有病者歯科医療
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12 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 丸岡 豊, 三枝木 友美, 稲田 穣, 小村 健
    2003 年12 巻3 号 p. 139-145
    発行日: 2003/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは進行性化骨性筋炎を有する21歳女性患者の歯科治療を経験したので, その概要を報告する.
    主訴は開口障害と6〓の疼痛であった. 化骨性筋炎の症状が初めて現れたのは6歳の時で, 7歳時, 生検により進行性化骨性筋炎と診断された. 12歳時, 開口障害が出現し, その後も全身的に骨化が進行した. 2001年9月20日頃より6〓に自発痛が出現したため, 某歯科口腔外科を受診した. 開口障害の治療として, 全身麻酔下での骨性癒着部の離断術を勧められた. セカンドオピニオンを求めて当科を受診した. 全身状態と予備力低下のため全身麻酔は不可能と判断し, 患者の同意のもと, 6〓の抜歯術のみを施行した. 抜歯部は通常の治癒経過をたどり, 現在も経過観察中である. このような全身疾患を有する患者の歯科治療に際しては, 全身状態や疾患の本態を十分に把握したうえで治療方針を立てる必要があると考えられた.
  • 未治療心房細動症例
    渡邉 悟朗, 濱田 良樹, 山本 竜, 原 禎幸, 丸山 誠二, 溝越 俊二, 澤 裕一郎, 宮城島 俊雄, 瀬戸 皖一
    2003 年12 巻3 号 p. 147-152
    発行日: 2003/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    未治療の心房細動を有する患者に対するスケーリング後に脳塞栓症状を発症した症例を経験した. 症例は61歳の男性で4〓部歯肉腫張を主訴に近歯科医院を受診. 同部の歯肉膿瘍と診断され消炎処置後, 血圧および脈拍のモニター下にて, 全顎的なスケーリングを予定された. 問診で患者が「不整脈があったが, 特に治療の必要もなく, 問題ないと言われている. 」とコメントしたため, 医科対診の必要はないと判断された. スケーリング施行中, 局所麻酔時に血圧上昇はあったが, スケーリング中の血圧は安定していた. スケーリング後約1時間経過した時点で, 右側咽頭部のしびれ感, 右側上下肢の運動不全を生じたため藤枝市立総合病院歯科口腔外科を受診した. 初診時の臨床所見より, 発作性心房細動による脳塞栓症と疑診し, 脳神経外科ならびに循環器科対診のうえ, 早急に抗血栓療法を行った. その結果, 1週間で症状は消退し, 6か月経過した現在, 循環器科の通院管理下に, 後遺症を残すことなくADLは保たれている.
    本症例におけるスケーリングと脳塞栓症との因果関係は明らかではないが, いわゆる有病者の歯科治療を行う際には, 医科担当医との連携を図り, 患者の基礎疾患の病態について把握し, 不測の事態が発生した場合にも早急に対処できる体制を確立しておくことが重要であると考えられた.
  • 江田 哲, 鈴木 円, 重松 久夫, 馬越 誠之, 濱尾 綾, 鈴木 正二, 坂下 英明
    2003 年12 巻3 号 p. 153-158
    発行日: 2003/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    顎関節脱臼の誘因には精神障害や脳血管障害, パーキンソン病があるといわれている. われわれは脳梗塞患者の習慣性顎関節脱臼に対して外科的治療を行ったので報告する. 患者は73歳, 女性で閉口不能を主訴に東邦病院歯科口腔外科を受診した. 両側顎関節前方脱臼の臨床診断にてHippocrates法による整復を行った. その後も脱臼をくり返したためチンキャップにより再脱臼防止を図ったが, 効果はなかった. そのためLeclerc法に準じた両側顎関節前方障害形成術を施行した. 術後約9か月を経過したが再発の徴候はない.
  • 湯村 直子, 大曽根 洋, 玉田 八束, 毒島 保信, 杉山 あや子
    2003 年12 巻3 号 p. 159-164
    発行日: 2003/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 多数歯に及ぶ歯性病巣が原因と思われる感染性心内膜炎 (infective endocarditis: 以下IE) から, 僧帽弁閉鎖不全症 (mitral regurgitation: 以下MR) を併発し, 人工弁置換術へいたった症例を経験した. 患者は32歳の女性で, IEにて東京都立墨東病院感染症科に入院中, その感染源として口腔内病巣が疑われ, 歯科口腔外科へ精査依頼された. 口腔内には全顎に及ぶ連結暫間補綴物が装着され, 補綴物を除去すると残存歯はいずれも残根状態であった. 歯性病巣起因菌が原因と思われるIEの診断にて抜歯治療を勧めるも患者から治療を拒否され, 歯科未治療のままIEが緩解し43日後に退院となった. 退院4か月後, IE後のMRに進展して再入院となり, 人工弁置換術の術前処置として残存歯をすべて抜歯した. 処置後, 人工弁置換術施行され経過良好にて入院58日後に退院となった.
  • 中塚 厚史, 内山 麻由子, 小池 剛史, 小林 啓一, 栗田 浩, 倉科 憲治
    2003 年12 巻3 号 p. 165-169
    発行日: 2003/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    抜歯後の異常出血を契機に多発性骨髄腫が発見された1例について報告する. 患者は75歳, 女性. 上顎大臼歯部の違和感を主訴に2003年8月■日当科を受診した. 前医で抜歯後出血があったので出血傾向について検査を行い, 出血時間, PT, APTT値の延長を認めた. 左右上顎大臼歯と左下側切歯を抜歯したところ, 右上顎大臼歯部からの持続的な出血を認めた. 入院後の追加検査にてIgAの上昇を認め, 骨髄穿刺にて形質細胞が多数認められIgA型の多発性骨髄腫と診断された. またCT検査にて右上顎大臼歯部に骨欠損像を認めた. 臨床症状と検査結果から, 右上顎部に骨髄腫が存在することが示唆され, これが原因で抜歯後の異常出血が生じたと考えられた.
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