴュルテンベルク州で実施したヒアリング調査と関連する資料等を用いて分析した。[結果]2013年末のカルテル法違反判決は、直接的には10年前の製材業者による提訴に始まるが、それ以前から徐々に展開してきた森林行政のあり方を巡る議論等とも関わりがあること、最初の提訴の後、木材共同販売の広がり等の影響も受けながら議論が展開してきたこと、カルテル問題によりドイツの森林行政の仕組みが大きく変わりつつあることなどが明らかとなった。
経営部門
  • 山田 祐亮, 吉田 城治
    セッションID: C01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     ビッターリッヒ法による断面積合計の推定精度について、従来の断面積定数を用いた手法と、連続的な断面積定数を用いた手法を比較した。
     「従来の方法」では、断面積定数を4とし、断面積合計を推定した。「連続的な断面積定数を用いた方法」では、視角1~4度の間で0.01度刻みに推定を行い、その平均値を推定断面積合計とした。
     精度検証のため、同様の直径分布、位置分布に従う1haの一斉林のモデルを、1万林分作成した。それぞれの林分の中央で、「従来の方法」と「連続的な断面積定数を用いた方法」を用いてビッターリッヒ法により計測すると仮定した。以上の操作を、Ry=0.6~0.8程度に相当する複数の平均直径、本数密度の林分で行った。
     結果、「連続的な断面積定数を用いた方法」を用いると、正確度は変わらなかったが、精度が向上した。推定断面積合計の期待値は、いずれの手法においてもモデル林分の断面積合計と一致した。一方で標準誤差は「連続的な断面積定数を用いた方法」が比較的低い値を示した。
     更に、連続的な断面積定数を用いた方法とベイズ推定を組み合わせることで、調査精度をより高められる可能性がある。
  • 西園 朋広, 図子 光太郎
    セッションID: C02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    スギの長期的な成長傾向は地域間で異なることが知られている。また,一般に,温帯の樹木では,春から夏にかけて成長は活発であり,秋から冬にかけて成長は低下・停止する。つまり,成長は季節に対応して周期的に変化する(以下,この季節変化を「成長フェノロジー」と記す)。単年の成長の積み重ねが,長期的な成長を形成しているはずだから,成長フェノロジーの地域差が長期的な成長傾向の地域差に大きく影響していると考えられる。この予想を確かめ,両者がどのように結びついているかを理解するには,成長フェノロジーの地域差を把握する必要がある。そのための基礎資料を得るために,本研究では,茨城県と富山県のスギについて,樹幹の肥大成長フェノロジーを調べた。茨城県と富山県内に生育するスギ個体の胸高位置にデンドロメータを装着し,目視計測によって成長フェノロジーデータを得た。各個体について,成長期間の長さ等を算出し,得られた値を地域間で比較した。なお,過去に岩手県と山形県で収集したデータも比較に用いた。本研究の一部ではJSPS科研費90353797の助成を受けた。
  • 岩岡 正博, 山﨑 広葉, 松本 武, 藤原 まや
    セッションID: C03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     本研究の目的は、伐期の長短が、木材のライフサイクルにおける炭素収支に与える影響を明らかにすることである。このために、植栽して育林作業を行い、収穫して木材として利用し、廃棄するまでに樹木が吸収して固定する炭素量と、作業や利用および廃棄に伴なって排出される炭素量とを、40年程度の標準伐期齢と、現在長伐期として計画されている80年程度の伐期齢とで推定し比較した。この結果、標準伐期施業では、収穫し木材として利用される材積が少ないため、貯蔵される炭素量も少ないことがわかった。これは、伐期齢においても林木がまだ成長段階にあって、十分な材積に逹していないことに起因すると考えられた。一方長伐期施業では、伐期を通じて林木は成長を続けて成熟するため、収穫可能な材積は大きくなり、木材として利用することで貯蔵される炭素量も多くなる。以上より、同一の期間において標準伐期施業を繰り返した場合よりも、長伐期施業を行った場合の方が、炭素収支の面で有利であることが明らかになった。また本結果より、平均成長量を最大にする伐期齢が、炭素収支も最大になることが示唆された。
  • 上月 涼平
    セッションID: C04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     ヒノキは、我が国における主要造林樹種であり、建築材などとして利用されてきた。しかしその特徴を活かした利用の検討があまり行われていない。このためヒノキ林の管理方法、伐期、更新など森林経営の展望を見いだすのが困難である。そこで建築材としてのヒノキ利用に注目し、特に素材の取り扱い状況について検討することにした。比較的取り扱う量の多い静岡県を事例として、現状を分析することにした。2014年12月に静岡県森林組合連合会素材市場にてヒノキ材の径級、長級、量などを調査した。
