実験社会心理学研究
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31 巻, 1 号
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  • 伊藤 哲司
    1991 年 31 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 2者の相互作用場面でのノンバーバル行動の分析から, ノンバーバル行動の基本的な表出次元を検討することである。
    被験者の組合せの条件は (男性同士, 女性同士) × (初対面, 友人) の4つで, 各条件5組ずつを用いた。各被験者ペアには, 「アルバイト」について15分間会話をするよう教示し, その場面をビデオカメラによって録画をした。教示前の場面および15分の会話場面から2分ずつをサンプリングし, 8項目のノンバーバル行動 (視線・笑い・前傾姿勢・後傾姿勢・横向き・発話・沈黙・うなずき) と8項目のユニット的ノンバーバル行動 (相槌・笑い反応・話-反応・沈黙共調動作・模倣共調動作・追従共調動作・同時共調動作・反響姿勢) の頻度・総時間・平均時間 (反響姿勢を除いたユニット的ノンバーバル行動とうなずきは頻度のみ) を測定した。
    全行動変数の因子分析から, コンタクト・リラックス・接近・回避の4因子が抽出された。また, これらの因子に負荷の高い行動間の継起パターンを記述した継起分析から, 個人内で非コンタクト因子 (コンタクト因子の負の負荷の高い行動群) からコンタクト因子, コンタクト因子からリラックス因子, 回避因子から接近因子へ, それぞれ行動が連鎖しやすいことが見い出された。これらの結果を考察して, “コンタクト-非コンタクト”“リラックス-緊張”“接近-回避”の3次元をノンバーバル行動の基本的な表出次元と仮定した。
    これらの次元は, 心理的指標 (感情評定・相手の人物評定など) との相関から, それぞれ特徴づけられた。また, ノンバーバル行動の重要な機能を反映していると考えられる関与度は, 重回帰分析によって3次元の得点から73.4%が説明された。これらのことから, 仮定した3次元はノンバーバル行動の表出を説明するものとしての妥当性が支持された。
    ユニット的ノンバーバル行動を除いて分析した結果は, 全行動変数からの結果とほとんど違いはなかった。継起分析の結果から, 個人間では同一行動が繰り返される傾向が示され, 多くのノンバーバル行動がしばしばユニット的ノンバーバル行動を形成していることが示唆された。これが, ユニット的ノンバーバル行動から独自の意味を見い出すことができなかった原因であると推測された。
  • 中川 薫
    1991 年 31 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, Duval & Wicklundの客体的自覚理論 (1972) に基づいて, 自己開示度とそれに伴う現実自己と理想自己のズレの変動を客体的自覚の喚起度, 聞き手の態度, 元々もっていた現実自己と理想自己のズレの度合から説明することを目的としている。56人の女性被験者は予備テストによって元々の現実自己と理想自己のズレが大きい群と小さい群とに分けられている。被験者はテープに録音された自分の声を聞く (客体的自覚が高い条件) かあるいは他人の声を聞き (客体的自覚が低い条件), その後で実験者 (聞き手) から与えられた話題にそって自己開示をする。聞き手は被験者に対して受容的な態度あるいは非受容的な態度をとる。その結果, 自己開示に関しては, (1) 客体的自覚が高い条件では, 聞き手の受容的態度は非受容的態度より自己開示を促進するが, 客体的自覚が低い条件では聞き手の態度による差はない, (2) 現実自己と理想自己のズレの度合によって, 聞き手の態度が自己開示に与える影響力に差があるとはいえない, (3) 現実自己と理想自己のズレの度合が小さい群の方が大きい群より自己開示度が高い, ことが示された。現実自己と理想自己のズレの変動に関しては, (4) 元々もっているズレの度合が小さい群は, どの実験変数の影響も受けず, ズレの変動が小さい。(5) 元々もっているズレの度合が大きい群では, 客体的自覚が高い条件下で聞き手が非受容的態度をとると, ズレが拡大する, ことが示された。
  • 好ましくない程度の認知の仕方
    工藤 恵理子
    1991 年 31 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 抑欝的な人の好ましくない出来事に対する認知の様式を検討することを目的とした。抑欝的な人が, 好ましくない出来事を, 好ましくなさの程度に沿って段階的に好ましくないと認知するのか, それとも, 出来事の好ましくなさの程度の違いを弁別せずに, 一様に認知するのかという点を, 抑欝的でない人との比較対照をおこなった。外見をけなされる・性格をけなされるという対人場面と, 心理学のテストで失敗する・実技のテストで失敗するという達成場面を設定し, 各場面に3段階の好ましくなさの程度を実験的に設定した。結果は, 抑欝的な人は場面の程度を弁別せずに一様に認知していた。非抑欝的な人の「場面の程度」の認知は, 「場面の程度」によって異なったものの必ずしも線形とはいえなかった。また, 抑欝的な人は非抑欝的な人に比べ好ましくない場面をより好ましくないと悲観的に認知してはいなかった。非抑欝的な人が好ましくない場面の程度を弁別して認知しないということがどの様に抑欝の形成推持に影響するかという点は今後の重要な研究課題となるであろう。
  • 上野 徳美
    1991 年 31 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は, 説得メッセージの反復提示と圧力 (自由への脅威) が説得の受容と抵抗の両側面にどのような影響を及ぼすかについて検討することを目的とした。本研究で用いられた要因は, メッセージの提示回数 (1, 3, 5回) と圧力 (大小) の2要因であり, 2×3の要因計画のもとに実験が実施された。実験では順態度的メッセージが用いられ, 被験者にはテープ・レコーダーを通してメッセージが提示された。メッセージの効果は質問紙によって多面的に測定された。本研究では, 説得メッセージの圧力の主効果が生じるとともに, メッセージの反復提示と圧力との交互作用効果 (反復提示の効果はメッセージの圧力の大きさによってかなり異なった様相を呈する) が得られるであろう, と予測した。
