乗用トラクタの事故は農業機械作業に係る死亡事故のうち最も多く,それらを低減することは農作業安全の観点から重要である。本研究では,新たに入手した乗用トラクタの事故調査結果から,発生確率を算出し,被害の程度に重みを付けて数値化することで,各事故要因の危険度および各事故事例のリスクを算出した。その結果,乗用トラクタ事故における,死亡,重傷のリスクは最大で57 %,61 %低減可能であると見込まれた。さらに,「安全性や操作性の低い機械」,「場所の傾斜,段差,凹凸」,「場所の狭さ(縁,物への距離)」の3要因を対策することで死亡・重傷のリスクの閾値を下回る見込みを得た。
近年我が国では,大豆の増産が奨励されているが,播種適期が2週間程度と短いことから,現場からは播種作業の高速化が求められている。加えて,大豆は水田転換畑への作付けが8割以上を占めることから,湿潤土壌への対応も必要である。既に耕うん同時畝立て播種機が開発されているが,畝立てにロータリを使用するため作業速度が0.3~0.6 m/sと遅く,湿潤土壌への対応も課題であった。そこで,本研究ではディスク式中耕培土機をベースとすることで,作業速度の向上と湿潤土壌への対応を企てた。その結果,最高2 m/sの速度で畝立て作業が可能で,さらに高速播種機構と組み合わせた基礎試験機では,1.5 m/sまでの速度で安定した播種が可能となった。
害鳥による農作物の被害額は年々増加しており上空をネットなどで覆うにも施工費や維持費がかかる。花火などの対策をしても効果が続かずにすぐ慣れが生じてしまい上空から飛来する害鳥を常に監視し防除対策を継続することは困難である。本研究では害鳥の被害を未然に防ぐために監視カメラにより取得した画像から害鳥の侵入を自動で検出しドローンの自律飛行による害鳥の防除効果の有効性について評価を行った。通知を受け圃場主はドローンを自律周回飛行させることで害鳥,特にハシボソカラスが3~11羽飛来していた状態から0~3羽となる結果を得た。
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