Journal of Surface Analysis
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15 巻, 1 号
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解説
  • 宮内 良広, 佐野 陽之, 水谷 五郎
    2008 年15 巻1 号 p. 2-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/10/20
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     固体中や生体中の非対称構造の分析法として,光第二高調波(SH)及び光和周波(SF)顕微鏡を開発した.本稿では,SH,SF顕微鏡を用いた最近のいくつかの研究例について紹介する.SH顕微鏡によるPt単結晶上のCOの酸化の分布像,多層金属膜の仕事関数を反映していると思われる像,Agの回折格子の像,砒素イオン打ち込みを行ったSi基板の電子状態の分布像,レーザーパルスによる水素終端Si表面からの水素脱離の空間分布像,について述べる.また,水草中のデンプン粒子のSHおよびSF像による非破壊化学分析について説明する.これらの観察より,SH及びSF顕微鏡によって媒質中または媒質表面の非対称な構造の分布の観測が可能であることを実証する.

技術報告
  • 小泉 あゆみ, 山内 京子, 佐藤 美知子, 高野 みどり, 表面汚染炭化水素プロジェクト
    2008 年15 巻1 号 p. 16-26
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

     X線光電子分光法(XPS)の化学状態分析において,データ処理時の帯電補正は重要である.表面汚染炭化水素のC 1sは最も手軽に使われるエネルギー基準の一つであるが,測定条件,機種によって変化する可能性があるなどの問題が指摘されている.そこで表面汚染炭化水素プロジェクトでは,同一の試料とエネルギー軸較正方法で,Au板およびAu薄膜上に堆積した表面汚染炭化水素から検出されるC 1sの束縛エネルギーと炭素濃度の相関について調査するラウンドロビンテストを行った.その結果,(1) Au板で自然増加した汚染炭化水素のC 1s値は284.69±0.12 eVとほぼ一定であること(原子濃度比C/(C+Au):0.52-0.78の領域で),(2) Au薄膜/Ni42Fe58合金はC量増加に伴いC 1s値が高束縛エネルギー側へシフトすること(原子濃度比C/(C+Au):0.41-0.67の領域で),(3) Au薄膜/ガラス基板はC量とC 1s値に相関・再現性が無いが,C 1s値は284.8~285.4 eVと高い値に出ること(原子濃度比C/(C+Au)>0.5の場合)がわかった.また,(4)光電子取出し角を変化させ見かけのC量が増加しても,C 1s値の変化は0.2 eV以内でほぼ一定であること,(5)スパッタクリーニング直後はC 1s値が高束縛エネルギー側で検出され,数時間経過後にはアモルファスカーボンの状態と考えられる低めのピーク位置へとシフトした後,C量の増加にともないC 1s値が高くなっていくことなどを確認した.

  • 永富 隆清, 高橋 和裕, 吉川 英樹
    2008 年15 巻1 号 p. 27-39
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

     現在,表面分析研究会(SASJ: Surface Analysis Society of Japan)では活動の一環として,深さ方向分析に関する国際ミニワークショップの開催並びにワーキンググループの発足を企画し,その検討を進めている.今後本企画を進める上でSASJ会員,特に分析現場の声を反映させることを目的として,昨年11月25日から28日にかけて金沢で開催された2007年実用表面分析国際シンポジウム(PSA-07: Practical Surface Analysis 2007)にて,「深さ方向分析に関するアンケート」を実施した.本稿ではアンケートに対する回答のまとめを中心に報告する.

  • 佐藤 美知子, 瀬山 喜彦, 板倉 徹
    2008 年15 巻1 号 p. 40-49
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

     試料の表面から深い位置にある界面を高い深さ分解能で分析するために,集束イオンビーム(FIB: focused ion beam)加工装置を用いたリフトアウト法により薄片試料を作製し,オージェ電子分光法(AES: Auger electron spectroscopy)スパッタ深さ方向分析を行った.その結果,分析対象である界面が非常に深い場合にも,界面までの深さが数100 nmになるように薄片試料を所望の位置で切り出すことが可能であり,良好な深さ分解能で表面から深い位置にある界面を分析できることがわかった.また多層膜の断面のAES線分析では,断面試料表面の汚染および酸化により,実際には存在しない炭素層や酸化層が認められたが,リフトアウト法を用いて対象となる界面近傍からサンプリングした試料をスパッタ深さ方向分析することにより,表面汚染および表面酸化の影響を受けることなく測定できることを確認した.さらに,絶縁物試料については,リフトアウト法により薄片試料を作製することで,帯電の影響を受けることなく測定が可能であることがわかった.

  • 中村 佳澄, 網田 仁, 高橋 早苗, 松本 志磨子
    2008 年15 巻1 号 p. 50-58
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/10/20
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     構造解析を行うために,試料加工技術は非常に重要である.従来,広く利用されている機械研磨法,ミクロトーム法等は有効な方法であるが,複合材料などを加工することが難しい,広い範囲を加工することができない等それぞれに難点も合わせ持っている.これらの手法の難点を克服するために,ブロードなアルゴンイオンビームを照射し試料加工を行う方法(クロスセクションポリッシャー:CP)が開発された.CPでは従来困難であった複合材料等の加工が容易になり,分析の幅が広がった.CP加工においては,加工前の前処理が非常に重要であり,材料に合わせた工夫が必要である.表面分析における可能性を広げるため,様々な材料への応用例を紹介する.

連載(講義)
  • -電子分光装置の理解のために- (第12回)
    嘉藤 誠
    2008 年15 巻1 号 p. 59-84
    発行日: 2008年
    公開日: 2018/10/20
    ジャーナル フリー

     電子光学系において, 像の性質を支配するのは対物レンズです. これは, 電子ビームの開き角が物面において最も大きな値となるからです. 結像をともなう電子分光の場合, 空間分解能より像強度が優先されることがしばしばあり, そのときの像の性質は対物レンズの球面収差によって決定されます. 今回は, 球面収差の存在のもとでのインコヒーレント光学系の結像を議論します. また, そのような光学系の評価のために有効となる空間周波数応答の理論を紹介します.

エクステンディド・アブストラクト
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