実験社会心理学研究
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26 巻, 1 号
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  • 和田 実
    1986 年 26 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 2者の相互作用場面におけるその2者の関係 (好意度に差がある) と対人距離の違いが言語行動と非言語的行動にどのような影響を及ぼすか-補償か相互性か-を面接場面で調べるのを目的とした. 同時に話題の親密さによる違いも調べた. 研究を進めるにあたっては, 従来の1対1の行動を問題とするワンチャンネル・アプローチと異なり, いくつかの行動を同時に取り上げるマルチチャンネル・アプローチをとった. そして, それらの行動によって表わされる, かかわりの程度を示す「直接性」という1つの指標にまとめて検討した. 男子大学生60名 (1年生) が被験者として参加し, 男子大学生1名 (4年生) がすべての被験者に面接した.
    得られた主な結果は, 次のとおりである. 好意の違いの影響がみられたのは第三者による自己開示度の評定のみであった. また, 対人距離による影響はBLFの時間と平均時間にみられただけであった. ECの時間, 回数と発言時間は親密さの高い話題より親密さの低い話題の方が多く, ECの平均時間と微笑の時間, 回数, 平均時間と潜時は親密さの低い話題より親密さの高い話題の方が多かった.
    次に, すべての指標の測度値に, 因子分析 (主因子解-バリマックス回転) を行い, 7つの因子を抽出した. さらに, これらの因子と独立変数の影響を取り除くようなダミー変数を加えて, 実験終了後の被験者の面接者に対する印象を重回帰分析した. そして, その回帰係数でそれぞれの行動の指標を重みづけて全体の行動で示されるかかわりの程度を示す 「直接性」 を算出した. その結果, 対人距離による 「直接性」 が高くなる (「直接性」 はかかわりの程度を示すので, 対人距離は近くなるほど 「直接性」 が高くなる) と, 他の行動によってされる 「直接性」 も高くなるという相互性となった.
  • 飛田 操
    1986 年 26 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 「父親」 と 「友人」 という伝達対象の違いが, 主としてそこで伝達される対人認知のカテゴリー使用にどのような影響を与えるのかを検討することにあった.
    「父親」 条件の被験者 (n=30) は自分の父親に対して, 「友人」 条件の被験者 (n=30) は自分と同性の親友に対して, それぞれ5名の人物を選択し, 記述することが求められた.
    結果は, 他者記述において伝達された情報の量や, 他者記述において使用された対人認知のカテゴリーの数が伝達対象の違いによって異なることを示している. また, 「親友」 条件の被験者は, 「父親」 条件の被験者と比較して, より親密な異性とより親密でない同性を記述対象として選択する傾向にあったことが見出された.
    これらの結果は, 対人コミュニケーション過程における 「編集」 の機能の点から議論された.
  • とくに意見類似性の認知と自己開示との関連について
    安西 豪行
    1986 年 26 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 中学生と教師とのコミュニケーションの量を規定する要因の1つとして, 生徒の認知する教師との 「意見類似性」 があるであろうとの仮説を検証することにある.
    被験者は東京都内の中学生327名 (男子171名, 女子156名) である. 教師とのコミュニケーションの測定には, 久世ら (1972a) の用いた 「困った場面における自己開放性 (自己開示) 」 の値を使用した. 一方 「意見類似性」の指標は, 中学校生活での諸問題に関する意見や考え方についての被験者の賛否ならびに教師集団の賛否の比率の推定を回答させ, その結果にもとづいて算出された. なお, 本研究においては教師に対するものと比較するため, 自己開示については親友などについての資料, また「意見類似性」 については生徒集団に対する資料も同時に回答させた.
    主な結果は次のとおりである.
    (1) 自己開示の大きさは, 学年別・性別のいずれにおいても, 親友に対するものの方が教師に対するものより大であった.
    (2) 「意見類似性」 については, 学年別・性別のいずれにおいても, 生徒集団に対するものの方が教師集団に対するものより大であった.
    (3) 自己開示と 「意見類似牲」 の相関係数は, 絶対値は大きくないものの, 対教師・対生徒のいずれにおいても正の有意な相関関係がみとめられた.
    (4) 「意見類似性」 の高得点群と低得点群とで比べると, 自己開示の得点は前者の方が高かった.
    (5) 上記 (3) および (4) に述べたような傾向は, 教師に対するものよりは生徒に対するものの方が顕著であった.
    以上の結果, および一部被験者を対象とした面接法における各被験者の発言から, 生徒と教師とのコミュニケーションの大きさ (個人差) を規定する要因の1つとして, その生徒が認知する教師との 「意見類似性」 が存在すると主張することが許されるであろう.
