有病者歯科医療
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5 巻, 2 号
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  • 堀田 博子, 宇佐美 雄司, 桂川 高雄, 各務 秀明, 上田 実
    1997 年5 巻2 号 p. 77-81
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    血友病は多くの場合, 乳幼児期に皮下出血, 関節内出血, 口腔内出血が初発症状としてみられ, まれに口腔内処置を契機に発見される。今回われわれは, 口腔内処置を契機に発見された症例を経験したので, 考察を加えて報告する。
    症例1は41歳男性。某歯科医院にて右側下顎智歯の歯肉切除術を受けた。その後出血を繰り返し, 貧血のため某病院へ緊急入院した。最終的には当病院にて血友病Aと確定診断された (F VIII: C 3.0%)。
    症例2は68歳男性。某歯科医院にて右側下顎中切歯の抜歯処置を受けるも後出血が持続した。翌日当科を受診したが, その後も頻回の後出血をきたした。そして血液凝固検査により血友病Aと確定診断された (F VIII: C 3.1%)。
    また当病院において, 血友病包括医療のため登録されている血友病患者249名を対象に調査を行なったところ, 口腔内の処置を契機に血友病と診断されたのは12名であった。
    歯科処置後の異常出血に対する適切な診断と対処の意外な困難性を認識した。
  • 高木 潤, 渋谷 徹, 丹羽 均, 金 容善, 旭 吉直, 松浦 英夫
    1997 年5 巻2 号 p. 82-91
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我々は, 1975年から1995年にかけての21年間に, 当大阪大学歯学部附属病院において, 全身的な問題を有する患者の歯科治療中の全身管理を行ってきた。そのうち18人はNYHAIII度であると評価され, これは全体の1.2%を占めていた。本文献では, 歯科治療中に適切な全身管理が必要であった3つの症例を呈示する。
    症例1
    本患者の全身的な問題点は, 僧帽弁閉鎖不全症, 陳旧性心筋梗塞, 狭心症, 閉塞性動脈硬化症, 脳梗塞, 慢性腎不全であった。右側下顎中切歯および側切歯の歯周炎による疼痛のため, 同歯の抜歯が予定された。感染性心内膜炎予防のため, 治療の1時間前にアンピシリン1.5gの投与を行った。狭心症発作もしくは全身的合併症にそなえて, 治療直前に静脈路を確保し, 硝酸イソソルビドスプレーの舌下投与を行った。治療中は血圧と心電図のモニターを行い, 5L/Mの酸素投与を行った。抜歯は特に合併症が起こることなく終了した。
    症例2
    本患者の基礎疾患は, 一過性の心室頻拍を伴った拡張型心筋症であった。少なくとも月に1度は意識喪失発作を起こしていた。局所麻酔下での上顎中切歯, 犬歯のレジン前装冠の形成が予定された。血圧と心電図のモニターを行い, 精神的なストレスが循環動態の悪化を引き起こす可能性があったため, 笑気による精神鎮静法を行った。それと同時に静脈路の確保を行った。歯科治療中は, 単源性の心室性期外収縮が0~4回/分の頻度でみられた以外に, 全身的合併症はみられなかった。
    症例3
    本患者は高血圧症, 狭心症, 陳旧性心筋梗塞, 腹部大動脈瘤, 脳梗塞, 慢性腎不全を患っていた。鞄を持ち上げるだけでも胸痛発作を起こしていた。歯周炎の診断のもと, 左側下顎第一大臼歯, 第三大臼歯の抜歯術が予定された。血圧測定後, 心筋虚血性発作予防のため, 硝酸イソソルビドスプレーの舌下投与を行った。歯科治療中, 全身的な合併症はおこらなかった。
    重度の心疾患患者で全身的な合併症を防ぐためには, 適切な全身管理を行い歯科治療を上手に行うことが必要である。
  • 並木 一郎, 嶋田 淳, 林 絵美子, 森 一将, 正田 久直, 中西 徹, 龍田 恒康, 山崎 康之, 永峰 浩一郎, 竹島 浩, 山本 ...
