有病者歯科医療
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7 巻, 2 号
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  • 第1報. 50歳以上の有病口腔外科患者の服薬状況について
    田中 正司, 西田 絋一, 石垣 佳希, 秋山 真一, 服部 理恵子, 白川 正順
    1999 年7 巻2 号 p. 49-52
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年、有病歯科患者の歯科受診機会が増加する傾向にあり, 何らかの全身疾患に罹患していることがそれ程特殊な状況ではなくなってきた。筆者らは歯科患者の罹患疾患を確実に把握する手段の1つとして患者が現在服用している薬剤を調査する方法が有用ではないかと考え, 1996年11月から12月にかけての2か月間に当科を受診した初診患者への問診から, 何らかの薬剤を服用している50歳以上の有病歯科患者がどのような薬剤を服用しているかを調べ次の結果を得た。
    1) 50歳以上の31名を対象とした薬剤調査を行った。
    2) 1人当たりの服用薬剤数は約4.0剤であった。
    3) 最も多い薬剤は循環器官用薬であり, 次いで中枢神経系用薬, 消化器官用薬の順であった。
    4) 有病歯科患者の病態を把握するのに薬剤調査は有用であると考えられた。
    5) 服薬状況を知るには薬剤情報提供書の積極的な利用が有用であると考えられた。
  • 高田 実, 新美 直哉, 熊谷 康司, 各務 秀明, 重冨 俊雄, 林 常敏, 上田 実
    1999 年7 巻2 号 p. 53-57
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは再生不良性貧血, 特発性血小板減少性紫斑病を有している患者に抜歯を施行する際, 血小板輸血を行うも血小板数の上昇が十分認められなかった2症例を経験したので, その概要を報告する。
    症例1は血小板を輸血するも血小板の上昇が認められず, これは頻回の輸血によりHLA抗体が産生されていると考えられたため, HLA適合血小板の輸血とG-CSFとエリスロポエチンの併用療法により止血が可能であった。症例2においてはγ-グロブリンおよび濃厚血小板を用いるも血小板数の上昇が認められないため, ステロイド投与と血小板の輸血および局所止血の管理により止血が可能だった。
  • 森本 佳成, 杉村 正仁
    1999 年7 巻2 号 p. 59-63
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    著者らは, 米国における数カ所の大学歯学部および病院歯科において, HIV感染者の口腔管理の現況について研究した。以下に結果を示す。
    1. HIV感染に関連する口腔症状は, 最近減少してきている。それは, HAART療法と日和見感染症の予防が普及したことによる。
    2. HIV感染者に対する全身管理, 感染防御および歯科診療の変更については, すでに確立されている。
    3. 大学歯学部の学生は, HIV感染者の口腔症状の治療や歯科治療の変更について教育されている。また彼らは, 卒業前にこれらの患者を治療する経験を有する。
    4. 日本においても, 卒前・卒後の歯科医師に対する教育により, HIV感染者に対する歯科的サービスは向上するにちがいない
  • 小澤 一嘉, 又賀 泉, 佐藤 光, 土川 幸三
    1999 年7 巻2 号 p. 65-75
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年末期癌患者の多くが病院で死亡している現実に対し, 人生の最期は自宅の畳の上で迎えたいと希望する患者が増加している事実より, 在宅ケアの必要南生が問われている。また, QOLの向上, ターミナル・ケアの充実のためには, 在宅ケアの必要性が不可欠と考えられ, 在宅看護への行政の取り組みも盛んになってきており, 看護ステーションの設置などによって患者・家族のニーズに答えていこうとする運動が起こっている。しかし, 末期癌においては在宅における疼痛管理に限界があるという問題の他に, 呼吸器や消化器の門戸である口腔という解剖学的に特殊な部位に発生する口腔癌の末期癌患者の在宅ケアには, 出血に対する管理, 気道の確保や食事などの栄養管理の上でいくつかの間題を抱えている。そこで今回私達は, 在宅ケアを実践した在宅死の2症例を中心に, 口腔癌末期患者の在宅ケアの可能性について検討を行い報告した。在宅治療を成功させるためには, まず本人・家族の強い希望があること, 緊急時の受け入れ病院の確保ができていること, さらには24時間体制での家族からの電話相談に応対できること等が重要と考えられた。
    また, 在宅ケアの実施を阻害する因子としては, 口腔癌末期患者の特殊性という問題以外に, 採算性の問題, 介護する家族を支援するシステムの整備が十分でないこと, ホームドクターがいないこと, 器械・器具の用意が煩雑であるばかりでなく, その取り扱いにおいて介護する家族に負担がかかること等から, 実施にあたっては尚慎重な対応が要求されるものと思われた。
  • 岩城 太, 河合 峰雄, 足立 裕康, 田中 義弘
    1999 年7 巻2 号 p. 77-82
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎は基礎的心疾患を有する損傷をうけた心臓弁や心内膜に感染が生じることによって発症する。その原因は, 抜歯などの歯科治療後の一過性の菌血症によることが多いと言われている。
    今回われわれは, 感染根管治療により感染性心内膜炎を生じた僧帽弁閉鎖不全症の1例を経験したので報告する。
    患者は45歳の男性で, 以前から僧帽弁閉鎖不全を指摘されていた。1991年6月4日, 某歯科医院にて左側下顎第一大臼歯の感染根管治療を受け, その後同部歯痛および周囲歯肉の腫脹が数日間持続した。6月26日より微熱, 全身倦怠感が持続したため神戸市立中央市民病院内科を受診した。血液生化学検査および心エコー所見から感染性心内膜炎が疑われ緊急入院となった。入院後, 血液培養によりγ-hemolytic streptococcusが検出され, 約2か月間の静脈内抗生剤投与により症状は寛解した。先天性や後天性心疾患を有する患者に対して歯科治療を行う場合, 感染性心内膜炎予防のため適切な処置と対応, 特に, 術前の抗生剤予防投与が必要であると考えられた。
  • 伊東 節子
    1999 年7 巻2 号 p. 83-89
    発行日: 1999/08/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    神経原性筋萎縮症例の言語障害および治療について報告した。症例は55歳, 女性, 1982年10月, 話しにくいという主訴で第1内科から言語治療室に紹介された。軟口蓋の形態は問題を認めなかったが, 可動性は低かった。呼気鼻漏は顕著に認められ, 言語は開鼻声を示した。言語病理診断は後天的鼻咽腔閉鎖不全による言語障害, 治療は軟口蓋挙上装置の装着および機能訓練を指示した。翌11月軟口蓋挙上装置を製作した。1983年1月, 軟口蓋挙上装置装着時では開鼻声は消失し, また/p/構音時におけるサウンドスペクトログラムにおいても正常パターンであり, スパイクフィルを認めた。装着後9か月時来院の際, 同装置は患者によって既に撤去されていた。その撤去後の言語機能は言語機能検査, サウンドスペクトログラフおよびフローネイザリティグラフで検査し, その結果正常言語の再獲得を確認した。以上, 神経原性筋萎縮症例では開鼻声を発現し, その治療として軟口蓋挙上装置を装着した。症例は正常言語習得後その撤去が可能であった。
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