    実験の結果, まずメッセージの圧力の主効果が認められた。圧力の小さいメッセージにおいては説得の肯定的な効果が生じたのに対して, 圧力の大きいメッセージにおいては反対に説得への抵抗や否定的効果が生じた。また, メッセージ評価や意見といった測度において, メッセージの反復提示と圧力の要因の交互作用効果が得られた。すなわち, 圧力小のメッセージでは, 提示回数と説得効果の間に逆U字型 (3回提示の時に肯定的効果が最大) の傾向が生じ, 過度な反復 (5回提示) は否定的効果を引き起こした。他方, 圧力大のメッセージでは反対にU字型の傾向が認められ, 3回提示の時に否定的効果が最大であった。後者のU字型のパターンに関しては予測と一部異なったものの, それ自体注目すべき結果を示した。
    以上の結果は, メッセージの反復という要因が説得の受容や抵抗を規定する重要な要因になりうることを示した。また, メッセージ反復による説得の受容や抵抗の生起過程は, リアクタンス理論とELM (Elaboration Likelihood Model: 精緻化可能性モデル) をもとに考察された。
  • 対人情報を材料として
    吉原 智恵子
    1991 年 31 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    認知的不協和の理論をはじめとする認知的斉合性の諸理論では十分な説明が得られなかった認知的枠組みの変容の問題について論じた。特に, 以下の3つを目的として3つの実験を行った。
    1. 従来の研究に見られるように, 不斉合情報の統合的処理が行なわれることを確認する。
    2. 対人情報を用いた不斉合について, その処理の様式を統合性の観点から情報処理に即した形で整理する。
    3. 整理された処理様式について対人認知の内容の相違を明らかにし, 認知的処理の質的違いを示す。
    そして実験の結果, 不斉合な情報に対しても統合的な処理が行なわれることが確認された。そして次のような処理様式が整理された。
    処理様式I [不斉合な情報の無視]
    1. 不斉合な情報の無視
    処理様式II [不斉合な情報の並列的処理]
    2. 不斉合な情報の変形
    3. 複数の評価領域属性の設定
    4. 人物の二面性の設定
    処理様式III [新たな付加要素を用いた処理]
    5. 対人認知の多様性の設定
    6. 対象や状況に対する複数の対応の仕方の設定
    7. 因果関係あるいは関係性の設定
    また, 処理様式I, II, IIIでは対人認知の内容が異なることが示された。すなわちIからII, IIからIIIへとより組織的に不斉合な情報を処理していると考えられる方略を経た場合の方が人物像のリアリティ, 人物の内面性の評価は高く, 不斉合な情報の組織的な統合の度合により認知的処理のレベルは異なることが示唆された。
  • ノンバーバルスキル尺度およびソーシャルスキル尺度の作成
    和田 実
    1991 年 31 巻 1 号 p. 49-59
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 対人的有能性の下位概念としてのノンバーバルスキルおよびソーシャルスキルを測る尺度を作成することである。データは大学生 (男子68名, 女子174名) から収集された。因子分析の結果, ノンバーバルスキルについては二つの因子-非表出性および統制, 感受性-, ソーシャルスキルについては三つの因子-関係維持, 関係開始, 自己主張-が抽出された。そして, 既成の類似した尺度 (ACT, SM) およびいくつかの社会的変数 (きょうだい数, 親友数, 孤独感およびその変化, 恋人の有無など) との関連から, この尺度が妥当であることが確かめられた。なお, 具体的には以下の結果が見いだされている。: (1) ノンバーバル感受性, ソーシャルスキルの関係維持は男性よりも女性の方が優れている。(2) ソーシャルスキルの関係維持に優れない者ほど, 孤独を感じている。(3) 恋人がいる者の方がいない者よりも, ノンバーバル感受性を除いたすべてのスキルで優れる。(4) 全体でみれば, 孤独感が減少した者の方がソーシャルスキルの関係維持, 自己主張に優れる。今後は, 特にノンバーバルスキル尺度の項目内容のさらなる検討が必要であろう。
  • 堀野 緑
    1991 年 31 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
    The purpose of this article is to verify the existence of ambivalence in “Fear of Success” and the factor which cause it. Two isvestigation were carried out by undergraduate students (first investigation: 161 females and 193 males. second investigation; 139 females and 118 males). Questionnairs are composed of fear of success scale, which is almost the same as that used in many other studies, and scenario study, which mesures how positively or negatively people consider their own and other people's success in a success situation. The results express ambivalence clearly in both females and males. And sex difference was qualitative rather than quantitive. Among females 'interests in others' was important factor for ambivalence, but among males 'littie need for superiority' was important factor for ambivalence.
  • 三井 宏隆
    1991 年 31 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1991/07/20
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 31 巻 1 号 p. 84a
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 31 巻 1 号 p. 84b
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/02/26
    ジャーナル フリー
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