    1997 年5 巻2 号 p. 92-99
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1993年9月から1994年8月までの1年間に明海大学病院口腔外科第一科を受診した新患患者1536名のうち無作為に抽出した1000名の問診表を分析し, 次の結果を得た。
    1. 全体の69.8%の人が歯科疾患が健康に影響すると考えていた。
    2. 全体の48.2%の人が現在医科に通院しながら今回当科に来院していた。
    3. 全体の40.8%が現在何らかの薬物を服用中であった。
    4. 入院経験者は全体の45%を占めた。
    5. 全体の22.6%が現在又は過去において有病者と考えられ, 高血圧, 狭心症などの循環器系疾患が最も多く認められた。
    6. 薬による異常反応経験者は12.6%であり歯科局所麻酔による異常反応経験者は3.4%であった。
    7. 健康診断受診率は63%であり, 特に30歳代以降の主婦層が男性より低受診率であった。
  • 三好 由利子, 原田 直, 蜂須賀 永三, 河野 公彦, 山本 道直, 田中 浩二, 杉山 勝, 石川 武憲
    1997 年5 巻2 号 p. 100-105
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 高齢化社会への急速な進行により, 歯科治療の困難な全身疾患を有する患者が増加している。今回, 1990年~1994年の5年間に医科から当科へ紹介された患者, 特に全身疾患を有する患者について臨床統計的に検討し, 以下の結果を得た。
    1. 全身疾患を有する紹介者は, 40歳台以上の患者が多かった。
    2. 全身的有病者の疾患には, 循環器系や代謝系が多かった。
    3. 口腔外科的処置の紹介例に加え, 全身的有病者の歯科治療は一般歯科では困難との理由から, 当科に対し一般的な歯科疾患の治療依頼も多かった。
    4. 高齢者では, 生理的機能の減弱に伴い, 必然的に有病者患者が増加しているため, 全身疾患の管理下での歯科治療が重要になる。
  • 外来受診患者について
    飯田 啓介, 吉田 憲司, 伊藤 隆子, 豊田 理恵, 塚本 高久, 黒岩 裕一朗, 矢田 浩章, 竹本 隆, 加藤 雅民
    1997 年5 巻2 号 p. 106-113
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1994年4月から1995年3月までの1年間に, 当科外来を受診した患者3, 300名のうち, 有病者は621名 (18.8%) であった。
    性別では, 男性252名, 女性369名で, それぞれの有病者率は, 19.0%および18.7%であった。
    有病者の平均年齢は51.3歳であったのに対し, 受診患者全体では35.4歳であった。
    基礎疾患は, 循環器系疾患が265名(42.7%)と最も多く, 消化器系疾患が140名 (22.5%), 代謝性疾患が93名 (15.0%) などであった。また, 複数の基礎疾患を有する患者は, 124名で有病者全体の20.0%であった。
    当科における疾患別有病者数は, 炎症性疾患が305名 (49.1%) と最も多く, ついで顎関節疾患が63名 (10.1%), 歯牙疾患が52名(8.4%)などであった。
    処置内容は観血的処置を行ったものは, 402名 (64.7%), 非観血的処置が185名 (29.8%) などであった。
  • 旭 吉直, 金 容善, 市林 良浩, 米出 卓平, 松浦 英夫
    1997 年5 巻2 号 p. 114-118
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    トノメトリ法による連続血圧測定装置の有病者の歯科治療における有用性を, 従来のカフを用いたオシロメトリック法による自動血圧計と比較検討した。
    トノメトリ法によって得られた血圧 (TBP) とオシロメトリック法によって得られた血圧 (CBP) の間には強い相関性と一致性が認められた。TBPは, CBPでは間欠的にしか測定できないため追随不可能な歯科治療中の急激な血圧変動を測定できるという点, また, 動脈圧波形が不整脈の評価に役立つという点てCBPより有病者の歯科治療上とくに有用であると考えられた。
  • 俵本 眞光, 森本 佳成, 熨斗 利光, 杉浦 勉, 遠藤 武弘, 中橋 一裕, 堀内 克啓, 杉村 正仁
    1997 年5 巻2 号 p. 119-125
