有病者歯科医療
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11 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 飯田 尚紀, 石井 宏昭, 関谷 秀樹, 瀬戸 皖一, 山崎 博嗣, 渡邊 裕, 山根 源之, 龍田 恒康, 山本 美朗, 松本 浩一, 赤 ...
    2002 年 11 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 有病歯科患者の歯科外来受診機会が増え, 歯科診療において何らかの偶発症を発症する可能性が増大傾向にある. しかし, 実際の歯科診療現場において偶発症の発症を予測できる症例は極めて少ない. また, 軽微なバイタルサインの変化を見逃したために偶発症が発症した症例も少なくないものと考えられる. そこで, 偶発症を起こした患者のバイタルサインをみてみると, 症状の発現に先行して血圧や脈拍数などのバイタルサインの変動が認められる. しかし, 従来のモニタリングではバイタルサインの変化を検知してアラームを発生させ処置を促す装置であり, 発作が起こったことは確認できるが偶発症の発症予測にはなり得なかった. 今回, 偶発症の発症を予測する歯科モニタの開発を目的とし, 日本光電工業株式会社製Life Scope L®を用いてソフトウエア, ハードウエァの改良を行った. 本システムを使用し, 局所麻酔で行っている歯科外来の処置の中から無作為に抽出した計89例 (年齢8~80歳) に対し臨床的検討を行った. その結果, 本システムは自律神経系の変動をリアルタイムにモニタしバイタルサインの微妙な変動を即座に捕らえることが可能であった.
  • 山川 摩利子, 川口 辰彦, 加崎 慎二郎, 大川 伊織, 野中 憲昭
    2002 年 11 巻 2 号 p. 73-78
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 口腔出血を契機として胸部解離性大動脈瘤術後残存に惹起されたDICと診断された1例を経験した. 患者は64歳, 女性で, 右側上顎大臼歯部歯肉からの出血・止血困難を主訴に2001年1月■日に当科を受診した. 約1年前, 他院で解離性大動脈瘤に対する人工血管置換術を受けた. 既往歴・現病歴と現症から出血傾向を疑い, 局所処置と並行して血液検査を実施した. 凝固系検査で多数の項目に異常値を認めたため内科に対診し上記の診断を得た. 内科入院下に抗凝固・補充療法と歯科的処置を行い17日間で軽快退院となった. 以後内科的・歯科的管理により再出血はなく良好な経過を辿っている. 今回の症例を通じて, 歯科医療における臨床検査・対診・病診連携の重要性について再認識した.
  • 下坂 典立, 石橋 肇, 渋谷 鉱
    2002 年 11 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    家族歴に悪性高熱症既往のある患者の全身麻酔を経験した. 患者は45歳, 男性. 舌悪性腫瘍 (T2N0M0) の診断に対し全身麻酔下腫瘍摘出術を行った. 本人の既往歴および術前検査に特記事項は認められなかったが, 家族歴に8年前, 当時10歳の娘が, 吸入麻酔による悪性高熱症を発症していた.
    前投薬としてアトロピンおよびミダゾラムの筋注を行った. 麻酔導入はフェンタニル・プロポフォール・ベクロニウムを使用し, 経鼻気管内挿管を行った. 麻酔維持は酸素・笑気・プロポフォールを用い, フェンタニル, ベクロニウムを適宜投与した. 手術時間は2時間39分, 麻酔時間は4時間33分で, 体温の上昇や呼気終末二酸化炭素濃度の上昇, 褐色尿等の悪性高熱症を疑わせる所見は認められず, その他問題なく終了した.
    全身麻酔中の体温測定は, 中枢温として膀胱温および胸部深部温, 末梢温として肘窩深部温および拇指皮膚温を観察した. 術中は中枢温の上昇を認めることなく終了した. 術後は膀胱温を観察したが, 病棟帰室約7時間後37.9℃ と上昇を認め, NSAID (インドメタシン) 坐剤と氷枕, 氷のうによる冷罨法にて対処した.
