1999年4月より2001年12月までに横浜市緑区歯科医師会が歯科訪問診療を実施した介護老人保健施設入所者84名, 居宅者119名の総数203名を対象に全身疾患と服薬状況について調査検討を行った.
全身疾患の平均罹患数は, それぞれ3.5±1.1 (mean±SD), 2.3±1.3で, 疾患名すべてで介護老人保健施設入所者の罹患率が高かった. 脳血管障害, 心血管障害, 代謝障害の評価は, 歯科訪問診療での全身管理に重要であり, とりわけ高血圧症が多くみられた.
薬剤服用率は, 介護老人保健施設入所者96.4% (81名), 居宅者54.6% (65名) と高く, 多剤を服用しており薬物相互作用に注意が必要であった. 1人あたりの平均服用数は, それぞれ4.3±2.8, 3.2±3.8であった. 循環器用剤の種別はおもに血管拡張剤, 血圧降下剤, 利尿剤であり, 降圧剤が最も多く服用されており, 介護老人保健施設入所者ではCa拮抗剤が46.9%, 居宅者では利尿剤が31.8%服用されていた.
高血圧症の既往者の70%以上で循環器合併症を有し, それぞれ71.8% (28例), 73.6% (28例) と高く, 脳梗塞後遺症が主であった. 高血圧症者の代謝合併症は糖尿病, 高脂血症, 高尿酸血症であった.
高齢者人口の増加に伴い, 有病患者もまた増加している. 罹患疾患, 服薬内容の分析は全身状態を評価するうえで問診を補う有効な手段である. 安全な歯科訪問診療の励行には, 服薬情報を含めた詳細な全身状態の評価が重要であることが示唆された.
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