有病者歯科医療
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2 巻, 1 号
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  • 伊藤 正夫, 宇佐美 雄司, 金田 敏郎
    1993 年 2 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    名古屋大学医学部附属病院歯科口腔外科では, 総計44例のHIV感染者歯科診療を行っており, その内3例の診療概要を報告し, 本症歯科診療の問題点を検討した。
    症例1
    症例はCD4 95/μl, CD4/CD8比0.28と血液学的データは悪く, 臨床的にはAIDS関連症候群 (ARC) であった。特に前駆症状を示すことなく, 右口狭咽頭炎と口腔底峰窩織炎を発症した。イミペネム1000mg/日とガンシクロビル10mg/日連日点滴投与によって7日後消炎した。右下顎智歯周囲炎に継発する日和見感染と思われた。HIV感染者においては口腔衛生状態の保持に特段の配慮が必要である。
    症例2
    症例は, 重症型血友病A, CD4: 343/μl, CD4/CD8比: 0.26で無症候性キャリアー (AC) であった。3本の智歯同時抜去を施行したが, 一過性に抗第VIII因子抗体が出現し, 止血に難渋した。症例は長期間出血が持続し, 病棟汚染が危惧されたため, 感染防御に特別の対策を考慮する必要に迫られ, 個室収容を余儀なくされた。
    症例3
    症例は, 口腔内に多くの歯科的問題を抱えしばしば感染を生じても, 定期通院ができない感染者であった。通院を阻む最大の理由は, 居住地が遠隔地であることであった。失職の恐れや差別に対する恐怖から, HIV感染の事実を職場に告げることはできず, 歯で入院したり, 遠くの病院へ通うのはおかしいと叱責されることも少なからずあるとのことであった。社会支援の一環として, 歯科医療供給体制の整備は急務である。
  • 第6報 神経・筋疾患, 妊産婦, その他について
    栗田 浩, 馬場 浩雄, 田中 廣一, 小谷 朗
    1993 年 2 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1986年7月より1990年6月までの4年間に当科外来を訪れた7,988名についてretrospectiveに調査し次の結果を得た。
    1) 神経・筋疾患を有した患者は111名で調査期間の外来新患数の1.4%であった。3例 (てんかん2例, パーキンソン症候群1例) で, 顎骨の骨折などの外傷がみられ, これら神経・筋に障害を持つ疾患では外傷が発生しやすいことが推察された。
    2) 妊産婦は27名で外来新患の0.3%であった。来院時の妊娠時期は5から7カ月が14例と過半数を占める反面, 8カ月以上になって来科する患者も多くみられた。有病者全体と比べ直接当科に来院する患者が多かった。歯周組織炎や歯冠周囲炎で来科した症例の割合が高かった。
    3) 薬剤などにアレルギーなどの異常の既往を有する患者が258名と多く, 調査期間の外来新患の3.2%であった。アレルギーの原因薬剤としては抗菌剤が最も多く, ついで非ステロイド系消炎鎮痛剤であった。当科処置後アレルギー様の異常を発現した5例は, 他の薬剤に対するアレルギーの既往を有しており, アレルギーを起こしやすい体質があることが推察された。
    4) 膠源病やその類似疾患を含めた自己免疫疾患は49例あり外来患者の0.6%であった。うち27例はステロイドなどの免疫抑制剤が投与されていた。この49例中10例に易感染性, 治癒不全傾向が認められた。
    5) 麻酔時のトラブルの既往は15例で外来新患数の0.2%であった。30~50歳代の女性が11例とほとんどをしめ, この年代に麻酔時のトラブルがおきやすいと思われた。
  • 1. 外来患者における検討
    桑澤 隆補, 山崎 卓, 岡本 俊宏, 今関 光信, 今村 美紀, 松岡 史朗, 三宮 慶邦, 扇内 秀樹
    1993 年 2 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1990年1月から12月の1年間に東京女子医科大学口腔外科を受診した初診患者は5,487名であり, そのうち2,467名 (45.0%) が何らかの全身疾患を有していた。
    性別では男性1,214名, 女性1,253名であり, それぞれの初診患者の47.9%, 43.1%に相当した。有病者 (medically compromised patient) の平均年齢は48.0歳で, 健常者では34.8歳であった。年代別にみると50, 60歳代に多く, 10, 20歳代では少なかった。受診者数に対する有病者の割合は, 高齢になるに従い増加し, 70歳代では76.9%を占めていた。有病者1人あたりの疾患数では, 単一疾患を有する者1,953名 (79.2%) 複数の疾患を有する者514名 (20.8%) であり, 平均の疾患数は1.26であった。
