有病者歯科医療
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16 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 柴崎 浩一
    2007 年16 巻3 号 p. 123-130
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    歯科疾患と糖尿病や虚血性心疾患との関連性など, 近年の歯科医学は口腔内や頭頸部だけに限らず, 全身疾患を念頭におきつつ治療にあたる必要性に迫られている.
    1) 脳血管障害: 脳梗塞, 脳出血, くも膜下出血, 一過性脳虚血発作などがあり, 抗凝固薬や抗血小板薬を含む多くの薬剤を服用していることが多い. また, 寝たきり状態になる代表的な疾患であり, 誤嚥性肺炎に注意する必要がある.
    2) 虚血性心疾患: 狭心症ならびに急性心筋梗塞であり, 肥満に代表されるメタボリック症候群との密接な関連が注目されている.
    3) 慢性呼吸不全 (COPD) : 近年, 気管支喘息, 慢性気管支炎, 肺気腫などによるCOPDが増加している.
    4) 糖尿病, 肥満, 高脂血症: 最も注目されているメタボリック症候群の基本病態である.
    5) 肝疾患: 肝硬変症は未だ有効な治療法はなく, 肝不全や凝固障害による出血傾向を伴うため特に注意を要する疾患である.
  • 永合 徹也, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2007 年16 巻3 号 p. 131-135
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    口腔外科手術後にデクスメデトミジン (Dex) の持続投与により鎮静を施行した12例を経験し, その投与方法について検討した. 症例は男性9名, 女性3名の12例であり, Dexの平均初期投与量3.5±1.2μg/kg/h, 平均維持投与量0.2~0.5μg/kg/h, 平均総投与量494.9±263.2μgであった. 12例のうち2例で急激な血圧上昇が認められた. 1例は, 術後140/80mmHg, 90回/minであったバイタルサインが, 初期投与量を6μg/kg/hで開始したところ, 160/110mmHgまで血圧が上昇したため0.6μg/kg/hに減量した. 他の1例も開始時140/80mmHg, 90回/minであったバイタルサインが, 初期投与量を6μ9/kg/hで開始したところ, 165/90mmHgまで血圧が上昇したため0.6μg/kg/hに減量した. 今回のように全身麻酔後に投与する場合は初期投与量を調節し, 呼吸循環に十分注意し維持投与量を調整することが必要であると考える. 今回われわれの12例の術後全身管理経験から, 術後鎮静を目的としたDexの初期投与量は3μg/kg/hで20分間, 維持投与量は0.2~0.7μg/kg/hが適当であった.
  • 佐藤 健彦, 村西 京一郎, 北川 栄二, 北川 善政
    2007 年16 巻3 号 p. 137-141
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    骨髄線維症は骨髄の線維化, 脾腫, 白赤芽球症, 骨外造血を特徴とする疾患である. その原因は不明であり, 骨髄の線維化は腫瘍性に増殖した骨髄造血器細胞から放出されるサイトカインにより, 線維芽細胞が反応性に増殖することによると考えられている.
    今回, 筆者らは骨髄線維症患者に認められた下顎骨骨髄炎を経験したので報告する. 症例は55歳男性. 左下顎臼歯部の自発痛, 接触痛を主訴に北斗病院歯科口腔外科を初診. 初診時, 全身状態は不良で, 眼瞼結膜には貧血傾向を認めた. 顔貌は左下顎部に腫脹を認め, 左オトガイ神経支配領域に知覚異常を認めた. 口腔内所見では左下顎臼歯部歯肉頬移行部に周囲に発赤を伴う潰瘍を認め, 潰瘍底部には骨露出を認めた. 以上の所見より, 左側下顎骨骨髄炎と診断し, 入院下に消炎処置, 栄養管理を行った. 全身状態が比較的安定している時期に適宜輸血を行い, 抜歯術を施行した. 入院経過中に肺炎を認め, 骨髄線維症のAML (acute myelogenic leukemia) への転化も考慮し, 他院血液内科に転院となった. 転院後全身状態の改善を待って, 残存歯の抜歯と腐骨除去を行った. 以後, 口腔内症状は再燃することなく経過していたが, 血液内科で肺炎の加療中に脳出血によって死亡した.
  • 岡本 俊宏, 佐々木 亮, 小宮 千幸, 深田 健治, 安藤 智博, Tadahiro Arakawa, 扇内 秀樹
    2007 年16 巻3 号 p. 143-147
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 習慣性顎関節脱臼に対し関節結節切除術を施行した症例を経験したのでその概要を報告する. 症例は56歳女性で脳腫瘍治療後に認知障害が生じ, 両側習慣性顎関節脱臼をきたした患者である. 術前の3D-CTでは両側の下顎頭は関節結節の前方に位置していたが骨変化などは認めなかった. 治療法として全身状態を考慮し上関節腔に自己血注入量法を行ったが奏功しなかったため, 全身麻酔下に関節結節切除術を施行した. 術中に開頭生検時の術野に含まれていた片側の側頭筋に著明な萎縮を認めた. 現在術後6か月経過しているが, 再脱臼は認められず良好に経過している.
