有病者歯科医療
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15 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 感染症検査の必要性について
    中島 博, 岡田 とし江, 見崎 徹, 大橋 瑞己, 増田 千恵子, 村井 英俊, 神谷 里枝, 太尾 恵子, 鈴木 裕美, 天野 優子
    2006 年15 巻3 号 p. 131-137
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    院内感染対策としてスタンダードプレコーションが行われているが, この概念を前提とすると個別の感染症検査は不要との帰結になり得る. しかし, 個別の感染症検査を実施する必要性の是非については明らかではない. そこで, 当科の実態を調査し, 検討したので報告する.
    対象: 2005年4月, 7月から9月の合計4か月間に当科を受診した2,460名, 延べ処置数は6,514処置である.
    方法: 梅毒 (TP, RPR定性, 定量) B型肝炎 (HBs抗原) およびC型肝炎 (HCV抗体) の陽性者数を調査した.
    結果: 感染症の有無が把握できた人数は1,043名 (42.4%), 処置数は延べ3,647回 (56.0%) で, 感染症の内訳は, 梅毒23名 (2.2%), 56回, B型肝炎18名 (1.7%), 54回, C型肝炎56名 (5.4%), 138回であった. 患者の陽性率の合計は9.3%で, 問診結果の1.8%に比べると高率で, 問診では感染症を把握しきれないことが示された.
    結語: 本研究の結果から問診では把握できない感染症が存在したことから, 歯科・口腔外科診療ではスタンダードプレコーションと感染症検査を行った後に観血処置を行う必要があると考えられた.
  • 鈴木 円, 坂下 英明, 須賀 則幸, 鈴木 正二, 田中 章夫, 草間 薫
    2006 年15 巻3 号 p. 139-143
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    角化嚢胞性歯原性腫瘍は通常若年者に生じ, 高齢者に生じることはまれである. われわれは超高齢者の上顎前歯部に生じた角化嚢胞性歯原性腫瘍の1例を報告する.
    症例は92歳の男性で右側上顎前歯部の違和感を主訴に東邦病院歯科口腔外科を受診した. X線検査により右側上顎前歯部に20×15mm大の骨吸収像を認めた. 局所麻酔下に摘出術を施行した. 病理組織学的に角化嚢胞性歯原性腫瘍と診断された. 現在まで再発は認められない.
  • 太田 和俊, 野村 朋子, 吉武 義泰, 篠原 正徳
    2006 年15 巻3 号 p. 145-150
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    習慣性顎関節脱臼の治療法には観血的療法と非観血的療法があり, それぞれにさまざまな方法があるが, 高齢者や全身疾患を有する患者などでは観血的療法が困難で治療に難渋することが少なくない. 今回われわれは抗リン脂質抗体症候群 (APS) により脳梗塞を繰り返し発症し, そのたびに習慣性顎関節脱臼を起こした症例を経験した.
    患者は34歳の女性で, 両側の顎関節脱臼を繰り返すことを主訴に来院した. 来院の約1か月前に脳梗塞を発症していたため, 開口制限による保存的治療を行い, 改善が得られた. しかし3年後に脳梗塞を再度発症し, 習慣性顎関節脱臼も再発した. 再発後には, 再度開口制限による保存的治療を行ったが, 奏効しなかった. APSがあるため抗凝固療法が行われており観血的治療は困難と考え, 脱臼が起こっても簡単に家族や本人が整復できるように指導した. その結果, 脳梗塞の回復に伴い開閉口のコントロールができるようになり, 顎関節脱臼をおこす回数は減少した. また, 脱臼がおこっても自己整復は可能となり, 日常生活に支障がない程度にまで改善が得られた.
  • 木下 弘幸, 白水 敬昌, 黒柳 範雄, 加藤 伸一郎, 藤浪 恒, 長尾 徹, 山田 祐敬
    2006 年15 巻3 号 p. 151-157
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    口腔外科手術時の静脈内鎮静法導入時に発作性心房細動を呈した症例を経験したので, 循環器疾患に対する静脈内鎮静法の適応に関する考察を加えて報告する.
    症例は64歳, 男性. 既往歴にて高血圧症・糖尿病があった. 右側術後性上顎嚢胞の診断のもと, 嚢胞摘出術および対孔造設術を計画した. 手術前検査では, 高血圧症以外の循環器障害を認めなかった. ペンタゾシンおよびジアゼパムを静脈内投与し, 上顎神経ブロックを施行したころより心房細動を認めた. 薬物による除細動を試みるも効果なく, 電気的除細動を施行し洞調律に回復した. 高血圧症や精神的ストレスが心房細動の原因と考えられた.
  • 梅本 丈二, 喜久田 利弘, 葉山 揚介, 出口 充, 井上 育子
    2006 年15 巻3 号 p. 159-164
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    先天性プロテインS (以下PS) 欠乏症は, ビタミンK依存性の凝固阻害作用に関係する蛋白であるPS欠乏により, 容易に血栓症が生じる疾患である. 我々は深部静脈に血栓を有するPS欠乏症患者の埋伏智歯の抜歯を経験したので報告する.