    傷病分類別では循環器疾患が圧倒的に多く全体の1/3を占め, 次いで内分泌・代謝疾患, 新生物, 消化器疾患, 泌尿器疾患, 精神障害, 呼吸器疾患などの順であった。
  • 1. 他科通院患者について
    清水 潤, 須佐美 英作, 内山 公男, 海老原 務, 岡田 豊, 逢坂 文博, 朝波 惣一郎
    1993 年 2 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1991年1月より12月までの1年間で慶応義塾大学病院歯科口腔外科に依頼にて初診となった他科外来通院患者について臨床統計的観察を行い, 次の結果を得た。
    1) 調査対象は198名で, 男性80名, 女性118名であった。
    2) 年齢別患者分布は, 50歳代が最も多く, 平均年齢は, 45.1歳であった。
    3) 月別患者数は, 2月および8月に多かった。
    4) 依頼科別分布は, 内科が多かった。
    5) 他科疾患別分布は, 循環器疾患が多かった。
    6) 当科疾患別分布は, 齲蝕症, 歯周疾患, 歯髄炎・根尖性歯周炎の順に多かった。
    7) 当科処置内容別分布は, 投薬, 処置不要, 検査の順に多かった。
  • 2. 他科入院患者について
    佐藤 豊彦, 須佐美 英作, 内山 公男, 海老原 務, 岡田 豊, 逢坂 文博, 朝波 惣一朗
    1993 年 2 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1991年1月より同年12月までの1年間に慶応義塾大学病院入院中に歯科口腔外科を受診した初診患者について臨床統計的観察を行い, 次の結果を得た。
    1. 595名中, 男性332名, 女性263名であった。
    2. 年齢別患者分布は, 60歳代が最も多く, 平均年齢は51.3歳であった。
    3. 月別患者数は, 7月が59名と最も多く月平均49.6名であった。
    4. 依頼科別分布では, 男女とも内科, 外科が多かった。
    5. 原疾患別では, 悪性新生物が圧倒的に多かった。
    6. 当科疾患別分布では, 齲蝕症, 義歯関連疾患, 辺縁性歯周炎の順に多かった。
    7. 当科処置内容は, 義歯調整, 修復充填処置, 抜歯, 根管処置の順に多かった。
    8. 往診件数は, 57件 (9.6%) であった。
  • 西野 朗, 丸山 進一郎, 石田 二郎, 牧 雅保, 三浦 誠, 住友 雅人, 古屋 英毅
    1993 年 2 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    局所麻酔薬アレルギーは, 現在では比較的出現頻度の少ない疾患である。特にリドカインアレルギーは, 真性と思われる報告はほとんどされていない。今回われわれはリドカインアレルギーと思われる症例を経験したので報告する。
    患者は20才女性で, 18才時に某歯科医にて抜歯処置時の局所麻酔によって眼瞼が腫脹し視野が狭窄したとのことであった。そこで抜髄処置を施行するにあたり, リドカインを用いた皮内反応テストとLST (リンパ球芽様化試験) を行った。結果は陰性であったので, 静脈内鎮静法下にて, 静注用2%リドカイン3mlで, 局所麻酔を行ったところ, 注射2~3分後に眼瞼腫脹が出現した。その時点では免疫系を介さない局所麻酔薬アレルギーを疑い, 後日, 偽薬によるアレルギーテストを行ったが陰性であった。さらに静注用2%リドカインによる負荷テストを行ったところ, 眼瞼腫脹のみが100%出現した。しかしその他発疹などのアレルギー症状は出現しなかった。そこで今後の治療計画を鑑み, 本症例ではアナフィラキシーショックに移行する危険性は低いと考えられることから, ひとつの試みとして減感作療法を行ったところ, 良好な結果を得られたので, 考察を含めて報告する。
  • 雲野 孝, 山田 隆久, 西田 紘一, 園山 昇
    1993 年 2 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    フィブリノーゲンは, 血液凝固因子のなかでは第一因子とよばれ血液凝固と線溶両系の接点に位置する基質として止血に関する重要な因子である。低フィブリノーゲン血症は, 血中のフィブリノーゲンが低下することにより出血性素因をきたす比較的まれな疾患である。今回, われわれは, 低フィブリノーゲン血症患者の抜歯処置を経験したのでその概要を報告する。
    患者は72歳女性で, L67咬合時の疼痛を主訴に昭和63年4月14日に来院した。
    家族歴としては, 患者以外の親族で出血傾向を有するものは認められない。
    既往歴には, 心臓弁膜症, 狭心症, 胃潰瘍, 高血圧症があり胃潰瘍の術前検査で低フィブリノーゲン血症と診断されている。
    L67慢性歯槽骨炎の診断の許, 昭和63年5月23日入院のうえ術前, 術後にヒト血液200ml由来の新鮮凍結血漿を輸注し局所麻酔下でL67抜歯手術を行った。
