有病者歯科医療
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11 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 金 博和, 岡 俊一, 見崎 徹
    2002 年 11 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    橋本甲状腺炎 (甲状腺機能低下症) はすべての年齢層の女性に多く見られる自己免疫疾患の一つである. 臨床症状として徐脈, 心拍出量の低下, 低血圧, 精神活動の低下などが見られる. このような症状をもつ患者にプロポフォール麻酔を行う場合は, 時に発生する覚醒遅延や循環虚脱, 心不全に気をつける必要がある.
    今回我々は, 橋本甲状腺炎とうつ病を持つ53歳女性患者にプロポフォールを用いた全身麻酔を行った. 手術は上顎洞内迷入インプラント除去術であった.
    気管内挿管時に患者の脈拍数が一過性に減少したが, 甲状腺の腫大により迷走神経が喉頭咽頭に近接し, 挿管操作の刺激が加わりやすかったことが原因と考えられた.
    麻酔深度の目安は, 主に術中の循環動態等を指標とした. 手術中の麻酔深度を客観的には把握できなかったが, 特記事項はなく安定していた.
    我々はプロポフォールを用いた全身麻酔は橋本甲状腺炎患者において有用性があると考えた.
  • 金 博和, 岡 俊一, 見崎 徹
    2002 年 11 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 糖尿病, 糖尿病性腎症, 高血圧症, 陳旧性心筋梗塞などを有する96歳女性の全身管理症例を経験した. 抜歯後の治癒不全に対して外科処置が予定されたが, 術前血液検査所見から栄養不良および胃潰瘍からの出血に由来する重度貧血 (Hb7.6) と腎機能障害 (BUN 117.7 クレアチニン2.40尿酸10.6) が明らかになったため, 循環器科に入院させて, 兼科として, 常用薬剤の変更, 中心静脈栄養および輸血などを行った. 全身状態の改善後に笑気吸入鎮静法併用下にて, 左側下顎第三大臼歯部の抜歯窩再掻爬術ならびに左側下顎第一大臼歯残根の抜歯術が施行された.
    本症例は高齢による各臓器機能の低下に併せ, 基礎疾患に糖尿病などを有しており, 摂食制限に伴う栄養不良から糖尿病の悪化に続き腎機能障害の増悪, 胃潰瘍からの出血を併発したと思われた. 今回のような超高齢者に対して観血処置を行う場合は多数の基礎疾患に留意するとともに, 各臓器機能の低下を考慮しながら, 抜歯後の経過にも充分注意する必要があると思われた.
  • 二木 寿子, 西山 英二, 竹崎 博嗣, 安部 喜八郎
    2002 年 11 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 骨髄移植または, 末梢血幹細胞移植前の患者に対する歯科的管理について検討することである. 1994年3月から2000年3月に, 九州大学歯学部附属病院特殊歯科総合治療部を受診した, 白血病, または悪性リンパ腫63症例について調査した. 調査内容は, 当科初診から移植までの日数, 初診時の血液データ, 歯科的問題点と治療内容についてであった. 患者は男性34症例, 女性29症例, 平均年齢は39.0歳 (13~73歳) であった. 63症例中27症例が, 移植前31日以上で当科を初診していた. 白血球数は, 63症例中41症例が5,000/μl未満で免疫低下の状態, 13症例が, 血小板数50,000/μl未満の止血困難な状態であった. 63症例中55症例において, なんらかの歯科的問題点を認めた. 26症例89歯に齲蝕症第2度が認められ, そのうち43歯は充填処置, 2歯の第3大臼歯は抜歯, 残りの44歯は経過観察となった. 歯髄炎と診断された7症例13歯では, 12歯が局所麻酔下で抜髄, 第3大臼歯1歯が抜歯となった. 21症例47歯の根尖性歯周炎では, 13歯が感染根管治療, 21歯が抜歯, 13歯が処置をせず経過観察となった. 12症例24歯の辺縁性歯周炎では, 抜歯, スケーリングや歯面清掃および洗浄などの歯周治療, 経過観察がそれぞれ8歯ずつであった. 齲蝕症第4度・歯根破折歯は13症例23歯に認められ, 21歯が抜歯で, 2歯は経過観察となった. 智歯周囲炎は12症例20歯で, 19歯が抜歯された. 行った歯科治療や, 処置をせず経過観察したことが, BMTやPBSCTを受けた患者の治療結果に何らかの影響を与えたという報告は, 内科主治医から受けなかった. 患者らの年齢が比較的若いことから, 保存治療や歯周治療を的確に行う事で抜歯数を減少させ, また齲蝕や歯周炎の発症, 進行を抑制する目的でも, 移植予定患者をより早期に歯科受診させ, きめ細かい口腔管理を行っていく必要があると思われた. 今後, 内科との連携をさらに強化し, 移植前, 移植期間中, 移植後において, より良い口腔内の状態を維持していけるような体制を作っていく必要があると考えている.
