有病者歯科医療
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16 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 田尻 康樹, 鈴木 晋也, 塚本 佳孝, 神谷 祐二
    2007 年 16 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    慢性疲労症候群とは, 健康に生活していた人が, 突然の激しい全身倦怠感に襲われ, 長期にわたる微熱と, 強い倦怠感, 脱力感, 頭痛, 思考力の障害, 精神神経障害などが続き, 健全な社会生活が送れなくなる疾患である. 今回われわれは, 慢性疲労症候群の抜歯症例を経験した.
    16歳女性. 左側下顎大臼歯部の疼痛を主訴に来科. 口腔清掃状態は, 非常に不良で齲蝕が多く, 左側下顎第二大臼歯歯肉に腫脹を認め慢性根尖性歯周炎に起因する歯槽膿瘍と診断した. 消炎後, 感染根管処置を予定するも, 全身倦怠感による未来院が続いたため, 保存的処置を断念し, 入院管理下で抜歯した.
    慢性疲労症候群の患者は, 全身倦怠感のため通院が非常に困難であり治療時間も短時間に限られる. 治療方針を立案するにする際には, 常に治療回数を最小限に行うことを念頭に置くべきであり, 患者に与えるストレスが過大と予想される場合には入院下治療も考慮すべきと考えられた.
  • 石田 健, 村岡 渡, 新里 知佳, 角田 和之, 角田 博之, 池内 忍, 中川 種昭, 朝波 惣一郎
    2007 年 16 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群 (MDS) は前白血病症状と難治性貧血を示す後天的造血障害である. 外科処置に際しては出血傾向, 易感染性などが問題となり, 慎重な対応が必要となる. 今回われわれは口腔外科処置後に全身状態が悪化した骨髄異形成症候群の2例を経験したので報告する. 血液内科併診のもと入院下にて, 消炎処置および外科処置を行った. ともに術後より感染症状を呈し血小板減少に加え, 好中球の減少, CRPの上昇, さらに抗菌薬の多剤耐性を認めた. 数種の抗菌薬と血小板投与に加え, さらに顆粒球コロニー刺激因子製剤の投与により症状は改善した. MDS患者において, 術前から感染予防に努めたにもかかわらず術後感染した場合には急速に増悪する. そのため血液内科医との連携による全身管理が極めて重要である.
  • 玉井 和樹, 伊介 昭弘, 杉崎 正志, 田辺 晴康
    2007 年 16 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    当院受診した抗血小板薬 (塩酸チクロピジン, アセチルサリチル酸) 内服患者に対し, 抜歯における口腔管理について検討した. 一般に, 観血処置に際し, 抗血小板薬内服患者では抗凝固薬であるワルファリンカリウムで用いられているTT-INR等の値を用いて薬剤を中止するか否かの指標がない. 一方, 最近では抗血栓薬の投与中止による合併症の危険性が指摘されてきている.
    そこでわれわれは, 数年前より当科にて, 抗血小板薬を継続させたまま抜歯を行っている. その結果, 抗血小板薬の内服患者の口腔管理について若干の知見を得た. 症例は, 2004年4月より2005年10月までに抜歯を受けた, 抗血小板薬内服患者において, 抜歯症例28例, 34歯を分析した. 管理方法として, 保護床, 局所止血剤を利用し, 凝固能の判断基準として, 出血時間 (Duke法) を用いた. 今回経験した症例では, われわれが行っている, 適切な止血管理方法を施行することにより, 止血困難は認められなかった. 以上より, 抗血小板薬を内服していても, 適切な口腔内管理により維持量投与での抜歯が可能であることが示唆された.
  • 葉山 揚介, 梅本 丈二, 出口 充, 喜久田 利弘
    2007 年 16 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自己免疫疾患である重症筋無力症は, 骨格筋の低下や易疲労感を特徴とする. 歯科における治療において薬剤やストレス, 感染によってそれらの症状は増悪する. 最も重篤な病態をクリーゼという.
    われわれは重症筋無力症患者4例の抜歯を経験した. 局所麻酔は10万倍希釈エピネフリン含有1%塩酸リドカインを使用した. 全4例は呼吸管理可能な手術室で抜歯を行った.
    4例中1例において眼瞼下垂, 四肢の脱力感と筋力低下を経験した. 29歳の女性でMGFA分類がIIIbであり, 下顎埋伏智歯1本と上顎智歯2本の抜歯を行った症例であった. 歯科治療におけるMG患者の臨床的分類が重要であることが示唆された.
  • 横塚 裕二, 重松 久夫, 高橋 裕子, 趙 恩樺, 鈴木 正二, 真野 樹子, 鐘ヶ江 晴秀, 猪野 照夫, 時岡 一幸, 中塚 貴志, ...
    2007 年 16 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    明海大学病院第2口腔外科における言語療法の実態調査について若干の考察を加えて報告する. 対象は, 2000年9月1日~2005年8月31日までの5年間に当科を受診し, 言語評価もしくは言語療法を受けた156例である. その結果,
    1. 先天性疾患患者は109例で, その内で口蓋裂を伴う症例は89例であり, 口蓋裂を伴わないその他の20例と比較すると, 構音障害の程度は強く, 言語治療は期間も回数もより多くを必要とした.
    2. 口腔癌や良性腫瘍などに基づく後天性疾患患者は36例であった. 口腔癌, 特に口底癌の術後は, 再建術を行っているにもかかわらず, 重度の構音障害の残存が確認された.
    3. 機能性構音障害患者は9例であった. これらの患者では, 患者家族の会話明瞭度に対するモチベーションが高く, 言語治療はより頻回となっていた.
    4. 顔面神経麻痺の1例を除いて, 運動障害性構音障害, いわゆるdysarthriaの症例はみられなかった.
  • 田口 茂和, 都丸 泰寿, 嶋村 由美子, 冨高 優子, 小林 明男, 依田 哲也
    2007 年 16 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2007/04/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    重複癌は異なる臓器にそれぞれ原発性の癌が存在するものをいい, 診断時期が1年以内の場合を同時性としている. 今回われわれは舌癌, S状結腸癌, 肺癌の同時性3重複癌の1例を経験したのでその概要を報告する. 症例は64歳, 男性. 舌の腫瘤を主訴に来院し, 左側舌腫瘍と診断. 平成16年3月15日に腫瘍切除術施行. 術後当科の病理診断にて扁平上皮癌stageIIであった. 退院後の外来経過観察中に血痰, 便鮮血を認めたため, 消化器内科および呼吸器内科受診. 9月17日気管支鏡にて, 左側下葉に10mm大の結節性腫瘤性変化を認め, 病理診断は扁平上皮癌 (stageI) であった. 9月29日消化器内科でS状結腸に広基性ポリープを認め, 生検にて腺癌と診断. 11月12日S状結腸癌 (stageI) に対して内視鏡的粘膜切除術施行. 平成17年1月18日左側肺癌に対し左側肺下葉摘出術施行した. 舌に関しては術後約2年6か月経過しているが, 再発および所属リンパ節への転移は認められず, 経過は良好である. 本症例から全身的な精査が重複癌の早期発見に重要であり, 予後を良好なものにする.
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