有病者歯科医療
Online ISSN : 1884-667X
Print ISSN : 0918-8150
ISSN-L : 0918-8150
13 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 新田 哲也, 上川 善昭, 別府 真広, 平山 東隆, 坂元 亮一, 杉原 一正
    2004 年13 巻3 号 p. 167-172
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome: MDS) は, 多血球系統の減少を示す疾患で, 血球数の異常ばかりでなく形態異常と機能異常を示すことが特徴である.
    当科へ紹介された28歳女性のMDS患者に対して, 右下顎不完全埋伏智歯抜歯時に半分量の濃厚血小板製剤を輸血後, 左下顎水平埋伏智歯を抜歯した. 抜歯後は, アテロコラーゲン・スポンジに多血小板血漿 (PRP) を浸漬させて, 抜歯窩に填入, 縫合閉鎖した. その結果, 左下顎智歯の抜歯では, 1か月前に抜歯した右下顎智歯と比較して, 軟組織治癒やレントゲン上の骨化度から, 臨床的にほぼ同等の良好な結果が得られた.
    MDS患者の造血幹細胞移植前の抜歯処置では, PRPとアテロコラーゲン・スポンジを併用することで, 血小板輸血量を減少させ輸血に伴う合併症を回避できる可能性がある. 単なる血小板輸血に比較して, 簡便性, 安全性さらに治癒期間の短縮が期待できた.
  • 新田 哲也, 上川 善昭, 別府 真広, 坂元 亮一, 永山 知宏, 杉原 一正
    2004 年13 巻3 号 p. 173-179
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎不全による慢性透析患者数は, 経年的に増加している. また透析患者における栄養障害は, その生命予後に影響を与えるリスクファクターとして知られている.
    重度歯周炎のために咀嚼障害をきたした67歳の患者が, 当科へ紹介された. 多数の基礎疾患を有して糖尿病性腎不全により透析中であった患者に対して, 栄養管理に配慮して入院下で抜歯を行った. 周術期には感染や出血, 循環変動に注意した. 抜歯窩は, ゼラチンスポンジ製剤を填塞して縫合し, 即時義歯で咬合させ圧迫した. 術後は, エネルギー, 蛋白摂取と水分摂取制限に留意して献立を工夫した結果, 早期の食事形態の改善が可能であった.
    糖尿病透析患者のさまざまな基礎疾患に配慮した入院管理下での一連の処置は, 患者のQOLのみならず, 生命予後にも貢献できたと考えられた.
  • 中野 みゆき, 秋山 麻美, 永合 徹也, 大橋 誠, 藤井 一維, 佐野 公人, 柬理 十三雄
    2004 年13 巻3 号 p. 181-186
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    脳出血の後遺症として病的笑いを有する患者の歯科治療に際し, 静脈内鎮静法を適応し, 良好な患者管理を行うことができたので, 考察を加え報告する.
    患者は59歳の女性. 下顎左側智歯周囲炎の診断のもと埋伏歯抜歯術が予定された. 既往歴に脳出血があり, 後遺症として病的笑いを有していた. 病的笑いは本人の意思とは無関係に発現し, 自制困難であることから, 処置に際しては突発的な発作の発現と精神的緊張に伴う発現頻度の増加を予防するため, ミダゾラム使用静脈内鎮静法を選択した. ミダゾラム4.5mgの静脈内投与により至適鎮静状態が得られ, 浸潤麻酔直後に一度発作が出現したが, ミダゾラム1.0mgを追加すると再度良好な鎮静状態を得ることができた. 後日, 下顎左側第二大臼歯慢性根尖性歯周炎の診断のもと根管治療が予定された. 笑い発作の完全なる消失と本疾患患者に対する管理方法の拡大を期待し, プロポフォール使用静脈内鎮静法を選択した. プロポフォール50mgの静脈内投与にて至適鎮静状態が得られ, 処置開始と同時に発作が出現したものの10mgの追加投与にて再度良好な鎮静状態を得ることができた. その後4mg/kg/hrで維持し, 無事処置を終了した.
    歯科治療中の病的笑いの出現は, 口腔粘膜損傷や誤飲などの合併症を引き起こす危険性を有することから, 静脈内鎮静法は有用な方法であると考えられた.
  • 鈴木 円, 江田 哲, 須賀 則幸, 鈴木 正二, 坂下 英明
    2004 年13 巻3 号 p. 187-190
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    進行性筋ジストロフィー患者はその進行により開咬をきたすことがある. しかし, それにより生じた開咬の治療には有効な治療法がない. われわれは14歳, 男児の進行性筋ジストロフィーに起因する開咬に対して健全歯上のオーバーデンチャーにより治療を行った. 治療後, 咬合・咀噛機能の改善と審美性の回復が得られ, 患者は満足している. この治療法は危険性も少なく, 進行性筋ジストロフィーに起因する開咬に対して有用と思われる.
  • 亀倉 更人, 木村 幸文, 福島 和昭
    2004 年13 巻3 号 p. 191-196
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    原発性側索硬化症患者に対する歯科治療を経験した. 症例は73歳女性で, 約25年前より, 歩行障害, 構音障害, 嚥下障害を認め, 原発性側索硬化症との診断を受けていた. 今回, 左下顎小臼歯部の腫脹と疼痛, 上顎橋義歯の動揺を主訴に当院を受診した. 歯科治療に対する恐怖心が強くまた異常絞扼反射があったため, ミダゾラムによる静脈内鎮静法下にて上顎橋義歯の除去と2歯抜歯を行った. 術中, 異常絞扼反射はみられず, 問題なく処置を終了した. その後橋義歯の形成, 冠合着など, 合計7回の治療を行ったが, いずれも問題なく終了した.
    治療がすすむにつれ, 鎮静法を用いなくても歯科治療は可能となった. それゆえ本症例でみられた異常絞扼反射は, 原発性側索硬化症によるものではなく, 歯科治療に対する恐怖心が原因と考えられた.
    歯科治療の際には, 嚥下障害を合併するため, ミダゾラムの投与量が過量にならないよう留意し, 誤嚥事故を起こさないよう, 配慮する必要があった.
  • 大浦 健宏, 鈴木 浩之, 田中 秀生, 内山 佳之, 高橋 重彌, 島田 真衣, 山崎 陽子, 橋本 賢二
    2004 年13 巻3 号 p. 197-201
    発行日: 2004/12/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 抗菌薬の発達により重症な歯性感染症は軽減した. しかし, 糖尿病のような感染防御機能の低下している場合は, 重篤な感染症を合併する危険性がある. 今回われわれは右側下顎第二大臼歯が原因で, 糖尿病患者にみられた重度の頸部・縦隔膿瘍の1例を経験したのでその概要を報告する.
    患者は57歳男性で, 右顎下部から頸部にかけての腫脹を主訴に当院を受診した. 口底部に腫脹を認め, CT上で頸部から縦隔にかけてガス産生像を認めた. 入院後, 切開, 排膿処置, 抗菌薬の投与に加え糖尿病の管理も行った.
feedback
Top