     ヒノキ材の取り扱い状況は、節が少ない柱角(10.5cmまたは12cm)を中心とした3m材と母屋角や土台などに利用される4m材が主である。また状況により良質な大径材は4m以上として板材や内装用として出材されている。ヒノキ材の造材は活用が限られているが3m柱材から、様々なものに対応できる4m材のほうにシフトしている。今後は節の多い大径材や細長い小径木などを森林の現状にあわせて活用する方法を検討する必要がある。
  • 宮 久史, 津田 高明, 大野 泰之, 酒井 明香
    セッションID: C05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    厚真町は北海道南部の太平洋側(苫小牧市の東部に隣接)に位置し、森林面積は約29,000haである。町内の一般民有林面積は約17,000haで、その内人工林面積は7,500ha程度となっている。人工林のうち、カラマツ類が5,800haと77%を占めているが、その内2,700ha(47%)は40年生以上と、伐期に達している林分の割合が高い。
    近年、厚真町では特に一般民有林のカラマツ人工林において、積極的な皆伐が実施されている。皆伐の多くは森林経営計画(以下、計画)に基づき実施されており、年間80ha前後の事業量となっている。計画は無秩序な伐採の防止や伐採後の更新の確保を図ることを目的としているものの、長期的な地域の森林資源管理については、考慮しきれない部分が存在する可能性がある。とりわけ、地域の人工林資源を持続的に管理していく際に重要な、齢級構成の平準化については、計画の中で算出される伐採可能量の考え方だけでは不足する部分があると見込まれる。
    以上のことより、本発表では現状の皆伐面積に加え、伐採可能量や齢級構成の推移等を把握、分析した上で、今後の人工林管理の方向性について検討を加える。
  • 吉田 茂二郎
    セッションID: C06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    戦後の拡大造林によって、日本の森林は資源的には充実したが、一方で手入れ不足の森林が増えている。よって、伐採後に再造林をしない再造林放棄地が日本全国、特に九州管内で数多く発生して問題となっていたが、現在は、幾分収まっているようにみえる。一方で、川下の製材工場の規模拡大、森林計画制度の変更にともなって、これまでの個別的な伐採に加えて、製材業者が組織する伐採業者による伐採だけでは無く、その後の再造林と数年間の下刈り等を含めた新しいタイプの事業提案が始まっている。
    今後の森林配置を考えた場合、これからの伐採では、単純にこれまでの人工林をそのまま再造林するのではなく、将来の理想的な森林のあり方・配置を見据えて、効率的でかつ多様な森林管理を実現するゾーニングを行い、それに従って伐採、再造林等の作業を進める必要があると筆者は考えている。そこで、本研究では、福岡県糸島市で現在進行中の大面積の事例を対象に、今回の新しい事業提案の評価ならびにそれが地域に与える影響について明らかにするとともに、地域の地形、自然環境ならびに地域の経済的環境等を考慮したゾーニングに付いて検討した結果を発表する。
  • 青柳 正英
    セッションID: C07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】北海道東部置戸町内の置戸照査法試験林(1955年設定)は、8年回帰で施業され,2003年度の第5経理期完了時にその成果を本会に報告をした。今回(2013年)第6経理期の完了に際し、新資料を加え既往成果を検証し、試験林設定目的より施業方法を再検討し、北方針広混交林施業の改善指針として提案する。【方法】第6経理期の調査結果より、全照査区の直径階別本数分配(回帰)直線の相関関係および同回帰式より林分蓄積算出精度を検討し、既往成果を検証した。また、試験林設定の3つの目的を蓄積、伐採量、成長率、枯損量等の推移から分析した。【成果】1.第6経理期は1)回帰直線の相関係数は0.98と不変で蓄積算定は可能であった。2)期首蓄積340SV/ha時に最大伐採量80SV/haの達成は、伐採量52SV/haで1/3の減少、蓄積は60SV/haの過大であった。3)年成長率は3.2%で最大時の7割、枯損量は最小時の5倍増であった。4)針葉樹SV当量は0.63で第5期をピークに減少、広葉樹は増加傾向にあった。2.本試験により、蓄積340SV/ha、伐採量60SV/haを維持し、年9.1(最大15)SV/haと、最大年6.3%の驚異的な成長が実証された。
  • 佐藤 浩朗, 米 康充, 高橋 絵里奈, 小池 浩一郎