  • 和田 重人, 古田 勲
    2002 年 11 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    セファクロルにより誘発された重篤なアレルギーの1例を本稿において報告する. 患者は上顎骨周囲炎を有する61歳男性であり, 2001年8月13日に近歯科医院からの紹介により当科を初診した. 約1週間の抗生剤投薬により炎症が消退したため, 8月23日に原因歯の抜歯を施行した. 同日, 術後の感染予防のためにセファクロル250mgを内服したところ, 約2時間後から倦怠感および蕁麻疹が出現し, 3時間後に当科を再受診した. 患者は血圧低下と徐脈を伴う中等度のショック状態を呈していた. エピネフリン, ヒドロコルチゾン, 乳酸リンゲル液の投与によりショック状態より回復した. 患者は第6病日に退院した. セラァクロルに対する薬剤添加リンパ球刺激試験は陽性であった.
  • 鈴木 円, 宮田 勝, 岡部 孝一, 高木 純一郎, 田中 眞也, 坂下 英明
    2002 年 11 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    78歳の男性が下顎左側歯肉の直径6mmの腫瘤を主訴に当科を受診した. 患者はかつて腎細胞癌のために右腎摘除術を受けており, 肺転移や多発性骨転移を生じていた. 腫瘤は局麻下に切除された. 切除標本は腎から転移した腎細胞癌の像を呈していた. 腎細胞癌の口腔領域への転移はまれであり, また腎細胞癌による転移性腫瘍の予後は非常に悪い. 自験例も切除後2か月で死亡した. 一般に転移性腫瘍の予後は悪いため, その治療方法の選択にあたっては患者のQOLを考慮することが重要である.
  • 安本 順一, 森本 佳成, 今井 裕一郎, 山本 一彦, 舘林 茂, 桐田 忠昭, 杉村 正仁
    2002 年 11 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 心筋梗塞を有する患者に対し, 低侵襲冠状動脈バイパス手術 (minimally invasive direct coronary artery bypass; MIDCAB) にて冠動脈血行再建を行った後に, 口腔癌の根治手術を施行した症例を経験した. 患者は76歳男性で口底癌を有し, 心筋梗塞でジゴキシンおよびニトログリセリンが投与されていた. 本症例ではMIDCAB後2週間程度で患者の全身状態の回復が見られたため, 悪性腫瘍の根治術を無事に施行することが可能であった. 術後経過は良好であった.
  • 村上 慶, 近藤 壽郎, 入佐 弘介, 高橋 研太朗, 岸田 剛, 伊東 隆利
    2002 年 11 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病および多発性脳梗塞の既往を持つ陳旧性顎関節脱臼に対し, 徒手的整復が困難だったため全身麻酔下で観血的顎関節整復術を行い, 術後義歯による咬合の回復を行った症例を報告する.
    患者は67歳男性. 59歳頃からたびたび顎関節脱臼を起こしていたが近医にて整復可能であった. 平成11年12月中旬, あくび時に脱臼を起こしたが疼痛を伴わなかったためそのまま放置し, 2週間後近医を受診した時には意識下での整復は不可能となっていた. 自発痛ないため半年以上経過した後, 咀嚼障害改善を主訴に当院を受診した. 受診時, 閉口不能および嚥下障害を認め口腔内は臼歯部歯牙の欠損を認めた. またレントゲンで下顎頭の位置は関節結節を越え前方位をとっていた. 意識下での整復処置を行ったが不可能であったため全身麻酔下での整復を計画した. プロポフォール, フェンタニル, ベクロニウムで導入し, 維持は笑気-酸素-プロポフォールで行った. 全身麻酔下においても徒手的整復は不可能であり観血的整復術へと移行した. 術後2週間の開口制限とさらに2週間の開口抑制を行い, その後義歯による咬合回復を行った. 脳梗塞の再発やパーキンソン病の増悪はなく, また1年以上経過した現在でも再脱臼を起こさず経過している.
  • 小島 正彰, 榊原 惇郎, 原 康司, 加納 欣徳, 梅村 長生
    2002 年 11 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2002/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, AML患者の抜歯前後における血液所見の変化を調査し, AML患者14名における抜歯について検討を行った.
    その結果は:
    1. AML患者における抜歯時期は, 寛解期以外の時期であっても, 抜歯が適応と診断されれば十分に可能である.
    2. AML寛解導入中における抜歯では, 抜歯後, 白血球数, 顆粒球数が著しく減少する傾向にあるが, これは, 抗白血病剤によるものと考えられた (Fig. 4, 5). また, このような白血球, 顆粒球減少期にも適切な管理のもと, 重篤な合併症もなく, 抜歯が可能であった (Fig. 3).
    3. AML患者の抜歯前後における, 赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値, 血小板数については変化が認められなかった (Fig. 6~9).
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