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 平均寿命の延長と社会機構の複雑多様化に伴い, 潜在的な全身疾患あるいは合併症を有する患者の治療にあたることが少なくない。このような社会情勢にあっては他科との医療連携が特に重要と思われる。当奈良県立医科大学附属病院においては, 複数の診療科が兼科で入院治療を行う場合, “共観患者”という表現で協力連携する体制がある。今回, われわれは, 過去14年間における兼科患者について臨床統計的観察を行い, 若干の知見を得たので報告する。
    1981年10月から1995年10月までに当科に入院した患者総数は2932名で, その約10%にあたる293名 (平均年齢31.3歳, 0-82歳) の兼科患者を対象とした。
    兼科は小児科が123名 (42.0%) と最も多く, 次いで, 内科65名 (22.2%), 脳神経外科31名 (10.6%), 救急科28名 (9.6%), 整形外科14名 (4.8%), その他 (10.8%) であった。
    当科疾患別では, 歯ならびに歯周組織疾患が91名 (33.3%) と最も多く, 次いで, 悪性腫瘍77名 (26.2%), 外傷63名 (23.1%), 炎症31名 (10.6%), 嚢胞と奇形がそれぞれ11名 (3.8%) であった。
    今後, 他科との共同治療にあたる機会がますます増加していく傾向にあり, 他科との密接な協力体制が必要であると考えられた。
  • 植田 章夫, 中嶌 哲, 川上 敏行, 千野 武廣
    1997 年5 巻2 号 p. 126-131
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回, 潰瘍性大腸炎のため長期にわたり副腎皮質ホルモン剤を投与されていた潰瘍性大腸炎患者に発生した下唇癌の1症例を経験した。原発巣の制御はなし得たが, 早期に頸部リンパ節転移ならびに遠隔転移が出現し, 死の転機をとった。本症例では副腎皮質ホルモン剤の長期投与が免疫機構に異常をきたし, 転移を含め, その予後に影響をおよぼしたものと考えられた。
  • 中嶌 哲, 植田 章夫, 千野 武廣
    1997 年5 巻2 号 p. 132-137
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    基礎疾患として糖尿病を有する患者に発生した重症歯性感染症の1例を経験した。症例は71歳の女性で, 右側オトガイ部の疼痛および腫脹を主訴に当科を受診した。5〓に起因した頬部膿瘍の診断のもと切開排膿術および種々の抗菌剤投与を行ったが, 膿瘍は側咽頭隙, 側頭隙に波及し, 局所の改善は得られなかった。全身的には, 糖尿病のコントロールが困難となり, 治療開始から59日目に多臓器不全のため死の転帰をとった。
  • 古賀 瑞之, 藤沢 俊明, 木村 幸文, 田中 啓介, 織田 真由美, 福島 和昭
    1997 年5 巻2 号 p. 138-143
    発行日: 1997/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は精神発達遅滞を伴う尿崩症患者の歯科治療における全身麻酔中にデスモプレシンが原因と思われる低ナトリウム血症を経験したので報告する。患者は11歳の男児で5歳の時, 頭蓋咽頭腫を摘出し, その後, 続発性尿崩症のためデスモプレシンにより治療を受けていた。
    当日朝, 通常通りデスモプレシン点鼻後に全身麻酔を行ったが,術中, 本剤が原因と思われる低浸透圧性低ナトリウム血症を生じた。しかし, 低ナトリウム血症は重篤にはならず, 翌日, 無事, 退院の運びとなった。このようなデスモプレシンの副作用を予防するためには術前に水分出納バランス, 血漿浸透圧, 血漿電解質を, 可能であればそれらの日内変動も含め, 十分に把握し全身麻酔管理を行うべきである。しかし, 本症例では精神発達遅滞と高度肥満による静脈確保困難のため術前評価においては, 一時点の検査結果しか得られず, しかも, その採血時刻が適切ではなかったと考えられた。本症例の最善策としては, 麻酔当日の禁食禁水下での水分出納バランスや, 麻酔当日のデスモプレシン投与予定時刻および麻酔維持時間を考慮し, その状況に極力近い条件下で術前検査を行いコントロール状態を評価することが, 周術期のデスモプレシンの副作用予防上望ましいと思われた。
  • 1997 年5 巻2 号 p. e1
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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