    セッションID: C08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    チップ・パルプ材需要の増加で島根県内における広葉樹林の皆伐が増えてきており、皆伐面積は大規模なものになっている。島根県はかつて西の横綱と呼ばれるほどの炭の生産地であり、広葉樹林は炭生産を行うための薪炭林として機能していた。薪炭林作業では皆伐後に、下刈りや芽かき、必要に応じて補植などの作業を行って更新をしていたが、その後エネルギー革命などの影響により炭生産は衰退し広葉樹林は放置されている。現在、そのような状態の広葉樹林を業者が皆伐しチップ・パルプ材を供給している。しかし、皆伐後に広葉樹林内で作業をする業者は非常に少なく、天然更新に期待しているのが現状である。そのため、笹の侵入などにより更新不良となる場所も出てきた。このような状況が増えてしまえば、今後優良樹種を確保することが困難になってしまうため、皆伐後の広葉樹林にも手を加える必要があるのではないかと考えた。そこで過去に広葉樹林で行われていた作業から、現代の皆伐後の広葉樹林に生かすことのできる作業があるのではないかと考えた。しかし、過去の作業はほとんど現代に継承されていないため町誌等の古い文献に記載された更新補助技術の調査を行った。
  • 大野 勝正, 佐野 滝雄, 溝上 展也, 太田 徹志, 加治佐 剛, 鷹尾 元, 平田 泰雅
    セッションID: C09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    2000年半ばから地球温暖化が世界的な問題として認知され、森林の伐採などの土地利用変換が温室効果ガス排出に大きな影響を与えていることが明らかになった。このため、開発途上国における森林の減少・劣化を回避する取り組み(REDD)に注目が集まっている。これまで森林減少・劣化の把握は主に衛星画像の解析による土地被覆分類図で行われてきたが、森林劣化の把握は中分解能の衛星画像では困難であった。そこで、本件研究では航空機LiDARデータを用いて森林の減少・劣化を把握する方法を検討した。カンボジアのコンポントムで2時期(2012年、2014年)に計測されたデータから0.25mメッシュの樹冠高データを作成し、5m以上の樹冠の分布や樹冠率(5mメッシュ内の樹冠面積率)を面的に把握した。そして、これら2時期の樹冠分布や樹冠率を比較することで森林の減少・劣化を把握した。結果、森林減少・劣化の変化について面的に数値で把握できた。しかしながら、劣化については樹高成長や中層木の影響により、高木の抜き切りを十分に把握できなかったことから、今後は単木レベルでの樹高減少に注目した解析手法の開発が必要となる。
  • 塩田 廣美
    セッションID: C10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    近年、航空機LiDARを用いた森林構造の解析が行われており、広範囲な森林の資源把握に活用されている。この研究では、国有林のLiDARデータと、米国農務省森林局が開発した森林資源解析用のFUSION/LDVソフトウエアを用いて樹高・樹冠底高・樹冠幅解析を行うと共に、GISを用いて地理情報として解析の手法を検討した。
    このソフトウエアでは、データ作成や解析の際にパラメータ(Switches)を利用した詳細設定の組み合わせが可能で森林特性に合わせた解析が行えるが、どの組み合わせが最適なのかは森林特性等で変化することがある。調査場所として京都市東部に位置するヒノキ・スギが優占する南禅寺山・大日山国有林を選び、毎木・プロット調査とソフトウエアの出力データ比較を行い、データの精度やばらつきの程度を検証するとともに、パラメータの組み合わせで、出力されたデータの精度・ばらつきがどの程度変化するかを検証した。
    検証の結果、樹高値についてはばらつきがあるものの比較的精度は高かったが、樹冠底高と樹冠幅については精度・ばらつきとも大きい。またパラメータの組み合わせでも出力されるデータ量には多少の違いが認められた。
  • 林 真智, 平 春, 三枝 信子, 山形 与志樹, 平野 高司
    セッションID: C11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    衛星ライダーは、広域を対象として樹高や森林バイオマスを高精度に計測する能力を持つため注目されている。そこで、急速に森林減少が進んでおりREDD+の対象などとして関心を集めるボルネオ島を対象として、衛星ライダー(ICESat/GLAS)を森林バイオマスの評価に応用し、その利用可能性を明らかにした。まず、GLASの観測位置と一致する37地点においてビッターリッヒ法により地上バイオマスを計測し、そのデータを教師データとすることで、GLASの波形パラメータから地上バイオマスを推定する経験式を構築した。交差検証の結果、推定モデルの精度は 32.1 Mg ha-1 であった。推定モデルを、ボルネオ島を観測した127,862点のGLASデータに適用した。その結果、ボルネオ島における地上バイオマスの平均値は 183.1 Mg ha-1 であることや、森林タイプ別に見ると、常緑広葉樹林はマングローブ林や灌木帯の2倍近い地上バイオマスを有すること、全島における総量は 9.81 Gtであることが明らかになった。さらに、MODIS衛星画像などを利用したwall-to-wall地図の構築もおこなった。本研究により、衛星ライダーを利用した森林資源計測技術の有効性が示された。
  • 萩原 晟也, 山本 一清, 吉田 夏樹, 都竹 正志