    術前のフィブリノーゲン量は39mg/dlであったため新鮮凍結血漿を5単位輸注したところフィブリノーゲン量は74mg/dlと上昇した。
    出血性素因に関する検査結果も改善が図られたので通法にしたがってL67抜歯手術を行った。抜歯後, 酸化セルロース製剤の填入と縫合処置を行い止血シーネを使用することで良好な止血状態が得られたが, 術後のフィブリノーゲン量の低下を考慮し, 新鮮凍結血漿を2単位輸注した。以後後出血もなく良好な治癒経過が得られた。
  • 小笠原 健文, 白川 正順, 坂井 陳作, 岩本 正生, 野村 健, 宮原 康郎
    1993 年 2 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年薬剤の進歩, 口腔衛生の向上により口腔外科領域における重篤な感染症や顎骨骨髄炎は減少している。しかし, 慢性顎骨骨髄炎は, 抗菌剤が発達, 普及した現在でもしばしば遭遇する疾患の一つである。
    今回筆者らは長期透析療法患者の上下顎に広範囲に生じた難治性顎骨骨髄炎性であるためでその概要を報告する。
    一般に透析患者は, 低栄養, 免疫能低下により易感染性となり口腔感染症でも重篤な症状を惹起することが多い。自験例は, 49歳女性で上下顎の広範囲におよぶ歯肉膿瘍, 右側頬部膿瘍を併発し, その後頬部痩孔を継発した。齲歯も少なく, 歯槽骨に病巣が限局していたこと, 口腔衛生状態も極めて不良なことから, 歯周感染が最も疑えた。
    治療方針としては, X線学的に腐骨形成は広範囲であるものの浅在的, 境界明瞭であったことから, 短時間の手術も可能と考え, 局麻下による腐骨除去術を施行した。その結果術後何の全身的トラブルもなく創部治癒も順調に経過し, 痩孔の縮小をみた。
    現在, 補綴処置も終了し, 日常生活は何ら支障なく楽しい食生活が営まれている。
  • 市原 三千子, 大野 彰彦, 立本 行宏, 尾崎 登喜雄
    1993 年 2 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1983年から1988年にかけて病院及び診療所等, 外部から紹介された1312人の外来患者を対象に, 紹介者, 紹介理由, 合併した系統的疾患, 紹介された疾患及びそれに対する紹介医の診断について統計学的に検討した。その結果, 次の如き結果が得られた。
    1. 対象の中で, 950人は歯科医から, 93人は内科医により, 83人は整形外科医によって, 61人は外科医から, 57人は耳鼻科医から, そして35人は, 小児科医によって紹介された。
    2. 紹介の理由としては, 複雑な歯牙の抜歯, 全身的な合併症を有する人の抜歯, さらにはその病気の診断と治療の依頼であった。これらの中で, 埋伏智歯を除き, 感染症が168例と一番多く, 次いで嚢胞の165例, 腫瘍の52例, そして口腔粘膜疾患の35例と続いていた。
    3. 内科医は主に感染症と少しばかりの粘膜疾患及び腫瘍患者を紹介していた。整形外科医の紹介はほとんどが外傷と顎関節症であり, 耳鼻科医からの紹介は多くの疾患からなっていた。
    4. 紹介理由となった系統的な疾患の中では, 心循環器系疾患が67例と最も多く, 次いで, 出血傾向の23例, 代謝性疾患の17例, ショック14例, アレルギー11例, 肝機能障害及び免疫異常の8例と続いていた。
    5. 歯周組織の疾患, 外傷及び顎関節症はほとんど正確に診断されていた。しかしながら, 嚢胞の約半数は誤って診断され, そして他の多くの疾患は当科受診までに診断が下されていなかった。
    これらの結果は, 口腔外科医と医師及び一般歯科医師とにおける今以上の強調の必要性を示すと同時に, 医師及び歯科医師の口腔疾患に対する今一層の知識修得の必要性を示しているように思われた。
  • 糖尿病医療における問題点を中心に
    瀧田 正亮, 西川 典良, 西山 知英, 高田 静治, 作田 正義
    1993 年 2 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 1993/10/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者は年々増加傾向にあり, 現在わが国での40歳以上の成人における有病率は約10%と推定されている (1988年~1990年の日本糖尿病学会疫学データ委員会調査報告) が, この数値は歯科・口腔外科においても看過できないものである。
    医療管理下にないあるいはコントロール状態の悪い糖尿病患者では, 口腔領域においても重篤な急性炎症を併発しやすく, 歯科医の立場からも厳重な注意と対応が要求される。
    今回我々は, 顎口腔領域の急性炎症を併発して当科に来科した糖尿病患者3例を提示し, 口腔外科の立場から「糖尿病医療における問題点」についての検討を行った。
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