抗血栓療法患者に対して口腔外科小手術を行うときの対応に関して全国規模の調査を行った. 583施設にアンケート用紙を送り, 239施設から回答が得られた.
今回の調査から以下のことが明らかになった.
1. 239施設の内, 142施設では抜歯などの口腔外科小手術の際に抗血栓療法薬を中断あるいは減量すべきでないと基本的に考えている.
2. 実際の診療においては, 108の施設で必要により抗血栓療法薬を中断するか減量する. 91施設は原則的に継続し, 43施設では原則的に中断している. 中断ないし減量する場合には, 多くの施設で医科主治医の指示に従っている.
3. 全239施設の内, 120の施設で術後出血の経験があった. 止血困難などの合併症と実際に行っている抗血栓薬の取り扱い方法との間に関係はみられず, 術後出血には多くの要因が関与していると考えられる.
4. 23施設が脳梗塞, 狭心症, 心筋梗塞など薬剤の中断に起因すると考えられる重篤な合併症を経験したと回答した.
5. 術後出血への対応あるいは防止のためにほとんどの施設が縫合, 局所止血剤の使用, 的確な創の圧迫を行っている.
6. 薬剤を中断すべきかどうかの判断のためにそれぞれの施設ごとにさまざまな検査が行われており, 今回の検討では標準的な検査法および検査値は明らかとならなかった.
7. 薬剤を中断する場合の実際の方法は, 抗凝固剤は3~4日の休薬, 抗血小板薬は7日間の休薬という施設が多かったが, 施設によって異なっていた. そのため, 推奨されるべき方法というのは本検討では明らかにならなかった.
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