有病者歯科医療
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14 巻, 1 号
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  • 中村 広一
    2005 年14 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    抗精神病薬の副作用としての錐体外路症状との関連が窺われた顎口腔症状を有する85例 (男性42例, 女性43例, 平均37歳) について臨床的検討を行った. 対象の68%が分裂病 (統合失調症), 14%が薬物依存症であった.
    結果は以下のごとくである.
    1. 顎口腔症状としては, 歯痛 (44%), 咬合違和感 (25%), 不正咬合 (18%) が多く, 他に義歯関連の不調 (7%), 顎関節脱臼 (2%), 顎関節痛 (2%) および歯の動揺 (2%) があった.
    2. 対象への対応方法としては, 経過観察が79%を占め, 他に義歯調整, オクルザールスプリントおよび咬合調整を適用した.
    3. 対応期間としては「4週間以内」が67%を占めた. 歯痛症例に比べ不正咬合に対する対応期間が長い傾向にあった.
    4. 対象中, 症状の消失が61%, 軽快が7%であった. 症状別にそれらの頻度をみると, 歯痛73%, 咬合違和感72%で, 不正咬合は40%であった.
    5. 検討対象とした抗精神病薬では, ハロペリドール (39%) とリスペリドン (21%) の2種類が過半数を占めた. フェノチアジン誘導体あるいはブチロフェノン誘導体の投与症例が全症例の52%を占め, 不正咬合や顎関節脱臼は主としてこれらの薬物と関連していた.
  • 第1報: システムの紹介と口腔細菌検査の活用状況
    松下 文彦, 薗田 直志, 内山 佳之
    2005 年14 巻1 号 p. 9-19
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    総合病院において導入された, チーム・アプローチによる口腔ケアシステムについて紹介し, 当科としての評価を加えた.
    対象は, 全員, 意識障害あるいは著しいADLの低下により, 口腔のセルフケアが困難となったもので, 1998年6月から2004年6月までに, 772人 (平均年齢72.9歳) に対して口腔ケアに関わった. 当院のシステムでは, 4人の歯科衛生士がローテーションで勤務表を組み, 常時ほぼ3人が病棟にいて, 口腔ケアの実践や家族指導を行っている. 十分な時間をもち, かつプロフェッショナルなケアが行える当システムは, 患者の口腔環境の著しい改善を招くことができる. さらに, 定期的な口腔細菌検査の情報は, 歯科医によって主治医や看護師に提供され, 有効に利用されている. 今回は, 大きな利点をもった当院のチーム・アプローチによる口腔ケアについて報告する.
  • 第2報: 口腔ケアの細菌学的評価
    松下 文彦, 薗田 直志, 内山 佳之
    2005 年14 巻1 号 p. 21-30
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    当院では, 1998年から, 病棟常勤の歯科衛生士を加えたチーム・アプローチによる口腔ケアシステムを導入し, 口腔ケアの評価の指標として, 1999年より, 初診時以降ほぼ2週間ごとに, 舌苔より定期的かつ継続的な細菌培養検査を行ってきた. この口腔細菌培養検査によって得られる情報を, 院内感染対策および菌交代症の明示といった情報として, 口腔ケアチームから積極的に他のスタッフに提供している. 患者の全入院経過中に一度でも検出された菌をカウントし, 患者数で割った検出率を算出してみると, 1999年から2004年までの5年間で, MRSAは36%, 緑膿菌は35%と著しい低下がみられ, その他KlebsiellaSerratiaなどの日和見感染菌も減少した. この要因として, われわれが提供した情報によって, (1) 口腔ケアスタッフの感染に対する意識が高まったこと, (2) 急性期のきわめて早期から, プロフェッショナル・ケアを介入させたこと, (3) 栄養管理と口腔ケアの関連の意識が高まったこと, などが考えられた.
    われわれの口腔ケアに対する細菌学的評価について報告した.