    セッションID: C12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]前報では、2008年に観測された波形記録式航空機LiDARのデータを用い、距離補正した反射強度を指標に利用することで、比較的高精度で樹種分類が可能であることを示した。今回は、樹種分類に利用する指標および精度についても、より詳細に検討するとともに、オブジェクトベース分類手法の適用可能性についても検討することを目的とする。[方法]名古屋大学大学院生命農学研究科附属フィールド科学教育研究センター稲武フィールドを対象地とした。LiDARデータは2014年7月に観測され、パルス密度は約25点/m2 である。対象地を20m 間隔の格子に分割し、植生図と航空写真をもとに樹種を判定した。前報で示した指標に加え、新たな指標を加えて植生分類を行い、その分類精度により指標の有効性を検討した。また、LiDARデータをラスタ化し、eCognition5.0(Definiens社製)でスケールパラメータを変えてSegmentationを行い、林相区分及び植生分類への応用手法について検討した。[結果]広葉樹、スギ、ヒノキ、カラマツ間の分類精度は、今回新たに加えた指標によりやや上昇した。当日は、オブジェクトベース分類手法を用いた場合の結果との比較も行う予定である。
  • 佐野 滝雄, 大野 勝正, 染矢 貴, 久保田 七海, 阪口 法明
    セッションID: C13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    沖縄本島の東方約350kmに位置する南大東島および北大東島は、誕生以来一度も大陸と接したことのない海洋島であり、環境省レッドリストで絶滅危惧IA類に掲載されているダイトウオオコウモリなど多くの希少鳥獣が生息していることから、全域が国の鳥獣保護区に指定されている。両島はかつて、島の固有種であるダイトウビロウに広く覆われていたことが写真等の記録から確認できるが、現在では耕作地への転換が進み、希少鳥獣の生息環境として重要なビロウが優占する森林は著しく減少している。このため、環境省が行う国指定大東諸島鳥獣保護区保全事業の一環として、ビロウをはじめとした森林の全容把握のため、航空機LiDARを用いた調査を実施した。計測データより樹種ごとに異なる林冠部の表層形状が再現され、島内全域の森林タイプを詳細に区分することができた。さらに、林内の階層構造の多様度についても定量的な分析結果が得られた。これらの情報を現地の毎木調査で取得した下層植生も含めた生育データと照合することで、ビロウ林の再生に向けた可能性が示された。
  • 藤田 裕史, 山本 一清, 都竹 正志, 吉田 夏樹
    セッションID: C14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     林内相対照度(RI)は森林管理における間伐指針等の重要な管理指標である。これまでに、我々は航空機LiDAR観測データにおける全レーザパルスに占める地面に到達したレーザパルスの割合であるレーザ透過率(LPI)が、日本の山岳地域ヒノキ人工林においてRIと高い相関関係にあることを明らかにした。本研究では、スギ人工林とヒノキ人工林において、RIに加え収量比数(Ry)・胸高断面積合計(BA)についてLPIとの関係及び樹種間でLPIと指標との関係性の差異を愛知県及び三重県における航空機LiDAR観測データ及び現地調査結果により比較検討した。その結果、総じてLPIと林内光環境指標間の相関性は既報よりも低かったが、その中でもスギはヒノキと比較して相関性が低い傾向が見られた。
  • 蝦名 益仁, 加藤 顕
    セッションID: C15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]熱帯林を保護するためには正確なバイオマス量を簡易に測定する手法を確立する必要がある。これまでの衛星リモートセンシングデータから得られるデータは、樹冠を覆う高木の分布しか把握できなかった。本研究では地上レーザによる林内の三次元データを用いることで、高木と中低木とバイオマス量の関係を明らかにし、少ないセンサー設置箇所数でバイオマス量の測定を目指す。[方法] オーストラリア北東部にあるオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)所有のRobson Creek (500m×500m)を対象地した。25haの方形区のうち1ha毎に方形区の中心に半径10mのプロットを設定した。各プロット内で二ヶ所センサーを設置し、解析したデータは毎木調査したデータと照らし合わせ、樹高と胸高直径の計測精度を検証した。[結果]既知の毎木のデータより25haの方形区内の高木の密度を求めた。25ha方形区内の高木の密度と実際に測定するプロットの高木の密度を近づけることで誤差の少ない単位面積当たりのバイオマス量を測定することができた。また、地上レーザを用いた高木の胸高直径の計測は少ない誤差で測定することができた。
  • 加藤 顕, 小花和 宏之, 早川 裕弌