  • 浦 光博, 桑原 尚史, 西田 公昭
    1986 年 26 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    The purposes of this article are to report the results of the experiment that examined dyadic conversational process and to discuss the suggestions of these results for the future studies on social interaction processes.
    Twenty four undergraduates (half were males and half females) participated in dyadic conversation situation, and were proposed to talk about each of three themes; landscape of their campus (consumatory communication), where to go on a trip (information-exchange), crowding of the street around their university (problem-solving). Combination of sex (male-male, femalefemale, or male-female) and intimacy of two participants (high or low) were manipulated. Therefore, factorial design was 3×3×2.
    Each protocol was categorized into one of eight categories; central or peripheral orientation, new or old information, rational or emotional opinion, positive or negative evaluation. The former four categories constitute a higher category which is called “protocols for sharing information (IS) ”, the latter four constitute another one called “protocols for processing informaton (IP) ” . The results indicate that (1) individuals use IP more frequently in conversations for problemsolving than for consumatory communication or information exchange, (2) they use IP less frequently in the male-female condition, especially when they are not very intimate, therefore, (3) protocol categories used in this study have very high validity. Furthermore, the occurence ratio of particular types of adjacency pairs was found to be influenced by the type of theme of conversation.
    Several suggestions of these results are discussed for the future reserches on social interaction processes.
  • 岡本 真一郎
    1986 年 26 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    状況的要因が依頼の言語的スタイルの変動に及ぼす影響を検討するため, 男子大学生を被験者として, 2つの研究が行われた. 研究1では, 被験者 (73名) は同性・同学年の親しい相手, 疎遠な相手に対する, 依頼表現を筆答した. 疎遠な相手に対しては親しい相手に比べて, 6場面中4場面で依頼型が減少, 意向打診型が増加して, 依頼スタイルは間接化することが明らかになった. 研究2では親しい相手に対する依頼に限って, 依頼内容 (場面) によるスタイルの変動が検討された. 2組の恩恵場面群と1組の修復場面群でそれぞれ, 依頼を履行する際の相手のコストが変数として導入された. 被験者 (43名) は依頼を口頭で答えた. 予想された恩恵場面群だけでなく修復場面群でも, 依頼のコストが増すと依頼型が減少し, 意向打診型が増加した. 以上の結果の考察のほか, 他のスタイルの分布や, 慣用句, 依頼の長さについても分析・考察が行われた.
  • 藪内 稔
    1986 年 26 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    Howard (1966) のPDディレンマに対する解の定式化は条件付方略のいくつかのレベルを許す“メタゲーム”の概念に基づくものである。プレヤーBがプレヤーAの方略に対して反応するとき, これはメタゲームBGを形成する。メタゲームBGにおいては結果 (d, d/d) だけが均衡である。ここにAがcを選ぶならばx/y=x, Aがdを選ぶならばx/y=yである。AがAの方略選択に対するBの反応に対処して方略を策定する場合, これはメタゲームABGを形成する。メタゲームABGにおいては (c, c) と (d, d) がメタ均衡であり, これらはGにおいて安定的であり得る。
    本研究の目的は, 仮定された相手側プレヤー (プレヤーB) の可能な方略選択に対する被験者 (プレヤーA) の反応を検討し, メタゲーム理論による予測を評価することにある。
    159名の被験者は5つの利得行列のいずれかに無作為に割付けられた。各利得条件において, 被験者の課題は, 質問紙によって表された基本ゲームG場面, 4つのメタゲームAG場面, および4つの拡張されたメタゲームABG場面に対して, cまたはdを選択することである。
    主な結果は以下のとおりである。
    (2) 基本ゲームG場面, およびすべてのメタゲームAG場面においては, 利得行列の如何によらず, ほとんどの被験者がdをためらわずに選択した。
    (2) 拡張されたメタゲームABG場面においては, 利得行列の如何にかかわらず, 仮定された相手側プレヤーBがc/dを選択したとき, かつそのときに限り, 多くの被験者はcを選択し, 結果 (c, c) を安定的であると期待している。
    これらの結果は, 高次なレベルに至る相互期待として定義される共有期待 (mutual expectation) が, プレヤー相互が互いの行動を調整するうえに重要であることを示唆するものである。
