マツカレハ幼虫若齢期に,細胞質多角体病ウイルス(CPV),
Bacillus thuringiensis(Bt),およびこれら2者の混合物を散布し,これらがマツカレハ個体群の生存率に及ぼす影響について調ぺた。CPVは散布後直ちに幼虫を死亡させるような働きはないが,越冬期以降,とくに越冬期と,老熟幼虫から前蛹期にかけて幼虫を高率で発病せしめ,これらの時期の死亡率を高める。これらに対しBtは,散布後1週間以内で高い殺虫率を示し,2週間目の殺虫率も高い。しかし3週間目ではBtによる死亡はわずかしか起こらず,以降はまったく起こらない。Bt散布の直接の効果は2週間以内に限られるといえる。一方これら2者を混用すると,散布後1週間以内の死亡率の上昇はBt区より急で,その後もCPV区と同様に高率の死亡発生がみられる。生存率に及ぼす混用の効果は大きかった。混用のCPV濃度は,単用時の10分の1で,量産困難なCPV量を大幡に節約できる点でも混用の効果を十分みとめることができる。
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