    また, 術中の血中ミオグロビン94ng/ml, 術後の血中ミオグロビン111ng/mlおよび術後のCK 253IU/lとそれぞれ上昇が認められた.
  • 精神科からの紹介患者について
    和田 重人, 前田 美代子, 古田 勲
    2002 年 11 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 精神科から紹介された患者139例について臨床的統計を行い以下の結果を得た.
    1) これら139例は1995年1月から2000年7月までの5年7ヶ月間における全外来患者数の1.33%を占めていた.
    2) 精神科的診断は, 精神分裂病46例 (33.1%), 躁鬱病44例 (31.7%), 器質性精神障害19例 (13.7%) の順に多く認められた.
    3) 当科における診断では, 歯科疾患が107例 (77.0%), 異常なしが16例 (11.5%), 口腔外科的疾患が16例 (11.5%) であった.
    4) 口腔外科的疾患16例の治療経過中, 2例 (精神分裂病, 解離性障害の各1例) が自殺に至る症例であった.
    精神疾患患者における事故や偶発症を避けるために, 我々は他の有病者以上に精神状態の注意深い観察を行う必要がある.
  • 中埜 秀史, 佐塚 太一郎, 内藤 克美
    2002 年 11 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    慢性DICを併発していた抜歯後出血患者に対し止血に苦慮した症例を経験したので報告する. 右側上顎中切歯抜歯窩からの出血で酸化セルロース (サージセル®) を挿入, 縫合止血した. 再出血を繰り返したため入院となった. 血液検査でPLT 154×103/μlであったが血清FDP 200μg/ml以上と異常線溶充進状態であった. 止血処置はセルロイドシーネにて圧迫をしたが, 翌日には出血する状態であった. 心臓血管外科にコンサルトした結果, 大動脈瘤解離腔残存による慢性DICと判明した. そこで第5病日よりメシル酸ガベキサート (FOY®) およびヘパリンを使用したところ血清FDPは11.56μg/mlまで低下し徐々に止血された. 第15病日, セルロイドシーネを除去し第25病日, 創部治癒良好にて退院となった.
    慢性DIC患者は, 血小板数が正常でも止血は困難であった.
  • 入舩 正浩, 遠藤 千恵, 清水 慶隆, 吉岡 美保, 河原 道夫
    2002 年 11 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 2002/08/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    われわれは, 歯科治療時に一過性脳虚血発作を起こした2症例を経験した.
    症例1は, 66歳, 女性で, 基礎疾患として高脂血症があった. 浸潤麻酔後, 左上5・6番の抜歯を行っていたところ, 突然意識を消失した. 神経性ショックを疑い, 輸液・ハイドロコルチゾンの投与を行ったところ, 意識はほぼ正常に戻ったが, 構音障害, 口唇の不随意運動・異常感覚などの神経症候を認めた. そのため, 脳神経外科に紹介したが, CT・MRI検査では異常は認められず, 神経症候も翌日にはほぼ消失した. 症例2は, 65歳, 男性で, 基礎疾患として高血圧症, 糖尿病があった. 補綴物のセット終了後, 回転性めまいを訴え, 悪心・嘔吐を認めた. しばらく経過観察したが, 症状が改善しないため, 脳神経外科に紹介した. CT検査では異常を認めず, 神経症候も翌日には消失した. 今回の症例が基礎疾患として有した高脂血症, 高血圧症, 糖尿病はいずれもアテローム性動脈硬化の危険因子であり, 潜在的な脳血管狭窄の存在が疑われた. 症例1では, 抜歯時の神経性ショックにより急激に血圧が下降し, 潜在する血管狭窄に椎骨脳底動脈領域の潅流圧低下が加わり, 脳虚血発作を来したと考えられる. 症例2では, 補綴物セット時の頚部捻転などの体位変換による脳血流量低下の可能性はあるが, 原因は明らかではない. 幸運にも2症例とも24時間以内に神経症候は消失したが, 近年脳卒中の超急性期治療の有効性が確立してきたことから, 歯科治療時に脳卒中警告症状が認められたらすぐに専門医療機関へ搬送することが良好な予後に繋がると考察する.
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