当院受診した抗血小板薬 (塩酸チクロピジン, アセチルサリチル酸) 内服患者に対し, 抜歯における口腔管理について検討した. 一般に, 観血処置に際し, 抗血小板薬内服患者では抗凝固薬であるワルファリンカリウムで用いられているTT-INR等の値を用いて薬剤を中止するか否かの指標がない. 一方, 最近では抗血栓薬の投与中止による合併症の危険性が指摘されてきている.
そこでわれわれは, 数年前より当科にて, 抗血小板薬を継続させたまま抜歯を行っている. その結果, 抗血小板薬の内服患者の口腔管理について若干の知見を得た. 症例は, 2004年4月より2005年10月までに抜歯を受けた, 抗血小板薬内服患者において, 抜歯症例28例, 34歯を分析した. 管理方法として, 保護床, 局所止血剤を利用し, 凝固能の判断基準として, 出血時間 (Duke法) を用いた. 今回経験した症例では, われわれが行っている, 適切な止血管理方法を施行することにより, 止血困難は認められなかった. 以上より, 抗血小板薬を内服していても, 適切な口腔内管理により維持量投与での抜歯が可能であることが示唆された.
抄録全体を表示