本研究は,安全フレームを装備した農用運搬車が1:1.5(33.7°)の傾斜面上で連続的に側方転倒するかしないかを容易に予測する手法の開発を目標としている。各種力学現象を表現可能な物理エンジンソフトを適用することで,装着したフレームの安全高さならびに運搬車両の側方転倒挙動が予測可能かどうかを検討した。小型模型運搬車におけるフレームの安全高さの結果より,物理エンジンによる安全高さの解析精度を確認した。また,斜面の摩擦係数を考慮できないOECDの公表プログラムでの解析結果と比較して,物理エンジンによる運搬車の斜面上の転倒挙動の結果はより実際に近い斜面条件を反映していると判断された。
大豆のコンバイン収穫における汚粒低減を目的とし,コンバインのコンケーブの開発を行った。予備試験結果から,大豆収穫時の汚粒発生の原因の1つとして,高水分大豆の茎がコンケーブに絡まって滞留し,大豆穀粒と接触することが理由と考えられた。そこで,自由回転するローラーをこぎ胴と並行に設置したコンケーブを試作して性能を評価した結果,直径21 mmのローラーを18 mmないし24 mmの隙間を設けて配置したコンケーブを用いた時の汚れ指数が小さかった。また,このコンケーブを用いた時の穀粒漏下分布,脱穀選別ロス,こぎ胴駆動トルクは,市販の標準コンケーブと同程度であった。
ホウレンソウ調製作業の高能率化を目指し,調製機を開発するとともに,その調製精度,作業能率等の性能を明らかにした。開発機は,作業者がホウレンソウを1株ずつコンベア上に静置すると,根部を切断し,子葉と下葉を除去する。根部の切断精度は,平均切断長6.9 mm,標準偏差1.4 mmであり,これは,店頭販売品と比較しても,十分な精度であった。子葉,下葉除去率については,現行機での74.9 %に対し,開発機で94.3 %と向上した。作業能率は,現行機での供給1人仕上げ3人体系での508株/(人・h)に対し,開発機では,供給1人仕上げ1人体系で926株/(人・h)であり,作業能率が大幅に向上した。
地域や農業経営方針に基づく環境条件の多様化に対応するため,従来のフロートの地面への沈み具合の調整を,オペレータの経験に基づき設定していたものから自動的に調整できる構造とするためにフロートの沈下量をレーキセンサによりセンシングし,一定深さに制御する機能を新たに開発した。ベンチにおける定量性能評価を行った結果,品質工学の評価法に基づく利得は,植付け深さのSN比が9.7 dB,フロート沈下量が4.5 dB向上することを確認できた。
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