  • 住友 伸一郎, 大野 健二, 太田 貴久, 池田 昌弘, 高井 良招
    2005 年14 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群は各種末梢血の減少と骨髄幹細胞の異型性に特徴付けられる血液疾患である. 骨髄移植以外に効果的な治療法はなく, また, その治療は若年患者に限られ, 骨髄不全か白血病の継発に二分される予後はともに不良である.
    患者は74歳の男性, 32〓の精査のために朝日大学付属病院歯科口腔外科に紹介来院した. 32〓は繰り返し増悪する根尖病巣をもち, 抜歯が最良の処置であると考えられた. 既往歴として, 骨髄異形成症候群と薬物アレルギーが認められ, 血液検査では汎血球減少 (WBC: 1,130/μl, RBC: 218×104/μl, Plt: 1.9×104/μl) の結果が得られた. 内科主治医の指示により, 周術期の出血と感染に注意を払った. 酸化セルロース綿の局所貼付と緊密な縫合により抜歯後1時間以内で止血した. 感染予防には, アレルギー症状を起こしていないテリスロマイシンを用い良好な結果を得た.
  • ステロイド性骨壊死が関与する可能性
    林田 淳之將, 中村 典史, 樋口 勝規, 平木 昭光, 佐々木 匡理, 中村 誠司
    2005 年14 巻1 号 p. 37-43
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    確定診断や原因の同定が困難な下顎骨の嚢胞様病変を生じた3例を報告する. 3例はともに, X線学的には大臼歯または小臼歯の根尖部を含む歯根嚢胞様の単胞性嚢胞様透過像を示していたが, 根尖部が含まれていた歯はともに電気歯髄診断では生活反応を示した. これらの病変部は臨床的には嚢胞様腔を有し, 膿様の内容液を含んでいた. 組織学的には, 2例では上皮を欠いた, また1例では上皮を伴った比較的厚い肉芽組織で裏装されていた. また1例では, 小臼歯の根尖部を含む単胞性のX線透過像がもう1つみられたが, この歯は電気歯髄診断で生活反応を示さなかったものの, 歯髄を失活させるような明らかな原因はなかった. 3例はすべて慢性関節リウマチやベーチェット病のために比較的多量のステロイド療法を長期間受けていたため, これらの病変の発症にステロイド性骨壊死が関与している可能性を考察した.
  • 中島 丘, 遠見 治, 溪 裕司, 岡田 春夫, 中島 俊明, 礒部 博行, 加藤 喜夫
    2005 年14 巻1 号 p. 45-51
    発行日: 2005/05/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1999年4月より2001年12月までに横浜市緑区歯科医師会が歯科訪問診療を実施した介護老人保健施設入所者84名, 居宅者119名の総数203名を対象に全身疾患と服薬状況について調査検討を行った.
    全身疾患の平均罹患数は, それぞれ3.5±1.1 (mean±SD), 2.3±1.3で, 疾患名すべてで介護老人保健施設入所者の罹患率が高かった. 脳血管障害, 心血管障害, 代謝障害の評価は, 歯科訪問診療での全身管理に重要であり, とりわけ高血圧症が多くみられた.
    薬剤服用率は, 介護老人保健施設入所者96.4% (81名), 居宅者54.6% (65名) と高く, 多剤を服用しており薬物相互作用に注意が必要であった. 1人あたりの平均服用数は, それぞれ4.3±2.8, 3.2±3.8であった. 循環器用剤の種別はおもに血管拡張剤, 血圧降下剤, 利尿剤であり, 降圧剤が最も多く服用されており, 介護老人保健施設入所者ではCa拮抗剤が46.9%, 居宅者では利尿剤が31.8%服用されていた.
    高血圧症の既往者の70%以上で循環器合併症を有し, それぞれ71.8% (28例), 73.6% (28例) と高く, 脳梗塞後遺症が主であった. 高血圧症者の代謝合併症は糖尿病, 高脂血症, 高尿酸血症であった.
    高齢者人口の増加に伴い, 有病患者もまた増加している. 罹患疾患, 服薬内容の分析は全身状態を評価するうえで問診を補う有効な手段である. 安全な歯科訪問診療の励行には, 服薬情報を含めた詳細な全身状態の評価が重要であることが示唆された.
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