    顎関節脱臼の治療法の選択に際しては, 患者の社会的背景, 病因, 病態など十分な診査が重要であると思われた.
  • 中村 広一
    2007 年16 巻3 号 p. 149-154
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    若年の統合失調症患者にみられた抗精神病薬 (ハロペリドール) 由来の錐体外路症状に起因する薬物性開咬の2年半にわたる臨床経過を追跡した. その観察の結果, 1. 本病態が原因薬物の服用中は持続すること, 2. 薬物の減量に伴って軽快し中止により治癒することが確認された. 統合失調症の好発時期にある若年者の咬合治療に関わる歯科医師にとって, 本病態の知識は必須と考える.
  • 秋山 麻美, 永合 徹也, 山田 希, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2007 年16 巻3 号 p. 155-158
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は術前検査で予測し得なかった挿管困難で緊急気管切開を余儀なくされた症例を経験した. 70歳, 男性. 口底腫瘍の診断のもと全身麻酔下での腫瘍摘出術が予定された. 酸素, 笑気, セボフルランを用いた緩徐導入後, 喉頭展開し経鼻挿管を試みたが, チューブを声帯部より先に挿入できず気管支ファイバーで確認したところ声帯の肥厚が認められた. チューブ挿入は不可能と判断し, 緊急気管切開を施行した. 気管切開施行時, 換気に問題はなく, 術中, 呼吸器系に異常はなかった. 術後, 気管カニューレによる呼吸管理とし, 声帯の肥厚が軽減した事を確認し抜去した. 挿管困難の原因は多種多様で予測が困難な場合もある. 本症例では, 長期間の喫煙に起因したラインケ浮腫が疑われたが不測の事態における迅速かつ的確な対応についての重要性を再認識させられた症例であった.
  • 山田 希, 秋山 麻美, 廣澤 利明, 高橋 靖之, 永合 徹也, 大橋 誠, 藤井 一維, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2007 年16 巻3 号 p. 159-163
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    抗血栓薬を服用中の患者に対して抜歯や手術を行う際に, 内服薬を中止するか, 継続したままで行うか, 対応に苦慮することも多い. 今回われわれは, 術前検査の結果, 出血時間の著明な延長を認めたが, 抗血小板薬の内服を継続して観血的処置を施行した1例を経験したので報告する.
    患者は73歳, 男性. 右側下唇粘膜部から頬粘膜部にかけての腫脹と疼痛を主訴に来院した. 同部に義歯維持装置が迷入しており, 摘出術が予定された. 既往歴に狭心症, 脳出血, 脳梗塞があり, アスピリン, チクロピリジンによる抗血小板療法を受けていた. 術前検査で出血時間が20分以上と延長を認めたが, 全身状態, 処置内容ならびに, かかりつけ医への対診結果を勘案し, 抗血小板薬服用下での静脈内鎮静法を施行し義歯維持装置を除去した. 術後, 異常出血や血栓塞栓症などの合併症は認めなかった.
    患者の全身状態にあわせて十分な周術期管理計画の立案が肝要であると考えられた.
  • 大橋 誠, 高橋 靖之, 永合 徹也, 藤井 一維, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2007 年16 巻3 号 p. 165-169
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    サラセミアは溶血性貧血を呈する先天性のヘモグロビン異常症で, 日本ではまれな疾患である. 我々は, サラセミアを併発したダウン症候群患者の歯科治療において, 行動調整に全身麻酔法を選択した. 患者は20歳, 男性. 身長155.0cm, 体重72.5kg. 出生直後にダウン症候群およびサラセミアと診断された. 術前検査で小球性低色素性貧血を認め, 低酸素状態に対する予備力の低下が予測された. 全身麻酔は経鼻気管挿管し, 笑気+酸素+セボフルランで行った. 術中に問題はなく, 無事予定処置を終了した. サラセミアを有する患者に全身麻酔を施行する際には, 術前検査から, 正確な貧血症状の把握と全身に対するその影響を十分に見定める必要がある.
  • 櫻井 博理, 小林 武仁, 濱本 宜興
    2007 年16 巻3 号 p. 171-178
    発行日: 2007/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    当科外来手術後の長期ステロイド服用患者に発症した, 内因性真菌性眼内炎の1例を経験したので報告した. 患者は25歳の女性. 多発性硬化症にて約8年間, ステロイドを内服していた. 顎口腔ジストニアによる開口障害の治療を目的に, 当科入院となった. 術後にIVHにて栄養管理を行っていたが, カテーテル敗血症を発症した. その後, 肺真菌症を発症し, 内科を対診となった. MCFGの投与開始9日目に内因性真菌性眼内炎を発症した. 眼科より抗真菌薬をMCFGからVRCZに変更との指示であった. 抗真菌薬の変更後に, 肺真菌症ならびに内因性真菌性眼内炎は軽快した. 担癌患者, 免疫抑制剤使用患者, 中心静脈栄養管理下の患者において, 深在性真菌症の可能性を念頭に置いた管理と, 発症時には当該科への迅速な対診が必要と考えられた.
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