    セッションID: C16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] REDD+等の環境政策で、正確な現地調査データを得ることは難しい。現地作業員の計測技術のレベルにより計測誤差が生じ、信頼できるデータとして扱えないことがある。より正確な樹木データを得るために、可搬性が高い地上レーザースキャナーと、無人飛行機(UAV)を導入し、3次元データを取得する。さらに、得られた3次元データから正確な樹木計測ができる手法を確立する。[方法] 本研究で使用したUAVはPhantom 2(DJI社製)であり、UAVにカメラとGPSを搭載し、空撮を行った。写真画像だけから3次元データを作成できるStructure from Motion (SfM)の技術を用い、空撮画像から3次元データを取得した。同じ場所で地上レーザーによる3次元データも取得し、2つのデータを融合した。[結果] 融合した3次元データから、胸高直径の計測誤差を2 cm以内、樹高計測の誤差を50cm以内で計測できた。UAVによる3次元データは、航空機レーザーよりもデータ量が多く、地上レーザーよりはデータ量が少ないことがわかった。本研究によって世界どこでも3次元データを入手し、正確な樹木計測ができるようになった。
  • 田村 太壱, 加藤 顕, 小花和 宏之, 吉田 俊也
    セッションID: C17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     【目的】写真画像から3次元データを作成するStructure from Motion(SfM)という手法が注目されている。SfMは写真測量の一種であり、地形学や考古学の分野で活用され始めているが、森林に用いられた例はまだ少ない。本研究では、森林の3次元データの取得にデジタルカメラを搭載した小型UAVによる空撮画像とSfMを用いた。樹種の違い、紅葉・落葉などの季節変化、地形が樹高計測に与える影響について検討し、レーザー測量に比べて低コストかつ簡便な調査手法としての確立を目指す。【方法】北海道大学雨龍研究林において比較的平坦な場所の落葉広葉樹林と斜面にある針広混交林の2か所で9月上旬(落葉前)、10月上旬(紅葉時期)、10月下旬(落葉後)の計3回UAVによる空撮を行った。Photoscan(Agisoft社)を用いて空撮画像から3次元モデル、Digital Surface Model(DSM)、Digital Terrain Model(DTM)、Digital Canopy Model(DCM)を作成した。DCMから樹頂点を抽出し、現地調査で得られた実測値と比較した。【結果】季節変化が樹高計測に影響しており、落葉前においてSfMではRMSE(平均二乗誤差)が落葉樹は1.40m、針葉樹は1.48mの精度で樹高を計測できることがわかった。
  • 米 康充, 西村 拓哉, 小熊 宏之
    セッションID: C18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
     手軽で効率的な森林計測は、森林学にとって長らくの課題である。近年UAV、マルチコプターといった、いわゆるラジコンヘリが普及してきており、測量や森林計測に利用されつつある。林分レベルの範囲を手軽に簡単に撮影でき、またSfMと呼ばれる写真測量技術の発展と共に、森林の3Dモデル化も可能となってきた。ところで、マルチコプターと写真を用いた計測では、森林の上部から撮影するため、内部構造がわからないという課題がある。そこで、本研究では、マルチコプターによる計測と手持ちビデオカメラによる地上からの計測を組み合わせることで、樹高と胸高直径の計測を行うことを目的とした。
     実験では、まず地上に3点の測量ポールを設置し、それぞれの公共測量座標をあらかじめ計測した。マルチコプター撮影、手持ちビデオカメラ共に、先の測量ポールが写る様に撮影を実施した。それぞれの画像を標定し、写真測量を行うことで、3次元の点群データを抽出した。抽出した点群データから、ローカルマキシマム法および円柱近似を行うことで、樹高と胸高直径を求めた。
  • 粟屋 善雄
    セッションID: C19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    Terra衛星MODISの正規化植生指数(NDVI)を用いて判定した落葉樹の開葉日と、2007年に岐阜県大八賀川流域で計測した日平均気温を利用して、開葉と気温の関係を解析し、開葉予測モデルを作成した。開葉日のNDVIによる判定結果、予測モデルによる予測結果、既存の積算気温モデル(シラカンバ、ダケカンバ)による予測結果と標高との関係を比較した。その結果、MODIS-NDVIの結果は積算気温モデルのシラカンバとダケカンバで予測した範囲に収まり、開葉予測モデルの予測結果はMODIS-NDVIの結果やシラカンバとダケカンバの中庸で、開葉予測モデルは妥当と判断された。
    全球気候モデルMIROCで温暖化A1Bシナリオによりシミュレーションした日平均気温と開葉予測モデルを利用して、1990年代、2040年代、2090年代の開葉日を予測した。岐阜地方で開葉は50年後に14日、100年後に28日ほど早まり、標高が低いほど早期化が著しいと予測された。日本列島では北海道のオホーツク海沿岸で開葉の早期化がもっとも進み、100年後に40日ほど早まると予測された。本研究は農水省委託の気候変動プロジェクトで実施した。
