近年末期癌患者の多くが病院で死亡している現実に対し, 人生の最期は自宅の畳の上で迎えたいと希望する患者が増加している事実より, 在宅ケアの必要南生が問われている。また, QOLの向上, ターミナル・ケアの充実のためには, 在宅ケアの必要性が不可欠と考えられ, 在宅看護への行政の取り組みも盛んになってきており, 看護ステーションの設置などによって患者・家族のニーズに答えていこうとする運動が起こっている。しかし, 末期癌においては在宅における疼痛管理に限界があるという問題の他に, 呼吸器や消化器の門戸である口腔という解剖学的に特殊な部位に発生する口腔癌の末期癌患者の在宅ケアには, 出血に対する管理, 気道の確保や食事などの栄養管理の上でいくつかの間題を抱えている。そこで今回私達は, 在宅ケアを実践した在宅死の2症例を中心に, 口腔癌末期患者の在宅ケアの可能性について検討を行い報告した。在宅治療を成功させるためには, まず本人・家族の強い希望があること, 緊急時の受け入れ病院の確保ができていること, さらには24時間体制での家族からの電話相談に応対できること等が重要と考えられた。
また, 在宅ケアの実施を阻害する因子としては, 口腔癌末期患者の特殊性という問題以外に, 採算性の問題, 介護する家族を支援するシステムの整備が十分でないこと, ホームドクターがいないこと, 器械・器具の用意が煩雑であるばかりでなく, その取り扱いにおいて介護する家族に負担がかかること等から, 実施にあたっては尚慎重な対応が要求されるものと思われた。
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