  • 川名 好裕
    1986 年 26 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 対話状況において聞き手が話し手に与える相づちや, うなずきと言った社会的強化が, 相互の対人魅力にどのような影響を及ぼすものであるかを調べることであった。
    40人の大学生が, 自分の作った話をする話し手の役割か, その話を聞く聞き手の役割のどちらかを演じた。話し手と聞き手との対人的認知の違いを対照するために, 各々の被験者は, 終始それぞれの役割を演じた。話し手は二人の別の聞き手に, 同じ話を同じ調子でした。聞き手のうちの一人は, 相づちや, うなずきなどの社会的承認を与えて話し手の話を聞いた。もう一人の聞き手は, そうした社会的強化を話し手に与えずに話を聞いた。聞き手の方も, 二人の話し手の話を聞いたが, 一人の話し手には社会的強化を与え, もう一人の話し手には社会的強化を与えなかった。実験の結果, 明らかになったことは次の4点である。
    1. 話し手は, 相づちのある聞き手の方を, 相づちのない聞き手より好意的に評定した。
    2. 聞き手は, 自分が相づちを打った話し手の方を, 相づちを打たなかった話し手より, 好意的に評定した。
    3. 相づちの有無の違いによって変化する対人魅力特性は, 感情的・社交的魅力であり, 知的・道徳的魅力ではなかった。
    4. 対話状況においては, 話し手の方が, 聞き手より対人感受性が敏感であることも明らかになった。
    また, 多次元展開法が多変量の従属変数を全体的にかつ視覚的に表わすのに有用であることが示唆された。
  • 小野寺 孝義, 三隅 二不二
    1986 年 26 巻 1 号 p. 77-88
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    本研究はリーダーシップPM論におけるM行動に期待支持M行動, 現状保守M行動の2つの異なる性質を持っM行動が存在する可能性を実験的に検討したものである。
    被験者は3段階の階層序列をもつ実験状況の2階層目に位置し, 上位階層の上位リーダーのリーダーシップのもとで下位リーダーとして, 最下位の階層の3人の部下を監督し, 部下の迷路脱出を促がす任務にあたった。但し, 実際には上位リーダー, 3人の部下いずれも“サクラ”であった。
    実験: 被験者は72名。上位リーダーの被験者に対する発言内容によって期待支持M条件, 現状保守M条件, Mなし条件の3条件を設定し, さらにこの各M条件ごとに上位リーダーが部下に対して指示を行なう権限を被験者に委譲する頻度によって, 権限委譲が多い条件, 少ない条件を設定した。権限委譲が多い条件は期待支持M条件の効果を促進すると予想された。Mの条件3×権限委譲の条件2の各6条件それぞれに12名を割り当てた。期待支持M条件は上位リーダーが被験者に対して支持や信頼を表明する発言を行なう条件であり, 現状保守M条件は上位リーダーが被験者の現状を肯定し, 現状維持を認める発言を行なう条件であった。Mなし条件は上位リーダーがM的な発言を一切せず, P発言のみを行なう条件であった。Mなし条件に含まれている上位リーダーのP発言は他の2つのM条件にも同じく含まれているものであった。主な結果は以下の通りである。
    1) 期待支持M条件の下では現状保守M条件に較べて上位リーダーに対する被験者のP認知が強まる。
    2) 期待支持M条件の下では現状保守M条件の下でよりも被験者の“モラール”が高まる。
    3) 権限委譲の多い条件の下では, 権限委譲の少ない条件の下でより, 上位リーダーのリーダーシップに対して不快とする感情認知が被験者に生じる。
    4) 権限委譲行動は期待支持Mの効果を促進しない。
    追加実験: 被験者15名。本実験の期待支持M条件のリーダー発言から, P発言を除き, 期待支持M発言単独の効果を吟味した。得られた主な結果は以下の通りである。
    1) 期待支持M行動はリーダーのP行動があって初めて被験者のP認知を強めるMである。
    2) 期待支持M条件の“モラール”はリーダーのP発言がない状況においても高まる。
    これらの結果については, 現状保守M行動が部下の課題達成への適度の緊張や不安を失わせるのに対して, 期待支持M行動は部下にリーダーの期待・支持に応えなくてはならないとする内的圧迫を生じさせ, それがリーダーに対する部下のP認知を強め, “モラール”をも高めると考察された。
  • ただ乗りと信頼感の欠如
    佐藤 香, 山岸 俊男
    1986 年 26 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 1986/08/20
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    In an experiment using 60 undergraduates as subjects, members of five-person groups decided whether they would contribute their resource money to the prvision of a public good. Expectation of other members' cooperativeness (or the likelihood that thay would contribute to the provision of a public good) was manipulated by letting subjects believe that other members' cost for cooperation (the amount of resource money they were required to contribute) was high (low expectation conditon) or low (high expectation condition). Two types of functions (conjunctive and disjunctive) were used to relate the number of contributors to the amount of public good provided. In the conjunctive condition, an additional contributor increased the amount of public good (bonus money given to all members) more as the number of contributors increased, and the additional increase in the bonus was less as the number of contributors increased in the disjunctive condition. Both trust in other members and the motivation of fre
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