走査型拡がり抵抗顕微鏡(SSRM)は,Siデバイスにおける2次元キャリア分布を計測する有効な手法である.我々は,高真空下でSSRM計測を行うことにより1 nmの空間分解能を達成した.また1015~1020 cm-3の広いダイナミックレンジでキャリア濃度を計測できることも確認した.高真空下でのSSRMは,将来の新しいデバイスに対してもキャリアの解析に大きな能力を有すると期待される.本報告では,SSRM計測の実験手順を示すと共にCMOSFETへの応用例について紹介し,キャリア濃度の解析における再現性や定量性に影響を与える課題についても議論した.
銀表面上に成長したシリセン(シリコン原子による2次元ハニカム格子)の構造と,電子物性を紹介する.原理的にはシリセンはグラフェンと多くの点でエキゾチックな物性を共有するだけではなく,グラフェンでは達成できない量子物性の実現も期待できる.本稿ではこれまでに我々が行ってきたAg(111)上にSiを蒸着することによって得られるシリセンについて走査トンネル顕微鏡,低速電子回折,密度汎関数計算に基づく理論解析を通して得られたその幾何構造と電子物性について紹介する.Ag(111)上に自然界には存在しないシリセンが形成できることを示した.一方で,走査トンネル顕微鏡を用いたランダウレベル分光から,フリースタンディング・シリセン中に存在があると期待されている,相対論的ディラック粒子の特性が失われていることを明らかにした.この特性の消失はシリセンとAg(111)基板の間における強い電子軌道の混成に由来するものである.
結晶学(結晶構造)に関する情報は,各物性の起源を理解するのにも欠かせない手法である.ここに国際結晶学連盟が推奨している結晶学情報共通データ・フォーマット(CIF)に関して紹介を行う.このCIFの普及に伴って各結晶構造データベース中のデータや各種計算プログラムにおける入力パラメーターの共有化が可能と成っている.加えて,CIFを用いる事によって論文中の誤植を減らす事にも役立っている.
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