熊本市立熊本市民病院リウマチ科外来に通院し, 歯科診療を希望する慢性関節リウマチ (RA) 患者212名を対象として, 総合診療録を詳細に調査し, 診療前の状態について臨床的検討を加え, 以下の結果を得た。
1) 合併症として, 問診では93名があると答え, そのうち高血圧が30名と最も多く, 次いで胃潰瘍23名の順であった。実際には140名が主に内科的疾患で, 本院内外で加療を受けており, そのうち胃潰瘍が45名と最も多く, 次いで高血圧35名の順であった。
2) 薬剤に関しては, 一人平均4.73種類が使用されており, 非ステロイド性抗炎症剤は151名, ステロイド剤は113名, 抗リウマチ剤は117名に対してそれぞれ使用されていた。
3) 血色素量において67名が異常値を示し, アルブミンで63名, 尿素窒素で64名, クレアチニンで69名, 血清鉄においては160名が異常値を示した。その他では, 心電図検査がなされた102名のうち44名に異常が認められた。
4) ステロイド剤使用・不使用別の臨床検査では, 白血球数と血清鉄においてP<0.001でまた血小板数においてP<0.01で, その平均値に有意差を認めた。さらに白血球数, アルブミンと血清鉄において正常値を示すものと異常値を示すものの出現にP<0.005での有意差がみられた。
以上より, RA患者の歯科診療にあたり, 問診を充実させるとともに, リウマチ科医師と緊密に連携を図り同科で実施された臨床検査結果, 治療内容を十分に把握することの重要性が認識された。
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