    患者は21歳の男性. 左側下顎智歯周囲歯肉の疼痛を主訴に当科を紹介され受診した. 17歳時, 先天性PS欠乏症, 左下肢深部静脈血栓症 (DVT) と診断され, ワルファリンカリウムによる抗凝固療法を受けていた.
    抜歯に際し, 心臓血管外科と麻酔科とともに抗凝固療法と麻酔法について検討した. 臨床症状と超音波所見より血栓は陳旧性であり, 遊離する可能性は極めて低いと判断した. そこで3本の埋伏智歯抜歯は, ヘパリンカルシウムによる抗凝固療法を行いながら, 全身麻酔下で行うこととした. 抜歯後異常出血, 血栓塞栓症などの合併症や下肢腫脹はなかった.
  • 中島 博, 岡田 とし江, 見崎 徹, 大橋 瑞己, 増田 千恵子, 村井 英俊, 住本 和歌子
    2006 年15 巻3 号 p. 165-171
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    自己免疫性肝炎 (AIH), 特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) および全身性強皮症 (SSc) を合併している患者に対しては次の2つの問題点が生じる. 一番目は, 周術期管理における血小板減少による出血傾向およびステロイド剤の内服による副作用の問題である. 2番目は, SScには悪性腫瘍の合併が多いため, 術後経過観察における再発, 転移や他部位の悪性腫瘍の発生の早期発見の問題である.
    今回われわれは, 下顎歯肉頬粘膜癌の術前検査を契機としてAIHおよびITPと診断され, 術後の経過観察中にSScと診断された1例を経験した. 本症例では, 術直前に血小板輸血, 術直後よりのステロイド剤投与により血小板数が維持され, 術後の後出血, 感染症もなく安全に手術を施行でき, 術後1年6か月経過後の現在, 再発転移, 他部位の悪性腫瘍の存在を認めていない.
  • 山田 希, 秋山 麻美, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2006 年15 巻3 号 p. 173-177
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回我々は当科において全身管理下に観血的処置が実施された, 抗血栓薬服用患者69名について調査・検討を行った. 抗血栓薬を休薬した症例 (休薬群) は38例 (55.1%) であり, すべてが内科主治医による指示であった. 服用継続下にて処置を行った症例は31例 (44.9%) であり, 内26例 (83.9%) が麻酔科医と術者の指示で, 5例 (16.1%) が内科主治医による指示であった. 術後の止血に苦慮した症例は休薬群の3例 (4.3%) であったが, いずれの症例においても24時間以内に止血が確認されており, その他, 不快症状を呈した症例は認められなかった.
    内科主治医への対診は必須であるが, 指示に従うだけでなく, 歯科医師側でも術前検査ならびに処置内容から十分な検討を行い, 抗血栓薬の休薬が必要な場合は, 血栓予防を考慮した周術期管理が肝要である.
  • 倉科 憲治, 宮田 勝, 草間 幹夫, 篠原 正徳, 渋谷 鉱, 中里 滋樹, 白川 正順
    2006 年15 巻3 号 p. 179-188
    発行日: 2006/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    抗血栓療法患者に対して口腔外科小手術を行うときの対応に関して全国規模の調査を行った. 583施設にアンケート用紙を送り, 239施設から回答が得られた.
    今回の調査から以下のことが明らかになった.
    1. 239施設の内, 142施設では抜歯などの口腔外科小手術の際に抗血栓療法薬を中断あるいは減量すべきでないと基本的に考えている.
    2. 実際の診療においては, 108の施設で必要により抗血栓療法薬を中断するか減量する. 91施設は原則的に継続し, 43施設では原則的に中断している. 中断ないし減量する場合には, 多くの施設で医科主治医の指示に従っている.
    3. 全239施設の内, 120の施設で術後出血の経験があった. 止血困難などの合併症と実際に行っている抗血栓薬の取り扱い方法との間に関係はみられず, 術後出血には多くの要因が関与していると考えられる.
    4. 23施設が脳梗塞, 狭心症, 心筋梗塞など薬剤の中断に起因すると考えられる重篤な合併症を経験したと回答した.
    5. 術後出血への対応あるいは防止のためにほとんどの施設が縫合, 局所止血剤の使用, 的確な創の圧迫を行っている.
    6. 薬剤を中断すべきかどうかの判断のためにそれぞれの施設ごとにさまざまな検査が行われており, 今回の検討では標準的な検査法および検査値は明らかとならなかった.
    7. 薬剤を中断する場合の実際の方法は, 抗凝固剤は3~4日の休薬, 抗血小板薬は7日間の休薬という施設が多かったが, 施設によって異なっていた. そのため, 推奨されるべき方法というのは本検討では明らかにならなかった.
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