有病者歯科医療
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9 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 飯田 彰, 黒住 章弘, 亀倉 更人, 福島 和昭
    2001 年9 巻2 号 p. 71-76
    発行日: 2001/05/28
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (Selective Serotonin Reuptake Inhibitor; 以下SSRI) は, 本邦では, 1999年5月に発売された新しい抗うつ薬である。今回, 我々は, 本剤 (フルボキサミン) を服用しているうつ病患者(72歳, 女性) の多数歯抜歯に対する全身麻酔管理を経験した。
    本症例では,術前2日間の休薬期間をとり, 亜酸化窒素・酸素・セボフルランを主体とした全身麻酔管理を行い, 周術期をとおして概ね安定した経過を得ることができた.
    SSRI服用患者の全身麻酔管理に際しては, 本剤の半減期を考慮した休薬期間を可能な限りとることで可及的に全身麻酔への影響の軽減化をはかり, また本剤がチトクロームP450阻害作用を有することから, 麻酔法の選択, 投与量等に配慮した管理を行うことが肝要と考えられた。
    SSRIには既存の三環系抗うつ薬で報告されている抗コリン作用に基づく副作用は少ないものの, 連用による低ナトリウム血症や, 血小板凝集抑制の存在, セロトニン作動薬併用によるセロトニン症候群発症の危険性を示唆する文献的報告もあり, その点に関する注意も必要と思われた。
  • 亀倉 更人, 田中 啓介, 木村 幸文, 福島 和昭
    2001 年9 巻2 号 p. 77-83
    発行日: 2001/05/28
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症を合併するヌーナン症候群患者の歯科治療を経験した。患者は29歳, 男性。右上顎側切歯歯根嚢胞の診断にて右上顎側切歯歯根端切除術が予定された。出生後より涕泣時のチアノーゼ, 心雑音を指摘され, 小児科にて加療されており, 身体的特徴よりヌーナン症候群の診断を受けていた。心臓カテーテル検査より肥大型心筋症と診断され, 投薬治療が行われていた。また, てんかん発作を認め, バルプロ酸が投与されていた。当科では過去全身麻酔下で3回, モニタリング下で2回, 静脈内鎮静法下で1回の歯科治療が行われており, 3回の全身麻酔時にはいずれも不整脈が発生していたが, 重篤な事態にはいたらず, 歯科治療を終了していた。
    今回, 患者の協力が得られたため, 静脈内鎮静法下で歯科治療を行うこととした。術前に行った心エコーの所見から大動脈弁と僧帽弁の閉鎖不全を認めたため, 術当日朝よりアンピシリン1.5g分3の内服を開始した。ミダゾラム5mgで至適鎮静度が得られ, フェリプレシン含有3%プリロカインを用い浸潤麻酔後, 処置を開始した。術中のバイタルサインは安定しており, 心電図上の変化も認められず, 所定の処置を終了した。
    ヌーナン症候群患者の歯科治療の際には, 心合併症をはじめとする全身状態, 患者の協力性, 歯科侵襲を考慮し, 適切な管理方法を選択することが重要である。
  • 伊藤 弘人, 神部 芳則, 内藤 浩美, 野沢 太郎, 草間 幹夫, 赤坂 庸子
    2001 年9 巻2 号 p. 85-89
    発行日: 2001/05/28
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    血小板無力症は血小板数に異常はないものの, 血小板機能が不全であり, 出血時間の延長を示すまれな先天性疾患である。
    今回われわれは, 血小板無力症を有する患者の4本の智歯抜歯を経験した。患者は25歳女性で, 〓8周囲の痛みを主訴に当科受診。〓8は完全に萌出していたものの, 頬側に転位していた。また〓8は水平に埋伏していた。処置は, 血小板輸血下で〓8〓8の同時抜歯を行った。術後創部からの出血は認められなかった。更に, 後日同様の方針で8〓8の抜歯を行った。血小板輸血下での抜歯に関しては, 抗血小板抗体産生や肝炎などの感染のリスクがあり, 極力避けるべきであるとの報告がある。しかし, 外科的侵襲の大きさによっては後出血を完全に避けるうえでは術前, 術後に十分に血小板輸血を行うべきであると考える。
  • 八木 義照, 坂本 真由美, 坂梨 誉理子, 篠原 正徳
    2001 年9 巻2 号 p. 91-96
    発行日: 2001/05/28
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1989年1月より1998年12月までの10年間に熊本大学医学部附属病院歯科口腔外科において入院下手術を施行した症例について, 年齢構成, 原疾患, 基礎疾患, 術後合併症について集計, 検討を行い以下の結果を得た。
    1. 患者総数は501例 (男性281例, 女性220例) で, 平均年齢は48.3歳だった。このうち有病者は325例 (男性193例, 女性132例), 64.9%だった。
    2. 原疾患としては悪性腫瘍が229例, 45.7%と最も多く, 65歳以上の高齢者では115例, 82.7%が悪性腫瘍患者だった。
    3. 有病者数は325例 (64.9%) で有病者1人あたりの基礎疾患件数は1.6件だった。基礎疾患の中では循環器系疾患が156件 (29.3%) と最も多く, 続いて呼吸器系疾患54件 (10.1%), 消化器系疾患49件 (9.2%), 糖尿病47件 (8.8%) の順であった。
    4. 術後合併症では呼吸器系合併症が11例にみられ他の合併症より高頻度であった。
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