有病者歯科医療
Online ISSN : 1884-667X
Print ISSN : 0918-8150
ISSN-L : 0918-8150
10 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 矢郷 香, 朝波 惣一郎, 岡田 豊, 本間 宏昌
    2001 年 10 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2001/08/20
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 胸部大動脈瘤を合併する76歳女性の全身麻酔下での下顎骨嚢胞手術を経験したので報告する。患者はX線上, 下顎骨に透過像を認め, 紹介され来院した。患者は, 4年前に胸部大動脈瘤と診断され, 約7cmの瘤を有し, 早急に血管外科の手術が必要であった。
    しかし, 口腔内に感染があり, 心臓外科医と協議した結果, 最初に心臓外科医立ち会いのもとに, 口腔外科での手術を施行することとなった。
    われわれは, 循環動態の変化に十分注意しなければならなかった。
    嚢胞は摘出手術がなされ, 術中循環動態は安定していた。約1年後, 血管外科手術が行われた。現在, 約4年経過するも, 経過良好で, 再発を認めていない。
  • 赤坂 庸子, 土屋 欣之, 神部 芳則, 浅野 秀明, 安藤 知枝子, 伊藤 義治, 尾崎 至郎, 尾崎 哲也, 川崎 博, 清水 徳三, ...
    2001 年 10 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2001/08/20
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    北海道から九州までの33カ所の一般歯科診療所を特定の1か月間に受診した患者についてその全身疾患および全身状態について調査した。対象は828名で男性が352名, 女性が476名でこれらの患者に対して行った問診票の33項目について分析した。年齢は4歳から100歳までで平均54.2歳であり, 60歳代が最も多かった。主訴は歯痛や義歯に関することがほとんどであった。435名が何らかの全身疾患の既往があり, 187名は治療中であった。全身疾患の中では高血圧症が最も多く20%で, 次いで胃腸病, 花粉症, 心臓病, 喘息, 肝臓病, 呼吸器疾患, 腎疾患, 血液疾患などであった。74名は頭痛, 発熱, かぜ, めまい, 動悸など全身的な異常を感じていた。317名が投薬を受けており, その内8名はワーファリンを3名はパナルジンを内服していた。122名が何らかのアレルギーを有していたが多くはアレルゲンが明らかでなかった。一般歯科診療所では高齢者が多く, また全身疾患を有している頻度が高いため, 安全に歯科診療を進めるためには術前に患者の全身状態を詳細に診査することがきわめて重要である。
  • 複合型における試み
    川口 辰彦, 森野 茂, 中山 啓, 本田 壮一郎, 山川 摩利子, 和久田 哲生, 伊東 隆利
    2001 年 10 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2001/08/20
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    歯科医師臨床研修複合型施設である熊本市立熊本市民病院および (医) 伊東歯科医院, 両施設における救急部門において, 臨床研修医に対する実地研修プログラムを実施した。設定した時間帯に受診した患者の実態と臨床研修医の対応を調査し, さらに臨床研修目標をどの程度達成できるか検討し, 以下の所見を得た。
    1. 患者の平均年齢は, 病院46.3歳, 診療所28.7歳と年齢層に違いがみられた。
    2. 主訴は, 病院では外因性によるもの約1/3, 内科的なものが約2/3であった。診療所では半数を超えるものが口腔外科的な訴えであった。
    3. 傷病名は, 病院では重篤なものが多く, 約60%がそのまま入院となっている。診療所では疼痛を伴うものや緊急性を要するものが多かった。
    4. 実施された検査は, 病院では各種全身検査が行われており, 検査の意義や評価について指導医から直接指導を得た。診療所では画像診断が主であるが自験ができていた。
    5. 処置は, 病院においては基本的な救急処置に役立つものの経験ができた。診療所では緊急的歯科処置を習得することができた。
    6. この研修を通じて, 卒後臨床研修の具体的目標の85項目中34項目 (40.0%) について習得する機会を得た。
    以上の結果により, 本研修は臨床研修医のプライマリケア知識・技術の習得および全身状態への理解などにとり有意義であり, 臨床研修目標の達成にも寄与できるものであると考えている。
  • 伊藤 弘人, 赤坂 庸子, 神部 芳則, 塚原 拓, 早坂 純一, 篠崎 泰久, 草間 幹夫, 大橋 一之
    2001 年 10 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2001/08/20
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞や脳梗塞患者では, 再血栓形成を予防するために抗凝固療法を受けていることが多いが, 抜歯などの観血的処置を行う際には後出血が問題となる。しかしワーファリンなどの抗凝固薬投与を中止することにより再血栓形成の危険を招くことにもなる。われわれは基礎疾患への配慮から原則的にはワーファリンを服用したまま抜歯を行う方針としている。
    今回われわれは, ワーファリン服用患者で抜歯を行った51名について, ワーファリンを服用のまま抜歯を行った群, 休薬群, 減量群に分類して抜歯時のトロンボテスト値, 後出血の有無, 止血法について比較検討した。その結果抜歯時のトロンボテスト値の平均が休薬, 減量群では50.0%台で, 服用のままの群では23.2%で抜歯が行われていたが, 後出血はなく, 止血法についても明らかな差は認められなかった。したがって, 通常の抜歯であれば, ワーファリンの服用を減量, あるいは休薬する必要はないことが確認された。
  • 玉田 八束, 大曽根 洋, 毒島 保信, 杉山 あや子, 川井 諭
    2001 年 10 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2001/08/20
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 入院下での血糖値管理を要した糖尿病未治療患者の顎下部嚢胞の1例を経験した。患者は57歳の女性。左側顎下部の腫脹と疼痛を主訴に平成12年8月18日に当科を受診した。血糖値339mg/dl, HbA1c12%, 尿糖 (+++), 尿ケトン (-) で血糖値管理はされていなかった。精査の結果, 左側顎下部嚢胞と診断した。患者は脳血管性痴呆があり在宅下での血糖値管理が困難なため, 入院下に血糖値管理を行った。入院30日後に空腹時血糖値152mg/dl, HbA1c10.1%で安定したため全身麻酔下に嚢胞摘出術を施行した。経過は良好で術後9日で退院となった。
feedback
Top