  • V.C. WONG, Satoshi TSUYUKI
    セッションID: C20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    Aerial photographs with very high resolution (i.e. tens of centimeters) provide highly detailed information for forest characterization such as tree crown delineation, species identification and gap detection. In this study, we attempted individual tree crown delineation using object-based image analysis approach for tropical montane forest located in Northern Borneo. We used small-format aerial photographs with approximate spatial resolution of 10 cm acquired using standard commercial digital single lens reflex camera (Canon 1D Mark III). Digital ortho-photo and digital elevation model (DEM) were generated by Agisoft PhotoScan Pro version 1.0.3. and were used for tree crown detection using multiresolution segmentation algorithm in Definiens eCognition version 8 software. Accuracy assessment was then performed both using visual interpretation and ground data. The crown detection result was found to be superior in forest type with higher heterogeneity of species and larger crown size.
  • Vega Isuhuaylas Luis
    セッションID: C21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/23
    会議録・要旨集 フリー
    Forest mapping is vital for any MRV (Measurement, Reporting and Verification) system for forest carbon monitoring for a REDD+ action, and it depends in reliable methods of remote sensing data pre-processing. This poster shows a method of high resolution satellite data normalization focused in forest areas for optimum data consistency in order to produce mosaics for forest mapping for the Humid Chaco ecoregion (Paraguay). I calculated a local value of maximum RMSE (MRMSE) in forest sample areas randomly selected from paired data from a reference scene and target normalized scenes under no effect of seasonality or flooding. This value of maximum error was used it to evaluate the normalization results in forest areas of other overlapping scenes within the same ecoregion. As a result, in subsequent normalization analyses with multi-date satellite data, values of RMSE lower than the MRMSE value resulted in clear mosaics for land use classification and forest mapping.
feedback
Top