現在,表面分析研究会(SASJ: Surface Analysis Society of Japan)では活動の一環として,深さ方向分析に関する国際ミニワークショップの開催並びにワーキンググループの発足を企画し,その検討を進めている.今後本企画を進める上でSASJ会員,特に分析現場の声を反映させることを目的として,昨年11月25日から28日にかけて金沢で開催された2007年実用表面分析国際シンポジウム(PSA-07: Practical Surface Analysis 2007)にて,「深さ方向分析に関するアンケート」を実施した.本稿ではアンケートに対する回答のまとめを中心に報告する.
試料の表面から深い位置にある界面を高い深さ分解能で分析するために,集束イオンビーム(FIB: focused ion beam)加工装置を用いたリフトアウト法により薄片試料を作製し,オージェ電子分光法(AES: Auger electron spectroscopy)スパッタ深さ方向分析を行った.その結果,分析対象である界面が非常に深い場合にも,界面までの深さが数100 nmになるように薄片試料を所望の位置で切り出すことが可能であり,良好な深さ分解能で表面から深い位置にある界面を分析できることがわかった.また多層膜の断面のAES線分析では,断面試料表面の汚染および酸化により,実際には存在しない炭素層や酸化層が認められたが,リフトアウト法を用いて対象となる界面近傍からサンプリングした試料をスパッタ深さ方向分析することにより,表面汚染および表面酸化の影響を受けることなく測定できることを確認した.さらに,絶縁物試料については,リフトアウト法により薄片試料を作製することで,帯電の影響を受けることなく測定が可能であることがわかった.